あらすじ
大手製薬会社社員の藤井賢一は、不祥事の責任を取らされ、山形の系列会社に飛ばされる。鬱屈した日々を送る中、東京で娘と母と暮らす妻の倫子から届いたのは、一通の不可解なメール。“家の中でトラブルがありました”数時間後、倫子を傷害致死容疑で逮捕したと警察から知らせが入る。殺した相手は、本社の常務だった――。単身赴任中に一体何が? 絶望の果ての真相が胸に迫る、渾身の長編ミステリ。
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Posted by ブクログ
絶望の最下層にいたと思いきや、更なる絶望へと突き落とされていく物語の展開。
2転3転とする「真相」に、脳が混乱し、疲弊していく様は、主人公の絶望とストレスを少しでも共有できたのではないかと感じさせられるほど強烈だった。
【以下ネタバレ】
家族とは、最愛と憎悪の綱渡りだと、作品を通して思った。
ほんの一言で憎悪に傾き、小さな仕草で最愛に傾く。揺れに揺れながらも、細い綱の上を歩いてゆく。
そしていつか、月日が流れ、思い出が積もり、今までの「揺れ」を踏まえて、どちらかに大きく体が傾く時がくる。
1度、「憎悪」側に落ちたら、かけられた言葉が最愛でも、皮肉だと感じてしまうだろう。最愛側に落ちた別の家族をひたすら憎み、身を呈してでもハチャメチャにしたいと、思うようになるのだろう。
彼女…優子も、その憎悪側に落ちた1人なのだと思う。
祖母が、初めに南田を殴った、その1発を、優子は「汚い言葉が嫌いだったみたい」と評していたが、
それは紛れもない、祖母の優子に対する愛情からだったのではないだろうか。
大切な人が襲われている。何とかしてでも、守らなくては。そう思い、怪我した右手にも構わず、祖母は重い酒瓶を南田の頭に当てた。
これを、優しさや愛の類と言わずに、なんと言えばいいのだろう。
主人公夫婦や娘が前に進めて嬉しく思う。
それと同時に、優子が、人からの優しさを素直に受け入れ、少しでも幸せな人生をあゆめたらと切に願う。
Posted by ブクログ
中年男の鈍感さは、それだけで犯罪
男と言うか女も愚か。
人間は本当に愚かな生き物だなと。
前半は主人公の会社での立ち位置や真面目さのお話。後半は妻が自分の上司を撲殺した…一体何が…
とストーリーは進みますが、真犯人は何となく読めました。
もらわれっ子症候群の真実には驚き。
真壁さんの過去気になりました!
『代償』めちゃくちゃ読みたい!
Posted by ブクログ
最後まで一貫して思ったのは、
優子さんは本当に心の底から恨んでたのかな?ということ。
お姉さんへの甘えだっただけじゃないのか。
子供は親にどこまで許されるか試すことがあるという。それが甘えだと。
家族から愛されないと感じる優子は、倫子を憎みながらも、受け入れてくれることに甘えていたのではないか。
一方倫子も、自分だけが血が違うことから、家族として必要とされているということを、優子をかばうことで感じていたのかも。
優子は倫子が羨ましかった。
お金や権力になびくことのない実直な旦那がいて、無条件に愛されている。
本当に血のつながった家族を作っていく様子。
すごく幸せに見えたに違いない。
そんなお姉さんを羨み、憎みながら、その気持ちを昇華させられず、こういった事件に至った。
羨ましい、という気持ちは妬む気持ちと紙一重。
特に女性のその感情は怖いと感じた。
Posted by ブクログ
裏のまた裏をかいてくる。それでいて筋が通っている。ただ、だんだん誰が犯人でも驚きがない、言ってしまえば、裏をかかれることに慣れてしまう。この娘が嫌う父親の感じがリアルで解像度が高かった。娘の成長を認識できず常に上から目線であたかも自分が正解だと疑いもしない感じ。また、いわゆる、"もらわれっ子症候群"。これは誰もが感じることなのか、と自分の中だけにあった塊が広がった気がした。自分の考えを客観視するための読書でもあるのでものすごく良かった。読みやすかった。
Posted by ブクログ
面白かった!
最後まで話が二転三転して、話に引き込まれた。
ただ賢一の態度がいつも優柔不断な感じで、「しっかりしろー」と言ってやりたい気持ちになった笑
姉をここまで憎む優子が狂っているように思うが、やはり母親の浮気や父親の優子に対する厳しい育て方等考えると優子も気の毒な気がした。
そういう意味では倫子も優子も被害者じゃないかな…
Posted by ブクログ
読み終わってから『悪寒』の意味がわかった。
優子視点と賢一視点で悪寒の種類が違うように思う。
犯人も殺した動機も真相も全部わかった気でいたけど全部違って混乱したw
賢一が優子にネタバラシする場面の賢一の静けさが良かった。
どこかで優子のこと救えへんかったんかなー。本当に昭和生まれの頑固ジジイは嫌やな。
家族って難しい。