伊岡瞬のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
恥ずかしながら伊岡作品を読むのはこれが初めてで、なのにどうして『代償』や『悪寒』などといった、作者を語るうえで欠かせないあれこれではなく本作を手に取ったかといえば、青春ミステリーが読みたかったからで、帯に「最も残酷で美しい青春ミステリー」とあったからです。
ですが、こんなに人生でも指折りの忘れられない読書体験になるなんて誰が予想できたでしょうか…
「泣ける!」と言われれば泣かないひねくれものですが、読みながら勝手に泣けて仕方がなかった。
その涙は、大きな物語の荒れた海の中に突き落とされたと思えば激しい波に揺られ続け、時折しょっぱい水を飲まされ、咽て、苦しい思いで這い上がった先にまた次の苦しみがあり、けれどいつしか波に逆らわず身を任せた先に辿り着いた景色があんまり救われるものだったので、言葉にならないまま堰を切ったように溢れ出てしまったという感じだった。
本作は大掛かりな仕掛けが施されているミステリーなため何も感想が書けないので、ただただ比喩でもって素晴らしかった最高だった、泣けるミステリーといわれて泣くもんかと思ったはずがびちゃびちゃ、みたいなちんけな感想しか書けなくて歯痒いですが、構成はもってのほか、キャラクター造形も背景も、何もかもが良かった。
これを本棚のいいところに並べてくれていた我が家の近くのジュンク堂さんありがとう!!
辛い少年期を過ごす主人公なため、派手さはない大変地味なキャラクターですが、なぜこれほどまでに現実味があって考え方、行動の一つとってもこれ以外はないと思わせるほどの説得力があるのだろうか。
本作のどのキャラクターも特異な環境、背景があるため書き分けや思考などに気を遣えば遣うほど面白みがなくなりそうなところなのに、突飛さを加えることなくここまで面白く読ませるなんて神様なの…そうか伊岡先生が神様だったんだ!みたいな思考に陥りました。幸せです。
矢木沢がもう、ほんとに、この子、ほんとに憎めなくて、責められる面があって然りなんですけど、最後にはもう大好きになってて、それだけでありがとうという気持ちでいっぱいです(矢木沢ガチ勢
ラストもここまで書いてくれて、こんなに贅沢な読書体験はないというほど幸福な時間でした。
しばらく伊岡ワールドにはまりそうです。 -
Posted by ブクログ
『瑠璃の雫』罪と赦し。2つの家族の物語。
【本書の特徴】
『瑠璃の雫』は、著者伊岡瞬氏による3作目の作品です。子供が誘拐され、行方不明になった夫婦と父親が蒸発、母親がアルコール中毒という家庭に育った姉弟の物語です。
タイトルの「瑠璃」は、行方不明となった子供の名前です。
誘拐した犯人グループは誰なのか?その動機は何なのか?というミステリー要素よりも、被害者家族の気持ち、そしてその家族と出会う姉と弟の気持ちの描写に重きが置かれている小説です。
【物語のはじまり】
幼稚園児が公園で遊んでいたそのとき、近隣で精神異常者が暴れます。その暴動の裏で、園児が1名誘拐されました。園児の父親は「検事」です。当時担当していた事件は、地元の議員と建設会社の賄賂・汚職でした。
被疑者は、目撃者情報を含めた状況証拠から、議員・建設会社関連とわれました。しかし、証拠不十分で逮捕にはいたりませんでした。
結局、犯人は逮捕されず、園児も見つからず時が流れます。
【主な登場人物】
1.検事:
たった一人の長女が誘拐される。妻の死後、妻の遺品を整理しながら、長女の行方・真相探しを始める。犯人と対峙し、真相を知る。しかし、彼は犯人を立件することも、自首させることもしなかった。なぜ?
2.検事の妻:
長女が誘拐されたあと、夫の転勤が決まる。夫は単身赴任し、妻は、長女が誘拐された土地に残ることを決意する。彼女は、夫に定期的に手紙を書く。当初は悲しみに暮れていたが、少しずつ光がさすようになる。長女と同い年の子供とその母親と親しくなり、気持ちにゆとりができるようになる。
3.少女:
父は蒸発、母はアルコール中毒。弟の長男は知恵に多少の問題があるとされる。弟の次男は、生まれてすぐに自宅でなくなっている。物理的な居場所と精神的な居場所がない少女。叔母が経営するスナックの客、1の検事と出会い、少しずつ心を開くようになる。
【小説のテーマ「赦し」】
この小説では、複数の事件が存在しています。
・検事の長女が誘拐される事件
・誘拐事件の被疑者が失踪し、行方不明となる事件
・少女の弟(次男)が自宅で死亡する事件
すべて事件であるため、実行犯が存在します。実行犯は、逮捕されることなく、物語が進行します。逮捕されない理由、背景は複雑です。
人は、罪もその罪を犯した人も一般的には憎みます。しかし、この小説ではこの憎しみという感情に対して「幅」を持たせます。その幅が「赦し」です。赦しは、辞書で「罪を咎めない」とあります。
なぜ、登場人物たちは、「罪を赦した」のか?
読者がその背景にたどり着いたとき、どうしようもない哀しみに包まれてしまうことでしょう。 -
Posted by ブクログ
序章
十万光年の花火
清田千遥(一九八八年三月)/津村裕二(四歳~八歳)/
清田千遥(一九八八年三月)/津村裕二(八歳~十二歳)/
清田千遥(一九八八年三月)/
坂井裕二(十二歳~十六歳)/
清田千遥(一九八八年三月)/坂井裕二(十六歳)
海の扉
清田千遥(一九八八年七月)/坂井裕二(十九歳)/
清田千遥(一九八八年七月)/坂井裕二(十九歳)/
清田千遥(一九八八年七月)/
坂井裕二(一九八七年十九歳)/
清田千遥(一九八八年七月)/
坂井裕二(一九八八年十九歳~二十歳)
終章
時が行きつ戻りつしながら千遥と裕二の世界がはっきりしてくる。序章の世界はどこにどうかかわるのかを推測しながら読んだ。終章で、あぁそうだったんだねと腑に落ちる。みんな しあわせにね -
Posted by ブクログ
初めてコロナが発生した時ってこんな感じだったんだろうなあ、と思える作品。
ある男がホームに来た電車に飛び込んで自殺する、という衝撃的な場面から物語が始まる。その処理に関わった人間も連鎖的に自殺してしまう。自殺した人間に共通点はあるけど、はっきりした事は言えない。同僚の自殺に納得がいかなかった刑事の永瀬は、真相を探ろうとする。そして、題名にもなっている"赤い砂"と呼ばれているウイルスが関係してるのではないのか?と考える。このウイルスがとても恐い。ウイルス全般怖いんだけど、"赤い砂"は最後は自殺するっていうのが恐い。読んでて思い出したのが同僚との会話。コロナ禍初期ぐらいの時に、「ウイルスに色がついてればいいのにね。そうすれば対策が出来るのに。」という話をしてたな。それが出来てたら、こんなにみんな困ってないんだけど。フィクションなんだけど、今の世の中、実際あるのでは?と思ってしまう。
そしてもっと恐いのがやっぱり犯人。サイコパスっていう事なんだろうけど、考え、行動がどうしても理解できない。そう思うと人間が一番恐いかな。
このウイルス関係で製薬会社が出てくるんだけど、これにイラッとする。身勝手な利権争いや責任の押し付け合い。あとは警察庁と警視庁。(私はこの二つの組織の違いがよく分からない)この二つの組織も隠蔽だの派閥争いだので、またまたイラッとする。こういう上の人たちの身勝手な考えのせいで、一般人がいつも犠牲になるんだよね。
私は本庁から来た刑事、長谷川が好き。永瀬の相棒なんだけど、いい人だと思ってたけどなかなかの人だった。野心あり、おいしいところは持っていってしまうしたたかな刑事。それでも私はなぜか好き。
最後、永瀬と事件の関係者、有沢美由紀がどうなるのか?気になる終わり方で、そこがモヤっとしてしまう。どうかハッピーエンドでありますように。
伊岡瞬さん。私にとってハードルがあまりにも高くて今まで手が伸びなかった。でもこの作品は、レビューを読んでどうしても読みたくて思い切って伊岡瞬の世界へ飛び込んでみました。結果は飛び込んで良かった。面白かったです。