あらすじ
母と弟の3人で暮らす小学6年生の杉原美緒。母はアルコールに依存し、親類に引き取られた美緒は心を閉ざしていく。そんな折、元検事の永瀬丈太郎という初老の男と出会う。美緒は永瀬の人柄に心を開いていくが、彼はひとり娘を誘拐されており、大きな心の傷を抱えていた。数年後、美緒は事件を調べ始め、余りにも哀しい真実を知る――。家族とは何か。赦しとは何か。今最も注目を受ける気鋭が贈る、感涙のミステリ巨編!
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Posted by ブクログ
『瑠璃の雫』罪と赦し。2つの家族の物語。
【本書の特徴】
『瑠璃の雫』は、著者伊岡瞬氏による3作目の作品です。子供が誘拐され、行方不明になった夫婦と父親が蒸発、母親がアルコール中毒という家庭に育った姉弟の物語です。
タイトルの「瑠璃」は、行方不明となった子供の名前です。
誘拐した犯人グループは誰なのか?その動機は何なのか?というミステリー要素よりも、被害者家族の気持ち、そしてその家族と出会う姉と弟の気持ちの描写に重きが置かれている小説です。
【物語のはじまり】
幼稚園児が公園で遊んでいたそのとき、近隣で精神異常者が暴れます。その暴動の裏で、園児が1名誘拐されました。園児の父親は「検事」です。当時担当していた事件は、地元の議員と建設会社の賄賂・汚職でした。
被疑者は、目撃者情報を含めた状況証拠から、議員・建設会社関連とわれました。しかし、証拠不十分で逮捕にはいたりませんでした。
結局、犯人は逮捕されず、園児も見つからず時が流れます。
【主な登場人物】
1.検事:
たった一人の長女が誘拐される。妻の死後、妻の遺品を整理しながら、長女の行方・真相探しを始める。犯人と対峙し、真相を知る。しかし、彼は犯人を立件することも、自首させることもしなかった。なぜ?
2.検事の妻:
長女が誘拐されたあと、夫の転勤が決まる。夫は単身赴任し、妻は、長女が誘拐された土地に残ることを決意する。彼女は、夫に定期的に手紙を書く。当初は悲しみに暮れていたが、少しずつ光がさすようになる。長女と同い年の子供とその母親と親しくなり、気持ちにゆとりができるようになる。
3.少女:
父は蒸発、母はアルコール中毒。弟の長男は知恵に多少の問題があるとされる。弟の次男は、生まれてすぐに自宅でなくなっている。物理的な居場所と精神的な居場所がない少女。叔母が経営するスナックの客、1の検事と出会い、少しずつ心を開くようになる。
【小説のテーマ「赦し」】
この小説では、複数の事件が存在しています。
・検事の長女が誘拐される事件
・誘拐事件の被疑者が失踪し、行方不明となる事件
・少女の弟(次男)が自宅で死亡する事件
すべて事件であるため、実行犯が存在します。実行犯は、逮捕されることなく、物語が進行します。逮捕されない理由、背景は複雑です。
人は、罪もその罪を犯した人も一般的には憎みます。しかし、この小説ではこの憎しみという感情に対して「幅」を持たせます。その幅が「赦し」です。赦しは、辞書で「罪を咎めない」とあります。
なぜ、登場人物たちは、「罪を赦した」のか?
読者がその背景にたどり着いたとき、どうしようもない哀しみに包まれてしまうことでしょう。
Posted by ブクログ
この夏、久々にミステリーばかりを読んでいるのですが、とても面白くてすぐに読み終わってしまいました。
主人公の気持ちを考えると胸が苦しくなることばかりでしたが、この本に出会えてよかったです。
Posted by ブクログ
母と弟の3人で暮らす小学6年生の杉原美緒。母のアルコール依存によって、親類に引き取られた美緒は心を閉ざしていく。そんな折、元検事の永瀬丈太郎という初老の男と出会う。美緒は永瀬の人柄に心を開いていくが、彼はひとり娘を誘拐されており、大きな心の傷を抱えていた。数年後、美緒は事件を調べ始め、あまりにも哀しい真実を知る。家族とは何か。赦しとは何か。今最も注目を受ける気鋭が贈る、慟哭のミステリ!
薫さんの明るさで読み進められた。
結局悪い奴が逃げ切った話・・・天罰は下ったかもだが・・・
Posted by ブクログ
交錯する人間模様。
最後に明らかになる衝撃の事実。
ありそうだけど、身近にはいない親子や夫婦などを登場人物に展開していく伊岡瞬ワールドに今作も引き込まれました。
Posted by ブクログ
一人の女の子の成長を感じながら
事件の成り行きを見守る
小学生だった女の子美緒が成長して仕事をしながら
昔の事件を調べ始める
美緒が小学生から社会人となって
悲しい別れを経験する
初老の男永瀬との出会いにより
美緒の感じが変わっていく様子や
永瀬が向き合った自分の娘の事件
それを調べていく美緒の心の内がものすごく成長を感じた
自分の中の傷と向き合って
それが消化できなくても怒りが収まらなくても
それでも一つのけじめとして自分が納得する答えを出していく…
読み応えのある素晴らしい作品
ちなみに物語に全く関係ないけど
美緒の母のいとこである薫が私は読んでいて
好きだなと思った…
Posted by ブクログ
アル中の母を持つ私の幼少期とかなり被った。
なので所々、とても感情移入した。
丈太郎や薫さんのような人が私の身近にいたらよかったなぁと思った。
そんな体験を持つ私だったからこの本は面白いと思えたのかもしれない…!
Posted by ブクログ
久々にラストに感情を揺さぶられた
一冊。
伊岡瞬さん作品は全体的に暗い人間模様で、その代表格な印象です。(明るい作品があったらごめんなさい)
色んな人の罪と隠蔽。 人を想う気持ちと自分だけを守りたい気持ち。エゴ。
最終的に全ての念が集まって、隠蔽された罪は土から掘り起こされる(読んだテンションそのままに生意気にも比喩表現であります)
瑠璃の雫はラピスラズリという石であり、涙であり、確かにそこに人がいた跡であり、この本のタイトルであ(以下略)
Posted by ブクログ
主人公の美緒ちゃんは好きになれないけど、酷い家庭環境で悲しくなりました。
所々に意味が分からない事があり、何度も同じ箇所を読んだ所もあります。
結局意味が分からんやったけれど(•ᴗ•; )
途中色々な付箋あるけど最終的には回収されて納得出来ました。
が、読後感はあまりスッキリしませんでした。
罪は償って欲しいですね。
Posted by ブクログ
まずはタイトルが瑠璃の雫に改題されて大正解だと思う。
瑠璃という響きが物語にマッチしている。
これでもかと言うほど陰鬱な内容に伊岡ワールド始まったと覚悟したが、主人公が背負う闇にいたたまれない気持ちになった。
丈太郎との出逢いが主人公の救いになるが物語はさらに深い闇に堕ちていく。
読み応えは充分あり、、面白かったといえば語弊があるので、、読んでよかった、さすが伊岡瞬。
Posted by ブクログ
感想
筆者の作品は子供時代から始まるものが多いように思う。その手間があって作り込んだキャラが立つのだと思う。
母の従姉妹の薫さんが明るくて、良い人なのが唯一の救い。
あらすじ
小6の美緒は、アルコール中毒の母に愛想を尽かし、小3の弟の充も疎ましく思っていた。母親の従兄弟である薫に面倒を見てもらう。
薫の紹介で一人暮らしの元検事の永瀬丈太郎と出会う。充は永瀬にジオラマ作りを教えてもらい、美緒は永瀬の亡き妻の書斎で本を読むことが好きだった。
やがて物語は永瀬が検察時代に、県議の収賄事件を担当し、その間に娘の瑠璃がどのようにして誘拐されたのかについて書かれる。
永瀬は、家が火事になり、瀕死の重傷を追う。そのうち、火事は放火が原因で、永瀬の娘を誘拐した容疑で不起訴となった小宮の息子が起こしたことであると分かる。永瀬はまもなく息を引き取る。
美緒は、瑠璃ちゃん事件について永瀬がどう考えていたかが気になり、調べ始める。永瀬に昔世話になっていたという元新聞記者の石神と出会い、真相を追う。
Posted by ブクログ
娘を誘拐された老人との交流で家庭が破綻して傷ついた少女がなんとか生きていくのは良かったと思った。丈太郎さんが娘について事実を知った上でとった行動には考えさせられる所があった。そしてその家族の様子にたどり着いた美緒が自分の家族において決着を付けようとして充の決断に納得が行かないさまも今までの辛さを考えたらそうだよなあと思った。充が忘れようと言ったのが逃げなのか強さなのかと思った。
Posted by ブクログ
父は家族を捨て母はアルコール依存症。弟と二人暮らしの美緒は心を閉ざし人生をあきらめている。子供に親は選べない。とあることで知り合った初老の男性の過去を知り、真実に辿り着いていく。罪に対しての赦しというのは誰がどう判断していくのか。その判断に対しての苦悩は終わりがない。老人と出会い、人生を強く生きていく美緒は良かったな。
Posted by ブクログ
極度のアルコール中毒の母親を持つ小学生の美緒
母を恨み、他人を拒絶する
元検事の永瀬丈太郎という元検事の初老の男性と出会い、心を開いていく。
幸せってなんだろう
幸せな家族ってなんだろう
相手を許すことの難しさ
弟の充の無邪気さの一方で、この世で一番残酷なのは何も知らない子供自身なのでは
もし丈太郎が単に優しいだけの好々爺なら、美緒もここまで心を許すことがなかったかもしれない。不器用な優しさと適度な距離感が素敵だなと思う
子供を持っても愛せない人もいれば、不幸に遭い、どんなに愛しても会えない人もいる
伊岡さんの描く世界はどうしても、理不尽だけど最後まで読まずにはいられない
最期の方の展開には驚きましたけど、叔母の薫さんのマイペースさがほっこりしました。
Posted by ブクログ
井岡瞬さんの小説が好きだから買った一冊。
赦しとは何か家族とは何かを知る話
それなりに厚い本だったがスラスラ読んでしまった。
それだけ内容に興味がもてたからだと思う。
元検事の過去の事件は謎が少しあるが大まかな内容がわかりスッキリ終えたと思う
でも主人公の家族の事件はスッキリしていない
赦しもテーマの一つの話らしいが、自分の子を殺した親なんて赦されるものじゃない
その事で家族が不幸になるなら復讐もしたくなるんじゃないかとおもう
主人公は復讐なんてしてないけど
もっと残酷な話で主人公があまり救われない話かなとも思ったが、なんとなく主人公が救われる話で良かったと感じた小説でした。
Posted by ブクログ
伊岡瞬作品らしく、人の嫌な部分が大きな比重を占めるが、それにも増して情緒的、とてもエモい。延々と無表情な印象の主人公、裏に流れるミステリーの軸、クライマックスの展開、500ページ弱に詰め込まれた盛り沢山の要素、端的に言えばとてもエモ素晴らしかった。
Posted by ブクログ
登場人物全員に喪失感、なんとも言えない哀しさが漂う。暗いなぁと思いながら読み進めていったけど、全体像が見えるにつれて、どうか幸せになってくれ!と願いたくなる。
Posted by ブクログ
10代の登場人物が出てくる小説はちょっと読みたくなる。そんな好みで読んだ作品。充のくだりは最後驚いたけど、良い意味での驚きだった。アル中のお母さんの妹の薫さんが良い人すぎて大好き。
Posted by ブクログ
われらに罪をなすものを
われらがゆるすごとく
われらの罪をもゆるしたまえ
「新約聖書」マタイ伝六章十二節
3部仕立てになっており、第1部から第2部に
移行した時には、短編小説だったか?と思うほど
展開が全く違う。
赦すことは、自分を解放する事でもある。
それにしても、子供は親を選べない典型的な話で
ある。
子供よりも夫を守るって有り得ませんけどね。
事件の真相、伏線の回収もしっかりと
第3部で明らかにはなるけど、全く気持ちが
スッキリしません
Posted by ブクログ
何作かしか読んでませんが、最近読んだ伊岡作品とちょっと違うテイストだな、と思っていたら初期の頃の作品なのですね。
罪とそれを許すということ。
倫理なんかくそくらえというある人物の言葉に共感。本作に登場するどの子供も大人の都合で辛い目に合ってる物語でずうっと苦しい感じで読み進み読み終わりました。しんどかった…
Posted by ブクログ
瑠璃の色っていいですよね。暗く悲しそうな色だけど綺麗に発光する。そんな雰囲気を物語から感じました。Sorrowful blueという表現、気に入りました。
Posted by ブクログ
美緒の一番下の弟はもう1人の弟の充に殺された
父は出て行き、新しい家族をつくる
母はアルコール依存性で入退院を繰り返す
親類の薫が美緒と充をひきとる
美緒は元検事の初老の丈太郎と出会う
彼の娘は誘拐されて行方しらずだった
美緒の家族の思いと丈太郎の家族の思いが痛く切ない
もやもやが残った作品
ただただ悲しい
薫が一番この作品の登場人物の中で好き
Posted by ブクログ
少女の美緒と初老の丈太郎。2人が出会い、それぞれの家族の悲劇の真実に迫るミステリー。
美緒の家庭環境は複雑で、父は家族を捨て、母はアル中、弟は発達障害。母の従妹の薫のおかげでなんとか暮らしている状態。弟は生まれたばかりの次弟を窒息死させていた。
一方、丈太郎はかつて幼いひとり娘を誘拐されていた。その事件は迷宮入りしていた。
成長した美緒が二つの真相を追求します。
結末が気になる展開でしたが、真相にはモヤッとしてしまいました。赦しがテーマのようですが、私は赦せない人間なんだと思います。
時系列が前後されていたり、共感できなかったりで読むのにちょっと疲れました。
Posted by ブクログ
数ある真相には意外なこともいくつかあったけど、第二部は全体的に間延びしてる気がした。
感涙必至とあったけど特に心が震えるシーンはなかったのが残念。
Posted by ブクログ
スラスラ読めるんだけど、なぜか入り込めず読みにくかったな〜。
第二部の丈太郎の視点での事件の真相が少しずつ明らかになっていくところは伊岡作品らしくて、そうそうコレコレと思いながら読めました。
Posted by ブクログ
主人公の美緒が叔母の知人である
元検事の永瀬と知り合い、心を開いてゆく。
成長した美緒は永瀬の身に過去に起きた事件を
調べてゆく。
美緒自身の苦しい環境と永瀬の過去の事件が
絡みながら、解決とは言えない許しに向かう
過去の誘拐事件と美緒の家庭環境や事件、
それぞれなかなか複雑なものが
一冊の中にあるものだから、かなり濃い。
美緒がただの元気な探偵少女のような設定では
深い許しには繋がらないのだろう
許しに向かうラストとは言え、はい許しました
お終い。とはならないわけで、美緒の家庭環境は
まだ良くなった訳では無く
救いは最初からブレずに寄り添う薫さんの存在かな
と感じた。その薫さんも幼い頃の後悔を許していくのだろうと。
事件が一つでは無いので途中読み進めに時間がかかって、おもしろいのだけど一気読みとはならなかった