西尾維新のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
自殺志願者を集めて自殺の名所にすることで町おこししようとする安楽市を舞台に、そのPRのための小説執筆を依頼された小説家の主人公が計画をなんとか止めようとすったもんだする、ぶっ飛んだ設定の小説。
いやー不謹慎極まりないネタ。でも、この不謹慎ネタをエンタメに昇華する西尾維新がほんとにすご過ぎて脱帽。
自殺で町おこしというネタを扱うには高い倫理観が必要であり、更に、「自殺なんて良くない」とか「生きるって素晴らしい」というありきたりで陳腐なメッセージに堕しないオリジナリティもあって、めちゃくちゃ高度なことをしてると思う。
この世には、生きるに値する価値なんて無いかもしれない、そもそも死ぬのはあくまで本人の自由なのだ。それでも、小説や映画、音楽などのエンタメによって生きる理由が生まれることも多々あって。小説や音楽の力っていうのも捨てたもんじゃないんじゃない?というメッセージに思えた。
『死んでもいいけど生きてもいい』
生を無理矢理肯定する訳でも、死を美化する訳でもない。エンタメの力を信じられる素敵な結末だった。 -
Posted by ブクログ
今日子さんとは、1人で決断できる賢さを持つのに間に合った人だと思います。
「忘れる」という現象は、人が生きる上で当然に起こることですので、今日子さんが主人公になり得るのは、「忘れるから」ではないと思います。
でも、昨日の「何か」ではなく「昨日」を忘れてしまっても、今日も何かを「決断する」場面はあり、そのための決断には、基づく根拠が必要です。
根拠の候補には、例えば誰かの助言や、自分の価値観などがありますが、ここで今日子さんにとって「誰かの助言」は、記憶に残らないため「ない」ものとみなされるはずですので、今日子さんのすべての決断は、自分の価値観に基づいていると考えられます。
「根拠」が足りなければ、決断に至らず迷います。でも、今日子さんは、昨日のできごとは忘れても、すでに培った価値観は、生きていくのに十分なほど揺るぎないものであるため、自分の価値観「だけ」で今日も生きていられるのだと思います。
今日子さんが格好いいのは、昨日を忘れても今日を生きられるからではなく、昨日を忘れても今日を生きられるほどの価値観の蓄積をすでに済ませていると思うからです。
なぜ昨日を忘れてしまうことになったのかとともに、いったいどんな経験を積んで価値観の蓄積に至ったのかも気になります。 -
Posted by ブクログ
西尾維新の<物語シリーズ>第6作。表紙が八九寺なので八九寺メイン回かと思うが、実は忍メイン回。
夏休み最終日、宿題を終わらすに絶望的な状況を前に、宿題をする時間を確保するため、忍と昨日へ"時間移動"することとなった暦だが、二人が辿り着いたのは"11年前の5月13日"―――八九寺真宵が母親の家に向かう途中に交通事故に遭い、死して怪異となった日であった。八九寺の"運命"を変えると決意する暦。"運命"を変えたその先に待つものとは―――。
「暦と忍、時空をかけ"運命"に挑む、二人っきりの物語。」
これまでのシリーズ作品と同様、キャラ同士の掛け合い◎、テキストのテンポ◎、構成力◎と、レベルの高さに舌を巻いてしまう。また、自分がすっかり八九寺メイン回と勘違いしていた為、展開に対する驚きがマシマシだった気がする。嬉しい誤算(怪我の功名?)。
忍メイン回&二人っきりということで、暦と忍のじゃれ合いを存分に楽しむことが出来る、忍ファンにっこりな一冊。私的ベストじゃれ合いは、「暦の無自覚べた褒め→忍の照れ隠し吸血鬼ック(「やんっ!」)」(165~166頁)。あとは、吸血鬼ようじょのすべすべあばらが堪r(自主規制)
勿論、笑いだけでない、シリアスで切ない展開もあり。暦と忍、二人のための素敵なエピソード。 -
Posted by ブクログ
登場人物たちのリズミカルな会話や本でしか出来ない文字遊びがあり、読んでいてとても楽しかった。メタ発言や下ネタが多々ありコメディにしか思えないのだが、時折り意表を付くような真理に近い発言が出て考えさせられることも多い。今回の作品では、「本当の正義」について考えさせられた。「正義の第一条件は強いこと。だから、正義はいつも勝つ。」この言葉が一番印象に残っている。私たちが思っている正義は実は正しいからではなく、強いからなのかもしれない。そうならば、正しいだけでは「偽物」となる。これが正解なのかはまだ分からないが、これから考えていく上で大切なヒントをもらった気がする。