花房観音のレビュー一覧

  • 愛の宿

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    ネタバレ

     もし、あの夜、あのホテルに泊まらなければーーの冒頭からはじまる短編六つ。
     ここでいう、「あのホテル」はラブホテルのことを指している。本編において舞台となるのは、京都の繁華街にあるとあるラブホテル。セックスという、おおっぴらには外でできない行為を、ほかにする場所がないという事情、つまり不倫、援交、未成年といった、さまざまな理由を抱えた人が、それでもセックスをするために利用する場所である。
     そこで、ある夜、女が死んでいた。その事情聴取のため、ホテル利用者は全員、翌日夕方までホテルからでられない。
     みんな、後ろめたい理由があって、ラブホテルを利用している。配偶者に嘘をついているもの、親に嘘を

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    2020年05月17日
  • 愛の宿

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    ラブホテルから始まる様々なストーリーが描かれた作品。登場人物一人一人に共感するところがあった。短編集で読みやすかった。「愛の宿」でこの一冊のネタバレがあり、ゾクッとした。

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    2020年04月19日
  • 情人

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    花房観音『情人』幻冬舎文庫。

    本当の愛を知らぬままに、肉体的な性愛の泥沼にはまっていく女性を描いた純文学風官能小説。

    阪神淡路大震災の日に母親が親戚の若い男・兵吾と過ごしていたことを知った娘の姫野笑子は少しずつ性に目覚めていく。結婚するものの本当の愛を知らぬままに、性愛の泥沼にどっぷりと漬かっていく笑子……どこまでも堕ちていく笑子……

    肉体的な快楽を愛と間違え、男に抱かれている時だけ安らぎを覚える惨めな女。余りにも残酷な結末……

    本体価格770円
    ★★★★★

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    2020年02月13日
  • 時代まつり

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    『やすらいまつり』の続編とも言うべき、京都を舞台にした六編収録の官能短編集。花房観音の小説は単なる官能小説に留まらず、時に文学の香りが漂い、女性の持つ情念、本質、独特の思考を強く映し出した小説に仕立て上げている。女性が読めば共感し、男性が読めば恐怖を感じるだろう、そんな短編集。

    『かにかくまつり』。笠野秀人が京都の学生時代に男女の仲になった色街の女性、雪子…笠野は卒業間際に雪子に捨てられるが、二十年後に京都で雪子と再開する。色街に生きる女の強さと、いつまでも夢を見続けている男の滑稽さ…

    『七夕まつり』。笹原は独身時代に知り合い、別れた彩音と結婚しても、なお、年に一度の逢瀬を重ねる。彩音との

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    2015年10月17日
  • やすらいまつり

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    京都のまつりを舞台に描かれた官能短編六編を収録した作品。六編のいずれも、燃え上がるような男女の性愛が描かれているのだが、いずれの女性も怖く、身勝手にも映る。それだけ、女性の情念が強いということなのだろう。一瞬の快楽のために我を忘れる男が愚かに見えるとともに女性とは強かであり、快楽の中でも強い想いを胸に秘めている生き物なのかも知れない。

    花房観音の作品は官能小説というジャンルに分類されるのかも知れないが、単なる官能小説で終わらずに男女の深い部分を描かれているのが面白い。

    『梅まつり』『ひいなまつり』『祇園まつり』『地蔵まつり』『火まつり』『やすらいまつり』を収録。表題作の『やすらいまつり』が

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    2014年07月14日
  • 超怖い物件

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    ネタバレ

    物件を起点にするホラーは、幽霊ものと同じく特定の場所(人物)が要因なため、読んでいる限りは真実「対岸の火事」で楽しめる…からこそ、絡め手も被るよね、などと。
    アンソロジーだけに合う合わないを感じるが、比較的前者が多くてよきかな。

    『旧居の記憶』福澤徹三
    『笛を吹く家』澤村伊智
    『終の棲家』芦花公園

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    2025年11月28日
  • 京都伏見 恋文の宿

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    「幽霊なんていません。人は死ねばそれまでで、生まれ変わりもない。すべてが終わりで、あの世も存在しません。幽霊がいるとしたら、それは生きている人が作り出したものです」

    秘めた想いを届けます――

    季節うつろう幕末の京都。伏見にある旅籠・月待屋には、不思議なほどに人の心を動かす手紙を書く代筆屋「懸想文(けそうぶみ)売りさま」がいるという。秘められた恋、切っても切れぬ親子の情、戦国の世にさかのぼる先祖の因縁――人々はそれぞれの想いを胸に、月待屋を訪ねる。京の四季と切ない人間ドラマをしっとりとした筆致で描く、人情時代小説。

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    2025年11月20日
  • 紫の女

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    源氏物語、登場人物の物語をモチーフにアレンジした7つの欲望の物語。

    なぜ“誰かの女”に欲情するのだろう? 性愛小説の女王が描く、現代の『源氏物語』。「源氏物語」をモチーフに、禁断の関係におちてゆく男女の情愛の行方を艶やかな筆致で描く、粒ぞろいの官能短編集。若い部下に妻を寝取られたことを知った夫は、部下にある命令をし(「若菜」)、客を誘惑したタクシーの女性運転手には、秘められた過去が(「夕顔」)――古典に新たな命を吹き込んだ、7つの欲望の物語。

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    2025年11月10日
  • シニカケ日記

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    51歳で心不全を起こし、救急搬送された筆者のエッセイ。死が目の前に迫ってくる経験を読むのは初めてだ。死後のことはわからないけれど、こうして筆者の死生観や生き方に触れられて良かった。

    この作品を読んで気づいたのは、私も作者同様、気づいていないけどセルフネグレクトぎみだということ。まだ30代で更年期障害や生活習慣病とは縁がないかなと思っていたが、ちょっとした不調を放置することは割もあるので気をつけなければいけないなと思った。

    いつまでも生きていたいと思う反面、あまり長生きしても大変だとも思う。生きるって面倒くさいことが多くて難しい。それでも、死を目前にした筆者が言うように、生きていることは素晴

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    2025年10月06日
  • わたつみ

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    厳密には3.5以上4未満かな
    地方の閉塞感がなんとなくしか理解できないのが悔しい
    生きること、を考える

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    2025年10月06日
  • 京都伏見 恋文の宿

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    花やお香、和菓子、お酒など随所に散りばめられたモチーフが効いてて読書というより体験。
    これは他作品のホラーや官能小説も読んでみたくなったぞ。
    お話がすっと入ってくるのも、バスガイドさんとしてのご経歴の賜物なんだろうな。

    現代よりもっと身分制度や男女の役割が固定化されてた時代に「人として対等に話せる」って天恵のような出逢いだと思う。
    好みは分かれるかもしれないけど、私はマクドで読んで号泣した。

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    2025年09月19日
  • わたつみ

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    「東京」と「片田舎」を対比し、その価値観のコントラストが軸にストーリーが展開されている。
    ただ令和のボーダーレスの中で「生」と「性」が、そのコントラストにどのように絡んでくるのか、ワクワクしながら読み進めた。

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    2025年08月02日
  • 超怖い物件

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    家や土地にまつわるホラーアンソロジー。
    事故物件だけでなく住民そのものが怖いヒトコワものまで豪華11話収録。

    糸柳寿昭氏『やなぎっ記』軽い雰囲気の日記だと思っていたら最後のメールで鳥肌立っちゃうやつ。

    澤村伊智氏『笛を吹く家』この方の描く歪んだ家族っていつも気味が悪いし悲惨…本当にいそうなのがまた怖い。

    芦花公園氏『終の棲家』宗教が関わるホラーではやっぱりこの方。得体が知れない信仰の気持ち悪さと逃げられない絶望感。

    平山夢明氏『ろろるいの家』ホラー描写が本書で一番怖かったかもしれない。不気味な現象に徐々に侵食されていく感じがゾクゾクした。

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    2025年06月10日
  • 京都に女王と呼ばれた作家がいた 山村美紗とふたりの男

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    生前は所得番付に載る流行作家であったが、現在では絶版になっているものがほとんどという。
    時代の流れを感ずる。

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    2025年05月23日
  • 鳥辺野心中

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    産寧坂(さんねいざか)は京都市にある坂。三年坂(さんねんざか)とも呼ばれる。 東山の観光地として有名である。狭義には音羽山清水寺の参道である清水坂から北へ石段で降りる坂道をいうが、公式には北に二年坂までの緩い起伏の石畳の道も含む。

    わが恋は松を時雨の染めかねて真葛が原に風騒ぐなり――。

    「ほんまやで、一か月ほど前や。転んで足をくじいたって、片足引きずりながら帰ってきたわ。三年以内に私は死ぬんやって、自分で言うとった。そやから、早かったんやな」

    わが恋は松を時雨の染めかねて真葛が原に風騒ぐなり――。

    「せんせぇ、三年坂はな、産寧坂とも言うんやで」

    中学校教師の樋口は、ある女生徒の母の死

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    2025年05月12日
  • 超怖い物件

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    物件ホラーが好きなのと芦花公園先生の短編が入っているので手に取った。他の参加メンツも豪華すぎる、、、バラエティに富んだ様々な物件の嫌な話が入っていて満足度が高い。
    福澤先生の話読んだことある、、、?って思ったけど「怪を訊く日々」のエピソードと若干重複してた。「忌み地」のシリーズも好きなので糸柳さんの日記っぽいやつも好き。晩御飯の献立書いてあるのかわいい。
    郷内心瞳は拝み屋怪談しか読んだことなかったのでカニバリズム百合姉妹ホラーみたいなのお出しされて新鮮だった。よかった。
    芦花公園先生のやつもかなり邪悪だったけどそれに続く最後の平山夢明先生のやつがあまりにも凶悪すぎて最高だった。何この流れ。助か

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    2025年04月13日
  • すきもの

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    セックスだけが好きな女性の年代記。
    性欲の描写が本格的で、今まで読んだ中でも群を抜いてリアルだったな。
    共感できるかっつーと判らないけど、こういう人もいるだろうと思う。

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    2025年03月13日
  • どうしてあんな女に私が

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    ネタバレ

    『女が女を悪く言うと、男たちはすぐに「嫉妬」と言うが、そんな単純な話じゃないのだ』…自覚したくはないけれど、どうしても抱かずにはいられない感情をまざまざと見せつけられた作品でした。
    木嶋佳苗の事件をモチーフにした話とは知らずに読み始め、比較しまくりドロドロするのかと思いきや…ホラーでした。

    女性たちの、「モテ」まで行かずとも、周囲の人間関係に波風立てないくらいな最適レベルの生き方すら否定されてしまう春海さくらの存在は脅威です。
    あんな存在もあって、しかもかなり成功している…というのを視界の片隅に置いたり置かなかったりして、自分は自分のやり方を信じて貫くしかない。ないけれど。
    それに疲れてしま

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    2025年02月23日
  • シニカケ日記

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    ネタバレ

    51歳の作者が、体調不良を更年期のせいだと思いほぼ放置していたため(着圧ソックス、更年期障害の薬、血圧の下がるお茶と対策していたが)心不全で倒れ、緊急入院やICUを経て退院。そしてその後の生活を語る。まさに『シニカケ日記』

    倒れる前の生活が、加齢に対する、生きることに対する心持ちが、他人事とは思えない。
    そして、入院中の食事についてやシャワーへの欲求、必要な物、同室の人の声などが赤裸々に書かれていて、ちょっと笑ってしまったり感心したりしたが、何より、死を身近に感じてしまった人の心の揺れが、実際に体験してしまったからこそ生まれる生々しさを感じた。
    同年代としては、気づかされることが多かった。中

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    2025年01月02日
  • 京都伏見 恋文の宿

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    京都伏見の旅籠・月待屋に、訳ありで離れに暮らすようになったお琴。
    素性や顔を隠したまま懸想文売りをすることに。
    月待屋の女主人・お由井と娘・真魚のの協力もあり、懸想文で依頼人の思いを伝え問題を解決していく時代小説。
    依頼を受けるときに、離れの床の間に飾られる花の花言葉とリンクするようなお話で心に沁みます。
    お琴さんの活躍はまだまだ続きそう。続編を期待します。

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    2024年12月23日