花房観音のレビュー一覧
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ネタバレもし、あの夜、あのホテルに泊まらなければーーの冒頭からはじまる短編六つ。
ここでいう、「あのホテル」はラブホテルのことを指している。本編において舞台となるのは、京都の繁華街にあるとあるラブホテル。セックスという、おおっぴらには外でできない行為を、ほかにする場所がないという事情、つまり不倫、援交、未成年といった、さまざまな理由を抱えた人が、それでもセックスをするために利用する場所である。
そこで、ある夜、女が死んでいた。その事情聴取のため、ホテル利用者は全員、翌日夕方までホテルからでられない。
みんな、後ろめたい理由があって、ラブホテルを利用している。配偶者に嘘をついているもの、親に嘘を -
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『やすらいまつり』の続編とも言うべき、京都を舞台にした六編収録の官能短編集。花房観音の小説は単なる官能小説に留まらず、時に文学の香りが漂い、女性の持つ情念、本質、独特の思考を強く映し出した小説に仕立て上げている。女性が読めば共感し、男性が読めば恐怖を感じるだろう、そんな短編集。
『かにかくまつり』。笠野秀人が京都の学生時代に男女の仲になった色街の女性、雪子…笠野は卒業間際に雪子に捨てられるが、二十年後に京都で雪子と再開する。色街に生きる女の強さと、いつまでも夢を見続けている男の滑稽さ…
『七夕まつり』。笹原は独身時代に知り合い、別れた彩音と結婚しても、なお、年に一度の逢瀬を重ねる。彩音との -
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京都のまつりを舞台に描かれた官能短編六編を収録した作品。六編のいずれも、燃え上がるような男女の性愛が描かれているのだが、いずれの女性も怖く、身勝手にも映る。それだけ、女性の情念が強いということなのだろう。一瞬の快楽のために我を忘れる男が愚かに見えるとともに女性とは強かであり、快楽の中でも強い想いを胸に秘めている生き物なのかも知れない。
花房観音の作品は官能小説というジャンルに分類されるのかも知れないが、単なる官能小説で終わらずに男女の深い部分を描かれているのが面白い。
『梅まつり』『ひいなまつり』『祇園まつり』『地蔵まつり』『火まつり』『やすらいまつり』を収録。表題作の『やすらいまつり』が -
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51歳で心不全を起こし、救急搬送された筆者のエッセイ。死が目の前に迫ってくる経験を読むのは初めてだ。死後のことはわからないけれど、こうして筆者の死生観や生き方に触れられて良かった。
この作品を読んで気づいたのは、私も作者同様、気づいていないけどセルフネグレクトぎみだということ。まだ30代で更年期障害や生活習慣病とは縁がないかなと思っていたが、ちょっとした不調を放置することは割もあるので気をつけなければいけないなと思った。
いつまでも生きていたいと思う反面、あまり長生きしても大変だとも思う。生きるって面倒くさいことが多くて難しい。それでも、死を目前にした筆者が言うように、生きていることは素晴 -
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家や土地にまつわるホラーアンソロジー。
事故物件だけでなく住民そのものが怖いヒトコワものまで豪華11話収録。
糸柳寿昭氏『やなぎっ記』軽い雰囲気の日記だと思っていたら最後のメールで鳥肌立っちゃうやつ。
澤村伊智氏『笛を吹く家』この方の描く歪んだ家族っていつも気味が悪いし悲惨…本当にいそうなのがまた怖い。
芦花公園氏『終の棲家』宗教が関わるホラーではやっぱりこの方。得体が知れない信仰の気持ち悪さと逃げられない絶望感。
平山夢明氏『ろろるいの家』ホラー描写が本書で一番怖かったかもしれない。不気味な現象に徐々に侵食されていく感じがゾクゾクした。 -
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産寧坂(さんねいざか)は京都市にある坂。三年坂(さんねんざか)とも呼ばれる。 東山の観光地として有名である。狭義には音羽山清水寺の参道である清水坂から北へ石段で降りる坂道をいうが、公式には北に二年坂までの緩い起伏の石畳の道も含む。
わが恋は松を時雨の染めかねて真葛が原に風騒ぐなり――。
「ほんまやで、一か月ほど前や。転んで足をくじいたって、片足引きずりながら帰ってきたわ。三年以内に私は死ぬんやって、自分で言うとった。そやから、早かったんやな」
わが恋は松を時雨の染めかねて真葛が原に風騒ぐなり――。
「せんせぇ、三年坂はな、産寧坂とも言うんやで」
中学校教師の樋口は、ある女生徒の母の死 -
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物件ホラーが好きなのと芦花公園先生の短編が入っているので手に取った。他の参加メンツも豪華すぎる、、、バラエティに富んだ様々な物件の嫌な話が入っていて満足度が高い。
福澤先生の話読んだことある、、、?って思ったけど「怪を訊く日々」のエピソードと若干重複してた。「忌み地」のシリーズも好きなので糸柳さんの日記っぽいやつも好き。晩御飯の献立書いてあるのかわいい。
郷内心瞳は拝み屋怪談しか読んだことなかったのでカニバリズム百合姉妹ホラーみたいなのお出しされて新鮮だった。よかった。
芦花公園先生のやつもかなり邪悪だったけどそれに続く最後の平山夢明先生のやつがあまりにも凶悪すぎて最高だった。何この流れ。助か -
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ネタバレ『女が女を悪く言うと、男たちはすぐに「嫉妬」と言うが、そんな単純な話じゃないのだ』…自覚したくはないけれど、どうしても抱かずにはいられない感情をまざまざと見せつけられた作品でした。
木嶋佳苗の事件をモチーフにした話とは知らずに読み始め、比較しまくりドロドロするのかと思いきや…ホラーでした。
女性たちの、「モテ」まで行かずとも、周囲の人間関係に波風立てないくらいな最適レベルの生き方すら否定されてしまう春海さくらの存在は脅威です。
あんな存在もあって、しかもかなり成功している…というのを視界の片隅に置いたり置かなかったりして、自分は自分のやり方を信じて貫くしかない。ないけれど。
それに疲れてしま -
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ネタバレ51歳の作者が、体調不良を更年期のせいだと思いほぼ放置していたため(着圧ソックス、更年期障害の薬、血圧の下がるお茶と対策していたが)心不全で倒れ、緊急入院やICUを経て退院。そしてその後の生活を語る。まさに『シニカケ日記』
倒れる前の生活が、加齢に対する、生きることに対する心持ちが、他人事とは思えない。
そして、入院中の食事についてやシャワーへの欲求、必要な物、同室の人の声などが赤裸々に書かれていて、ちょっと笑ってしまったり感心したりしたが、何より、死を身近に感じてしまった人の心の揺れが、実際に体験してしまったからこそ生まれる生々しさを感じた。
同年代としては、気づかされることが多かった。中
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