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Posted by ブクログ
2020年、9冊目は、今年初の花房観音。文庫化作。
阪神淡路大震災。高校三年の笑子は神戸で震災にあう。その時、不在の母は血のつながらない親戚、兵吾と一緒だった。母は家を去り、父は平静を装い、兄は引きこもりのまま、いたたまれぬ笑子は、進学を期に京都へ移る。そして就職、結婚。今度は結婚を期に、東京へと移り住み、そこで兵吾と再会する。兵吾と男女の仲になった笑子。次第にその関係に溺れていく。そんな彼女を東日本大震災が襲う。二つの震災を生きた、約20年の物語。
「これが官能小説か?」と問われたら、「微妙」としか答えよぅがない。性交場面、性描写は少なくない。しかし、そこで男の欲情に火が点くこともほぼない。つまり、官能として機能してない印象。また、良くも悪くも、初期の女史の作品に見られた、性表現の濃厚コッテリ感も薄め。
一方で、中身は読ませる力がある。人は他人の弱みや欠点、欠損を見つけ、マウントをとりたがるもの。そして、「自分だけは……」と思うもの。笑子も類に違わず。そこへ、浮き世離れした面を持つ、人たらし的な兵吾が絡んでくる。そんな「実なし花」と「根なし草」がストーリーを紡ぐ。
ベクトルはかなり異なれど、最近の女史の短編で見られた、「一般的な価値観に一石を投じる」というスタンスはブレていない気がする。
★★★★☆評価は、もちろんそれまでのお膳立てもあるが、最終、第六章の伏線回収と展開で決まり。
大人の恋愛小説
決してそうとは語られないけど、これは「恋」だと思う。
ゆっくりと長い時間をかけて、築きあげたものが全て一瞬で掌からこぼれ落ちてしまう。
時間を置いて、また読み見返したくなる一冊。
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