あらすじ
笑子が神戸で被災した日、母親は若い親戚の
男・兵吾と寝ていた。男に狂った母、知らぬ顔
の父、引きこもりの兄、職を失った自分――。
悲惨な現実から逃げるように、笑子は結婚し
東京へ。しかし子供ができず、家庭にも確か
な居場所を作れない。そんな中、兵吾と再会。
日常に背を向けて情交に溺れてゆく二人を
3・11の激震が襲う。生き場なき女の物語。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
更年期は男性ホルモンが増えるらしいから、性欲が高まるんじゃないかと勝手に思ってる。この世代の女性の不倫願望の原因ではないかと。理性では抑えられない、それを愛か恋かと錯覚する。自説。
Posted by ブクログ
花房観音『情人』幻冬舎文庫。
本当の愛を知らぬままに、肉体的な性愛の泥沼にはまっていく女性を描いた純文学風官能小説。
阪神淡路大震災の日に母親が親戚の若い男・兵吾と過ごしていたことを知った娘の姫野笑子は少しずつ性に目覚めていく。結婚するものの本当の愛を知らぬままに、性愛の泥沼にどっぷりと漬かっていく笑子……どこまでも堕ちていく笑子……
肉体的な快楽を愛と間違え、男に抱かれている時だけ安らぎを覚える惨めな女。余りにも残酷な結末……
本体価格770円
★★★★★
Posted by ブクログ
神戸で震災に遭った日、母親は若い親戚の男・兵吾と寝ていた。体裁だけの家族となり、家族から逃げるように大学入学と同時に京都へ、そして結婚し東京へと。慣れない東京暮らしの上、夫は仕事が忙しく女もいる様子。そんな時に兵吾に再会し、孤独から逃れるかのように情交に溺れていく。笑子は自分勝手で、人には弱みを見せないが本当は弱い所など痛いほどわかるが、最後はそうなるのも自業自得だよね。でも、夫だって…とも思わずにはいられない。
Posted by ブクログ
愛ってすごいなと単純に思った
人間から理性を奪っていくしどこまでも人間を壊していく。本当に「恋に溺れる」って言葉が正解だなと思う。
娘が母親の元不倫相手とも関係を持ってしまうお話で色々複雑だったが面白かった
Posted by ブクログ
2つの地震の出来事を中心に、ダメ男と、それに溺れる一般に男好きと呼ばれる女性と描いた物語。
一生会わない。2度と顔も見たくないから、と言う文章が好きだった。
性行為のことが書いてあるのに、そこまでいやらしくなく、かといってあっさりし過ぎておらず良かった。
おそらく主人公の女性が、1番前に進めていなかったんだとおもった。
Posted by ブクログ
2020年、9冊目は、今年初の花房観音。文庫化作。
阪神淡路大震災。高校三年の笑子は神戸で震災にあう。その時、不在の母は血のつながらない親戚、兵吾と一緒だった。母は家を去り、父は平静を装い、兄は引きこもりのまま、いたたまれぬ笑子は、進学を期に京都へ移る。そして就職、結婚。今度は結婚を期に、東京へと移り住み、そこで兵吾と再会する。兵吾と男女の仲になった笑子。次第にその関係に溺れていく。そんな彼女を東日本大震災が襲う。二つの震災を生きた、約20年の物語。
「これが官能小説か?」と問われたら、「微妙」としか答えよぅがない。性交場面、性描写は少なくない。しかし、そこで男の欲情に火が点くこともほぼない。つまり、官能として機能してない印象。また、良くも悪くも、初期の女史の作品に見られた、性表現の濃厚コッテリ感も薄め。
一方で、中身は読ませる力がある。人は他人の弱みや欠点、欠損を見つけ、マウントをとりたがるもの。そして、「自分だけは……」と思うもの。笑子も類に違わず。そこへ、浮き世離れした面を持つ、人たらし的な兵吾が絡んでくる。そんな「実なし花」と「根なし草」がストーリーを紡ぐ。
ベクトルはかなり異なれど、最近の女史の短編で見られた、「一般的な価値観に一石を投じる」というスタンスはブレていない気がする。
★★★★☆評価は、もちろんそれまでのお膳立てもあるが、最終、第六章の伏線回収と展開で決まり。
Posted by ブクログ
これは良かった。
いっそ清々しいほどのダメ男と、その男にハマる女たち。
ダメ男と関係を持つ時の女側の心情が生々しい。
こういうタイプの男と付き合う時は、
『これは恋でも愛でもない』と予防線を張っておかなくちゃ、ひたすら自分が傷付くだけなんだよな。
身近に兵吾みたいな人がいたら、私はズブズブと沈んでしまう女だと思う。
大人の恋愛小説
決してそうとは語られないけど、これは「恋」だと思う。
ゆっくりと長い時間をかけて、築きあげたものが全て一瞬で掌からこぼれ落ちてしまう。
時間を置いて、また読み見返したくなる一冊。