あらすじ
海を臨む片田舎。京子は映画制作という職を失い、その憎しみの故郷に帰ってきた。
シングルマザー、主婦、サブカル女etc.……町に暮らす女たちは、様々な男と交わり、田舎の人間関係は地獄の様相を見せる。
京子は這い出ることができるのか?
性と生とめぐる壮大な人間ドラマを描いた傑作長編。
<解説>東良美季
感情タグBEST3
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花房観音『わたつみ』コスミック文庫。
海辺の田舎街で繰り広げられる男女の爛れた性関係と人間模様を背景に一度は夢を諦めた女性が再び夢を求めて立ち上がる再生の物語。下衆な男に騙されて、映画製作の夢破れ、東京から故郷の海辺の街に戻って来た田嶋京子が目にする自らの性的な欲望を持て余す様々な女性たち。
映画製作の夢破れて東京から故郷の海辺の街に戻って来た田嶋京子は、かまぼこ工場で働く。そこには、二人の子を持つシングルマザーの青山美津香、夫とナチュラル指向のカフェを営む甲斐くるみ、30歳を過ぎて処女の沼田千里、職場の年下男性と不倫関係を続ける松下真知子、出会い系サイトで男性を漁る大久保幸子と言った様々な女性たちがどろどろとした男女関係の中で蠢いていた。
本体価格680円
★★★★★
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「東京」と「片田舎」を対比し、その価値観のコントラストが軸にストーリーが展開されている。
ただ令和のボーダーレスの中で「生」と「性」が、そのコントラストにどのように絡んでくるのか、ワクワクしながら読み進めた。
Posted by ブクログ
2022年、4冊目は、積ん読消化の花房観音。そして、今年初の長編作。
田嶋京子、33歳。映画制作の夢を失い、都堕ち。実家のある日本海沿いの小さな町に戻って来た。彼女は町の海産物加工工場、「株式会社わたつみ」でアルバイトとして働き始める。そこにも、彼女と同じく罪を抱え、秘密を持つ者達が働いていた。
第一~第四章までは、前半が京子視点。それ以降が工場で働く女の視点で描かれている。そして、第五、六、終章で、それぞれが絡みあいながら展開し、結末を迎える。軸となるのは、東京を離れ、忌むべき町へ戻って来た理由、京子の抱えた罪と秘密である。
花房観音女史らしい作品で、好みは別にして、女史の作品の中では、読後感も晴れやかな方。女史作品の初心者にもおススめ。
Posted by ブクログ
東京で1本だけ監督として映画を撮ったが男性関係に挫折して田舎に戻った主人公。かまぼこ工場に勤めるのだがそこの同僚たちの性事情が凄まじい。主人公、幸せになれるのだろうかと心配になる最後だった。しかし男性作家はどうも人物設定に自分の憧れとか理想像を乗せて主人公に都合の良い女性を登場させがちだが、本書を読むと女性にしか書けない女性像がこれでもかと展開されるなあと。男性像もまた醜さがよく出ている。この本が普通の人間を描いているのであれば、もしかして自分の周りの人たちにもこれだけの、自分の知り得ない面があるのかもと思えてきて、正直こういう本の方がいかなるホラーやミステリより怖いです。