長野まゆみのレビュー一覧
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中学生の男の子が主人公。
彼らの身近に”死”を配することで、ひたむきに生きる価値を浮き立たせる短篇集。
物語にいかにシンクロできるかが満足度を左右しそう。
『鳩の栖』
内気で愚鈍な主人公が、転校を繰り返す中で初めて経験する楽しい学校生活。
それをもたらしてくれた利発で優しい同級生が不治の病に冒されていることを知る。
『夏緑蔭』
自分の出生の秘密を知らされた主人公が、古い記憶を思い出しながら事実を受け止めていく。
『栗樹』
血縁上は兄だが子供のいない伯父の養子となった従兄と主人公の交流。物語の中身がないなと思いつつ読んでいたらラストが急転直下。
『紺碧』
両親が亡く、同居していた姉が死 -
Posted by ブクログ
テレビジョンシティのような、近未来SFと、古代ファンタジーが混ざったような小説。
千年前に古代都市で生きていた人が、近未来の時代に転生して、徐々につながりがわかっていくが、どこと誰が結びついているのか、しっかり読まないと混乱する。
名前がアルファベットなので、途中で誰が誰かわからなくなったり、近未来のシステムがなかなか理解できなかったりと読むのが大変だったけど、基本は長野ワールド。
つまり、少年同士のシーンが出て来るけど、今作はあからさまにやってるシーンがたくさん出てくる。
普通にsexって単語出てきますし。
ですが、それをまた違う言葉で言い換えたりしているので、あからさまなシーンなはずなのに -
Posted by ブクログ
東京の西側郊外を流れる野川を中心とした物語。関東の地図を開いてみてください、東京と神奈川の境を西の奥多摩から東京湾に向けて、東西に多摩川が流れています。野川は西東京を流れる多摩川の支流。
多摩川の周辺にはそれとは気づきづらいのですが、何段かの河岸段丘が残ります。東京側の野川の向こうには”はけ”という地形が残る段丘が広がり、周辺には武蔵野台地に浸み込んだ湧水が野川に流れ込んでいきます。
物語の随所に自転車で走り回った地域が出てきますので、大変馴染みを覚えます。調布飛行場、東京天文台、東京外語大学、まだ緑の多く残る地域です。私のホームタウンは多摩川を渡った逆側の段丘、多摩丘陵です。
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Posted by ブクログ
独創的な世界観のある長野まゆみの原点。話の舞台は、現実世界のようなのだけど、著者の幻想的な表現によって、一種のパラレルワールドのようにも感じられる。その世界の住人アリスと蜜蜂が、夜の学校で別の世界に紛れ込んでしまう。二重のパラレルワールドが展開されているようで、とても不思議な作品。単純なファンタジーではなく心にチクッと刺さるものも、大人でも存分に楽しめる童話。
中学の頃に出会った本。当時は単行本だったが今回文庫を読み直し。「天体議会」もそうだけど、この作家の初期の作品を何冊か読んでいると宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」(登場人物のほとんどが猫の姿で描かれてたアニメ版)の世界をいつも想像してしまう -
Posted by ブクログ
ネタバレ彼女作の「ぼくはこうして大人になる」と少し近かった。清浄な淡白な文章と設定、ドロドロで欲望と希求溢れる内容。長野まゆみの、錯綜した性や女性男性の垣根を分からなくさせる得意の内容だった。読んでいて誰が何の性別でどんな印象でどんな人物なのかわからなくなる。いかに自分の人物評が性別に依るかが分かって嫌になった。ジェンダーの問題を主眼に置きつつも主人公、温の性別や染色体や病気を探るものではなくてそれは唯の手がかりで自分は何者なのか、どういう生活をしてきたか誰なのか、社会と相対的に存在する自分はどこにいるのかを探っていった。
自分が何者なのかということを探ることで自分の世界、自分にとっての愛おしいものを