貫井徳郎のレビュー一覧
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今は誰が、誰のことについて、誰に向かって話しているのか? ——そんな疑問が常に頭から離れない読書だった。
冒頭には3歳の女の子が衰弱死し、育児抛棄の疑いで母親が逮捕されたという新聞記事。しかし、次のページからは田向一家惨殺事件についてライターらしき相手に話す知人たちのインタヴュー。そして、各章の最後には兄に話し続ける妹の独白。——読み手を困惑させる構成だ。結末まで読み、もやもやしつつ冒頭に戻って、仕掛け(?)に気付いた。
人は見たいものを見、聞きたいことを聞き、話したいことを話す。
人は全てを漏れ無く見、聞き、話すことはできない。
——他人についても、自分についても。
誰もが羨むような幸 -
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5人の幼なじみが久しぶりに別荘に集まった夜、殺人事件が起こる。犯人の動機を残った3人の人物の証言から探っていくミステリです。
3人の証言のみで話が進んでいくので、5人の関係性が読者にはとても分かりづらいのです。しかし、その分かりづらさこそが物語の肝で、動機が見当もつかないからこそ3人の話に引き込まれました。
ただ、犯人の動機が弱いかなぁと思ってしまいました。え?それだけ??みたいな…。
また、幼なじみの男女5人は友情で繋がっていると思われていたが実は恋情が絡まりあった不等辺五角関係だった…というオチが意外性がなさすぎて少しがっかりです。
3人の独白は面白かったので、最後もう少し驚かせてほし -
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『藪の中』は、意外と見通しのいい平地でした
幼馴染の男女5人組。大人になっても変わらないはずだった彼らの関係は、ある日、梨愛が雛乃を殺害するという最悪の形で崩壊する。
物語は、残されたメンバーが弁護士に語りかける独白形式で進行。最初は完璧な正五角形に見えた絆が、それぞれの視点を通じることで徐々に歪んでいく様子には、「おっ、これは芥川龍之介の『藪の中』的な展開か!?」と期待が膨らみます。
ところが、最終的には梨愛本人の独白で終了。「え、そんな理由……?」という、まさに決まり手「肩すかし」な結末でした。まあ、元祖『藪の中』もモヤモヤしたまま藪の中で終わるものですし、変に「藪から棒」な新事 -
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【短評】
小学校教諭・山浦美津子(やまうらみつこ)が殺害された。凶器はアンティーク時計で、体内からは睡眠薬入りのチョコレートが検出された。ホワイトデーにチョコレートを贈ったという同僚の男性教諭に嫌疑が向くなか、関係者各位は推理を重ねていく。
それはプリズムのように、視る角度に拠って多彩な色合いを見せるのである。
名著「慟哭」で名を馳せた貫井徳郎に挑戦だ。多分十年振り位になるか。
流石は歴戦のミステリィ作家。綿密な構成、明瞭な論理、主題・副題の妙味など堅牢な作りに素直に感心した。本作は、俗に言う多重解決ミステリィであり、語り手を変えながら様々な推理を展開していくのだが、「論理」と「接続」が見事 -
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『烙印』の改作だということですが、未読でしたので、その比較はできません。失踪した妻を捜すうちにだんだんと知らなかった妻の姿にいきあたる、というのは、どこかで聞いたような筋ではある。ということは、妻の失踪の理由の意外性というのに物語はかかっているわけですが……。この主人公、なんというか、どうしてこんなに世間知らずなんです?どうも納得しがたい人物なのだよね。面白いキャラクタではあるのだが、ある意味無理がないかと思う次第。しかも、行動がキャラクタを裏切っているというか……。それとも、命より大事にしていた妻を失った男ってのは、こんなふうに無茶な行動をするものなんでしょうか?うーむ、話そのものは面白いの
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貫井氏の短編集とはめずらしいと思って本の最後を見たら自註解説というのがあった。なるほど、初めての短編集ということらしい。人生のある側面を切り取ってみせる著者のたしかな視点にはいつも関心するところなので、短編というスタイルでそれをどのようにさばいているのか興味を持って読んだ。
「崩れる」時に狂気のきっかけはほんのささいなこと。日常のささいな歪みの積み重ねが狂気を生む。しかし、それは、別の世界への扉になっているかもしれないではないか?
「追われる」この話に出てくる男をストーカーのようなものにしてしまったのは何だろう?中途半端なやさしさなどというものは本来は必要ないものだ。しかし、ビジネスライクに徹