河野裕のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
〈それは、アズ・テイルズのような未知ではなかった。ごく当たり前の物理現象に過ぎなかった。地球は丸く、落日とは地球の陰に太陽が隠れる現象だ。だが観測者の位置が変われば――たとえば急速に高度を上げれば、地球の陰に隠れた太陽がまたみえる。原理としては、塀の向こうを跳びあがって覗きみるのと変わらない。〉
17世紀後半のイングランド、ケンブリッジ大学でアイザック・ニュートンに師事した数学を愛する若き学者のオスカー・ウェルズは、現王の反乱軍を鎮圧するために赴いた戦場にて、『怪物』に命を救われる。二者はやがて友情を深めていくが、オスカーは自身の知られざる秘密を知るとともに、時代の激流に飲み込まれていく。ということで本書は、フェルト帽を被った背の高い男の姿をした『怪物』とこの世界のルールを解き明かしたい青年、『友情』が、『科学』と『未知』の接地点となる美しい歴史ファンタジー(あるいはSF的でもあります)になっています。
ネタバレになるので明確な言及は控えますが、物語の中盤、オスカーは様々な大切なものを失ってしまうことになり、大きな転換点を迎え、新たな一歩を踏み出すことになるのですが、そこから、さらに強く魅力が増す展開になっています。ニュートンやリサ、義父であるトーキー卿など脇を固める人物たちも印象的で、結末はかなりドラマティック。未知との邂逅、心を通わせた果てに見る光景は、哀しくも、どこまでも美しい余韻が残ります。『泣ける』ことが物語の評価の必要条件とは思わないのですが、こういうの読むと、やっぱりどうしても私は目頭が熱くなるし、おそらくそうなるひとは多いと思います。