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Posted by ブクログ
小学生のころ、自分の考えていることが言葉にできなくて、無性に腹が立って悔しくて泣いた涙を、大人が違う意味に捉えて更に苦しくなる。
そんな経験を思い出した。
河野裕の小説は、小学生だったり、中学生高校生、大学生だった時の、かつて経験したもどかしい感情が言語化されていて、ふと懐かしくて心に痛い感情を思い出させる。
小学校から帰ってきた息子が、クラスになじめないのか、時折頭痛がするといって早退すると、自分も会社を早退せざるを得なくなる。
「ジャバウォックが絵の具を一本、取っていったんだ。」
「その絵の具は、もともと12本入りだったでしょう」
子どもは思い込んだ自分の作り上げた世界と現実との違いのどちらが正しいのかの判断がまだできないのだ。
世の中にある現象についての語彙が足りないから、それを何なのかの説明がまだできない。
いつか私にも息子の言っていることが一般的な用語になって理解できる日が来るはずだ。
「今日もジャバウォックが絵の具を取って行っちゃった」
「もともと、11本入りの絵の具セットだったでしょう」
工務店の営業として働く三好愛には、息子の冬明がいる。
冬明の話し相手になってくれる牧野楓は、もともとは再婚相手の連れ子だった。
しかし五年前、その再婚相手が自殺したことから、それぞれ名字が戻ることになった。
子どもにとって息苦しいこの世界を、大人が分ってくれないことは分かっている。
その苦しさを忘れるために、ジャバウォックが世界からその概念を消し去ってしまえば、世界のだれもが忘れてしまう。
ジャバウォックに悩む冬明は真面目に聞いてくれる楓に相談する。
ちょうどそのころ、冬明はアリスに出会う。
彼女はジャバウォックに名前を奪われて、この世界と捨てられたモノの世界を行き来しているという。
「可能性を失い続けることこそが時間の本質といってよい」
成長とは何だろう。
自分ができる領域が広がる半面、本当はできた可能性を切り捨てるという両面を、成長という言葉は含有しているのではないか。
Posted by ブクログ
シングルマザーの愛さんと、自殺した旦那の連れ子で大学生の楓、「世界の一部を盗む」想像上の怪物・ジャバウォックを怖れ、学校に行きたがらない冬明くん、の家族のつながりのお話。
リアルとファンタジーが交差するような物語。
ジャバウォックが本当にいるという流れは、下手するとシラケてしまうのに、登場人物の心の動きが繊細に表現されていて、面白く読み進められた。
ジャバウォックよりも、現実の人間の行動の方が恐ろしく描かれていたのが、バランスとれていたのかも。
冬明くんの担任の先生、楓くんの実母、愛さんの会社の同僚、絶対関わりたくないわぁ。特に同僚の園田さん。最低最悪のタイプだけど、結構いるかもしれないと思えてしまうのが、また恐ろしい。
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