あらすじ
夫を亡くし、小学生の息子・冬明を一人で育てるシングルマザーの愛。父親の死後、義母の愛と弟の冬明を見守りながらも、家族という関係に違和感を持つ大学生の楓。 「世界の一部を盗む」想像上の怪物・ジャバウォックを怖れ、学校に行きたがらない冬明に二人は寄り添おうとするが、「紫色の絵具がなくなったんだ。ジャバウォックが盗っちゃったんだよ」と冬明が告げた日から、現実が変容していく。 ジャバウォックの真実を知ったとき、あなたもきっと、その怪物を探し始める――。 家族とは、常識とは何かを問い直す、壮大でまったく新しい傑作小説。
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とてもよかった。ジャバウォック。とてつもなく邪悪なものを許せない自分をあきらめ切り捨てるのではなく、嫌いだと認めて生きていく。楓も冬明くんも愛さんもみんな素敵だった。冬秋くんの学校の担任の頭の固さにはむかついた。こういう教師は実際にいるんだろうな…胸が痛い。
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ファンタジー要素もあるけれどファンタジーかと聞かれたらファンタジーではないと思う。家族愛と名前の物語だった。血のつながりを呪いのように感じているのはとてもわかる。家族という容れ物を薄っぺらく思いながらも縋る気持ちもわかる。河野先生のなにかを失う物語は切なく悲しいけどうつくしい。「正しさ」というものを信じられる。
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バールのようなもの、悪のインパクトがあるシーンは、とても表現力が豊かです。恨みに対する態度は、うまく処理されている。 私はこの作品の行間にある多くのものが好きでした。親が子供に与える期待を気にする人には、かなりお勧めの一冊です。
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「刷り込まれた常識」が「正義」に化けるとき、世界から何かが喪失する
奪われた大切なものを取り戻す兄弟を描くローファンタジー
愛して壊したくないが故に、お互い慎重なスタンスを保とうとする彼らの純粋さが胸を打つ良作品です
果たして本当にファンタジーと言い切れるのか?
自分もロストして全く解らない側の人間かも知れない
怪物(ジャバウォック)の定義が長い
それ以外は推しです
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氏らしい哲学性をまとった作品だった。最初はあまり氏の作品ということを意識せずに読んでたんだけど、途中から徐々に作品のボルテージがあがっていく感じに、あぁそうだったそうだったと思い出した。
テンションが上がるのとはある意味真逆で、世界は深いところに沈んでいくという印象。氏の作品は登場人物たちも読者も常に自分と向き合うことを求められる。今回の作品に限った話ではないけれど、自分という存在は、その名前を通して、そして他者を通して存在しうるということなんだろうかなぁ。
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小学生のころ、自分の考えていることが言葉にできなくて、無性に腹が立って悔しくて泣いた涙を、大人が違う意味に捉えて更に苦しくなる。
そんな経験を思い出した。
河野裕の小説は、小学生だったり、中学生高校生、大学生だった時の、かつて経験したもどかしい感情が言語化されていて、ふと懐かしくて心に痛い感情を思い出させる。
小学校から帰ってきた息子が、クラスになじめないのか、時折頭痛がするといって早退すると、自分も会社を早退せざるを得なくなる。
「ジャバウォックが絵の具を一本、取っていったんだ。」
「その絵の具は、もともと12本入りだったでしょう」
子どもは思い込んだ自分の作り上げた世界と現実との違いのどちらが正しいのかの判断がまだできないのだ。
世の中にある現象についての語彙が足りないから、それを何なのかの説明がまだできない。
いつか私にも息子の言っていることが一般的な用語になって理解できる日が来るはずだ。
「今日もジャバウォックが絵の具を取って行っちゃった」
「もともと、11本入りの絵の具セットだったでしょう」
工務店の営業として働く三好愛には、息子の冬明がいる。
冬明の話し相手になってくれる牧野楓は、もともとは再婚相手の連れ子だった。
しかし五年前、その再婚相手が自殺したことから、それぞれ名字が戻ることになった。
子どもにとって息苦しいこの世界を、大人が分ってくれないことは分かっている。
その苦しさを忘れるために、ジャバウォックが世界からその概念を消し去ってしまえば、世界のだれもが忘れてしまう。
ジャバウォックに悩む冬明は真面目に聞いてくれる楓に相談する。
ちょうどそのころ、冬明はアリスに出会う。
彼女はジャバウォックに名前を奪われて、この世界と捨てられたモノの世界を行き来しているという。
「可能性を失い続けることこそが時間の本質といってよい」
成長とは何だろう。
自分ができる領域が広がる半面、本当はできた可能性を切り捨てるという両面を、成長という言葉は含有しているのではないか。
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シングルマザーの愛さんと、自殺した旦那の連れ子で大学生の楓、「世界の一部を盗む」想像上の怪物・ジャバウォックを怖れ、学校に行きたがらない冬明くん、の家族のつながりのお話。
リアルとファンタジーが交差するような物語。
ジャバウォックが本当にいるという流れは、下手するとシラケてしまうのに、登場人物の心の動きが繊細に表現されていて、面白く読み進められた。
ジャバウォックよりも、現実の人間の行動の方が恐ろしく描かれていたのが、バランスとれていたのかも。
冬明くんの担任の先生、楓くんの実母、愛さんの会社の同僚、絶対関わりたくないわぁ。特に同僚の園田さん。最低最悪のタイプだけど、結構いるかもしれないと思えてしまうのが、また恐ろしい。
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この本のファンタジー要素の部分で、少し現実味が薄れ、没入はしにくいと思った。
でも、自分のアリスのイメージである不思議な感覚を、この本でも表現しているのだとすると、それもありなのかなぁと思う。
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とあるキッカケでシングルファザーと結婚し、冬明と言う息子を授かり、兄になる連れ子の楓と幸せに暮らしていた愛。所が、夫の設計した家が原因で住んでいた住人が自殺し、SNSで実名で主人が晒され、主人まで自殺してシングルマザーとなってしまう。
息子の冬明は感受性が人より豊かで想像上の「ジャバウォック」なる怪物を恐れ、学校へ行きたがらなくなる。愛と楓は冬明に寄り添おうとするが、ジャバウォックが紫色の絵の具を盗んだと言い始めてから現実が変容していき、空想のジャバウォックがどんどん現実の人物に絡み始め、愛の周りを変えていき、ついには冬明自身も姿を消してしまう…
楓の父を陥れたSNSの正体が意外でサイコパスな感じで凄く後味悪かったです。
亡くなった父と子供の名前についての答えが素敵で、意味がないのが親心とは目から鱗でした。だからこそ、楓は受け入れられたのがせめてもの救いだった気がします。
ラスト、やっと本当の意味で親子・兄弟になれた3人のこれからが穏やかになれます様に。
Posted by ブクログ
内容はともかく、ここまで空想の世界を広げられる、その創造力にびっくり。ジャバウォック、確かにいる。誰もが、簡単に自分だけの正義・常識を振りかざし、手にしたSMSという武器で世界を壊している。
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河野裕さんの新刊!
名前がある事で視点が定まる
でも、視点が定まりはするけどその名前がついてるものの全てを表現してる訳じゃ無い
だから横顔もある
スピッツの歌詞の話すごい好き
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久しぶりの河野裕。後半までは内容の意味がよく分からず、洋書を機械翻訳で読んでいるかのような気分。300ページ目でやっと点が線に繋がるようになった。最後まで読み、ほうと。詩的な文とこの独特な雰囲気はこの作者のいつもの書き方であるが、10歳が少し賢過ぎるとも思う。
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家族とはなにか。血の繋がりとはなにか。名前の持つ意味。正義とは?常識とは?
高揚した議論の賜。ちょっと哲学的な。
パラレルワールド的な。
ジャバウォック、記憶に残るな。
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ジャバウォックの立ち位置がよくわからなかった。良いものなのか悪いものなのか、どっちでもないものなのか
ステップファミリーの話としては興味深いものだったけど、もうちょっと話を整理すてくれると読むほうは助かる気がする
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ものすごくつらいことがあって、自分を守るために何かしらの方法を生みだす的な話だと思うのだけれども、結果として裁かれるべき奴が裁かれていないのは納得いかない。
ちなみに国語科の豆知識として、「辛」は常用漢字としての読みは「から・い」しかないのである。「つら・い」ではないのである。からいモノが好きな人は多いから、ええ名前ちゃうか。
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親目線で読むと、本当にグッとくる。子への接し方、考え方を反省させられた。
「意味がないことに意味がある」この言葉、素敵なだな。
集団が正義になるっていうのも頷けた。SNSとかで無責任・無意識に意見を言い合って、同じような事をしたりされたりしている人達がたくさんいる時代。その事について考えさせられるお話だった。
奥が深い。
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なんとなく青春小説だと思っていたら、『鏡の国のアリス』に登場するジャバウォックに名前や絵の具を奪われている世界……というファンタジーの様相。紫の絵の具がなくなって「12色」が次に「11色」になったところで「おや」となる。期待していたものとは違ったがそれなりに楽しく読んだ。血のつながらない家族および名前に関する物語。
Posted by ブクログ
読み始めのと途中からの雰囲気がガラッと変わります。読み進めるにつれ、哲学的でファンタジー要素有りの、どこか純文学風だったので、あやうく脱落しそうになりました。登場人物の感情や思想の表現が、え?つまりどいういこと??と、ついていけない部分があり、それが数ページ続くとイライラしました。
村上春樹のような小説が好きな人なら好きかもしれません。
Posted by ブクログ
不思議なお話だけれど、現実的でもある。
文体は好きだけれど、ちょっと中たるみした部分もあった。
パラレルワールドに入り込んだみたいでちょっとこんがらがった。。。
大沢夫妻と有住梓がいい仕事してる
Posted by ブクログ
愛は、離婚して一人息子の楓と暮らす牧野英哉と結婚し、冬明を授かる。英哉が死に、10歳になった冬明は不登校気味で、愛は困惑し疲弊していた。二人を見守る楓は、冬明の「ジャバウォック」の話を聞き、調べ始める。
著者らしく、世界の改変につながる話。そのきっかけをもたらしたある人物の悪意が心底怖い。
Posted by ブクログ
ファンタジーだった。
急に無くなってしまうものがある。
ジャバウォックが盗むから。
ジャバウォックって何だろう?と楓(冬明の義理の兄)が探る。
探り方がとても優しい。
境遇の複雑な家族。
SNSの悪意に追い詰められ自殺した父親。
ジャバウォックは、昂揚した議論のたまもの。
この世界に実在する怪物を言い表している。SNSで、大勢の人たちが昂揚した議論を交わし、そして誰かを攻撃する。巨大だけれど実態がない。怖しい怪物。
アリスが出てきてますますファンタジー色が強くなりびっくりした。
ジャバウォックは、鏡の国のアリスに出てくる怪物。
千守がとても良い友人で良かった。
冬明の話かと思ったが、この本は楓の話だった。
産みの母親のことは、本当にショックすぎて辛い。
乗り越え方が大人ですごい。
家族の愛を感じた。良書。