河野裕のレビュー一覧
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時間SFミステリ青春風味として安定の仕上がり
SFというところには難点があって『タイムリープ』と「リセット」までは良いが
今回の未来視は作者もテトラポットで書いているのだろうけれど
明らかにパラドックス
『月見月理解』がミステリではない程度に本作もSFではないか
しかしそれはそれとして
理詰めというよりゲーム小説的にそれっぽく収まっていて素敵
どんな「能力者」でも現時点で得られた情報から正しくあるべく
選択を常に繰り返し続ける
将棋のような「ゲーム」と違って何手先まで未来を読んでも
自身の諦めという敗北までは行き着く処はない
「私が愛しているのは、ただの石ころなのかもしれない」
個人の観測ではそこから出ることは出来ないが
ひとはひとりではない -
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記憶を保持する能力が欲しい。
その昔、自分のおこづかいからごく初めのころ買った『フォーチュンクエスト』の2巻か3巻において、すべてを忘れられなくなり他人を避けて暮らしている人物、という話が語られていた。
楽しいことも悲しいこともみな忘れることができず、いつまでも覚えていなければならない。それはとてもつらいことである、と。
当時、なるほどそれはつらい事だと同意した。印象的だった。そして今でも覚えている。(今ならインデックスさんを今を昔と思うころに思い浮かべるかもしれないがどうだろう)
しかし、今は思う。辛い苦しみも、恥ずかしく思い出したくもないことも、思い出せなくなるのは嫌だ。
いやむしろ、全てを覚えていて理知的に、聡く、行動に活かせるほうが、
どれほど有意義であろうかと。
大学生になって一人暮らしをはじめて以来、日記を付けている。起こったことを記録している。記録せずにはいられない。忘れたくはない。
しかし、全ては忘れてしまうのだ。
日記という形に記録をしても、それを手がかりに思い返して、過去の自分を現在に活かしていくことはできない。
ネットにサイトを置いて、ゲームの感想や読書の感想を記録しても、それを覚えておきその上に新しいものを積み重ねていくことの役には殆どたたない。Google先生が空前の偉大な知の整理者であろうと、現在の利用の仕方では駄目なのだ。
記録をして少しは満たされる。しかし忘れてしまうことに変わりなく、覚えていられる助けにはならない。
それでも、忘れてしまうのだから、記録するほうがまし、であるかも知れない。記憶を保持する能力、全ての記憶を自在に思い出す能力を今のところ獲得できる見込みはないのだから、断片的にでも記録しておくべきかもしれない。そうするしかないかもしれない。
日々は楽しい。それは常に昔の記憶を忘れ、全てを新しく感じ思えるからである。
それでも記憶を保持する能力は欲しい。自分はあまりに愚かしい。
誰でも何にでも、時の流れと等しく忘却は訪れる。
何かをきっかけに思い返していくより仕方がないのだ。そういうものなのだ。
それでもいつもいつまでも、全てを忘れたくはない。
いつか全てはなくなるとしても、この自分のため自分のことは、覚えていたい。
とかぽえむるくらいに感服した/話自体はゲーム調ミステリみたいな感じでそれほど驚くところはないが表現の仕方が一行ごと腑に落ちる/まったくすごい -
Posted by ブクログ
同時発売『サクラダリセット』最終巻と
どちらを先に読むか悩んでこちらから読む
作者の作品が同じ月に2冊も読めるとは幸せすぎる
しかもどちらもぶ厚くて素晴らしいな
とか思っていたが
良く見ると紙質が悪くなって厚くなっているだけだった
見返したら先月の『問題児』もそうだった
いままでわりと良い紙を使っていたスニーカー文庫だけに落差がすごい
そのわりには先月気付かなかったわけだが
『サクラダ』完結月までは良い紙を使って欲しかったかも(後はどうでも良いのか)
でこの作品だが
死神ものの一冊完結連作短編
学校の演劇部が採用しそうな教科書に載りそうなくらい上品上品質だが
これならより巧みに書ける作家はいるだろうと思うくらいではある
『死神くん』とか懐かしいなとカラスの諭吉をみて思い返す
そして分類に困る
生きていてそのうち死ぬのは「絶対」間違いなさそうな人間の
思いつく枠一杯に広がりえるこの話は
「小説」「連作短編」という下にどう分けようあるだろうか -
Posted by ブクログ
文語口語違いの問題かもしれないが「てよだわ言葉」に違和感を感じるし
難易度でというなら濃淡度とか高低度とかいうべきでないかとか
どおでも良いことを思うくらいことばにこだわっている感じの文章と
当たり前で無垢な願いが、彼の本質だ。
サクラダリセット。聖なる再生。正しい方法での、世界の改変。
を衒い韜晦なく実行しようとするだけでなくしてしまうという内容が
奇妙な「透明な」味わいという名前の味である
作品全体を通してみると「マンガの(重要)『封神演義』みたいな」ファンタジーバトル小説なのだが
そうでない変なところに入っているという異で
『円環少女』などと同じく中高生向け娯楽小説であるライトノベルという場だからこその
まこと貴重な作品である -
ネタバレ
不思議だがいいと思う
自分が恋した相手には変わってほしくない。でも自分は変わって行くだろうし、相手も変わって行かざるを得ないだろう、ということに対する矛盾や葛藤、苛立ちみたいなものがとぉっても回りくどく、とぉっても丁寧に、とぉってもめんどくさく描かれている。
恋をしているとき(もしくは「これが恋かも?」と気付きつつあるとき)にこんなにも理性的、客観的に自分や相手のことを考えられるとは思えず現実味がないが、その非現実的な部分がこの作品の世界観や雰囲気にうまく絡んでいて惹かれる。
常に淡々と漂うネガティブな空気も好きだ。
『逆上がりは、できるようになった?』
何だ?何だ?何だぁ?
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能力者の集まる街「サクラダ」
ともすれば危険な能力者たちは「管理局」によってしっかりと管理され平和な日々が続くサクラダの中で起こるちょっとした事件のお話。(が今後続いていくと思われる)
主人公は過去のすべてを記憶できる能力の持ち主の男子高生と、時間を巻き戻せる(リセットできる)女子高生。
しかし女子高生は時間を巻き戻したことすら記憶を失うので、この男子高生とコンビを組むことで初めて能力が意味を持つといった仕組み。
非常によくできたSF作品でありジュブナイルだった。
そして決して大事件にはならずあくまで登場人物のなかだけで収束する事件を描くのは、「ハルヒ」から続く角川文庫らしい作風といえる。
僕はこういうの大好きです。
続きも読んでいこう。 -
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ネタバレサクラダリセット、シリーズ第2弾。
本作もとても面白かったです。
「リセット」能力が使われるため、事象の流れが分からなくならないように、普通の小説よりもじっくり読まないといけないところが、サクラダリセットを楽しむ醍醐味かなぁと思います。
能力者の能力の組み合わせ、その能力の制限を上手く利用して、不可能と思われることを可能にしていく、浅井ケイの知略に脱帽です。ケイの記憶保持、春埼のリセット、村瀬の物を消去する能力、そして佐々野の写真の中に入る能力を的確に組み合わせ魔女の救出作戦は凄かった。
浅井ケイは2年前と現在(高校一年生)では、考え方や行動が随分変わったのかな?
シリーズ第3弾も楽しみです。 -
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○惑う七草、直進する真辺の横顔の切なさ
「心を穿つ青春ミステリ」と評されたこの階段島(かいだんとう)シリーズも三作目。はじめて、恋という言葉が出てきましたが、それが全編通してのキーワードになるわけではありません。
真辺との再会で「引き算の魔女」の噂を知る七草。
しかし第二弾までとはなんだか少し様子が異なることに気づく。階段島で起こる出来事ではなく、現実世界で起こる出来事として語られる。これは第三弾までの間ではじめてである。
よく読むと、真辺と七草の関係性もこれまでと微妙に異なる。階段島に送り込まれた人格の反対側にある現実世界。七草は真辺がその状態になっていることに愕然とする。第1弾「いなくなれ、群青」で階段島の七草が思ったように。
あわせて、安達という謎の少女が現れ、彼女も引き算の魔女を探しているのだという。
そして、真辺が「引き算の魔女」の噂を追っていることに気がかりな七草は、真辺がどうしてそう考えているのかを知りたい。少しずつ、いくつもの謎を七草らしく整理しながら回収していく。そして、相原大地という少年の秘密も今回明かされ、前作・前々作の伏線を少しずつ回収。
七草が捨てたものと、真辺が捨てたもの。
いったい何を捨てたのか?今まで捨てた結果から読んできた私たちにとっては、納得がいくような部分もありつつ、改めて突きつけられたその「決断の意味」を知ることになるだろう。
真辺が畳みかけるように、捨てたものと捨てた意味、その両方を七草と会話する。真辺の決意にショックを受けるとともに、そこまでしてお互いに思える関係にぐっとくる!
最後にタイトル「汚れた赤を恋と呼ぶんだ」の意味が、七草の口から解説される。七草の感情の昂ぶりに、きっと読者は震える。