河野裕のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ「階段島」と呼ばれる不思議な場所を舞台にした青春ファンタジー小説。そこは、捨てられた人間だけがたどり着く島。島から出るには「自分が失くしたもの」を見つけなければならない。
主人公の七草は徹底した悲観主義者。対する真辺は理想を追い続ける少女。島からの脱出をめぐって、痛みを伴なおうとも突き進む真辺と、小さな損失であっても拒む七草の対立は、本作の軸であり最大の見どころです。理想も損失のない世界も、結局は現実には存在しえない幻想に過ぎません。それでも、届かぬと知りながらも譲らない姿に、青春の苦さと眩しさが凝縮されています。
印象的だったのは、七草と真辺が「大人になった彼ら自身が切り捨てた人格」であるという設定です。彼らは、現実の七草達が既に捨て去った理想の化身であり、その擬人化とも言える存在。彼らが理想の体現者であれば、外敵のいない「虚無の楽園」としての階段島は、彼らの心象風景を映す舞台だと思いました。
その空虚さが物語に独特な空気感を醸成している一方、終盤に至るまではやや退屈さを覚える場面もあるのが正直なところです。
本作を読み進めると、妥協することを拒み、大人になることを拒否した彼らの叫びが、ひしひしと伝わってきます。理想を信じ続ける強さと、妥協を選べない弱さ。そのどちらも抱えながら足掻く姿は、読む者に「自分は何を切り捨てて大人になったのか」と問いかけてくるかのような小説です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ本作は、自然科学の数学的原理の範疇を超えた存在であるヴァンパイア、アズ・テイルズと、その不可思議な【現象】の解明を目指す自然科学の徒、オスカー・ウェルズの物語です
学問の本質は天才による大きな前進よりも人類の総体としての知の集約と漸進にあるという考えが、本作品全体の基軸になっています
その考えは、大学院・企業の研究所に身を置き、自然科学の一端を探求したものとしてある種当然でややありきたりでした
より広く解釈して、生命の進化の結果として人類が生まれ自然法則を紐解きこの世界の理に挑んでいることそのものが科学の神秘であると感じます
河野裕作品の大ファンですが、本書よりも他のシリーズのほうが言葉の美しさや思想の清廉さが感じられ、私は好きです