河野裕のレビュー一覧
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ネタバレ○ 感想
7人の超能力者が,年収8000万円の地位をめぐって採用通知書を奪い合うという設定は,非常に魅力的。『スティング』のようなコンゲームを意識した作品だと思われる。ただ、超能力が便利すぎるため,登場人物同士の頭脳戦という印象はあまり受けなかった。
特に,ナンバー2・穂積の「トレード」,ナンバー4・日比野の「フェイク」,ナンバー5・高橋の「ビジョン」は,採用通知書の争奪戦との相性が良すぎる。そのため,能力の応酬になってしまい,頭脳ゲームとしての面白さはやや薄い。
この作品の最大の仕掛けは叙述トリックである。日比野が何かを企んでいるように見せかけて,実際にはナンバー3・仲秋の思考が描かれている。しかし,日比野と仲秋の書き分けが十分ではなく,どこまでが叙述トリックで,どこまでが本当の日比野の内心なのかが非常に分かりにくい。実際には,日比野の内心は一切描かれていないのだが,読み終えても腑に落ちにくかった。
また,仲秋の能力であるハッキングも便利すぎる。ソラというアプリを作り,採用試験そのものを裏から操作していたという真相には驚かされるものの,スケールが大きくなりすぎて,「やられた」というより「何でもあり」という印象の方が強く残ってしまった。
登場人物も,全く魅力がないわけではないが,十分に書き分けられているとは言い難い。高橋と聖沢の入れ替わりや,日比野を利用した叙述トリックも,キャラクターの印象が弱いため,十分に生きていない。ナンバー7・市倉も最後は全員を出し抜く重要人物になるが,そこまでの切れ者には見えず,やや説得力に欠けた。
とはいえ,見るべきところがない作品ではない。仲秋がソラを利用して採用試験を裏から操作していた真相や,加藤の本当の目的など,驚ける要素もある。設定自体は非常に面白く,エンターテインメントとして十分楽しめた。ただ,その魅力を最後まで活かし切れず,サプライズ感がやや弱かったのが惜しい。設定は抜群だが,完成度はもう一歩という印象の作品だった。
〇 概要
世界的企業ハルウィンが,年収8000万円で超能力者を1人採用する。最終試験は,3月31日の夜から4月1日にかけて街中で行われるコンゲーム。7人の超能力者が,1通しかない採用通知書を奪い合う。
〇 メモ
〇 1話 幕が上がれば演じ続けろ
主人公・市倉真司(ナンバー7)は,日比野瑠衣(ナンバー4)と出会い,共闘することになる。その直後,ビルからナンバー1・加藤が転落。日比野は採用通知書を奪う。 穂積(ナンバー2)と聖沢(ナンバー6)は,加藤から採用通知書を買い取る約束をしており,日比野を追跡。聖沢は「アポート」で通知書を奪うが,日比野の「フェイク」による偽物だった。
さらに,高橋(ナンバー5)の「ビジョン」も加わり,超能力を駆使した通知書争奪戦が始まる。
〇 2話 嘘つきたちは夜の街を走る
穂積と聖沢は警察に追われ,別行動となる。一方,市倉と日比野は何者かに襲われ,一時離ればなれになる。市倉はナンバー3「シド」と出会うが,正体は柴犬だった。 日比野は聖沢の協力者・桜井に接触され,採用通知書を売るよう持ち掛けられる。
〇 3話 最良の嘘について
市倉と穂積は,日比野奪還のため聖沢との交渉に向かう。「最良の嘘とは何か」という市倉と穂積の会話が,本作全体のテーマとなる。交渉では,採用通知書を巡る駆け引きが続くが,高橋の「ビジョン」による偽物や,日比野の「フェイク」が入り乱れ,本物の通知書がどこにあるのか分からなくなっていく。 ここで,日比野の思考のように描かれている文章が,実は仲秋の思考だったという叙述トリックが仕込まれている。
〇 4話 物語は舞台裏で決まる
穂積側と聖沢側は,互いを騙しながら最終交渉へ向かう。加藤は穂積に,高橋が裏切ると警告する。各陣営がそれぞれ別の目的を持って動いていることが明らかになり,コンゲーム色が強まる。
〇 5話 ふたりの関係
倉庫近くの駐車場で最終交渉。穂積は「トレード」で本物の採用通知書を奪い,勝利したかに見える。しかし,高橋と聖沢は最初から入れ替わって行動していたことが判明。最初に倒れていたのは本物の聖沢であり,穂積と行動していた「聖沢」は高橋だった。加藤は,高橋の能力を封じなければ逆転できないと穂積へ助言する。
〇 最後の言葉に至るまで
市倉は聖沢のヘリへ向かい,ヘリから転落して死亡したように見える。ここから真相が明かされる。ナンバー3「シド」の正体は仲秋美琴。能力はハッキングで,「ソラ」というアプリを作り,採用試験そのものを裏から操作していた。本来の勝利条件は「日付が変わる瞬間に採用通知書を持っていること」だった。さらに,加藤の能力「フォーサイト」は本物の未来予知であり,今回の採用試験は仲秋を誘い出し,口封じをするために計画されたものだった。しかし,死亡した仲秋は日比野の「フェイク」だった。市倉は仲秋を助けるため,日比野と協力して加藤を騙していた。最後は市倉の計画によって,高橋・穂積も加藤の前へ集まり,加藤の企みは阻止される。
〇 エピローグ
複雑だったコンゲーム全体のネタばらし。市倉,仲秋,日比野が再会する未来を予感させる形で物語は幕を閉じる。
〇 登場人物・能力メモ
〇 加藤仁(ナンバー1)
能力は「フォーサイト」。未来予知能力の一種で,自分の行動の結果を事前に知ることができる。
ハルウィン子会社「ブルーウォーカー特殊人材研究所」の元所長で,今回の採用試験の仕掛人。本当の目的は,仲秋美琴を誘い出し,事故に見せかけて殺害することだった。結果は失敗。
〇 穂積正幸(ナンバー2)
能力は「トレード」。二つの物質の位置を入れ替えることができる。
職業は探偵。金のために採用試験へ参加。聖沢から5億7000万円,仲秋から15万円の報酬を受け取る。
最後まで採用通知書を巡る頭脳戦を展開する中心人物。
〇 シド/仲秋美琴(ナンバー3)
序盤は「シド」という柴犬として登場する。
能力は「ハッキング」。電子回路を持つ機器を自在に操ることができる。
音声アプリ「ソラ」を開発し,採用試験の進行やルールを書き換えていた黒幕。
ハルウィンへ入り,超能力者への不当な研究を告発することが目的だった。
〇 日比野瑠衣(ナンバー4)
能力は「フェイク」。物質のコピーを作り出すことができる。
採用通知書の偽造や,仲秋のフェイクを作るなど,本作のトリックの中心人物。
参加理由は「友達を作ること」。
〇 高橋登喜彦(ナンバー5)
能力は「ビジョン」。視覚情報を相手へ送り込み,幻覚を見せることができる。
聖沢と最初から入れ替わって行動していたことが終盤で判明。
聖沢をハルウィンへ入社させるため参加。
〇 聖沢巧(ナンバー6)
能力は「アポート」。遠くにある物を取り寄せる能力。
……と思われていたが,本当は超能力者ではなかった。
高橋と協力し,ハルウィン入社を目指していた。結果は成功。
〇 市倉真司(ナンバー7)
本作の主人公。
能力は「メッセージ」。未来の危険を断片的に知ることができる。
小学校時代の友人・仲秋美琴が死ぬ未来を見たことから,彼女を助けるため採用試験へ参加。
最後は全員を出し抜き,加藤の計画を阻止する。
〇 ソラ
音声入力対応の秘書アプリ。
採用試験中は起動しておくことが義務づけられていたが,実際には仲秋が開発したプログラムであり,試験を裏から操作するための道具だった。
〇 桜井
聖沢側の協力者。
日比野に採用通知書を売るよう交渉を持ち掛ける。
〇 叙述トリック
日比野の内心のように読める文章は,実際には仲秋美琴の思考だった。
日比野の内心は最後まで一切描かれていない。
〇 誠実な嘘
市倉が考える「誠実な嘘」の条件は三つ。
① 自分のための嘘ではないこと。
② 相手が信じるまで嘘をつき続けること。
③ ネタばらしの後,相手と一緒に笑える嘘であること。
この「誠実な嘘」が,本作のタイトル『最良の嘘と最後のひと言』につながるテーマとなっている。 -
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階段島シリーズが遂に完結。
最初から最後まで、やはりこの物語は七草と真辺の物語だった。堀を真辺と対比させ、安達と七草の類似性を示す事で、より2人の性格が掘り下げられていた。多少の変化はあれど、最後まで階段島の2人は一貫していた。
ゴール無き命題を、呆れるほどに愚直にドリブルする真辺と、どうにか目の前のディフェンダーを抜けるようにサポートする七草。この2人の関係性は、正しくないとしても、素晴らしいと思う。また、2人が成長して、足を止めてドリブル以外の選択肢を持った真辺と、それを受け入れる七草は正しいと思う。
人生において成長は必要なもので、その過程で失われる自分は、不必要なものだったと捉えるのではなく、尊いものとして記憶のどこかに保存しておくのがいいと思った。階段島の住民は尊い。決して不必要ではないから、来たるべきタイミングで拾ってもいい。
自分のダメなところや辛い体験も、時間が経って、回顧して笑って人に話せるようになったら幸せだなって思う。 -
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展開はスローテンポで、しかし着実に階段島や大地の問題について進展した。前任の魔女・時任の過去と大地との関係性、七海自身の拾う・捨てるの問題、真辺にとっての七海という存在について、主に書かれていた。
時任が大きく問題に関わりを持ち始め、大地の問題は進展していく。大地の捨てたものが判明し、次巻では核心に迫る。また、現実の七海と階段島の七海は相容れなかった。成長した現実の七海、しかし階段島の自身を見て羨ましくも思う。
読めない展開に、読んでいて楽しかった。
真辺と七海の関係性はどうなっていくのか楽しみ。
そして、階段島の存亡やいかに。楽しみ。 -
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第1作から久しぶりでしたので、どんな世界観だったかなんとなくでしたが、読み進めていくうちに徐々に「あっ、こういう雰囲気だった」と掴めてきました。
前作は、たしかPoint合戦を加味しながらの頭脳戦だったと思いましたが、今回はそうしたものはなく、比較的静かでありながらも沸沸と湧き上がるような頭脳戦だった印象でした。ただ、奥行き感がないといいましょうか、それぞれのチームでの代表だけで、戦いを繰り広げています。なので、その他の脇役の人達の接戦がなく、いつのまにか死人が発生しているので、そんなに緊迫感がありませんでした。
第2作目では、新たな謎や人物が登場し、場を盛り上げている一方、なかなか謎が解決しないまま、終了でしたので、歯痒さ感はありました。次作に期待したいと思います。
でも、描写が滑らかに行動しているので、読みやすかったです。じっくりと一つの大きな戦いを描いているので、ゆっくりと味わうことができました。わかったようなわからないような展開でしたが、続きが気になりました。