田辺聖子のレビュー一覧
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田辺聖子さんの自叙伝的小説である。
その1 民のカマド<福島界隈>
その2 陛下と豆の木<淀川>
その3 神々のしっぽ<馬場町・教育塔>
その4 われら御楯<鶴橋の闇市>
その5 文明開化<梅田新道>
解説 小松左京
昭和3年生まれの大阪のお嬢さんが戦争という時代に翻弄されながら、女性・娘としてどのように戦争社会立ち向かってきたのか、ほんわかした雰囲気もあり、死と向き合う人生、そして、朝鮮人の当時の置かれた立ち位置など、本音で語れれている。
戦後の、民主主義的傾向強化という国の方針の大転換についても、一定の矛盾を感じながら、また、人間天皇に対する感じも、当時の世相を緩やかに描いている。
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ネタバレ田辺聖子さんの作品好きなのに、これは初めて読みました。
すごく私的な感想です。
まるで、昔の私のことみたいだった。
こんなに贅沢じゃなかったけど、何不自由ない生活、好きな人との生活のはずが、どんどん自由や、自分らしさが失われて行く感じ。
「私が30年かけて作ってきた生活」、愛してやまない生活、それらから乃里子を引き離したい剛、土足で彼女の城に踏み込み、勝手に怒り出す剛。
まさに自分のことみたいだって思った。
罪はないのに、ひどく辛い。それは罪なんだよ。誰も裁けないけど。
昔の私に読ませたい。
そしたらもっと人生変わっていたかも。
それでいいんだよ、って。
私も乃里子と同じく、笑顔が消え、何 -
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田辺さんの作品読んでると文学も芸術やなぁって染み染み感じます。トキメクような自然の風景が頭に浮かんで、急展開な出来事に一行毎に胸騒ぎを覚えて、今回も田辺さんの世界にどっぷりヤラレました。ストーリーも登場人物の年齢も全然違う(ファンタジー要素もない)んやけど「君の名は」を観終わった感覚にちょっと似てた。現代的な都会と古風な田舎がコントラストになっていて、田舎から都会に移り行く発展都市も合わさって、時代背景や登場人物が個性的に動いてる。リアルにいる、こんな人たち。個人的には主人公が選んだ道に説得力があったかな。女性の生き方、結婚について、30年前の作品とは思えない!こんな考え方もあるよ、あなたはど
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「嘘つき男と泣き虫女」って本は、同じような内容でありながら途中から面白くなくなってくるような退屈な本でしたが、田辺聖子さんのこのエッセイは、下ネタいっぱいで最後まで猛スピードで楽しむことができました。
せっかちな男性諸氏には、まったくこちらの作品のほうが向いているように思います。ところどころ、ワタシもこんなだろうな…と恥ずかしい思いをしながらの読書でしたが。異性の心もようもかなりうかがえる作品でした。
学生の頃、佐藤愛子さんの「坊主の花かんざし」という作品を、たぶん?リアルタイムで読んだように思います。どんな作品だったか、どんな作風だったかは忘れてしまいましたが、本の中に彼女の名前が出て -
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田辺聖子は特に好きな作家の一人だが、その中でもこの本は何度読み返したか分からない。
一口に言ってしまえば源氏物語のパロディであるが、本家を超える面白さがある。その理由は登場人物の魅力にある。
光源氏は低俗で情けない人物として描かれているが、源氏を取り巻く女性たちは対照的に、鮮やかで生き生きとした魅力にあふれている。
紫の君は、はねっかえりで源氏をいつもやりこめてばかりいる。女三宮も溌剌としていて天真爛漫だ。玉鬘は源氏の古臭い色香に惑わされず、運命の相手を自分で選び取り、空蝉は自ら大胆に源氏を誘う。
彼女たちは常に自分の気持ちに正直に生き、潔い。真っ直ぐで大胆で、それでいて馥郁と -
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ネタバレ再読。何回も読んだ作品。1976年刊行。
人気女流作家の日常を住み込みの秘書兼お手伝いの女性 ・マリ子を通して描いたユーモア小説。
きっかけは昼の連続ドラマ、女流作家役は園佳也子さん。
読み始めた当時は、普段は亭主をほったらかしにしていながら、亭主がちょっと家を空けようものなら烈火のごとく怒るくせに、自分はいそいそと若くてハンサムな編集者とディナーへ出かけたりと、女性の家庭での役割や在り方、置かれている状況を皮肉ったところが小気味よかったのだと思う。
女流作家、亭主、高校生の娘とも朝ごはんはほとんど食べず、時間帯もばらばら。
住み込み始めた当初は自分だけの朝ごはんをしっかり作っていたマリ子 -
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やっぱ田辺聖子大好きです。
五月はわたしと同じくらいの年齢。
この小説が書かれたのはわたしが生まれる前。
なのに、なのに、ナンデこんなにわたしのこと書いてんのよっっ!!!!と思うほど共感。
もちろん、わたしが住んでいるのは大阪でもなく、村に住んでいる気になる人もいないのだけど、
でも考え方とかさ、ぜんぶそのまま小説に垂れ流されてる。
書き方もとても上手い。ほんとうに。
「こういうときの、女の好奇心に水をぶっかけても消えるものではないのだ。」
「女は心情的近眼なのである。」
「親は生きてるうちはいつも敵じゃ。死に際が近づくとか、死んだあとは親になるでの」
「初老期文句症という症状であろう。」