田辺聖子のレビュー一覧
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「人間は何のために生まれてきたと思う?おもしろいことを言って、みんなで笑うためよ」
日本を代表する作家であり大阪を最も代表する作家であった田辺聖子さんが、先週6日に92歳で亡くなった。「カモカのおっちゃん」などエッセイの言葉や小説の中で出てくるセリフが好きだった。大阪の普通のおっさんやおばはんが使うような平易な言葉で、こんなにも人生の機微や人間の本性を突き刺すような深い言葉を紡いだ作家は彼女以外にない。彼女の言葉には何度も笑わされ教えられた。樹木希林さんにつづいて、人生の大先輩がまた一人いなくなった。私の本棚に残る4冊の彼女の本から、箴言集「人生の甘美なしたたり」を再読。10数年前に買った本だが、面白くてまた一気に読んでしまった。数多くの素敵な言葉の中から一部を抜粋紹介。
●男と女
・「恋愛の究極は、手ェも握らんとこへ還る」
・男でも女でも、好色な人は、毎日、じつに楽しそうに生きている。
・セックスはアタマとココロである。セックスは、あたまのよさと感受性の問題だ。
・不倫は人生の香水である。時々人生にふりかけてたのしむ。
●女とは
・女が男からいわれる一番うれしい文句は、「寝ませんか」というくどきである。
・女はみんなバクダンである。
・女の子の集まりがながつづきするヒケツは、「KINTAMA」のひとことに尽きる。つまり、「協調すれども介入せず」ということ。
・於女乎一つ引っ提げてれば、一生食いっぱぐれないなんて、女とは何て、いいもんだろう、という真理。
●男とは
・マジメな男が浮気することは矛盾するようであるが、マジメだから浮気になり、本気にならないのである。
●生と死
・泣くか笑うか迷ったときは、笑うほうがいい。
・人生は最後にはなんとかなるものである。
・人生、酒飲んで×××しとれば、それだけで大収穫である。
・そもそも幸福の実態は、日常の細部にある。
・「すべてナアナアがよい。整然とか生粋とか純潔はいかん」
・「神サン」は理不尽なのである。
・血は水より薄い。
・「逃げたままトシとったらええやないか、逃げ切ったら勝ちや」
●世の中さまざま
・人間、カシコもアホもみな同じ。
・楽に生きている人間は好もしい。
・本来、民主主義というものは女くさいものである。
・人間の歴史を真に動かすものは、その網目に洩れたる無数の塵芥、雑魚どもである。
・たのしみ、というのは、やっぱり「人間」に尽きる。
・善意と思い込んでる無神経は一番かなわない。
・「アホにアホいうもん、ほんまのアホじゃ」
・非行は健康の素。
・社会が成熟すれば美意識は多様化する。
・「すべて物ごとも言葉も、平とう考えて平とういいなはれ」
・何でもしたい放題したほうが、人生では長生きする。
・「血ィのつながれへん者同士が、仲よう家族みたいにしてる、いうのこそ最高の文化や」
十数年以上前に読んだ時より今のほうが、ずっと味わい深く面白く読めた。
はんなりしたやわらかい大阪弁につつまれているが、よく読むと辛辣で凄い過激な言葉も。
最期にもういちど、新聞に載っていた言葉。
「人間は何のために生まれてきたと思う?おもしろいことを言って、みんなで笑うためよ」
おせいさん、たくさんのおもしろい言葉ありがとう! -
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私の持ってる文庫本は昭和58年発行の19刷で、ページがすっかり茶色くなってしまった。単行本の刊行は昭和49年とある。うひゃー、すぐには何年前か計算しにくいくらい古い。でも読み返すたびにひきこまれて、前読んだときよりもっと良かった!と、その都度思っている気がする。田辺聖子先生の小説では一番好きかもしれない。
全然古臭くなくて、四十年以上前の作品だという気がしない。そりゃあさすがに、時代を感じさせるところは多々あるわけだけど、描かれている青春の切なさは永遠だと思うのだ。OL(っていう言い方も今はしないのかな)のレイ子が、ほんとどこにでもいそうな、いや、どこにでもいた感じの女の子として生き生きと描かれている。今やこんなフワフワした娘さんはあまりいないかも。懐かしいような気がする。
そして、私の大のお気に入りが、レイ子の恋人である優。彼は京都に住む大学生なのだが、屈託を抱えていて、レイ子にはつれない。レイ子が優を訪ねて京都を訪れる場面がとても好きだ。当然だが携帯電話なんかない時代、二人のつきあい方はいたってもどかしく、そこになんとも言えないノスタルジーを感じてしまう。
田辺先生らしく明るい場面も多く、全体のタッチは決して深刻ではないけれど、ほろ苦い憂愁の気配も漂う。そこが「青春小説」だなあと思う。 -
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読売新聞の広告で「この国は、本を読まない大人が増えた。だから子供みたいな国になってしまった」という内容を語ったのは、田辺聖子である。
本書は、エッセイ仕立てだが、飲み仲間の「フィフティちゃん」と「イチブン氏」との会話を通じ、人間の生態、特に男女のあれこれを通じて、著者がアフォリズムを導き出す示唆に富んだ1冊である。
私は田辺聖子をあまり読んだことがないため感じるのかもしれないが、
とにもかくにも、難しい熟語が夥しい数登場する。
辞書を引かずにこの本を読み通せる人は、相当博識な人だと思う。
先日作詞家の松本隆が出演したテレビ番組でこんなことを言っていた。
「作詞家を志す若い人がやっておくべきことは何かありますか」
「本を読んで語彙を増やすことです」と発言。
言葉を知らないと表現などできないという。
至極当たり前のことだが、意外と見過ごされがちな事実ではないだろうか。
絵の具の種類が多いほうが、より色彩豊かな絵画を創造することができるのと同じで、ボキャブラリーが多いほうが、人生の機微に気づき豊かな表現が可能になるだろう。
細かなこぼれ話ではあるが、辞書を引く楽しみも紹介されている。
目的の言葉だけではなく、周辺の言葉の意味も知ることもできると。
言語化できることは、物事を相対化して認識できるということ。
つまり、様々なことを客観視できるということだといえる。
とかく窮屈で他人に不寛容になってしまうことも多い世の中。
大先輩の言うことにじっくりと耳を傾けながら、語彙を増やしていくと一味違う人生が待っているかもしれない。 -
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田辺聖子さんの自叙伝的小説である。
その1 民のカマド<福島界隈>
その2 陛下と豆の木<淀川>
その3 神々のしっぽ<馬場町・教育塔>
その4 われら御楯<鶴橋の闇市>
その5 文明開化<梅田新道>
解説 小松左京
昭和3年生まれの大阪のお嬢さんが戦争という時代に翻弄されながら、女性・娘としてどのように戦争社会立ち向かってきたのか、ほんわかした雰囲気もあり、死と向き合う人生、そして、朝鮮人の当時の置かれた立ち位置など、本音で語れれている。
戦後の、民主主義的傾向強化という国の方針の大転換についても、一定の矛盾を感じながら、また、人間天皇に対する感じも、当時の世相を緩やかに描いている。
それは、お父さん、お母さんの平衡感覚の下で育った田辺さんの感性なんだと思いました。
大阪・河内生まれの私としては、親しみやすく、読みやすかった。
しかしながら、戦争がなかったら、もっともっと楽しい人生がおくれたに違いない。
絶対、戦争はしてはいけないということです。 -
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ネタバレ田辺聖子さんの作品好きなのに、これは初めて読みました。
すごく私的な感想です。
まるで、昔の私のことみたいだった。
こんなに贅沢じゃなかったけど、何不自由ない生活、好きな人との生活のはずが、どんどん自由や、自分らしさが失われて行く感じ。
「私が30年かけて作ってきた生活」、愛してやまない生活、それらから乃里子を引き離したい剛、土足で彼女の城に踏み込み、勝手に怒り出す剛。
まさに自分のことみたいだって思った。
罪はないのに、ひどく辛い。それは罪なんだよ。誰も裁けないけど。
昔の私に読ませたい。
そしたらもっと人生変わっていたかも。
それでいいんだよ、って。
私も乃里子と同じく、笑顔が消え、何も面白くなくなった。
そして、乃里子と同じ様に一人になり、自由を取り戻した。
私は爽快感と限りない解放感で、とにかく幸せだった。
でも、一緒にいた時間に愛があったことは本当なんだよ。
あの頃この本を読んでたら、もっと勇気をもらえただろう。田辺聖子さんが私の経験なんかよりもっと以前にこの本を書かれていた、その年代に書いていた、その事実だけでもすごい。
しなやかに自由に。
本の帯に、「私、この作品を書くために生まれてきたのかもしれへんわ」とある。
たくさんの女性がこの本に元気付けられると思う。
この感覚、人に説明しても全然伝わらないと思ってた。
でも、田辺聖子さんがこんなに素晴らしく細やかに、書かれている。本当に素晴らしい作家だと思う。
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田辺さんの作品読んでると文学も芸術やなぁって染み染み感じます。トキメクような自然の風景が頭に浮かんで、急展開な出来事に一行毎に胸騒ぎを覚えて、今回も田辺さんの世界にどっぷりヤラレました。ストーリーも登場人物の年齢も全然違う(ファンタジー要素もない)んやけど「君の名は」を観終わった感覚にちょっと似てた。現代的な都会と古風な田舎がコントラストになっていて、田舎から都会に移り行く発展都市も合わさって、時代背景や登場人物が個性的に動いてる。リアルにいる、こんな人たち。個人的には主人公が選んだ道に説得力があったかな。女性の生き方、結婚について、30年前の作品とは思えない!こんな考え方もあるよ、あなたはどう?って田辺さんが寄り添ってくれてます。
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「嘘つき男と泣き虫女」って本は、同じような内容でありながら途中から面白くなくなってくるような退屈な本でしたが、田辺聖子さんのこのエッセイは、下ネタいっぱいで最後まで猛スピードで楽しむことができました。
せっかちな男性諸氏には、まったくこちらの作品のほうが向いているように思います。ところどころ、ワタシもこんなだろうな…と恥ずかしい思いをしながらの読書でしたが。異性の心もようもかなりうかがえる作品でした。
学生の頃、佐藤愛子さんの「坊主の花かんざし」という作品を、たぶん?リアルタイムで読んだように思います。どんな作品だったか、どんな作風だったかは忘れてしまいましたが、本の中に彼女の名前が出てきて、懐かしかったです。