田辺聖子のレビュー一覧
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小林一茶の壮年期から晩年を描いた田辺聖子の力作。
壮年期との一茶と言えば、江戸俳壇で頭角を表し、上総・ 下総で
支援者を集めたころだが、次の飛躍のためにも経済的な基盤を
必要とした。彼には当てがあった。
亡父の遺産の半分は彼のものという遺書もある。
所が事は簡単には運ばない。
やっと一茶が遺産を相続したとき、彼の江戸俳壇での場はなかった。
信濃、我が故郷、信濃こそと根を下ろす決意し50婿として妻を迎える。
<我が菊や なりにもふりにもかまわずに>
伸びやかで飾り気のない妻・菊を得て、子宝にも恵まれた。
やっと得た穏やかな幸せの時、それも長くは続かなかった。 -
Posted by ブクログ
2012.7.23.mon
【経路】
田辺聖子さんの大阪弁がしっくりくると聞いて。
【感想】
•欲望に正直に生きる楽しさの底で、人生と孤独の関係も知っている30女の恋愛遍歴小説。
•田辺さんの大阪弁好きがよく伝わる。「アレして」とか「ぼちぼち」でみなまで言わない美徳とか、恋人とのテンポのいい会話とか、色気を含むまろやかな京弁とか、舞台も梅田や本町でテレビ局がでてきたりで世界観に愛着。
•「仕事も男もちゃらんぽらんに生きるのも全部すき!」と開けて堂々と言える年齢不詳キューピー顔の30歳、良いやん。
•不倫は全部欲しくなったら身の破滅。側面をちらつかせてはならない。
•恋心と芝居心は半々がいち -
Posted by ブクログ
ネタバレおもしろうて、やがてかなしき‥‥ -2005.07.20記
これまでそれほど興味を示さなかったことに、ひょんなことからどうしても知りたくなったり、強い関心が惹き起こされる場合がときにあるものだ。
ひとつきほど前か、「これがまあ終の栖か雪五尺」と詠んだごとく、五十路になってから、義母や義弟とさんざ遺産相続で争った挙句、江戸から故郷信濃の生家に移り住んだ一茶の晩年が、近在から若い妻女を娶り「おらが春」をめでたくもたのしく謳歌したものとばかり思っていたら、老いらくの身にせっかく授かった四人の子どもを次から次へとはかなくも早世させ、おまけに妻女にも先立たれ、さらに二度、三度と後添いとの暮しに執し