田辺聖子のレビュー一覧
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ネタバレこの人は恋愛における細かい想いの変化を表すのが本当にうまい。
この人しか考えられないしどんなことでも愛せる、から、もう無理なんだろうな、となるところまでを一冊で書き切れるのがすごいと思った。
愛しいと思っていたことが全部だるくなるのも。
田辺聖子の本の中でいちばん好きな作品かもしれない。
あと、この男が結構亭主関白というか束縛系というか前時代的だった。まあ、ちょっと昔の本だからな。
「好きやったわ。とても、たのしかったし。何もかも好きでたまらないくらい。たのしかったわ、三年間
どうしてこんなことになったのか、わからないけど。もう前みたいにできない」
「ここにいてくれ。乃里ちゃんの -
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日本版シンデレラと言われる、平安時代の継子いじめのお話。古文の先生に読んでおくと落窪物語がわかりやすくなる、とお勧めされて読んでみました。
ストーリーがわかりやすく、古典常識なども読みながらわかりやすく書かれていたので良かったです。読んでいると北の方にはむかつくしイライラするし、おちくぼは優しすぎて、なんでもっと言わないんだ!と感情移入してしまいます。笑
でも、散々いじめてきた北の方を許せる優しさを持っているおちくぼを見習いたいとも思いました。
シンデレラのお話も、シンデレラは義理の母に復讐することなく、今までのことを許していました。書かれた時代も国も違うけれど似た性格の主人公の登場する継子 -
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可哀想なヒロインのために、彼女を取り巻く人たちが一致団結して意地悪継母をやっつける痛快・平安版シンデレラストーリー。登場人物全員のキャラが立っているので、他の平安文学のように「この人、誰だったっけ?」と前を読み返してみたり混同することもなく、非常に分かりやすい。これが読みやすいポイントだと思う。
ヘマをやらかしたり突如邪魔者が現れたりトラブル続きなのだけど、最後は綺麗に収まるのは見事。
ここのところ平安〜鎌倉期の悲恋の物語を立て続けに読んだので、「おちくぼ姫」はハッピーエンドで読後感が良かった。通い婚で一夫多妻制の平安時代では、姫を一途に思い続ける道頼みたいな男性を夢見て、当時の読者は夢中 -
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今から千年も昔、平安朝時代の日本にあった『落窪物語』というお話を現代語に訳された、田辺流シンデレラ物語です。
みすぼらしい部屋で、つぎはぎだらけの着物を着て、せっせと縫い物をしている若い美しい娘。
その娘は、床が一段落ちくぼんでいるところに住んでいるので、「おちくぼの君」と呼ばれていました。
物語の中で、この時代の結婚形式をわかりやすく説明してくれているので、古典初心者にも安心して読めます。
意地悪な継母の目を盗んで、姫君と少将との恋を応援するお付きの人たちの活躍ぶりが、はらはらどきどきで時にはドタバタで、登場人物たちがみな生き生きと魅力的で、平安時代の恋物語が、想像以上にロマンティックで -
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超発掘本!という帯と表紙カバーのいかにも和物っぽい色柄に惹かれて購入したのですが、私の好きな平安朝時代が舞台の「落窪物語」という古典が原作の本でした。古典は難しい印象ですが、これは田辺聖子先生が所々に解説を入れながら文章をかみ砕いて書かれていてとても読みやすく分かりやすかったです。おちくぼの姫のどん底からのシンデレラストーリーと姫をとことん虐め尽くす継母の成り行きがコントラストがはっきりと軽妙に描かれていて、読みすすめるほどにその場の情景や、継母や姫の為に孤軍奮闘する人たちの心情や表情が目に浮かぶようでとてもおもしろかったです。最後の継母の顔を思い浮かべて思わずふふん!となったのはいうまでもあ
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ネタバレ「日本書紀」「古事記」に登場する大王オオサザキ(仁徳天皇)と大后イワノヒメの夫婦の物語を中心に、大王の弟・隼別王子とその恋人・女鳥姫が謀反の悲劇に流されていくドラマが描かれる。
舞台は大和朝廷。大王にのぞまれた美しい女鳥姫が、大王の求愛を退け、大王の弟・隼別王子と恋仲になったことから悲劇は始まる。大王は2人を引き裂こうとするが、嫉妬心の強い大后の計略も加わり、若い2人は「謀反」というかたちで愛を貫く。絶頂で摘み取られた若く輝かしい愛は、その後の大王と大后の関係に、深く深く影響を及ぼしていく。
前半の隼別王子たちの若く激しい愛に対して、大王と大后の愛憎は、まるで灰の中の炭のように静かに、不気 -
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いろんな愛のかたちが詰まってて、私はすごく好きだった。どの話も全部女性目線で進むのだけど、健気で真っ直ぐで、でも素直になれない感じとか、夢中になりすぎちゃう感じとか、りちぎな感じとか、そういう人、いるよなあとか分かるなあとか思いながら読んだ。昭和の本だから、言葉遣いとか生活様式さえ違うけど、女の内面としては一緒。女の子ってかわいい。
それに、この本は無理な展開がなくて、全部リアルな感じが良かった。でも女の子たちの気持ちの動きに共感できすぎて、決して退屈ではなかった。短編集だからサクッと読めて、「その先はご想像におまかせ」みたいなスタンスが私はとても好き。読んでて疲れないし、喫茶店で読むのにちょ -
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ネタバレ- 同じ田辺氏の著書「光源氏ものがたり・中」に「このあたり(若菜)から『源氏物語』本編の低音部に、不気味な重苦しい調べがついてまわるようになります。ここにいたって『源氏物語』は、はなやかな恋の物語から、重厚で、まことに辛いおとなの物語になるのです。」とあるように「若菜」以降の巻には「生」と「死」が背後にあって読み応えがありました。
晩年の光源氏は、世間体を気にしながらも未だ自分本位に生きているような。同年代の登場人物に比べて見た目が若々しいというのも、その表れではないのでしょうか。殿に振り回される女人たちに同情します。
そんななか「つらき世をふり捨てがたき鈴虫の巻」で未練がましく言い寄って