田辺聖子のレビュー一覧
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ネタバレ「言い寄る」が春から初夏そして梅雨の季節だとすれば、
「私的生活」は盛夏から秋そして冬の季節だと私は感じた。
これは実体験ではないかと思うほど、登場人物のセリフ全てがリアルに描かれている。特に剛の俺様的な態度には、絶対にモデルがいるはずだと思わせる。私の夫もまさに剛タイプで自己中心で人を常に見下している。違うのは夫は一庶民に過ぎないのと容姿が残念なところだ。そして夫の本能的で傲慢な振舞いを見ていると私は心の中で軽蔑しているが、なぜか不器用な夫が不憫にも思える。だから乃里子の気持ちはよくわかる。
やがて乃里子の妻の役を降りるカウントダウンが始まると、無性に泣きなくなった。その先にはあるがままに生 -
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いきなり和歌を詠みたくなって、でも和歌のことなんて全然知らないな…?と思いまずは百人一首勉強しよ!と軽い気持ちで本書を購入。
よくありがちな歌の現代語訳だけではなく、時代背景や作者の人生など、多角的な方面から綴られていて、分かりやすく面白い。
学校で学ぶ日本史と国語の古典は別個として捉えがちだけどそうではないということが身に染みました。
万葉集や新古今和歌集などからもちょこちょこ引用されてるので、次は他の歌集も読もう!と早速購入しました(古語辞典も買いました)。
聖子さんの語り口もらしさが出てて素敵だし、与太郎青年と熊八中年も味があって良いです笑
後鳥羽院と順徳院で終わるという点、定家が -
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もう四半世紀ほども昔の受験生時代、古典を頭に入れるのに効果的と予備校の教師に勧められて以来、田辺聖子さんの古典ものを愛読してきた。今回何度目かの再読中、田辺さんの訃報。少なからずショックを受け、途中で本を閉じてしまった。
本書は、田辺さんが大好きな古典作品について綴ったエッセイ集。やさしく、たおやかな文体から、本当に彼女が古典とその登場人物たちを愛してやまないことが伝わってくる。彼女の視点で語られると、それまで教科書で読んだだけで、敷居の高かった古典の世界が、生き生きと鮮やかに蘇ってくるから不思議だ。登場人物の息吹まで感じられるようで、本を閉じてからも現実の世界に中々戻ってこられなくなってしま -
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「人間は何のために生まれてきたと思う?おもしろいことを言って、みんなで笑うためよ」
日本を代表する作家であり大阪を最も代表する作家であった田辺聖子さんが、先週6日に92歳で亡くなった。「カモカのおっちゃん」などエッセイの言葉や小説の中で出てくるセリフが好きだった。大阪の普通のおっさんやおばはんが使うような平易な言葉で、こんなにも人生の機微や人間の本性を突き刺すような深い言葉を紡いだ作家は彼女以外にない。彼女の言葉には何度も笑わされ教えられた。樹木希林さんにつづいて、人生の大先輩がまた一人いなくなった。私の本棚に残る4冊の彼女の本から、箴言集「人生の甘美なしたたり」を再読。10数年前に買った本だ -
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私の持ってる文庫本は昭和58年発行の19刷で、ページがすっかり茶色くなってしまった。単行本の刊行は昭和49年とある。うひゃー、すぐには何年前か計算しにくいくらい古い。でも読み返すたびにひきこまれて、前読んだときよりもっと良かった!と、その都度思っている気がする。田辺聖子先生の小説では一番好きかもしれない。
全然古臭くなくて、四十年以上前の作品だという気がしない。そりゃあさすがに、時代を感じさせるところは多々あるわけだけど、描かれている青春の切なさは永遠だと思うのだ。OL(っていう言い方も今はしないのかな)のレイ子が、ほんとどこにでもいそうな、いや、どこにでもいた感じの女の子として生き生きと描 -
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読売新聞の広告で「この国は、本を読まない大人が増えた。だから子供みたいな国になってしまった」という内容を語ったのは、田辺聖子である。
本書は、エッセイ仕立てだが、飲み仲間の「フィフティちゃん」と「イチブン氏」との会話を通じ、人間の生態、特に男女のあれこれを通じて、著者がアフォリズムを導き出す示唆に富んだ1冊である。
私は田辺聖子をあまり読んだことがないため感じるのかもしれないが、
とにもかくにも、難しい熟語が夥しい数登場する。
辞書を引かずにこの本を読み通せる人は、相当博識な人だと思う。
先日作詞家の松本隆が出演したテレビ番組でこんなことを言っていた。
「作詞家を志す若い人がやってお