田辺聖子のレビュー一覧

  • 言い寄る

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    読んでいて何度も挫折しそうになるくらい辛かった。乃里子の、五郎に対する気持ちが痛いほど分かって苦しくって仕方なかった。言い寄れないというより、言い寄らせてもらえないあの感じ、すごくわかる。家で2人きりになっても、ベッドに座っても、たとえ裸になっても女としてみてもらえない感じ。どれだけ自分がみじめで辛くて泣きたくなるだろう…そんな男が自分にはない奔放さがある親友に言い寄っていたと知った時、どれだけ辛かっただろう。でも乃里子は本当に偉かった。私だったら美々を心底憎んだだろうに。乃里子はプライドが高かったわけじゃない、頑張ってなかったわけじゃない、女としての魅力がないわけじゃない。それでも一線を張ら

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    2025年12月12日
  • 甘い関係

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    恋愛がうまくいかなかったとき「貴重な時間を無駄にした」と言う人がいるけれど、楽しかった時間は確かにあったはずなんだよね。なんでこんな男に……と思いながら惹かれることがあるんだよね。分かる、分かるよ、と3人に混ざって恋話をして、励まされたみたいな読後感。

    物語にでてくる女性は3人とも、なんらかの悩みをもちながら恋をしていて、それがまた痛いくらいに共感できるのだけれど、最終的にはみんなポジティブに前を向いている。彼女たちみたいに生きたいなぁと思える。結局さ、気の持ちようなんだよね。そう思うだけでも心が軽くなる。

    辛い恋をしてる人に、読んで欲しいな。わたしは今出会えてよかったなぁとも思うし、過去

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    2025年12月03日
  • ジョゼと虎と魚たち

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    実写映画が好きだから読んだ。
    どの話も素敵。女性の魅力、女性に産まれたことの素晴らしさを思い出させてくれる。「恋の棺」が一番好きでした。

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    2025年10月17日
  • 言い寄る

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    いい男たちに一人、二人と言い寄られ、自由な恋を楽しんでいるけれど、本当に愛している男にだけは、どうしても言い寄れない……恋のドキドキと切なさを同時進行で楽しめるって、こんなのアリ!?と、めちゃくちゃ面白かった。乃里子と一緒に感情ジェットコースターだよ。

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    2025年10月03日
  • 欲しがりません勝つまでは

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    書店で平置きされていて気になり、購入。

    私は子供の頃から戦争の話は大嫌い。
    聞くに耐えない悲惨な話と、二度と戦争をしてはいけない、というお決まりの結論で。
    でもこの本は、そんな戦争の話とは全然違って面白かった。

    日本は、田辺さんが生まれた時から戦争をしていたので、田辺さんは戦争をしていない日本を知らない。軍国主義にどっぷり染まった13〜17歳の日々が描かれている。
    本書の最も良いところは、当時彼女が書いていた小説がそのまま載っているところ(大人になった本人の批評付き)。例えば、当時ドイツとは同盟関係だったので、新聞や本で得た知識だけで、ドイツ軍が活躍する小説を書く。
    物が乏しくなる中でも、

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    2025年09月17日
  • ひねくれ一茶

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    一茶の人生を描ききった大作。藤沢周平の『一茶』も傑作だが、田辺聖子の一茶は、より自由で、より生々しい。また生き物、子供に優しい。何より無数の俳句から選ばれた一茶の作品が散りばめられている。弟と二番目の奥さんは災難といえば災難でしたが(特に弟視点からのものも読んでみたいなと思った)、とにかく必死に生き、必死に詠んだことがしっかり、じっくり描かれていたと思います。

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    2025年09月02日
  • 孤独な夜のココア

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    これは独りでじっくりと楽しむ短編集。
    ココアのように甘かったり、ほろ苦かったり、温かかったり、舌にザラつきが残ったり、する。
    「春と男のチョッキ」の味が好みすぎて、きっとまた味わいたくなる気がするから、本棚にそっと置いておく。たぶん、いつまでも。

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    2025年08月25日
  • 田辺聖子の今昔物語

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    著者の古典に係る本が好きで本書を手に取りました。
    原本は無理だけど著者がわかりやすく砕いた文章にしてくれたおかげで読み易かったです。
    他の著者の今昔物語も読んだことがあるけれど、抜粋した物語が違っていてそこが面白いところ。
    岡田嘉夫さんの装画もとても素敵!

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    2025年08月12日
  • 欲しがりません勝つまでは

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    読んで良かった。思っていたよりも軍国少女だったのだと知る。だけど、ジャンヌ・ダルクに憧れ、吉屋信子の小説にうっとりし、中原淳一のイラストの少女が大好き。13歳の田辺聖子さんはすでにしっかり田辺聖子さんの世界を持っていた。天皇陛下のために、日本のために、死ぬことをなんとも思わない。なんと子どもは純粋なのか。そんな子どもの純粋さを利用して、ヒトラーは軍隊を作り、日本も神風特攻隊を作る。きっと、今の子どもたちにだって、同じ教育をすれば同じことをするのだろう。それは、私が子どもの時だって同じ。私も同じように、軍国少女となったのだろう。終わりが分かっているだけに、1人ひとりのお友達の行末が気になりながら

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    2025年08月10日
  • 言い寄る

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    水野が最高である。高橋一生で実写化してくれ。

    いや、高橋一生は五郎のがしっくりくるかもしれない。なので水野は斎藤工も良いとおもったけど、小説内の水野像よりもたぶん斎藤工は顔面濃いのと身長が合わない。
    海で助けてヒョイと助けてくれそうなのは斎藤工だけどね。あー、水野が出てくるシーンを読み返したい。

    こうやって考えるのが楽しすぎます。水野にきゅんきゅんして生活潤いましたありがとうございます。

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    2025年08月03日
  • ジョゼと虎と魚たち

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    好きだ~~~!短編集だけど全部好き。
    文章の手触りも思想も心地よい。

    「しかしその楽しさを世間に告白することはないのだ。」という主人公の女性にならって、この共感は胸の内に秘めておこうと思う。

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    2025年07月28日
  • 残花亭日暦

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    ご主人、かもかのおっちゃんの看病と別れ、
    「かわいそに。ワシはあんたの。味方やで。」と言う言葉が
    清古さんを支えていく、壮絶で愛がいっぱいの看病と最後の日々、涙流れて困ります。すばらしい。

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    2025年06月29日
  • ジョゼと虎と魚たち

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    女性目線の短編集

    男だが楽しめた
    ハードルは高かったが、やっぱりジョゼの話が一番好き
    表現が難しいけど、こういう障がい者の心構えというか生き方はカッコいいと思う

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    2025年05月19日
  • 苺をつぶしながら

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    「言い寄る」「私的生活」「苺をつぶしながら」の三部作は、自分の中の恋愛小説に対する概念がひっくり返された衝撃作でもある。

    時代は違うけれど今日に至ってもなおこの小説に心が震えるのは、どれだけ時が経っても「幸福」の本質はとても素朴で、心の充実は力強いという事を示してくれているからだと思える。

    深夜、のりこと剛が東京へ向かう車内のやり取りはまるでドラマのワンシーンを見ているかのようで、何度もページを戻して読み返してしまうくらい癖になります。
    剛はイヤ〜な奴だけどかわいいから憎めない。

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    2025年07月21日
  • 私的生活

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    一番好きな小説。

    色変わりする気持ちや心の揺れ動きを軽やかなタッチで描く田辺聖子さんの筆力に圧巻。昔の空気感が溢れているのに、重苦しい生活の悩みや人の心の繊細な動きは普遍的で、現代を生きる自分と何ら変わりなく思う。

    剛ちゃんは決して良い奴ではないのに、ここまで魅力的なのはどうしてだろう?と思いながら続編「苺をつぶしながら」を読んでみるとまさかの再登場。

    もしかしたら剛は田辺聖子さんのお気に入りなのかもしれない、と思って読み返したら一層楽しめました。

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    2025年07月21日
  • おちくぼ物語

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    継母にいじめ抜かれていた『おちくぼ姫』が、貴公子に見出されて幸せなるというシンデレラストーリー。会話多めで読みやすく、しかも面白さ抜群。時折、「源氏物語」「枕草子」「蜻蛉日記」等の記述にも触れられ、平安時代の風俗について説明が入るので、当時の貴族の生活がよく分かります。田辺聖子さんの、古典知識の豊富さはすごいなあと思いますし、ユーモアのセンスも卓越しています。原文も読んでみたくなりました。古典文学を身近に楽しめる1冊です。

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    2025年04月18日
  • ジョゼと虎と魚たち

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    初めて田辺聖子を読んだ。

    大人の女性、それも手に職があり地に足のついた、賢い女性の恋が、解像度高く美しく描かれていて、ぐいぐい読まされた。
    恥ずかしながら著者について何も知らないが、著者自身もとても賢い方だろうと思った。

    昭和に書かれた本にも関わらず古いと思うことなく読める。
    結婚という形に囚われない恋に漂う空気感をすごくよく捉えている気がして、それが言語化されていることに感動した。

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    2025年04月13日
  • 私的生活

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    人生でトップレベルに好きな本です
    乃里子三部作のなかでもぶっささりでした。良すぎて悲しくなるくらい。終わっちゃうのが泣けてくるくらい!でもページを読む手は止まらない
    楽しみに身を委ねる自由な精神と、彼に抱く優しさとか憐憫とか諦めとか依存とか刺激のあいだに揺れる乃里子の心情がたまらなく理解できる

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    2025年04月10日
  • ジョゼと虎と魚たち

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    ネタバレ

    どの話も好きだったけれど、ジョゼと虎と魚たちはタイトルにもなっているとおり、他とは違う 心にずしんとくる余韻があった。田辺聖子さんの表現が好きだ。

    山田詠美さんの解説「-そして、時には自分で意識していなかった真実を指摘されてぎくりとさせられる。思わぬところでさらけ出された自分の正直さに少しうろたえることもある。けれど、その感情は決して不快ではない。」にすごく共感した。

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    2025年03月21日
  • 言い寄る

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    文章が好き、そして自分には同じ経験がなくても乃里子の気持ちはよく分かる
    皆んなそれぞれ好ましくて、けれどなにか違うと思うところがある。誰かの代わりは誰かではつとまらない。本当に恋焦がれてる相手には言い寄れない

    「水野を好きなのはまちがいないのだが、今はどうしてか、どんな男を持ってきても何かスキマがあって、風が通ること。その空洞の型はぴったり、五郎でないとうめられない型になっていた。」

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    2025年03月20日