あらすじ
現在も読者に、そして後進の書き手に多大な影響を与え続ける作家・田辺聖子。彼女の少女時代は、戦争の時代だった。女学校で先輩に憧れ、物語の世界に遊び、空想を膨らませ創作する、その生活に忍び寄る戦争の影。自らの作家としての原点となる日々と反戦の思いをみずみずしく描く傑作エッセイを復刊。
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Posted by ブクログ
書店で平置きされていて気になり、購入。
私は子供の頃から戦争の話は大嫌い。
聞くに耐えない悲惨な話と、二度と戦争をしてはいけない、というお決まりの結論で。
でもこの本は、そんな戦争の話とは全然違って面白かった。
日本は、田辺さんが生まれた時から戦争をしていたので、田辺さんは戦争をしていない日本を知らない。軍国主義にどっぷり染まった13〜17歳の日々が描かれている。
本書の最も良いところは、当時彼女が書いていた小説がそのまま載っているところ(大人になった本人の批評付き)。例えば、当時ドイツとは同盟関係だったので、新聞や本で得た知識だけで、ドイツ軍が活躍する小説を書く。
物が乏しくなる中でも、彼女の精神的豊かさには驚かされる。読書の喜び、楽しみを再確認できた。
Posted by ブクログ
読んで良かった。思っていたよりも軍国少女だったのだと知る。だけど、ジャンヌ・ダルクに憧れ、吉屋信子の小説にうっとりし、中原淳一のイラストの少女が大好き。13歳の田辺聖子さんはすでにしっかり田辺聖子さんの世界を持っていた。天皇陛下のために、日本のために、死ぬことをなんとも思わない。なんと子どもは純粋なのか。そんな子どもの純粋さを利用して、ヒトラーは軍隊を作り、日本も神風特攻隊を作る。きっと、今の子どもたちにだって、同じ教育をすれば同じことをするのだろう。それは、私が子どもの時だって同じ。私も同じように、軍国少女となったのだろう。終わりが分かっているだけに、1人ひとりのお友達の行末が気になりながら読んだ。そして、戦時中とはいえ、キリスト教会に行ったり、聖書を読んだりすることができていたことに驚いた。カレーライスを作るところも驚いた。カレーはいけない食べ物だと思っていた。英語が禁止になって、バスの日本語を考えて笑い転げるシーンは心が和んだ。あの頃の子どもたちにも、笑える時間があって、どんなことも笑いに変えるユーモアがあったことを、とても嬉しく思った。私もそういう心を持っていたい。この本は、今後も絶版にしてはいけない本。定期的に復刊させて、ちゃんと田辺聖子さんの想いを次の世代に繋いでいかないといけない。
Posted by ブクログ
「欲しがりません 勝つまでは」
このスローガンのもとに国や軍部から何もかも我慢させられた戦時下の銃後の女性や子供達。
13才の夢見がちな文学少女が、なぜ軍国少女になっていったのか。
田辺聖子さんが13~17才、女学校時代の戦争体験を綴った自伝小説。
戦争の話だけど明るいタッチで描かれ、戦局が悪くなるまでは戦時中でも女学校の友達と小説や回覧雑誌を書いたりと青春を楽しむ姿がリアルに描かれています。
その時々の読んだ本や作家に感化されて12作の小説を書いているのと、そのジャンルも冒険ものやスパイ、海賊、海外を舞台にしたものなど多岐にわたりスケールの大きさとクオリティの高さには驚かされた。
本書でも著者の貴重な学生時代の作品の一部を楽しむことが出来るのが嬉しい。
生まれてからずっと戦争のなかで育った田辺さんは、幼い頃からお国のために、天皇のためにと聞かされて育ったので軍国少女となっていくのは必然だったのだろう。
人一倍、周りに感化されやすいのもあり、ジャンヌダルクに憧れたり、ヒトラーを尊敬していたりと、13才の割には大夫おしゃまでちょっと変わった少女だったように感じる。
終戦とともに全ての価値観がひっくり返り、
何を見ても聞いても「ほんまかいな」と感じてしまう著者の言葉が印象的。
でも、それは情報の多い現代も同じ事で何が正しいか自分の頭で考えて判断する事が大切なのだと感じた。
本書は明るくやや軽佻な口吻で描かかれています。
これは著者が後世に伝えるにはこの方が似つかわしいという思いからです。
実際初版から50年近く経た現在でも読みやすく著者の戦争への強い思いが伝わってきます。
戦時中も戦後も著者は本が心の拠り所で本に救われた。本書にもそんな力があるのではないだろうか。
何度も復刊され読み継がれていく本書に
「作品」としての力強さを感じた。
Posted by ブクログ
粗筋の最初の一文通り、軍国少女で文学少女の話だった。
まさか女子ながら玉砕を覚悟していようとは。
これが当時の女子たちの代表的な姿かと言われると、彼女が作中でも「変わり者」と評されていたところを鑑みるに、極端な例かもしれない。
彼女の友達にも極論に走る子、冷静に見ている子、様々だったので。
ともあれ、戦時中を生きた少女の日常として読んだ。
驚いたのは作中でも実際の文章ごと紹介された小説の数々。
ツッコミどころはあれど、あの内容を10代の少女が書いたのかと思うと脅威を覚えるほど。
ただ玉砕を覚悟していたはずの少女が、空襲を経験し、終戦を迎える頃には何事に対しても「ほんまかいな」と思うようになり、最終的には「生きたい」とまで思えるようになった変化にも驚かされた。
それもまた10代の少女にとって戦争の影響が大きかった証左なのかもしれない。