あらすじ
須磨の流人生活から京へ戻り、政界最高の実力者となった光源氏。三十を過ぎてオジンの仲間入りだが、本人は都一の美男と自惚れ屋のまま。相変わらず色恋に熱心で、意中の姫のもとへ通うのだが……。少女から思い通りに育てたはずの紫の姫に翻弄され、生真面目な末摘花には興ざめの対応をされ、思いのズレル散々な日々。「源氏物語」の女人側からみた源氏の恋物語を現代風に描く愉しい古典パロディ。
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Posted by ブクログ
田辺聖子は特に好きな作家の一人だが、その中でもこの本は何度読み返したか分からない。
一口に言ってしまえば源氏物語のパロディであるが、本家を超える面白さがある。その理由は登場人物の魅力にある。
光源氏は低俗で情けない人物として描かれているが、源氏を取り巻く女性たちは対照的に、鮮やかで生き生きとした魅力にあふれている。
紫の君は、はねっかえりで源氏をいつもやりこめてばかりいる。女三宮も溌剌としていて天真爛漫だ。玉鬘は源氏の古臭い色香に惑わされず、運命の相手を自分で選び取り、空蝉は自ら大胆に源氏を誘う。
彼女たちは常に自分の気持ちに正直に生き、潔い。真っ直ぐで大胆で、それでいて馥郁とした美しさと気品を持ち合わせている。
男の気まぐれや都合に翻弄され、泣き寝入りをしてきた源氏の女たちにはない、凛とした強さがある。
本当にみんなチャーミングだが、特に紫の君は魅力的だ。
やんちゃで、お転婆で光源氏に対してずけずけと言いたいことを言うが、心の底では光源氏を大切に想っている。思いっきりツンデレなんだよね・・・。わがままで勝ち気だけど根はやさしい。
美少女のツンデレほど美しいものがあるだろうか。
やはり光源氏という男は幸せ者なのかもしれない。