桜庭一樹のレビュー一覧
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主人公の小林波間32歳は、胸に悪性腫瘍ができたため、摘出手術を前にして腫瘍を小さくする辛い点滴治療を受けていた。
通院の日に波間の目の前で、通り魔が幸せそうな若い女性を刺す事件に直面する。
その混乱した現場で、大学時代の同級生だった中川と偶然に出逢い、LINEのIDを交換して後日逢おうと約して別れるが、何故かその後逢うことができない。
あの出逢いは何だったのか不思議なのだが、ただLINEでのやり取りは可能だった。
そのうちに波間が住む東京と、中川が住んでいる東京とは、どうやら異なる世界らしいことを知る。
異なる東京の同じ場所からビデオ通話を繋げ、映像を観ながら会話を続けていた。
中川との偶然な出逢いから始まったお付き合いは、波間にとって心と身体が癒やされる時だった。 波間の困難な病気などは些細な出来事で、世の中は淡々と日常が進み、個人と社会との繋がりは曖昧で見え難い。
そんな時、世界中に恐怖を巻き起こす感染症が、中川が住む東京でも一挙に流行し、医療崩壊が起こっている事実を知らされる。
そのために2020年開催のオリンピックも、延期が検討されているとのことだ。
その後には大国が小国へ理不尽にも侵攻し、激しい戦いが引き起こされた。
それとは対照的に、波間の住む東京は、何の変化もなく淡々とした日常が続いている。
そして徐々に中川とのLINEも通信が滞るようになり、いっ時は密接にお付き合いをしていた彼の存在も希薄になって行く。
この物語は、パラレルワールドという設定の基、人の心の危うさ、儚さ、意思とは異なる心の動き、そして複雑さがテーマとなっている。 -
Posted by ブクログ
ネタバレマコとコマコ(母と娘)の逃避行。
親子というよりは、コマコを所有物、時にはいないものとして。絶対服従の関係。
10年間。
絶対服従は変わらないのだけれど、コマコも成長し、マコに対しての愛情に変化がでる。
マコがいなくなったコマコはそのあとをどういきるのか。
破壊行動、暴力。
止められない衝動。
マコはピンク、コマコは水色。
いろんなものを演じられるけど、自分は演じられなかったコマコ。
書くことから逃げた後に、出会った真田との関係。
きれそうで切れない、失ってしまうかもしれない、快適で柔らかな朝には戻りたくない、合わないし、自分を変えられないと思うのに、気になる存在。
コマコの本は読まないと言っていたのに、関係がギクシャク、彼女を変えてしまった(もとに戻りつつある、戻っただけ)その原因を知るためか、コマコの本が部屋の中に。コマコは、見て見ぬふり。
最後までどうなるか、途中で別れてしまうのか気になって読んだ。
第二部の文字に眠るは、少し苦手だった。
嘘の話をつくって語るシーンが多くて。
出会いの場面は良かった。
いろんな人と出会って、この時はわからなくても鍛冶野さんが語った意味や、繋がりをふりかえる、作家として動き出す(作家になるんだろうなと思った)大事な章なのだろうと思ったから、時間がかかったけれど、嘘の物語をとばさず読んだf(^_^;
ポルノスターの彼女との出会い。
父親から連絡がくるのをずっと待つ。
来ないんだろうな、最後がどうなるかは想像通りだったけど、彼女の叫びがつまった章。
p681-12~16
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同期に借りた。感想欄に高評価のコメントが多くて正直驚いた。とある田舎の超美少女を取り巻く物事(彼女の母親の優奈を元凶とした愛憎劇が結構な割合を占める。)が淡々と記されている。七竃と雪風の関係は好きだし美しいなと思うけれど2人の変に堅苦しくて古臭い話し方は気になった。かんばせって文面から意味は察せたけれど聞いたことない単語だった。最初ウザいなってムカついていた後輩の緒方みすずのことは最後ちょっと好きになった。七竃は淫乱な母親を恨んで忌み嫌っていると思っていたけれど案外そうでもないというか甘えたいという気持ちがあるのが以外だった。母親の優奈も別に七竃のことを嫌いでは無いわけだし奇妙な家庭だよね。一般的に美化されがちな恋を『ぐじゅぐじゅに腐った醜くて利己的な感情』って表してるのがなんか良かった。全体を通して何も起こらないし綺麗なのか汚いのかよく分かんないけれどぼんやりと儚い感じの話だった。
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Posted by ブクログ
ノンフィクションのような内容だが、著者曰く 「確実な虚構を入れたから、あくまでも小説」だそうだ。
山陰で生まれ、小説家として東京で暮らすようになった著者。父の危篤により再び故郷へ戻り、実母との物理的距離が縮まる中、噴出してきた感情の数々・・・。
山陰という土地柄、典型的な田舎人間が多いようだ。曇りがちな天気も起因しているのか。
東京では人間関係に影響が出そうな表現、内容は口外するのを憚るが、 この地では無遠慮に口に出す。(著書より)
また、全体的な秩序維持の下には、個人の幸福は全力で押さえつけられる。
という表現に戦き、恐怖を感じた。
と共に、自分の故郷にもある共通点を思い出した。
例えば、消防団。
都会ではあまり聞いたことがないが、自分の生まれ育った地域では高校を卒業した男は地域の消防団に加入することになっていた。、任意という義務のような決まり。
もしそれを拒むと、○○さんの息子さんはおかしいわ、変やわと近所中の噂になるそうな。
あとは、家父長制が絶対的な幅を利かしている田舎において、家族や地域のルールを決定する際、多くにおいて女性の意見は斥けられる。
代々続く偉いさんや名家の男が権力を持ち、○○さんとこは偉いさんやからなぁ〜 とそれになんの違和感も持たず、自然に踏襲する。
わたしなど子供たちが、何かおかしくない?と石を投げると、「そんなこと言ったらアカン!!」と大人たちが血相を変えて潰しにかかる。
ということが確かに、子供時代には数多くあった。
とにかく、疑問を持たず、ただひたすら昔からのやり方を同じように受け継ぐことを良しとする文化。そうしていれば出る杭は打たれないし、ご近所さんとも上手く付き合っていける。
それに反抗するなら
「出ていけ」。嫌なら 「従え」だ。
ただ、家族の中でまでその因習が持ち込まれるとしたら、どうだろうか。
世間体を大切にするあまり、時に地域の付き合いに反抗するかのような子供の意見を力づくで封じ込めてしまえば、親子関係に支障をきたすことは明らかである。
著者はと 東京に出たかったと綴っている。
田舎の人間関係は濃密で、時に暴力的だ。
静かに誰かの首を絞め、圧力を加えていく。
その点、近所に誰が住んでいるのか分からない都会で暮らすのは気楽だ。
うちのマンションなんて、エレベーターで相乗りした際は会釈こそすれ、挨拶すらしない人もいる。
そんなコミュニケーションを放棄した人たちがたくさんいる環境に慣れたら、今更気を使いまくる、窒息しそうな場所で生活することなんて、できない!と思うのはとても理解出来る。
実際実父が亡くなり、母から「落ち着いたらこっちに帰ってきてよ」と言われた著者が、「いや、職業柄それは難しい・・・」
とハッキリ断る。
著者は母から暴力を振るわれたこともあるそうだ。しかも実母はその母(祖母)から暴力を受けていたと、暴力の、連鎖。
著者が孕んでいるものが多く、成長する過程で気苦労が耐えなかったんじゃないかと思った。
タクシーに乗り、運転手が20代の若者なのを知り、「この仕事は長く続けられないから、他の仕事をした方がいい!」とダイレクトに言ってしまうような 母と同じ家で暮らしてきたんだもの。
ただ、そんな母へも一定の理解と客観的な視点を持っている著者は大人だ。
表題作の他に著書に書かれていない内容をあらすじとして文芸批評欄に書かれてしまった事件?への対応、奔走、ついには疲れて寝込んでしまう・・・等の顛末が書かれたキメラ、も併録。
桜庭さんって少女を主人公にした小説だと、追い詰められた立場の人間の心理を書くのが上手いという印象だった。
少女には向かない職業とか、砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けないなど。
彼女が母をデマから守ろうとする姿は勇ましく、弱いなんて思えなかったし、積み重ねてきたキャリアを反故にしてでも火を消しに奔走したのは意味のあることだったと思う。