萱野稔人のレビュー一覧

  • 超マクロ展望 世界経済の真実

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    日本の書き手としては珍しく、歴史的視野で経済を見る水野と、政治哲学の立場から発言する萱野による時宜を得た対談。
    現在もっとも求められているのは本書のように「絶望を煽ることなく、希望のない状況を語る」ことだと思う。国全体を動かすような成長や活力が幻であることは、誰もが薄々感じていることだから、冷静に語りかけられればパニックにはならないのに、どうしたことか巷に溢れるのは超楽観か絶望あるいはスパルタ式の叱咤激励本しかない。
    いや、そもそも国なんてものに縛られている必要はない、という議論もあるが、資本主義が常に市場経済の「外部」を必要としたという本書前半の対話、特に今般の危機に際して最後の貸し手として

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    2014年03月08日
  • 「生きづらさ」について~貧困、アイデンティティ、ナショナリズム~

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    ○津田塾大学准教授の萱野氏と作家の雨宮氏の著作。
    ○非正規雇用者の労働状況や思想(右翼左翼)関係をテーマに、現代社会の労働のあり方についての対談をまとめたもの。
    ○雨宮氏の非正規雇用(フリーター)やメンヘラーについての考察や指摘は、自身の経験に裏打ちされたものでもあり、大変分かりやすく、また、実態をリアルに伝えてくれるもの。
    ○本書で提示された問題点や課題については、大変本書の発行から5年たった今でも、変わらずに存在し続けており、むしろ、「貧困」への流れなどは加速しているように感じる。
    ○思想云々ではなく、このような現場が間近にあるということについて知るには、大変良い本だと思う。

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    2014年01月31日
  • 金融緩和の罠

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    ■生産年齢人口の総人口に占める割合のピークは、日本は1990年頃、アメリカ、アイルランド、スペインは2005年頃、中国は2015年頃。
    ■中央銀行ファイナンスによる追加財政、すなわちマネタイゼーション戦略は、当初は高めの実質成長率、低いインフレ率、やや高めの名目成長率、低い長期金利、リスク資産価格の上昇が観測され、バブル的な様相が強まる。しかし、その後は、低い実質成長率、高いインフレ率、高めの名目成長率、リスク資産価格の下落が訪れる。
    ■人は、お金そのものが欲しい。純粋に、今お金があるからあれもこれもと実感できて嬉しい。
    ■完全失業者は300万人前後。彼らを100万人雇うためには消費税を数パー

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    2014年01月08日
  • 没落する文明

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    エネルギーのポテンシャルを使い果たすと文明は失速する。あたらしいテクノロジーが出てこなければブレークスルーもない。そうするとしばらくは停滞する、というか没落する。そして日本は古くから災害で攪乱されて変化を起こしてきた。となればいまは、まさにそんなときではないか。傘を発明したから天気を気にする必要が出た。何かを発明すれば事故も同時に発明することになる。バブル的マインドの人には到底受け入れられない話ばかりかもしれないが、僕はこの没落という転換におおいに希望を持つのです。

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    2013年08月28日
  • 新・現代思想講義 ナショナリズムは悪なのか

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    ナショナリズム成立の過程、国家とは、ネーションとは、国民国家とは、共同体とは、、、
    それぞれについて丁寧にまとめてくれていて、様々な方面から国内外問わず論者を引き合いに出して論を展開しているので、まさに入門という感じで今の僕にはうってつけだった。この辺りのテーマをこれから学びたい!という人にとっては良書だと思います。

    読んだことは無いけれど、以前の著書でも扱っていたのか、暴力と権力というところからのアプローチが多かった。

    また、タイトルの「ナショナリズムは悪なのか」というところからすると、ナショナリズムを擁護するような内容なのかとも取られるかもしれないが、ナショナリズム批判に対する批判、つ

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    2013年05月26日
  • 金融緩和の罠

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    昨今言われている金融緩和で日本経済は打破できるのか?
    これについて、3人のエコノミスト・経済学者へのインタビュー形式で書かれています。

    セオリーベースではなく、ファクトベースで判断するのは、何も経済学だけに限ったことではありません。その重要性にもきづくことのできる1冊です。

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    2013年05月02日
  • 没落する文明

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    資本主義は成長をし続ける宿命にある。
    資本主義を加速させようとする人はそのことをよく理解している。
    そしてそれに異を唱える人をナイーヴのように評価する。

    しかし実のどころナイーヴなのは無批判に資本主義に乗っかったままの人だったりする。

    資本主義は構造的に早晩限界を迎えることを理解していないのだ。

    本書は論点も整理されており資本主義がなぜ、そしてどう限界を迎えるのかを理解する手助けになる。

    確かに資本主義は恐ろしい加速度をつけて疾走している巨大なシステムだ。簡単にはとめることはできない。そしてとめることが正しいこととも思えない。

    しかしその先を見据えるためにはきちっとその限界を理解して

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    2013年01月10日
  • 没落する文明

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    3.11に起きた地震と大津波は、私たちの生活が自然環境という、人間の力ではどうにもならない条件のもとでかろうじて成り立っていることを再認識させた。
    国家と資本主義の構造を原理的に問い直してきた哲学者 萱野稔人と、リスクと社会の相互作用を論じてきた科学史者 神里達博が、天災、テクノロジーなどについて、対談形式で新しいビジョンを提示する。
    個々人の競争や責任でリスクを回避しようとすることの限界について、再度考える必要がある。

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    2012年12月23日
  • 没落する文明

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    対談本なのですっと読み切れてしまうがなかなか面白い指摘が多い
    長いスパンで日本史(といっても有史より前も含むが)を見ると大災害が歴史的変換点の起点になっている、ということか。
    日本では革命の代わりに大災害が起こっている感じが近いのか。
    大災害にさらされてきた日本人はその無力感により基本的に反権力であるとの指摘が結構説得力があった。
    それと何故アジアの人口密度が高いかについての指摘で単位面積当たりの米と小麦の収穫量(カロリーベース)が6倍あるとの指摘もおもしろい。
    もう一つ、4大文明のうち中国文明を除く3つは滅亡したがこれの原因は資源収奪のための自然破壊(森林伐採)による砂漠化が原因との指摘に納

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    2012年10月30日
  • 新・現代思想講義 ナショナリズムは悪なのか

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    第一章 ナショナリズム批判の限界
    ──格差問題をめぐって
    第二章 ナショナリズムとはどのような問題なのか?
    第三章 国家をなくすことはできるか?
    ──国家を否定する運動がナショナリズムに近づくという逆説
    第四章 私たちはナショナリズムに何を負っているのか?
    ──国家と資本主義の関係をめぐって

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    2012年07月31日
  • 没落する文明

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    地震や火山活動、台風などによって日本の統治システムが瓦解していくことは、実は珍しいことではない。江戸幕府が倒れたのも、黒船よりも安政の大地震によって既存の統治機構の信頼性が揺らいだからと言われている。

    果たして、東日本大震災後の日本社会はどうだろうか。誰も今の政府の言うことなんか信じちゃいない。それでも世の中を覆う漠然とした不安に、我々は向き合っていかなければいけないのだ。

    文明論においても、経済成長という幻想は戦後のたった40年程度のものであると結論づけている。それでも現代社会は、経済成長という至上目的を守るために、年間3万人もの自殺者を生み、数十年後には空き家率が40%に達するというの

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    2012年07月31日
  • 超マクロ展望 世界経済の真実

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    1970年代前半から先進国では交易条件が悪化し資本利潤率が低下してきている。高度経済成長が止まり、資本投下によるリターンも得られなくなる。実物経済から金融経済へと舵を切るも2008年の金融危機は金融経済化の方向も息詰まらせることに。定員15%の近代資本主義が新興国の隆盛によりバランスが崩れ、今、世界の資本主義の構造が大きな転換期にさしかかっている。現在のデフレは一時的な不況などではなく構造的なものであり、金融施策で克服できるようなものでは決してない。今こそ低成長時代の制度設計の立て直しをと著者は訴える。このほかバブルのしくみ。イラク戦争の真相。ヘゲモニー移転など興味深い内容が次から次へと繰り出

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    2012年06月28日
  • 没落する文明

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    景気循環だとか、資本主義の限界だとか言われている今日この頃ですが、
    そんなスケールの話ではなく、
    今の化石燃料をベースとした文明の終わりを
    我々は、今まさに経験しているのだということを、
    萱野氏と神里氏が対談で確認している。

    萱野氏の超マクロな視点と
    神里氏の科学史的視点が、
    今まさに転換点であることを示していくのが、
    逐一納得させられる。

    多くの人は、この転換点を生きることは、
    不安に思うだろう。
    だが、それはこの上のない経験なのだ。
    道を誤らないように適切に判断して、
    行く末を見届けたいと思う。

    自分が生きてる内に大転換できるかどうかは、
    わからないが、
    子供たちが、路頭に迷わないよ

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    2012年06月17日
  • 新・現代思想講義 ナショナリズムは悪なのか

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    他の日本の論者とは一線を画する国家論。

    <印象的な箇所のまとめ>
    ・ネーション(国民)とナショナリズムと国民国家は異なる。
    ・ネーションとは人間集団の単位。同じ国民なら、あなたと私は同一だと想像して生まれる想像の共同体。
    ・ナショナリズムとは、同一民族が一つの国家を作るべきと考える主義主張、政治的原理。政治的単位と民族的単位は同じであるべきと考える。
    ・国民国家とは、ネーション(国民)を集団単位とする国家の一つの形態である。
    ・日本の知識人の間では、想像の共同体であるネーションと国民国家を混同し、国民国家は想像の産物だと批判する議論が多いが、国民国家は実在する合理的機構。ネーションのような想

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    2012年06月11日
  • 超マクロ展望 世界経済の真実

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    経済学者である水野和夫氏と哲学者である萱野稔人氏との対談本。

    この本で、アメリカのイラク戦争の目的が理解できたような気がする。水野氏の指摘が正しいか否かはわからないが、イラク戦争の目的を論じた様々な言説の中で、最も腑に落ちる内容だった。

    しかし、萱野氏は実に首尾範囲が広いものだと感心する。

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    2012年05月07日
  • 没落する文明

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    ⒊11をモチーフに成長社会から縮小社会へ。徳川幕府の始まりも同じであるが、いろんな意味でのエネルギー転換を拡張から別の方向へ持って行くことで新たな文明を作り得る、拡大することが必ずしもよいことではないと説いてます。

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    2012年04月08日
  • 「生きづらさ」について~貧困、アイデンティティ、ナショナリズム~

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    見えにくく隠されている問題点を具体的に引き出し、わかりやすい。
    人間の社会的支えである経済性あるいは精神性の貧困状態を現象面で具体的にとらえ、てその構造の矛盾を指摘している。
    貧困の詳細を社会(政治・行政・司法・企業・)と個人のギャップから見つめて実名で開示していることが、わかりやすい内容にしているのだろう。
    しかしその反面ドップリと入り込んでいる文体には、一般に通じにくい単語が多く、読者を狭くしているようにも思える。
    プレカリアート・ネオリベ・ガテン系・・・などなど。
    コミュニケーションなど、対談している二人の中でさえ単語の意味がずれているように思えるものもある。

    賃金の格差や

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    2012年03月08日
  • 新・現代思想講義 ナショナリズムは悪なのか

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    日本の人文思想界に蔓延するナショナリズムを悪と捉える批評者たちのふるまいを、ナショナリズムに依存しつつ反発するのは思春期の反抗とほとんど変わらないと評して、バッサバッサと著名論者たちを斬っていく。面白い。

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    2012年01月04日
  • IT時代の震災と核被害

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    あの日、IT企業で何が起こっていたか、から、あの日から、僕らはどこへ向かっていくのか、まで。
    引き受けて考える、ことが、紹介されてる色んな人たちに通奏低音になっていて、宮台さんの文章でしっかりと言語化されて、締まった感じ。いわゆる理系と、いわゆる文系をつなぐ一冊。編集、お疲れさまでした。

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    2011年12月31日
  • 超マクロ展望 世界経済の真実

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    面白かった。現在、世界経済が内包する諸問題は単なる不況ではなく、資本主義が迎える構造的な大転換であり、パラダイムシフトである、という著者の考察をわかりやすく解説している好著。資源価格に全てを転嫁しているなどややモデルが単純すぎるきらいがあるが(専門家じゃないので詳しいことはわかりませんが)、先進国というビジネスモデルが成り立たなくなってきている、という点は説得力ある。あと、中世の封建制、16世紀の絶対主義や資本主義との比較などの視点は今までなかった。金融というのは実態経済が衰えてくると、必ず出てくるものなんですね。

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    2011年11月06日