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現在の世界経済危機を単なる景気循環の問題としてとらえるならば、この先を読むことはできない。むしろ、資本主義そのものの大転換、400年に一度の歴史の峠に我々が立っていることを認識してこそ、経済の大潮流が見えてくる。資本主義の歴史的な構造変化を大胆に描いてきた異色のエコノミストと国家への深い洞察にもとづいて理論的考察をくりひろげる哲学者が、経済学者には見えない世界経済の本質を描く意欲的な対論。【目次】はじめに――市場経済だけで資本主義を語るエコノミストたちへ/第一章 先進国の超えられない壁/第二章 資本主義の歴史とヘゲモニーのゆくえ/第三章 資本主義の根源へ/第四章 バブルのしくみと日本の先行性――日米関係の政治経済学――/第五章 日本はいかに生き抜くべきか――極限時代の処方箋――/対談を終えて/「歴史の峠」に立っているという認識を 水野和夫/経済学的常識への挑戦 萱野稔人
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Posted by ブクログ
資本主義とは自由な市場原理における経済活動ではない。なぜならその市場のフレームやそこでのルールの策定は市場原理とは別の力(国家による政治力)によって決められているからだ。バブルが崩壊したとき公的資金という市場とは別に調達された資金が、資本主義のシステムを支えているのはそのいい例だ。本書は資本主義を歴史の線でとらえななおし、資本主義がどういう理屈で富を生み、やがてどういうふうに行き詰まっていき、どういう新たな市場を産み出していくのかを検証していく。そして著者たちは、金融バブル崩壊後の社会においては、もはや経済成長を前提とした展望はなく、資本主義という仕組みが歴史の中で大きな転換期を迎えている点を指摘する。
Posted by ブクログ
大澤真幸との対談でじわじわと感じてはいたけど、今回は萱野念人という結構若手の哲学者との対談で、ドゥルーズ=ガタリへの言及があった。その線ではあまり掘り下げがなかったけど、水野氏の他の著作と同じく、現在の経済的行き詰まりを一過性の問題としてみるのではなく、歴史的な転換期にあるものとしてとらえている。
本書で目を引いたのは、現代史的な事件の裏の真相的なところ。
例えば、大義名分が不明瞭だった湾岸戦争に米国を駆り立てたものは、基軸通貨としてのドルを守るためだったとか、日本の80年代バブルは、米国の軍拡競争の財政赤字を補てんするために引き起こされたものであるとか。
米国が覇権を握り続けるためには、なんでもありなのかと辟易とした。
こんなことも含めて、現在経済をはじめ世界で起こっていることが、いろんな歴史的背景や意味を帯びていることを読み解かないと、対蹠的療法では持続性がないし、事態を悪くするだけかもしれない。
本書は2010年12月の発行だが、円安と円高のどちらが日本にとってメリットがあるかの議論があった。資源はドル建てなので、円高の方が交易条件の改善につながること、また、資源を輸入する素材産業の方が、輸出のメリットを受ける産業よりも、経済規模が大きいことなどの理由が挙げられていた。
3年半たって、日本は真逆の方向に進んでいるのだが、果たしてこの方向性で大丈夫なのか?
Posted by ブクログ
資本主義が始まって以降の歴史的な分析がわかりやすく明快だった。
今までこの本に気づかなかったことを悔しく思うほど。
スペインやポルトガルが新大陸を発見するだけでは世界の海の支配を確立するには十分ではなかった。16世紀以降、オランダが造船技術を革新して世界の海を支配する基礎をつくり(空間革命)、それをイギリスが決定的な形で引き継いだ。
16世紀末から17世紀初頭に、イタリア、スペイン、オランダで金利が最低水準になり、領主が利潤を得ることができなくなったことを示している。封建制が崩壊し、土地が売買や賃貸の対象となって資本主義と絶対王政が始まった。
現在の途上国では、東インド会社の時代から交易条件(輸出物価を輸入物価で割ったもの)が下がり続けた。
19世紀まで経済は定常的なものだったが、耐久消費財の生産システムが確立されてくる中で、経済は成長し続けるものという考え方が始まった。
1973年の第一次オイルショックを機に、新興国と資源国の交易条件は急速に改善した。実物経済では儲けることができなくなったため、アメリカはで経済の金融化が始まった。1983年にWTI先物市場がつくられたのは、オイルショックによってOPECに移った価格決定権を取り返すためだった。
1995年からアメリカは「強いドル」政策に動き、国際資本が国境を自由に超えるようになったため、日本やアジアの新興国で余っているお金がウォール街にもたらされるようになった。このお金によって、ITバブルや住宅バブルが起きた。
日本では、1995年に売上高に占める変動費(原材料費)率が1973年の水準まで下がったが、それ以降の資源高によって悪化に転じた。
2003年にアメリカがイラクを攻撃したのは、2000年にフセインが石油の決済をドルからユーロに変えた決定をつぶして、基軸通貨としてのドルの地位を守るためだった。
1974〜2002年の間、原油の価格は10〜30ドルで推移していたが、2003年からこのレンジから外れて上がっていった。
日本では、バブル崩壊後、企業は借金を返済してきたため、銀行の貸出金が減り、国債で運用してきた。そろそろ企業側の過剰な借り入れは解消されつつあり、銀行の貸出金の減少は止まりつつあるため、国債は国内では消化できなくなりつつある。
Posted by ブクログ
私の現在の世界経済に対する解釈と合致する本でした。内容はそこまで濃くないですが、簡潔に要点を押さえてまとまっており、①コストパフォーマンスの高さ、②非常に分かっている(偉そうですんません)世界経済の解釈が行われている、点に於いて☆5にさせて頂きました。
まず、近代の先進諸国が現在の新興国などで安く資源を買入、付加価値を付け、高く売ることで成長を続けて来たと言うところから始まります。資源ナショナリズムに依って資源の支配権が薄れ、資源価格が高騰し、これによって新興国の交易条件が先進国に近づき、実体経済に於ける先進国の成長モデルが崩壊したと説明されています。
米国は実体経済で成長を続けることが出来なくなった為、金融経済を拡張させ、莫大な利益を生み出そうとした。ニクソンショックによって金の裏付けが無くなったドルを支えるのは資源、つまり石油であり、イラク戦争はフセインのユーロシフト宣言の結果として引き起こされたものである。何故なら、資源ナショナリズムによって既にセブンシスターズなどに依る石油支配は終わりを告げており、米国はその対抗策として金融経済の拡張、石油の証券化を行った為、実質的にイラクに権益を欲していなかった。金融経済の拡張とドルへの資本の集積の基盤となる原油-ドル支払い制度を守る為にイラク戦争は行われた、と。アメリカに領土的野心が無いことを、地政学(本文では明言されていない)的な見地から、シュミットなどを引用して陸と海のせめぎ合いを例示したところが好印象です。つまり植民地モデルの終わりを示唆している訳です。
ちなみに資源価格に支払われる価格は5兆円程度から25兆円に拡大し(つまり経済成長分が全て産油国、資源国に流れた)、企業に於ける利益の上昇分を喰らい尽くした。結果企業は人件費を下げざるを得なくなり、これが実質的な利益増加分とされてる。給与の減少傾向は決して不況が原因ではない、と。私もその通りだと思います。
地政学的なネタとしてユーラシアについて触れたいのですが本題では無いので置いておきます。世界の覇権は実体経済の成長、実体経済の低成長に依る金融拡張と外部への投資、利率の低下、衰退と覇権の移行の連続であると示唆しており、条件空間(法治空間)と平滑空間(条件無し(詰まり外部)空間)のような概念空間を作り出し、これを略奪行為などによって搾取し、実体経済が成長する。これに行き詰まると金融の拡張を行い外部投資が行われ…と言う流れですね。
現在に於いては投資主体(市場の中心)と投資元の分離が行われている為、これまでの歴史とは違ってきたと言う点にも注目しています。つまり、欧米は実体経済の中心では無くなったが、金融市場の中心となり資本を集め、これを新興国に投資することでバブルを起こし利益を得て来たと。その通りですね。これを自国民に対して行なってしまったのが所謂リーマン・ショックなどだったと。
また、資本主義と市場経済を同視していない点など、現実的な認識だと思います。ハト主義の人達は如何せん軍事主義を嫌いますが、資本主義の原点が略奪・搾取行為によって成り立ったのは事実であり、市場主義の主体たる経済と市場を形成する政治の別離不可能性を、グローバリズムと軍事プレゼンスの観点から考えているのが中々秀逸ですね。当然とも言えますが。
バブルの原因に関しても述べていますが、これはいいでしょう。
実体経済を成長させることの出来なくなった先進国に於いて、低経済成長は必然であり一過性の問題ではないこと、グローバリズムによって先進国と新興国の所得が平均化され、賃金が減少すること、物価が下がること、資源価格の高騰が不可避であること、それに伴う原材料費の上昇を加味した円高の利用が有利であること、金融経済を実体経済以上に拡充した世界でリフレ派のぎ論が無駄であること、あとは日本の末路と明るい話題として環境規制などによる成長領域の創設などについて触れていますね。グローバル化に依って中流階級が減り、先進国に於ける金融主体とバブル実体経済主体が金を得て、それ以外はぐっばいするような構造を捉えているのも中々鋭いと思います。
議論形式なので読みやすいですし、中々的を得た議論をおこなっていると思います。これに加えて地政学的議論、エネルギー戦略、資本収支戦略、次世代技術戦略を加えると良い感じで世界情勢が議論出来るかなーと。
Posted by ブクログ
歴史に学び、現状と今後に対して深く考察する名著
1973 オイルショック
先進国の交易条件の悪化→変動費の増加→人件費の減少→景気回復と所得回復の分離
(1971ニクソンショック)1974
実物経済から金融経済へ
95~08の13年間で100兆ドル(米4割、欧3割)
・石油価格の決定権WTI・ドル決済
・イラク戦争は、フセインがユーロ建て決済に挑んだため
・陸地の獲得やコントロールから、経済システム管理のための軍事力行使
・現代版・陸と海との戦い
陸 EU、ロシア、中国
海 英、米
・最後は陸軍が強くないと治安維持ができない
利益率(利潤率)の低下→実物経済から金融経済への移転→他国への投資→ヘゲモニーの移転
・空間革命
新しい空間にそれまでの空間概念の常識を無化してしまうような新しいルールを設定すること
つまり、情報戦
・条里空間→平滑空間(莫大な富の余地)
・産業革命<空間革命
・新技術を資本蓄積に組み込む社会構造
・陸→海→空(20世紀空爆)→宇宙×→自国民(サブプライム)
・軍事ヘゲモニーと経済ヘゲモニー
・ヘゲモニーと工場の分離
・資本と国民の分離 →国民国家×?
・近代資本主義の貧富割合
現状 富:貧=15:85
将来 富:貧=75:25(BRICs)
・略奪→役割分担(税収)→分離
・日本のバブルの先行(貯蓄率、冷戦のドル債の差損の補填)
・低成長時代
銀行の国債引き受け×(企業の過剰債務の解消)
人民元自由化前に財政健全化
・市場の矛盾を国家が引き受ける
・インフレは貨幣現象ではない(国民国家経済の枠内でしか成立しない)
・規制に依る市場価値創出や利潤獲得
・国家の役割が強くなる一方、国家の境界はあいまいになる
・超国家的な徴税機関 cf.トービン税
Posted by ブクログ
今までの先進国経済は、資源国から安い資源を輸入して得られる高い収益によって、高成長を続けてきた。(植民地時代の収奪の仕組みと基本的には同じ)
これが、オイルショックを契機として成り立たなくなり、もはや実物経済ではやっていけなくなり、金融によって利益を上げる仕組みに変化していく。
金融経済化はヘゲモニーの黄昏である。
しかし、ヘゲモニーを中国がアメリカに取って代わるとは考えづらく中国が世界の工場となっても、その利潤をコントロールするのはEUか、米国ではないか。実物経済で利潤がもたらされる場所とその利潤がコントロールされる場所が資本主義上初めて分離されるだろう。
新興国の経済成長による資源価格の高騰と経済成長できる辺境の喪失により、もはや成長はあり得ないと認識し、低成長を前提とした経済モデルを考えていくべきであるとしている。
※レーガン政権はソ連と激しく軍拡競争をしていたが、それによって拡大する財政赤字を日本企業がファイナンスしていた。しかしブラザ合意でドル安になったとき日本の生保は大手七社で1.7兆円の損をだしたが、そこで生保に引き上げられるとアメリカも困るのでアメリカの要請のもとバブルが引起されたという説がある。
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