【感想・ネタバレ】超マクロ展望 世界経済の真実のレビュー

あらすじ

現在の世界経済危機を単なる景気循環の問題としてとらえるならば、この先を読むことはできない。むしろ、資本主義そのものの大転換、400年に一度の歴史の峠に我々が立っていることを認識してこそ、経済の大潮流が見えてくる。資本主義の歴史的な構造変化を大胆に描いてきた異色のエコノミストと国家への深い洞察にもとづいて理論的考察をくりひろげる哲学者が、経済学者には見えない世界経済の本質を描く意欲的な対論。【目次】はじめに――市場経済だけで資本主義を語るエコノミストたちへ/第一章 先進国の超えられない壁/第二章 資本主義の歴史とヘゲモニーのゆくえ/第三章 資本主義の根源へ/第四章 バブルのしくみと日本の先行性――日米関係の政治経済学――/第五章 日本はいかに生き抜くべきか――極限時代の処方箋――/対談を終えて/「歴史の峠」に立っているという認識を 水野和夫/経済学的常識への挑戦 萱野稔人

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

「交易条件」「利子率革命」「経済の金融化は終焉を意味する」など、各国の経済の成熟化への流れ、世界経済の潮流がかなり分かりやすく解説されている。

水野和夫「資本主義の終焉と歴史の危機」と併読するとかなりよし。

0
2023年10月10日

Posted by ブクログ


資本主義の変遷と金利•利子の歴史、ここからモデル化された枠組みを超えた現代経済を分析されています。
特に、経済の本でありながら資本主義が終焉を迎えることに言及される点は見ものです。

0
2023年10月03日

Posted by ブクログ

原油価格を巡っての先進国と新興国の交易条件が変化し、これにより変動費が高騰したため、景気の変動とは関係なく、固定費、つまり賃金を引き上げられなくなった。これに対し、アメリカは実物経済の比率を下げ、金融経済のレバレッジにより国家経済を巻き返そうとした。ヨーロッパも同様だが、レバレッジ係数はヨーロッパの方が高い。しかし、この金融経済が破綻したのが、リーマンショック。現在の不景気モデルは、この通り、新興国が原油価格に対しての発言権を強めた事にある。

また、イラク戦争にも、原油を巡っての参戦要素がある。湾岸戦争以降の経済制裁より、イラクの石油の売上は国連が管理していたが、フセインがこの口座資金をドルからユーロに切り替えた。石油の国際取引におけるドル決済の原則が崩れそうだった。

戦争のかたちが変わり、領土の支配権を獲得することから、脱領土的なシステムを防衛するものになった。ここで守ろうとしたのは、石油に裏づけされたドル基軸通貨体制だった。

著者2名、議論された時期は古く、民主党政権下。シェールガスやTPPなどの新たな変化点においての議論が見てみたいものだ。水野氏の、国家ヘゲモニーと利子率を結びつけた解説はいつも通りわかりやすい。また、ゾンバルトをなぞった萱野氏の資本主義の定義はわかりやすく、国家ヘゲモニーと結びつけた立ち位置も興味深く読めた。

0
2016年04月26日

Posted by ブクログ

資本主義とは自由な市場原理における経済活動ではない。なぜならその市場のフレームやそこでのルールの策定は市場原理とは別の力(国家による政治力)によって決められているからだ。バブルが崩壊したとき公的資金という市場とは別に調達された資金が、資本主義のシステムを支えているのはそのいい例だ。本書は資本主義を歴史の線でとらえななおし、資本主義がどういう理屈で富を生み、やがてどういうふうに行き詰まっていき、どういう新たな市場を産み出していくのかを検証していく。そして著者たちは、金融バブル崩壊後の社会においては、もはや経済成長を前提とした展望はなく、資本主義という仕組みが歴史の中で大きな転換期を迎えている点を指摘する。

0
2015年07月14日

Posted by ブクログ

大澤真幸との対談でじわじわと感じてはいたけど、今回は萱野念人という結構若手の哲学者との対談で、ドゥルーズ=ガタリへの言及があった。その線ではあまり掘り下げがなかったけど、水野氏の他の著作と同じく、現在の経済的行き詰まりを一過性の問題としてみるのではなく、歴史的な転換期にあるものとしてとらえている。
本書で目を引いたのは、現代史的な事件の裏の真相的なところ。
例えば、大義名分が不明瞭だった湾岸戦争に米国を駆り立てたものは、基軸通貨としてのドルを守るためだったとか、日本の80年代バブルは、米国の軍拡競争の財政赤字を補てんするために引き起こされたものであるとか。
米国が覇権を握り続けるためには、なんでもありなのかと辟易とした。
こんなことも含めて、現在経済をはじめ世界で起こっていることが、いろんな歴史的背景や意味を帯びていることを読み解かないと、対蹠的療法では持続性がないし、事態を悪くするだけかもしれない。
本書は2010年12月の発行だが、円安と円高のどちらが日本にとってメリットがあるかの議論があった。資源はドル建てなので、円高の方が交易条件の改善につながること、また、資源を輸入する素材産業の方が、輸出のメリットを受ける産業よりも、経済規模が大きいことなどの理由が挙げられていた。
3年半たって、日本は真逆の方向に進んでいるのだが、果たしてこの方向性で大丈夫なのか?

0
2014年08月11日

Posted by ブクログ

経済成長国が減っため今は資本主義の成長が終わる転換期じゃないか、という主張を軸に、武力・政府と経済との関わりが論ぜられたりします。アベノミクスには批判的な立場。理論的で説得力があり、勉強になりました。

0
2014年04月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

市場は国家の存在なくしてはその枠組みを持ちえないという前提のもと、経済覇権国の利子率の推移を下に現在は歴史的な大転換の位置にあるという議論。
これまでの歴史的な流れにおいては、実体経済で隆盛を極めたのち経済体系が金融化する、ことを指摘しリーマンショックはその終わりを意味するものとしている。
しかしいぜんであれば、陸から海、海から空へと領域を拡げていくことで成長してきたが、今回は違うかもしれない。これが意味することは、歴史上はじめて生産国と資本蓄積の場の分離が起こっていることであり、国家と資本の分離である。つまり、今後は中国が以前のアメリカのようになるのではなく、相変わらずアメリカが資本をマネジメントの場であるかも。

また資源の高騰により先進国の交易条件が悪化してきていることを指摘しつつ、今後、中国やインドが現在の先進国並みに成長するとどうなるかという話など。

他にも資本主義社会の定員、アメリカのドル、日本のバブルなどについて述べ、今後は規制というものを付加価値に変換できるようなルール作りをしていくべきで、インフレで景気が回復するとは思わないほうがよいとしている。

この点、注目。
それにしてもイタリアのジェノヴァの利子率とかほんまかいなとw

0
2014年02月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

・多くの経済学者やエコノミスト達は取り扱うべき経済現象をモデル化可能な範囲に限定し、その枠組みのなかで理論の完成度やモデルの精緻化を競っている。しかし、今やその枠組みそのものが崩壊しつつあるのではないか。水野さんのまなざしはその枠組みの外に注がれているのである。

0
2013年12月29日

Posted by ブクログ

資本主義が始まって以降の歴史的な分析がわかりやすく明快だった。
今までこの本に気づかなかったことを悔しく思うほど。

スペインやポルトガルが新大陸を発見するだけでは世界の海の支配を確立するには十分ではなかった。16世紀以降、オランダが造船技術を革新して世界の海を支配する基礎をつくり(空間革命)、それをイギリスが決定的な形で引き継いだ。
16世紀末から17世紀初頭に、イタリア、スペイン、オランダで金利が最低水準になり、領主が利潤を得ることができなくなったことを示している。封建制が崩壊し、土地が売買や賃貸の対象となって資本主義と絶対王政が始まった。
現在の途上国では、東インド会社の時代から交易条件(輸出物価を輸入物価で割ったもの)が下がり続けた。

19世紀まで経済は定常的なものだったが、耐久消費財の生産システムが確立されてくる中で、経済は成長し続けるものという考え方が始まった。

1973年の第一次オイルショックを機に、新興国と資源国の交易条件は急速に改善した。実物経済では儲けることができなくなったため、アメリカはで経済の金融化が始まった。1983年にWTI先物市場がつくられたのは、オイルショックによってOPECに移った価格決定権を取り返すためだった。

1995年からアメリカは「強いドル」政策に動き、国際資本が国境を自由に超えるようになったため、日本やアジアの新興国で余っているお金がウォール街にもたらされるようになった。このお金によって、ITバブルや住宅バブルが起きた。
日本では、1995年に売上高に占める変動費(原材料費)率が1973年の水準まで下がったが、それ以降の資源高によって悪化に転じた。

2003年にアメリカがイラクを攻撃したのは、2000年にフセインが石油の決済をドルからユーロに変えた決定をつぶして、基軸通貨としてのドルの地位を守るためだった。
1974〜2002年の間、原油の価格は10〜30ドルで推移していたが、2003年からこのレンジから外れて上がっていった。

日本では、バブル崩壊後、企業は借金を返済してきたため、銀行の貸出金が減り、国債で運用してきた。そろそろ企業側の過剰な借り入れは解消されつつあり、銀行の貸出金の減少は止まりつつあるため、国債は国内では消化できなくなりつつある。

0
2018年10月31日

Posted by ブクログ

私の現在の世界経済に対する解釈と合致する本でした。内容はそこまで濃くないですが、簡潔に要点を押さえてまとまっており、①コストパフォーマンスの高さ、②非常に分かっている(偉そうですんません)世界経済の解釈が行われている、点に於いて☆5にさせて頂きました。

まず、近代の先進諸国が現在の新興国などで安く資源を買入、付加価値を付け、高く売ることで成長を続けて来たと言うところから始まります。資源ナショナリズムに依って資源の支配権が薄れ、資源価格が高騰し、これによって新興国の交易条件が先進国に近づき、実体経済に於ける先進国の成長モデルが崩壊したと説明されています。

米国は実体経済で成長を続けることが出来なくなった為、金融経済を拡張させ、莫大な利益を生み出そうとした。ニクソンショックによって金の裏付けが無くなったドルを支えるのは資源、つまり石油であり、イラク戦争はフセインのユーロシフト宣言の結果として引き起こされたものである。何故なら、資源ナショナリズムによって既にセブンシスターズなどに依る石油支配は終わりを告げており、米国はその対抗策として金融経済の拡張、石油の証券化を行った為、実質的にイラクに権益を欲していなかった。金融経済の拡張とドルへの資本の集積の基盤となる原油-ドル支払い制度を守る為にイラク戦争は行われた、と。アメリカに領土的野心が無いことを、地政学(本文では明言されていない)的な見地から、シュミットなどを引用して陸と海のせめぎ合いを例示したところが好印象です。つまり植民地モデルの終わりを示唆している訳です。

ちなみに資源価格に支払われる価格は5兆円程度から25兆円に拡大し(つまり経済成長分が全て産油国、資源国に流れた)、企業に於ける利益の上昇分を喰らい尽くした。結果企業は人件費を下げざるを得なくなり、これが実質的な利益増加分とされてる。給与の減少傾向は決して不況が原因ではない、と。私もその通りだと思います。

地政学的なネタとしてユーラシアについて触れたいのですが本題では無いので置いておきます。世界の覇権は実体経済の成長、実体経済の低成長に依る金融拡張と外部への投資、利率の低下、衰退と覇権の移行の連続であると示唆しており、条件空間(法治空間)と平滑空間(条件無し(詰まり外部)空間)のような概念空間を作り出し、これを略奪行為などによって搾取し、実体経済が成長する。これに行き詰まると金融の拡張を行い外部投資が行われ…と言う流れですね。

現在に於いては投資主体(市場の中心)と投資元の分離が行われている為、これまでの歴史とは違ってきたと言う点にも注目しています。つまり、欧米は実体経済の中心では無くなったが、金融市場の中心となり資本を集め、これを新興国に投資することでバブルを起こし利益を得て来たと。その通りですね。これを自国民に対して行なってしまったのが所謂リーマン・ショックなどだったと。

また、資本主義と市場経済を同視していない点など、現実的な認識だと思います。ハト主義の人達は如何せん軍事主義を嫌いますが、資本主義の原点が略奪・搾取行為によって成り立ったのは事実であり、市場主義の主体たる経済と市場を形成する政治の別離不可能性を、グローバリズムと軍事プレゼンスの観点から考えているのが中々秀逸ですね。当然とも言えますが。

バブルの原因に関しても述べていますが、これはいいでしょう。

実体経済を成長させることの出来なくなった先進国に於いて、低経済成長は必然であり一過性の問題ではないこと、グローバリズムによって先進国と新興国の所得が平均化され、賃金が減少すること、物価が下がること、資源価格の高騰が不可避であること、それに伴う原材料費の上昇を加味した円高の利用が有利であること、金融経済を実体経済以上に拡充した世界でリフレ派のぎ論が無駄であること、あとは日本の末路と明るい話題として環境規制などによる成長領域の創設などについて触れていますね。グローバル化に依って中流階級が減り、先進国に於ける金融主体とバブル実体経済主体が金を得て、それ以外はぐっばいするような構造を捉えているのも中々鋭いと思います。

議論形式なので読みやすいですし、中々的を得た議論をおこなっていると思います。これに加えて地政学的議論、エネルギー戦略、資本収支戦略、次世代技術戦略を加えると良い感じで世界情勢が議論出来るかなーと。

0
2012年05月12日

Posted by ブクログ

非常に面白かった。その名の通りのこれまでの資本主義の歴史を踏まえた超マクロ展望の視点は新鮮だった。これから両氏の他の著作も読んでみようと思う。

0
2012年03月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

すごく為になった一冊。経済の行く末を『国家』という枠組みも取り入れて、現在の世界情勢、日本の立場を書いています。今までは市場が拡大することを前提に、経済が回ってきた。しかし世界的飽和状態で低成長のだから資本主義は崩壊していくと言うもの。歴史から見た世界主権の移り変わりも勉強になった。

0
2012年02月19日

Posted by ブクログ

歴史に学び、現状と今後に対して深く考察する名著

1973 オイルショック
 先進国の交易条件の悪化→変動費の増加→人件費の減少→景気回復と所得回復の分離
(1971ニクソンショック)1974
 実物経済から金融経済へ
 95~08の13年間で100兆ドル(米4割、欧3割)

・石油価格の決定権WTI・ドル決済
・イラク戦争は、フセインがユーロ建て決済に挑んだため
・陸地の獲得やコントロールから、経済システム管理のための軍事力行使

・現代版・陸と海との戦い
 陸 EU、ロシア、中国
 海 英、米

・最後は陸軍が強くないと治安維持ができない

 利益率(利潤率)の低下→実物経済から金融経済への移転→他国への投資→ヘゲモニーの移転

・空間革命
 新しい空間にそれまでの空間概念の常識を無化してしまうような新しいルールを設定すること
 つまり、情報戦

・条里空間→平滑空間(莫大な富の余地)

・産業革命<空間革命

・新技術を資本蓄積に組み込む社会構造

・陸→海→空(20世紀空爆)→宇宙×→自国民(サブプライム)

・軍事ヘゲモニーと経済ヘゲモニー
・ヘゲモニーと工場の分離
・資本と国民の分離 →国民国家×?

・近代資本主義の貧富割合
 現状 富:貧=15:85
 将来 富:貧=75:25(BRICs)

・略奪→役割分担(税収)→分離

・日本のバブルの先行(貯蓄率、冷戦のドル債の差損の補填)

・低成長時代
 銀行の国債引き受け×(企業の過剰債務の解消)
 人民元自由化前に財政健全化

・市場の矛盾を国家が引き受ける

・インフレは貨幣現象ではない(国民国家経済の枠内でしか成立しない)

・規制に依る市場価値創出や利潤獲得

・国家の役割が強くなる一方、国家の境界はあいまいになる

・超国家的な徴税機関 cf.トービン税

0
2012年01月01日

Posted by ブクログ

今までの先進国経済は、資源国から安い資源を輸入して得られる高い収益によって、高成長を続けてきた。(植民地時代の収奪の仕組みと基本的には同じ)
これが、オイルショックを契機として成り立たなくなり、もはや実物経済ではやっていけなくなり、金融によって利益を上げる仕組みに変化していく。
金融経済化はヘゲモニーの黄昏である。

しかし、ヘゲモニーを中国がアメリカに取って代わるとは考えづらく中国が世界の工場となっても、その利潤をコントロールするのはEUか、米国ではないか。実物経済で利潤がもたらされる場所とその利潤がコントロールされる場所が資本主義上初めて分離されるだろう。

新興国の経済成長による資源価格の高騰と経済成長できる辺境の喪失により、もはや成長はあり得ないと認識し、低成長を前提とした経済モデルを考えていくべきであるとしている。

※レーガン政権はソ連と激しく軍拡競争をしていたが、それによって拡大する財政赤字を日本企業がファイナンスしていた。しかしブラザ合意でドル安になったとき日本の生保は大手七社で1.7兆円の損をだしたが、そこで生保に引き上げられるとアメリカも困るのでアメリカの要請のもとバブルが引起されたという説がある。

0
2011年12月06日

Posted by ブクログ

元エコノミストの水野さんと、インテリヤクザ風社会学者の萱野さんの対談本。
対談本ですし、小難しい経済用語が殆どなく、平易に解説してくれているので、サクサク読み進んでしまいます。
今、私たちは重要な歴史的転換点に立っているのだなとワクワクした気持ちになりました。
良かれ悪しかれ、変化していく時代に生きているのは、楽しみでもあると思います。
自分の個人的行為でもマクロ経済に影響するのではないかという気になります。

0
2011年10月10日

Posted by ブクログ

自分自身、特に経済論に詳しくないんだけど
いまの多くの経済評論家の議論は、
金利引き下げがどうのとか、量的緩和がどうのとかの金融施策や
果てには「もっと、モノを買いましょう」といった
欲しくもないのに、無理矢理お金を使わせることを是とする
ような議論ばかりで、
「そんなことではいまの経済は変わらないんじゃない?」
といった漠然とした疑問がずっともやもやしていた。

例えば、野球の人気衰退についての議論に例えると
社会のなかの野球の立ち位置や環境が変化しているのに
スタジアムで起こることだけに目を凝らし、
「ネームバリューのある助っ人外人を連れてこなければならない」
「先発4本柱を育てなきゃチームは強くならず、ファンも喜ばない」
と、近視眼で延々と議論しているのが
いまの多くの経済論争のように思える。

だから、この本の冒頭で
「市場経済だけで資本主義を語るエコノミストたちへ」
と題して書かれた「はじめに」を読んで
これは、自分のもやもやを解消してくれる
本なのではないかと期待をもった。

結果はその通りであり、
多くの面で期待以上であった。

この本は資本主義のなりたちから、
現代に至るまでの歴史的変遷を俯瞰的な視点で
わかりやすく話を進めてくれ
資本主義の根本をなす「安く仕入れて高く売り、高い利潤を生み出す」
構造は、先進国においては限界にきていることを教えてくれる。

だから、いまメディアを賑わすデフレも
一過性の事象では決してない。
日本は世界の先進国のなかでも
先頭をきって「低成長社会」に突入したのだ。

社会の15%程度の人に富が集約するのが
資本主義の構造であり、
これまでの日本の中産階級もそこに含まれていた。
だから、それなりに余裕のある生活をみんなが送ってきた。

現在はグローバル化が進み、
規制緩和が促進され、自由貿易が加速すると、
その15%に世界中の人々が進出しはじめ、
日本の多くの中産階級の人々は、
残り85%(安い仕入れを提供する搾取される側)に
なってしまうという恐れも十分にあるのだろう。
いや、その可能性はかなり高いのでは?

2人がいうように、税や規制問題など
「低成長社会」であることをちゃんと認識したうえで
次の手を繰り出していかなければ、
一握りのお金持ちと貧困者というシナリオは目前に迫っている。

対談に出てくる2人のことはあまり知らなかったが
これからは、この2人の発言には
注目していかなければ....

0
2011年10月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

約1ヶ月前に読んだばかりですが再読しました。
資本主義の歴史を、軍事力や空間革命に裏打ちされたヘゲモニー(覇権)の推移を交えて解説されていて、読み応え有り。その中でも交易条件の悪化等が実物経済の利潤率低下を招き、そして金融経済化するといった流れはとてもわかりやすい。
また、個人的に日本について今後はそんなに大きく経済成長できなくてもよいのではと感じていたが、低成長を前提として政策を立案すべきとあり同感。”これからは低成長です。だから社会保障を大幅に見直します。”と宣言してくれる議員さんはいませんか?

0
2012年01月04日

Posted by ブクログ

資本主義経済について、経済学者と国際関係学者との対談をまとめたもの。現在の資本主義体制は、マクロ的に転換点にあり、金融緩和(ゼロ金利政策)を継続してもデフレ脱却はできないことを中心に、説得力ある発言が多かった。わかりやすい。
「新興国の台頭によって、エネルギーをタダ同然で手に入れることを前提になりたっていた近代社会の根底が揺さぶられている」p18
「基軸通貨だからこそ、アメリカの財政赤字や経常収支赤字がいくら膨らんでも、各国はドルを買い支えてくれる」p52
「どのヘゲモニーの段階においても、実物経済がうまくいかなくなると金融化が起こる。そしてその金融化が進むと、同時に、(バブル経済が起き)その国のヘゲモニーも終わりに向かう」p69
「中国やインドが成長してしまうと、もう世界には経済成長を牽引できるような地域がなくなってしまう。それこそ資本主義の根本的な危機が訪れる」p112
「資本主義は民主主義と一体化するといわれていますけど、一体化するのは市民革命以降(以前は国王=資本家)」p124
「先進国はこれ以上市場が拡大しないところに直面しており、世界資本主義は大きな転換点を迎えつつある」p175
「(財政赤字削減について)公共投資は削れるところまで削っています。これ以上削ったら、そもそも雇用も維持できないし、国土の維持もできなくなります。公務員の人件費だって、日本はすでにOECD加盟国のなかでもっとも「小さな政府」のひとつになっています。そうなると、ありうるオプションは増税と社会保障費の削減ぐらいしかないでしょう」p212

0
2018年11月12日

Posted by ブクログ

現在の日本の経済状況(主にデフレ)を考えるときに、今までのパターンのひとつと考える流れと、まったくあたらしいパターンと考える流れがあるが、この本は後者。資本主義の形がかなり変わってきていているので、この100年単位の考え方では通用しないというもの。

0
2018年11月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

日本の書き手としては珍しく、歴史的視野で経済を見る水野と、政治哲学の立場から発言する萱野による時宜を得た対談。
現在もっとも求められているのは本書のように「絶望を煽ることなく、希望のない状況を語る」ことだと思う。国全体を動かすような成長や活力が幻であることは、誰もが薄々感じていることだから、冷静に語りかけられればパニックにはならないのに、どうしたことか巷に溢れるのは超楽観か絶望あるいはスパルタ式の叱咤激励本しかない。
いや、そもそも国なんてものに縛られている必要はない、という議論もあるが、資本主義が常に市場経済の「外部」を必要としたという本書前半の対話、特に今般の危機に際して最後の貸し手として国家が必要とされた事実の前には沈黙せざるを得ないのだ。
中身は十分刺激的であるので、単純すぎる表題をもう少し捻ったものにすればよかったのではないか?(集英社新書がいまひとつ新書ブームに乗り切れていない理由がそこにある気がする)

0
2014年03月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1970年代前半から先進国では交易条件が悪化し資本利潤率が低下してきている。高度経済成長が止まり、資本投下によるリターンも得られなくなる。実物経済から金融経済へと舵を切るも2008年の金融危機は金融経済化の方向も息詰まらせることに。定員15%の近代資本主義が新興国の隆盛によりバランスが崩れ、今、世界の資本主義の構造が大きな転換期にさしかかっている。現在のデフレは一時的な不況などではなく構造的なものであり、金融施策で克服できるようなものでは決してない。今こそ低成長時代の制度設計の立て直しをと著者は訴える。このほかバブルのしくみ。イラク戦争の真相。ヘゲモニー移転など興味深い内容が次から次へと繰り出される。

0
2012年06月28日

Posted by ブクログ

経済学者である水野和夫氏と哲学者である萱野稔人氏との対談本。

この本で、アメリカのイラク戦争の目的が理解できたような気がする。水野氏の指摘が正しいか否かはわからないが、イラク戦争の目的を論じた様々な言説の中で、最も腑に落ちる内容だった。

しかし、萱野氏は実に首尾範囲が広いものだと感心する。

0
2012年05月07日

Posted by ブクログ

面白かった。現在、世界経済が内包する諸問題は単なる不況ではなく、資本主義が迎える構造的な大転換であり、パラダイムシフトである、という著者の考察をわかりやすく解説している好著。資源価格に全てを転嫁しているなどややモデルが単純すぎるきらいがあるが(専門家じゃないので詳しいことはわかりませんが)、先進国というビジネスモデルが成り立たなくなってきている、という点は説得力ある。あと、中世の封建制、16世紀の絶対主義や資本主義との比較などの視点は今までなかった。金融というのは実態経済が衰えてくると、必ず出てくるものなんですね。

0
2011年11月06日

Posted by ブクログ

エコノミストと哲学者による対話集である。ヘゲモニー(覇権)の変遷を観点に世界経済の動向を分析しているのはおもしろい。

0
2012年02月19日

Posted by ブクログ

 成長を前提とした経済システムは限界を迎えており、それに固執する先進国は財政破綻の危機に瀕している。
 著者によると、この現象は、中世封建社会から近代資本主義社会への転換に対応できず、旧システムに固執したことにより財政破綻した16世紀のスペインの姿によく似ているという。
 500年に及ぶ資本主義の歴史が語られ、オランダ、イギリス、アメリカがどのように世界経済の覇権を握り、失っていった(いく)かが俯瞰されている。歴史が、現代の諸問題を考える示唆に満ちていることを改めて教えられた。

0
2012年01月18日

Posted by ブクログ

歴史的な観点から資本主義の終焉を語るエコノミストの水野和夫と、気鋭の政治哲学者である萱野稔人の対談が収録されています。

水野の本では、彼の資本主義の見方が簡潔に説明されている『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書)だけしか読んでいなかったのですが、本書でもそれとおなじ見解が語られています。ただし、萱野が国家と資本主義の関係という問題設定を持ち込むことで、上の本では抽象的にしか語られていなかった、ポスト資本主義に向けた日本の課題が、現代の日本が国家として直面している課題にいっそう具体的に結び付けられるかたちで説明されており、水野の立場についてもうすこしくわしく知ることができたように感じています。

ただ、日本のバブルにかんしてアメリカがすでにその見通しをもっていたという主張については、かなりできすぎた話のように感じてしまいますが。

0
2018年10月14日

Posted by ブクログ

競争の作法やデフレの正体と同時期に読んだので、この20年くらいの経済の停滞について色々な見方があるなあと思うばかりである(対話者の一人が政治哲学者なので期待してなかったのだが)。エネルギー業界にいるものとしては、資源価格の高騰が交易条件を悪化させたことがデフレの原因とする説は、非常に共感できた。したがって円高がまだましだとする考え方もその通りだと思う。

0
2021年08月08日

Posted by ブクログ

経済も政治もド素人の自分が読んだかぎり、政治と経済の関係を歴史を振り返りながら考える、というような本なのかなと思った。
もう少し勉強したらまた読み返したいと思う。

0
2012年07月02日

Posted by ブクログ

面白い部分もあったが、本当に超マクロな展望であり、なんかふわふわした感じがした。

現在のデフレは構造的な問題である、だとか、もう先進国の経済成長は望めないというった事を資本主義がどのように発展していったかを踏まえながら説いている。

産業革命によって資本主義が発展していったという認識があったので、それよりも、植民地主義やイギリスの海賊が果たしている役割が大きい点などは面白かった。

ただ、やはり思うのは、現在の資本主義はもう限界に来ていて、新興国がこれからも経済成長を目指して発展してくるのであれば、それに対抗して経済成長を目指すのではなく、経済成長がない状態での新しい世界のあり方を率先して目指していくべきだと思う。

特に課題先進国としての日本は、これからの先進国や新興国の最先端をいっているものであり、人類の今後の道筋を立てるべき社会に変化していくべきだし、原発事故を経験した中で、それを目指さなければならない。

僕らの子孫が幸せに暮らすためには、本当に変わっていかなければならない時期だと改めて実感した。

0
2012年03月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか」でファンになった水野氏と政治哲学者?の萱野氏による対談形式。基本的には上記水野著書にあった、過去の超長期的トレンドに基づいて現代の経済・金融動向を説明する、という内容。萱野氏が加わることによって国家間の覇権の遷移など政治と経済の関係がより充実しているが、その分上記水野著書にあったような統計情報に基づいた説明というのが希薄になってしまっている。ちょっと週刊誌の対談的になってしまい残念。  それにしても、毎度のことながらこの煽りタイトルはやめてほしい。こうしないと売れないのか?

0
2012年03月11日

「ビジネス・経済」ランキング