Posted by ブクログ
2019年03月09日
国家と暴力、国家と資本の関係について、著者みずからの思想をわかりやすい文体で展開している本です。
国家は唯一、正当な暴力を行使することのできる主体として存在しています。著者は、人びとの公共性にもとづいて正当性が担保されるという発想をしりぞけ、国家が暴力を独占し、暴力の合法性を独占することが根本にあ...続きを読むると主張します。さらに、上部構造である国家は下部構造である生産様式によって決定づけられているというマルクス主義の立場を批判し、国家による暴力の独占によって、資本が身分制度から解放され、資本主義の全面化が生じたと論じています。
著者の議論の背景にはドゥルーズ=ガタリの思想がありますが、著者自身はポストモダン左派の国家観に同調することはなく、暴力と資本を支える国家の機能をクールな観点で把握することに努めているような印象を受けました。