【感想・ネタバレ】新・現代思想講義 ナショナリズムは悪なのかのレビュー

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Posted by ブクログ 2011年12月03日

ナショナリズムは戦前の軍国主義の原因とされ日本では口にしてはいけない忌み言葉化している。このタブーにあえて踏み込んで、ナショナリズムについて正面から分析してる。ナショナリズムや国民国家の否定は、結果として過激なナショナリズムを引き起こす。いまこそ日本のナショナリズムを高め、国民国家のビジョンを定義す...続きを読むる必要がある。その作業抜きには国益を定義することはできない。国益とは既得権益の現状維持ということではない。国民の幸福度を高めるためことが国益であり、不幸を最小にすることではない。
雇用問題、少子化問題、移民問題、社会保障等についてきちんとした議論を行うべきであろう。グローバル化のなかで、昔に戻ることはできない以上、新しいビジョンが必要である。ビジョンなしに個別分野の専門家に判断を任せることは非常に危険だ。

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Posted by ブクログ 2015年11月27日

ナショナリズムと国家。この二つに共通していることは、言語と暴力である。これは統治していく上で切り離せないという考えは確かに頷ける。また、グローバルになればなるほど、海外の安い労働力を利用することになり、経済格差がおこるという矛盾。それが巻き起こすナショナリズム。現在の不安定な世界を観ると、国内経済崩...続きを読む壊による外部経済への拡張。すなわち戦争という暴力による侵略が実際に起こってもおかしくない不安定な状況。そこはかとなく怖さを感じるのは自分だけだろうか?

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Posted by ブクログ 2015年03月22日

「ナショナリズム批判」を批判する立場をとる萱野氏のナショナリズム論。
アーネスト・ゲルナーのナショナリズム論を軸としながら、アンダーソン「創造の共同体」やネグリ、ハートの「マルチチュード」などを批判しつつ、それらが国民国家、ナショナリズムの亜流や変形でしかないことを指摘している。またグローバリゼーシ...続きを読むョンが、国民国家を不要とするリベラル派の予想通りには進んでおらず、むしろナショナリズムの高揚につながることを指摘している。

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Posted by ブクログ 2015年01月04日

アーネスト・ゲルナーが定義するナショナリズムを基本に,その歴史的な意義と機能を明らかにする書籍。

ウヨクやホシュハを擁護するものではない。
そのことは、以下によく表れている。

「私がナショナリズムを肯定するのは,基本的に『国家は国民のために存在すべきであり,国民の生活を保障すべきである』と考える...続きを読むところまでだ。もしナショナリズムが『日本人』というアイデンティティのシェーマ(図式)を活性化させて『非日本人』を差別したり『日本的でないもの』を排除しようとするなら,私はそのナショナリズムを明確に否定する。」(29頁)

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Posted by ブクログ 2013年05月26日

ナショナリズム成立の過程、国家とは、ネーションとは、国民国家とは、共同体とは、、、
それぞれについて丁寧にまとめてくれていて、様々な方面から国内外問わず論者を引き合いに出して論を展開しているので、まさに入門という感じで今の僕にはうってつけだった。この辺りのテーマをこれから学びたい!という人にとっては...続きを読む良書だと思います。

読んだことは無いけれど、以前の著書でも扱っていたのか、暴力と権力というところからのアプローチが多かった。

また、タイトルの「ナショナリズムは悪なのか」というところからすると、ナショナリズムを擁護するような内容なのかとも取られるかもしれないが、ナショナリズム批判に対する批判、つまり反ナショナリズム批判を展開して、別に擁護しているわけではない。現代世界の問題を考えるときに、ナショナルな視点で考えるべきじゃないですか?というお話です。


余談として学びになったのは、
ある主張や論理を引用する際に、それらが何に基づいて展開されているかを、執拗なまでに丁寧にひも解いて行く姿勢だ。
当たり前のことなのかもしれないが、議論をしていてもすれ違いになってしまうのは土台がそもそも違っていたり、相手の意見が何に基づいて出てきているのかを見誤っている時だったりする。
不毛さを避けるためにも、相手を理解するためにも、相手が何に基づいて主張や論理を何に基づいて主張しているかを見極めたい。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2012年07月31日

第一章 ナショナリズム批判の限界
──格差問題をめぐって
第二章 ナショナリズムとはどのような問題なのか?
第三章 国家をなくすことはできるか?
──国家を否定する運動がナショナリズムに近づくという逆説
第四章 私たちはナショナリズムに何を負っているのか?
──国家と資本主義の関係をめぐって

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Posted by ブクログ 2012年06月11日

他の日本の論者とは一線を画する国家論。

<印象的な箇所のまとめ>
・ネーション(国民)とナショナリズムと国民国家は異なる。
・ネーションとは人間集団の単位。同じ国民なら、あなたと私は同一だと想像して生まれる想像の共同体。
・ナショナリズムとは、同一民族が一つの国家を作るべきと考える主義主張、政治的...続きを読む原理。政治的単位と民族的単位は同じであるべきと考える。
・国民国家とは、ネーション(国民)を集団単位とする国家の一つの形態である。
・日本の知識人の間では、想像の共同体であるネーションと国民国家を混同し、国民国家は想像の産物だと批判する議論が多いが、国民国家は実在する合理的機構。ネーションのような想像の産物ではない。
・では、国家とは何か? 国家とは、あらゆる行為について、合法かそうでないかを決定する法的決定権の独占者。国家だけが、法に背いたものを罰する権利がある。
・国家が定める法と個人が信じる道徳、倫理観は当然異なるものだが、自分の道徳観、倫理観に基づいて国家を論じる人は多い。
・国民国家は不要、国民国家はグローバリゼーションの進展とともになくなるという意見が多いが、著者は、政治的単位である国民国家はなくならないと考える。
・グローバリゼーションの時代でも、法的な最終決定権を持っている主体は、国家である。
・グローバリゼーションの進展によって、国境を越えた人の移動が増えるというが、国民国家はもともと国家に属する成員が、自由に移動し、経済活動を拡大再生産することを奨励してきたし、そのように自由に振舞う主体の生産を国民国家は行ってきた。グローバリゼーションの原理は、国家資本主義の原理と一致するものである。
・国民国家は不要だと考える人たちが、国民国家に変わる新しい政治集団単位を構築するとする。国民国家より自由で多様で理想的な組織を作ったとしても、それは国家になる。何故なら、集団内のルールを決定し、ルールを破った人を罰する仕組みを構築する必要があるから。法を決定し、法に背いたものを罰する、これは国家である。国家をなくそうとしても、国家はなくならない。
・反ナショナリズムの人が、自由な経済活動を奨励すると、国際競争に負けた国内産業は衰退し、移民に労働権を奪われた低所得の国民は、むしろナショナリズム意識を強める。
・著者は、ナショナリズムの意義を限定的にであれ、支持する。「国家は国民の生活を保障すべき」というナショナリズムの原理が機能しなくなればなるほど、国家によって生活が保障されなくなった国民は排外的、愛国的行動に出るから。
・国家という概念が、他者に非寛容で差別的だとは限らない。国家なんていらないと主張すればするほど、国家の保障機能が消失し、国家内部では国民の同質性を求める動きが強まる場合もある。
・格差の問題とは、国家内部の問題である。アジア全体でみれば、日本の労働者と他のアジア諸国の労働者の賃金格差は縮小している。格差が拡大しているのは、日本という国家内部で限定された話である。
・国内の経済格差は、国家の存在を前提に議論して、解決すべき問題である。

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Posted by ブクログ 2012年01月04日

日本の人文思想界に蔓延するナショナリズムを悪と捉える批評者たちのふるまいを、ナショナリズムに依存しつつ反発するのは思春期の反抗とほとんど変わらないと評して、バッサバッサと著名論者たちを斬っていく。面白い。

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Posted by ブクログ 2017年05月13日

もともと政治には興味がない。
右翼、左翼の意味も分からない。
韓国に対して、なぜ一部の人が噛みつくのか意味不明

とはいえ、さすがにいつまでも無視するわけには
いかないだろうと、少しでも勉強しようと、なぜか
この本を手に取った。

結論から言うと「予備知識無しでは意味不明」だった
最大の問題は、この...続きを読む本で語られる「ナショナリズム」
とは、何なのかがさっぱり分からなかったということだ。
著者にとっては明確に存在しているのは確かで、
「それ」に対して非常に攻撃的ではある。しかし
「何」に攻撃しているのか、予備知識がないと
さっぱり分からない。

でも、困ったことに面白いのだ。
そういう困った本である

メモ)
・自分たちの利権を奪う存在、日本の責任ばかりを
 騒ぎ立て、保証金を奪う外国人というイメージ
 若者の被害者意識がナショナリズムへ駆り立てる
・日本人というアイデンティティ。それだけで
 自分が認められるという感覚。社会から除外された
 存在でないという安心感。それに飛びつく
・日本の若者の右傾化。単純否定しても抑えれない
 原因をおさえなければならない
・リベラル知識人は政治よりも道徳に重きを置いている
 ただ他者を抑圧することはよくない、という理由で
 ナショナリズムを否定している。分析していない
・言語の共通性がネーションの基盤
・国家とは何か。国境をなくすことが本当によいのか
 それは可能なのか。国家廃絶は国家反復につながる
・国家なき社会。強制的な権力はなくなるかもしれない
 だが内面同質化の凄まじい圧力が生まれる
 それは宗教に近いものがある。問題はそれを
 受けいることができない人々だ。どうなるか
・いま、世界規模で世界を支配しているのは「資本g
 主義」という装置だ。多国籍がこれに従う
・産業社会が人々の同質化を促す
 様々な仕事へ移る(利益が得られる)
 そのための技術を学ぶ(学校)
 国の利益。軍隊も同じこと


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Posted by ブクログ 2016年09月16日

フランス現代思想を参照しながら、日本におけるポストモダン思想の「反ナショナリズム」の議論の底の浅さを指摘しています。

著者はまず、反ナショナリズムを標榜しているはずの左派知識人が格差問題について積極的に発言をしていることに疑問を投げかけます。著者によれば、格差問題はどこまでもナショナルな問題であり...続きを読む、ナショナリズムに依拠することなく格差問題に対する対応を政府に求めることは矛盾していると論じます。その上で、「ナショナリズムとは、第一義的には、政治的な単位と民族的な単一が一致しなければならないと主張する一つの政治的原理である」というゲルナーの定義に基づきながら、国民主権の達成へ向けてのプロセスをナショナリズムの歩みとして捉えなおそうとしています。

また本書の最後には、国民国家がファシズムへ向かわないようにするためには、ナショナリズムを否定するのではなく、国外市場の拡大を重視することで国内経済の脆弱化を招来するような経済政策を改め、国内経済を保全するというナショナルな経済政策こそが重要だという主張が示されています。以前から、保守系の知識人たちが「戦後民主主義」をこの国の「伝統」から放擲しようとしていることに疑問を感じており、たとえば大塚久雄の国民経済論を保守の立場から読みなおすような試みがあってもよいのではないかと思っていたので、著者の提言はうなずけるところがあると感じました。

ただ、ポストモダン左派の反ナショナリズムに対する批判には、わら人形を叩いているのではないかという気がしないでもありません。著者の論じているように、彼らが何をナショナリズムに負っているかということについて無自覚なのであれば当然批判されるべきでしょうが、それはむしろ「脱構築」とは何であったのかを忘却しているという点で、批判されるべきだと考えます。

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Posted by ブクログ 2015年01月01日

サンモニによく出てますね。あれはロシアだったか、ポジティブな意味合いで「ナショナリズム」という言葉を使っている方と話す機会があって、ぼくもそのつもりで質問をかぶせたのに、慌てて「それは否定的な意味ではありません」みたいに言われまして、やはり日本でこの言葉を使うのには慎重になっているみたいです、という...続きを読む具合いに隔たりがあるのはたしかでしょう。国家はナショナリズムを生むという言説はあまり馴染みがないんですが、日本の思想界ではポピュラーなんですかね?そうであればそりゃさすがに是正せねば、となるでしょう。

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Posted by ブクログ 2014年03月23日

著者の前著「国家とはなにか」を読んでいる人にとっては内容が薄い。最新動向としてフランス大統領選時の極右の台頭が、グローバリゼーションによる格差社会を前に生まれたという事象を、彼の国家論に取り込んでいる。この本が言いたいことを一言で言うと「グローバリゼーションは格差を生み、低所得層はネーションとしての...続きを読む「国民」アイデンティティが強くなるため、ナショナリズムが大きくなる。よってグローバリゼーションは国民国家を消滅させることはない」というもの。また、野心的なタイトルではあるが、書の冒頭で彼も主張しているように、彼は排外的なナショナリズムは否定し、あくまで国民国家を成立させているナショナリズムのみを肯定している。

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Posted by ブクログ 2011年12月26日

今ままで表層的な日本の人文系論壇の、更に表層しかなぞっていなかったので、ナショナリズムに関して深く考えたことが無かったが、萱野氏の論はわかりやすく、納得しました。自明性を解明されました。

社会の産業化の過程で、意思決定とそれの完遂のための共通言語というナショナリズムの条件が基盤となり、国民的暴力装...続きを読む置としての国民国家が成立した歴史を踏まえると、国境無きグローバル社会は夢想でしかない。
ナショナリズムを(可能ならば、相互調和的に?)改変または、拡張していくしか道はない。

共通言語といえば、英語?と考える人は多いでしょうが、大多数の日本人にとっても英語など不要のまま実生活を送っているのだし、
世界中にも、英語がわからない人が圧倒的に多いのでは?
「自分は『地球人』だ!」などとグローバルを気取った知識人は、本当にいるのですかね?本気なのかな?
グローバルな視点で見れば、フラット化しつつあるのだから、国内的な貧困問題など、世界的には貧困ではないとか思えますか?
ナショナリズムに煽られなくても、自分の周りの様々な問題においては、ナショナルに解決していくしかないですよね。
そこのところは、私も歯痒く考えていました。

表層的なナショナリズムに煽られたくはないけど、ナショナリストであることは、大袈裟に表明することでもない…というところかな。

ネグリ=ハート『帝国論』と、ドゥルーズ=ガタリ『千のプラトー』も読まなきゃなぁ~…フーコー『監獄の誕生』もね…う~む…

姜尚中『愛国の作法』は、途中で放棄しました。
E・ウォーラスティンは、普通に面白いですよ。

如何せん、フォントが大きくて行間が広い…私はもっとみっしりとした本が好き。

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Posted by ブクログ 2011年10月19日

ナショナリズムの定義として、第一義的には政治的な単位と民族的な単位とが一致しなければならないと主張する一つの政治的原理である。この定理に基づき、国内の問題はナショナリズムによってしか解決できない。よってナショナリズムは必要であるとする。

さて、このナショナリズムの定義基づいて論は進むのだが、そもそ...続きを読むもナショナリズムの定義が一般的には「国家主義・民族主義」から「排外主義・国粋主義」に変化しているのではないかと思うのだ。昨今特にそう思う。前に「市民社会」という言葉は時代、語る人によって意味を変えてきた。

ゆえに、自分はナショナリズムから距離をおきたい。あとは、後半で「国家の本質は暴力である」と出た。佐藤優「国家論」の重要なキーワードをまた見ることになった。その点面白い。ちなみに、後半よく意味分からんかったので読み込めてないからトンチンカンなこと言ってたらゴメンネ!

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