【感想・ネタバレ】新・現代思想講義 ナショナリズムは悪なのかのレビュー

あらすじ

今、なぜナショナリズムを考察するべきなのか? 格差・貧困問題から経済復興までの喫緊の課題は、「国家」「民族」などのナショナルな意識に訴えかけることなくしては、もはや解決しえない。ナショナリズムを否定するだけの従来の議論を徹底的に批判し、ドゥルーズ=ガタリやフーコーなど現代思想のキーテキストを読み解きながら、ナショナリズムの社会的・政治的な可能性を考える。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ナショナリズム成立の過程、国家とは、ネーションとは、国民国家とは、共同体とは、、、
それぞれについて丁寧にまとめてくれていて、様々な方面から国内外問わず論者を引き合いに出して論を展開しているので、まさに入門という感じで今の僕にはうってつけだった。この辺りのテーマをこれから学びたい!という人にとっては良書だと思います。

読んだことは無いけれど、以前の著書でも扱っていたのか、暴力と権力というところからのアプローチが多かった。

また、タイトルの「ナショナリズムは悪なのか」というところからすると、ナショナリズムを擁護するような内容なのかとも取られるかもしれないが、ナショナリズム批判に対する批判、つまり反ナショナリズム批判を展開して、別に擁護しているわけではない。現代世界の問題を考えるときに、ナショナルな視点で考えるべきじゃないですか?というお話です。


余談として学びになったのは、
ある主張や論理を引用する際に、それらが何に基づいて展開されているかを、執拗なまでに丁寧にひも解いて行く姿勢だ。
当たり前のことなのかもしれないが、議論をしていてもすれ違いになってしまうのは土台がそもそも違っていたり、相手の意見が何に基づいて出てきているのかを見誤っている時だったりする。
不毛さを避けるためにも、相手を理解するためにも、相手が何に基づいて主張や論理を何に基づいて主張しているかを見極めたい。

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2013年05月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

第一章 ナショナリズム批判の限界
──格差問題をめぐって
第二章 ナショナリズムとはどのような問題なのか?
第三章 国家をなくすことはできるか?
──国家を否定する運動がナショナリズムに近づくという逆説
第四章 私たちはナショナリズムに何を負っているのか?
──国家と資本主義の関係をめぐって

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2012年07月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

他の日本の論者とは一線を画する国家論。

<印象的な箇所のまとめ>
・ネーション(国民)とナショナリズムと国民国家は異なる。
・ネーションとは人間集団の単位。同じ国民なら、あなたと私は同一だと想像して生まれる想像の共同体。
・ナショナリズムとは、同一民族が一つの国家を作るべきと考える主義主張、政治的原理。政治的単位と民族的単位は同じであるべきと考える。
・国民国家とは、ネーション(国民)を集団単位とする国家の一つの形態である。
・日本の知識人の間では、想像の共同体であるネーションと国民国家を混同し、国民国家は想像の産物だと批判する議論が多いが、国民国家は実在する合理的機構。ネーションのような想像の産物ではない。
・では、国家とは何か? 国家とは、あらゆる行為について、合法かそうでないかを決定する法的決定権の独占者。国家だけが、法に背いたものを罰する権利がある。
・国家が定める法と個人が信じる道徳、倫理観は当然異なるものだが、自分の道徳観、倫理観に基づいて国家を論じる人は多い。
・国民国家は不要、国民国家はグローバリゼーションの進展とともになくなるという意見が多いが、著者は、政治的単位である国民国家はなくならないと考える。
・グローバリゼーションの時代でも、法的な最終決定権を持っている主体は、国家である。
・グローバリゼーションの進展によって、国境を越えた人の移動が増えるというが、国民国家はもともと国家に属する成員が、自由に移動し、経済活動を拡大再生産することを奨励してきたし、そのように自由に振舞う主体の生産を国民国家は行ってきた。グローバリゼーションの原理は、国家資本主義の原理と一致するものである。
・国民国家は不要だと考える人たちが、国民国家に変わる新しい政治集団単位を構築するとする。国民国家より自由で多様で理想的な組織を作ったとしても、それは国家になる。何故なら、集団内のルールを決定し、ルールを破った人を罰する仕組みを構築する必要があるから。法を決定し、法に背いたものを罰する、これは国家である。国家をなくそうとしても、国家はなくならない。
・反ナショナリズムの人が、自由な経済活動を奨励すると、国際競争に負けた国内産業は衰退し、移民に労働権を奪われた低所得の国民は、むしろナショナリズム意識を強める。
・著者は、ナショナリズムの意義を限定的にであれ、支持する。「国家は国民の生活を保障すべき」というナショナリズムの原理が機能しなくなればなるほど、国家によって生活が保障されなくなった国民は排外的、愛国的行動に出るから。
・国家という概念が、他者に非寛容で差別的だとは限らない。国家なんていらないと主張すればするほど、国家の保障機能が消失し、国家内部では国民の同質性を求める動きが強まる場合もある。
・格差の問題とは、国家内部の問題である。アジア全体でみれば、日本の労働者と他のアジア諸国の労働者の賃金格差は縮小している。格差が拡大しているのは、日本という国家内部で限定された話である。
・国内の経済格差は、国家の存在を前提に議論して、解決すべき問題である。

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2012年06月11日

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