萱野稔人のレビュー一覧
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国家と暴力、国家と資本の関係について、著者みずからの思想をわかりやすい文体で展開している本です。
国家は唯一、正当な暴力を行使することのできる主体として存在しています。著者は、人びとの公共性にもとづいて正当性が担保されるという発想をしりぞけ、国家が暴力を独占し、暴力の合法性を独占することが根本にあると主張します。さらに、上部構造である国家は下部構造である生産様式によって決定づけられているというマルクス主義の立場を批判し、国家による暴力の独占によって、資本が身分制度から解放され、資本主義の全面化が生じたと論じています。
著者の議論の背景にはドゥルーズ=ガタリの思想がありますが、著者自身はポス -
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借りたもの。
現代女性の生き方、働き方を考える一冊。論文と座談会。
特に明確な答え、方法論などがあるはずも無いが、今後のライフスタイルを考えるにあたっての判断材料になる。
おひとりさまのライフスタイル、そして同性婚についてまで。
結婚、出産に関する年齢的限界、更年期障害…あらゆることに身体的にタイムリミットのような節目があり、女性にとっては怖いことばかり書いてあるような……
結婚する相手――自分に合ったいい人――を見つける奔走はいつの時代もあったり(戦後、メディアの発達に伴い、それが明るみになっただけだろう)、医学が発達しても必ずしも授かる訳ではない不妊治療、ホルモンバランスの崩れからくる精 -
Posted by ブクログ
歴史的な観点から資本主義の終焉を語るエコノミストの水野和夫と、気鋭の政治哲学者である萱野稔人の対談が収録されています。
水野の本では、彼の資本主義の見方が簡潔に説明されている『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書)だけしか読んでいなかったのですが、本書でもそれとおなじ見解が語られています。ただし、萱野が国家と資本主義の関係という問題設定を持ち込むことで、上の本では抽象的にしか語られていなかった、ポスト資本主義に向けた日本の課題が、現代の日本が国家として直面している課題にいっそう具体的に結び付けられるかたちで説明されており、水野の立場についてもうすこしくわしく知ることができたように感じてい -
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ネタバレまだ加筆・編集すると思うけど、とりあえずメモ。
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非常に明快でわかりやすい。
道徳について、定言命法からのアプローチはとてもおもしろかった。
確かに根拠がないからこそ絶対といえるのかもしれない。
そして著者は、「道徳は論証されなくても力を持つ」との結論に落ち着き(その道徳ってそれ自体が思い込みやご都合主義なんじゃないの?という疑問が残るけど)、カントの「同等性の原理」を根拠に死刑を肯定する。
デリダの議論をありがたがる人々を痛々しいとハッキリ述べているのは痛快だった。
ところで、本書の中盤では死刑制度の是非の根幹である「なぜ人を殺してはいけないのか」という問いについて長く語られ -
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もともと政治には興味がない。
右翼、左翼の意味も分からない。
韓国に対して、なぜ一部の人が噛みつくのか意味不明
とはいえ、さすがにいつまでも無視するわけには
いかないだろうと、少しでも勉強しようと、なぜか
この本を手に取った。
結論から言うと「予備知識無しでは意味不明」だった
最大の問題は、この本で語られる「ナショナリズム」
とは、何なのかがさっぱり分からなかったということだ。
著者にとっては明確に存在しているのは確かで、
「それ」に対して非常に攻撃的ではある。しかし
「何」に攻撃しているのか、予備知識がないと
さっぱり分からない。
でも、困ったことに面白いのだ。
そういう困った本である -
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フランス現代思想を参照しながら、日本におけるポストモダン思想の「反ナショナリズム」の議論の底の浅さを指摘しています。
著者はまず、反ナショナリズムを標榜しているはずの左派知識人が格差問題について積極的に発言をしていることに疑問を投げかけます。著者によれば、格差問題はどこまでもナショナルな問題であり、ナショナリズムに依拠することなく格差問題に対する対応を政府に求めることは矛盾していると論じます。その上で、「ナショナリズムとは、第一義的には、政治的な単位と民族的な単一が一致しなければならないと主張する一つの政治的原理である」というゲルナーの定義に基づきながら、国民主権の達成へ向けてのプロセスをナ -
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高齢者の貧困率は統計的に改善を見る一方で、深刻化しているのが40代中年層と子ども。
高齢者の改善は、終身雇用で年金を満額でもらえる層の増加。でも、バブル崩壊後リストラの煽りを受けた方々も多いでしょうし、一概にそう言えるのかはよく分からない。
下流中年の背景には、就職氷河期に遭遇し、雇用の調整弁として使われてきた世代であるということ。派遣労働から抜け出せず、給与も年金も低いまま推移。
決して個々人の能力の問題でなく、社会が作り出した作られた下流。この世代が高齢化する中で、社会の助けを必要としてくる。
このツケにどう向き合っていくのか?重たい課題。 -
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下流老人よりも、下流中年の問題の方が深刻。
1度、非正規に落ちたら、戻ることのできない悲劇。上司からの罵倒や、職安からのダメだしなどの悲観的な話。コミュニケーション能力の大切さ。
差別や格差はいけないと言うけど、この先も解決されない問題と認識すべきではないのか。
非正規は正社員にならないといけないのか。もう10年以上も言われてる話だけど、なれないし、ならなくて良いのでは。
あまりにも、年配のひとたちの右肩上がりの時代の当然に付き合って、傷付かなくて良いのではないか。
誰かが何とかしてくれる。実際のところ、誰も何もしてくれない。結局のところ、自分しか信用できないと言うこと。 -
Posted by ブクログ
著者の前著「国家とはなにか」を読んでいる人にとっては内容が薄い。最新動向としてフランス大統領選時の極右の台頭が、グローバリゼーションによる格差社会を前に生まれたという事象を、彼の国家論に取り込んでいる。この本が言いたいことを一言で言うと「グローバリゼーションは格差を生み、低所得層はネーションとしての「国民」アイデンティティが強くなるため、ナショナリズムが大きくなる。よってグローバリゼーションは国民国家を消滅させることはない」というもの。また、野心的なタイトルではあるが、書の冒頭で彼も主張しているように、彼は排外的なナショナリズムは否定し、あくまで国民国家を成立させているナショナリズムのみを肯定