萱野稔人のレビュー一覧
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資本主義とは自由な市場原理における経済活動ではない。なぜならその市場のフレームやそこでのルールの策定は市場原理とは別の力(国家による政治力)によって決められているからだ。バブルが崩壊したとき公的資金という市場とは別に調達された資金が、資本主義のシステムを支えているのはそのいい例だ。本書は資本主義を歴史の線でとらえななおし、資本主義がどういう理屈で富を生み、やがてどういうふうに行き詰まっていき、どういう新たな市場を産み出していくのかを検証していく。そして著者たちは、金融バブル崩壊後の社会においては、もはや経済成長を前提とした展望はなく、資本主義という仕組みが歴史の中で大きな転換期を迎えている点を
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ネタバレ河野龍太郎さんのインタビューを新聞で読んで、この方の本を読んでみたいと思い、この本に辿り着く。
この本は、萱野稔人(津田塾大教授)が、安倍政権で推し進める金融緩和に反対意見を主張する3名、藻谷浩介氏(日本総研主席研究員)・河野龍太郎(BNPパリバ経済調査本部長)・小野喜康(阪大教授)とそれぞれ対談した内容がまとめられている。
感想。とっても面白い。読んで良かった。
備忘録。
①藻谷氏の見解
・リフレ論は「供給されたお金は必ず消費される」という前提に立っている。それは現実と乖離している。
・バブル崩壊以降の日本の景気低迷は、貨幣供給量不足が引き起こしたのではなく、モノの需要不足によるものだ -
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大澤真幸との対談でじわじわと感じてはいたけど、今回は萱野念人という結構若手の哲学者との対談で、ドゥルーズ=ガタリへの言及があった。その線ではあまり掘り下げがなかったけど、水野氏の他の著作と同じく、現在の経済的行き詰まりを一過性の問題としてみるのではなく、歴史的な転換期にあるものとしてとらえている。
本書で目を引いたのは、現代史的な事件の裏の真相的なところ。
例えば、大義名分が不明瞭だった湾岸戦争に米国を駆り立てたものは、基軸通貨としてのドルを守るためだったとか、日本の80年代バブルは、米国の軍拡競争の財政赤字を補てんするために引き起こされたものであるとか。
米国が覇権を握り続けるためには、なん -
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ネタバレ市場は国家の存在なくしてはその枠組みを持ちえないという前提のもと、経済覇権国の利子率の推移を下に現在は歴史的な大転換の位置にあるという議論。
これまでの歴史的な流れにおいては、実体経済で隆盛を極めたのち経済体系が金融化する、ことを指摘しリーマンショックはその終わりを意味するものとしている。
しかしいぜんであれば、陸から海、海から空へと領域を拡げていくことで成長してきたが、今回は違うかもしれない。これが意味することは、歴史上はじめて生産国と資本蓄積の場の分離が起こっていることであり、国家と資本の分離である。つまり、今後は中国が以前のアメリカのようになるのではなく、相変わらずアメリカが資本をマネジ -
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資本主義が始まって以降の歴史的な分析がわかりやすく明快だった。
今までこの本に気づかなかったことを悔しく思うほど。
スペインやポルトガルが新大陸を発見するだけでは世界の海の支配を確立するには十分ではなかった。16世紀以降、オランダが造船技術を革新して世界の海を支配する基礎をつくり(空間革命)、それをイギリスが決定的な形で引き継いだ。
16世紀末から17世紀初頭に、イタリア、スペイン、オランダで金利が最低水準になり、領主が利潤を得ることができなくなったことを示している。封建制が崩壊し、土地が売買や賃貸の対象となって資本主義と絶対王政が始まった。
現在の途上国では、東インド会社の時代から交易条件 -
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ネタバレ自然環境やエネルギーの観点から社会や文明の成立を考えることが主要テーマとなっています。内容を少し挙げると、、、
・日本人は地震や火山噴火といった大災害が所与の条件である場所で暮らしており、天災が時の権力や社会体制を破壊或いは卑小化してきたという側面がある(日本の中央政府は古来意外に弱い)。
・天災と付き合ううちに、人間が作ってきたものは必ず壊れるという意識が醸成されてきたとも考えられ、これが「無責任の体系」(責任の所在があいまい、問題になりにくい)を形成してきたのではないかと推論。
・人類にとって定住による農耕開始が人類史における最大の革命(「農耕⇒定住」ではなく「定住⇒農耕」の順で、実は当 -
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私の現在の世界経済に対する解釈と合致する本でした。内容はそこまで濃くないですが、簡潔に要点を押さえてまとまっており、①コストパフォーマンスの高さ、②非常に分かっている(偉そうですんません)世界経済の解釈が行われている、点に於いて☆5にさせて頂きました。
まず、近代の先進諸国が現在の新興国などで安く資源を買入、付加価値を付け、高く売ることで成長を続けて来たと言うところから始まります。資源ナショナリズムに依って資源の支配権が薄れ、資源価格が高騰し、これによって新興国の交易条件が先進国に近づき、実体経済に於ける先進国の成長モデルが崩壊したと説明されています。
米国は実体経済で成長を続けることが出 -
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ルポから思想まで豪華布陣だが、宮台さんの激憤しながらの筆致が鮮やか。『「ファストフードからスローフードへ」と同じく「原子力から自然エネルギーへ」も日本的に勘違いされるでしょう。〈食の共同体自治〉の問題が、食材選択の問題に短絡したように、〈エネルギーの共同体自治〉の問題が、電源選択の問題に短絡するでしょう。(略)原発災害からの学びがその程度で終わってしまうのですか。』pp.384-385. まさにそこなのだ。設計の悪い世論調査と内閣支持率に翻弄されて愚昧な二択に落とし込んではいけない。そこで一般意志2.0の登場なんだろうな。東さんと宮台さんと津田さんは全く方法論が違うけど、震災をきっかけに議論が
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歴史に学び、現状と今後に対して深く考察する名著
1973 オイルショック
先進国の交易条件の悪化→変動費の増加→人件費の減少→景気回復と所得回復の分離
(1971ニクソンショック)1974
実物経済から金融経済へ
95~08の13年間で100兆ドル(米4割、欧3割)
・石油価格の決定権WTI・ドル決済
・イラク戦争は、フセインがユーロ建て決済に挑んだため
・陸地の獲得やコントロールから、経済システム管理のための軍事力行使
・現代版・陸と海との戦い
陸 EU、ロシア、中国
海 英、米
・最後は陸軍が強くないと治安維持ができない
利益率(利潤率)の低下→実物経済から金融経済へ -
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今までの先進国経済は、資源国から安い資源を輸入して得られる高い収益によって、高成長を続けてきた。(植民地時代の収奪の仕組みと基本的には同じ)
これが、オイルショックを契機として成り立たなくなり、もはや実物経済ではやっていけなくなり、金融によって利益を上げる仕組みに変化していく。
金融経済化はヘゲモニーの黄昏である。
しかし、ヘゲモニーを中国がアメリカに取って代わるとは考えづらく中国が世界の工場となっても、その利潤をコントロールするのはEUか、米国ではないか。実物経済で利潤がもたらされる場所とその利潤がコントロールされる場所が資本主義上初めて分離されるだろう。
新興国の経済成長による資源 -
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ナショナリズムは戦前の軍国主義の原因とされ日本では口にしてはいけない忌み言葉化している。このタブーにあえて踏み込んで、ナショナリズムについて正面から分析してる。ナショナリズムや国民国家の否定は、結果として過激なナショナリズムを引き起こす。いまこそ日本のナショナリズムを高め、国民国家のビジョンを定義する必要がある。その作業抜きには国益を定義することはできない。国益とは既得権益の現状維持ということではない。国民の幸福度を高めるためことが国益であり、不幸を最小にすることではない。
雇用問題、少子化問題、移民問題、社会保障等についてきちんとした議論を行うべきであろう。グローバル化のなかで、昔に戻ること