山岸真のレビュー一覧
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いくら不可知な人間の精神とはいえ、自然界の法則に逆らうことはできない。イーガンは数学をはじめとした大変な科学の知識で(文系のため、どんなジャンルの学問かもすでにわからない。汗)、人間の行動の決定や、愛や憎しみの感情を、どんどん因数分解していってしまう。各短編には、しょせん人間も機械の部品の組み合わせにすぎないのだという趣旨の文章がちらちら見える。しかし読み終わると、いやそうではないという思いが、まったく理屈ではないところから立ち上がってくる。
この短編集の最後2編はなかでも難解で、多元宇宙論をテーマにしている。全然わからないままとにかく最後まで読んだら、あれっと思う関連が隠されていて、また読 -
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ディアスポラ=離散
宇宙(多次元)の様々な方向に自分たちのコピーを1000個派遣して知的生命体、生存をかけて可能性を探検する。
人間存在が究極に不滅になったときの最終的な人の行き先。
これを作者なりに推し進めている
・自分の全ての可能性を探索しつくす(完了)
・自分の人生の中で不変の箇所を探し続ける(アイデンティティの探求)
・自我を維持できなくなり消滅、霧散、停滞
自分の夢想した問題意識が表現されていて興味深かった。
”価値”は、自分の視点中心に”現れる”のであって、それ自体存在しない
残るのは、自分への探求か、全て(個々に優劣が無いため)の外部の探求。
やはり不死/長命は、普通の人 -
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グレッグ・イーガン著。90年代を代表するSF作家だそうな。
SFというニッチなジャンルでありながらその中でも有名、と言う事で程よい読みやすさかと。
読みやすいだけでなく面白さも折り紙付き、つまみ食いのつもりが気付いた時には二周目だった。
宇宙系のSFに比べるとサイバー系は「トンデモ超理論」が出にくい気がします(偏見)が、これの屑理論は珠玉。わけわかんねえ。
最早サイバーパンクが「パンク」とは呼べない時代になってきておりますが、確実にギブスン、ひいてはディックの精神を感じ取れるのが好印象。
そういや「ターミナル・エクスペリメント」なんつーのもありましたねえ。 -
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人間の精神をスキャンしてデジタルの世界に送り込むことが可能になった世界。ある画期的な理論を考案した主人公(?)がデジタルに住まう「コピー」たちに、文字通りの永遠の存在を約束する話が前半のメイン。
コピーたちはハードウェアの制約で現実の17分の1の速さでしか活動できなかったりするのが面白いですが、コピーの人権を認めない法律が成立しようとしていたりで、存在としての基盤が揺らいでいるのを背景に話が展開していきます。
後半は、ある理由があって「…そして7000年後」
アイディアの核はなんとも説明しがたい「塵理論」とセル・オートマトンモデル生命なんですが、この二つが結びついたとき主観的宇宙論の本 -
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ネタバレ全ての話で未来の話。例えば寿命がなくなった世界。例えば、感情のパラメータを自分でコントロールできる時代。そのなかで幸せってなにか考えていくものがたり。どの話もその人物なりに幸せを追い求め、それなりの幸せに到達する。そして、これって本当に幸せなのかと自問する。
これは今を生きる自分にも向けられた問いであり、果たして、いまの生活、そしてこれからの人生、幸せなのか?もちろん家族がいて、仕事もある程度安定していて、世の中的には間違いなく幸せ。ただ、自分のやりたいことを半分くらいは我慢しているし、欲望に正直かというと全くそうでない。何事も下には下がいるが、上には上がいる。
結局は、やりたいことをとるか、 -
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人新世SFということで、当然、地球環境の危機的状況をテーマにした作が多い。けれども、ハード面よりもソフト面にスポットを当てた作がほとんどを占める。環境危機への対応策なんて分かりきってる、問題は社会がそれを実行しようとしないことなのだ、ということなのだろう。ただ、そのアイデアが案外とナイーブ。全体に理想化されたコミュニティの登場が目に付くのだが、その描写がまるでカウンターカルチャー全盛の頃のヒッピーコミューンなのだ。「菌の歌」なんかは、あの頃のSFそのまんまである。こんな感じの話、いっぱい読んだなあ。まあお話の中とは言え、この問題に簡単に答えなんかが出るわきゃないってことなんでしょう。