山岸真のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレSF短編集。量子サッカーの話は何が何だかよくわからなかった。
遠く離れたアフリカで生活する双子の片方は偽薬を処方されていた、という話もあった。最終的には生き残った方がハッカー技術を駆使して全員に効果のある薬を処方させるように変えてハッピーエンド(?)に。
表題作は、腫瘍によって幸せホルモンがドバドバ出ていた少年が、一命を取り留めるために手術をすると幸せホルモンが出なくなり、30歳まで鬱になる話。後半ではドナー4000人の脳をスキャンした幸せホルモンの回路を人工的に作ったが、何にでも幸せを感じてしまうため、自分のアイデンティティを築くために幸せホルモンのレバーを脳内で操作できるようにしてもらう。一瞬初めての彼女ができたが、来歴を話すと逃げられてしまうのが気の毒。
本編とは関係ないが、巻末の解説が類を見ないほどに不快なので読まないことをお勧めしたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ全ての話で未来の話。例えば寿命がなくなった世界。例えば、感情のパラメータを自分でコントロールできる時代。そのなかで幸せってなにか考えていくものがたり。どの話もその人物なりに幸せを追い求め、それなりの幸せに到達する。そして、これって本当に幸せなのかと自問する。
これは今を生きる自分にも向けられた問いであり、果たして、いまの生活、そしてこれからの人生、幸せなのか?もちろん家族がいて、仕事もある程度安定していて、世の中的には間違いなく幸せ。ただ、自分のやりたいことを半分くらいは我慢しているし、欲望に正直かというと全くそうでない。何事も下には下がいるが、上には上がいる。
結局は、やりたいことをとるか、他の人を優先してやりたいことを我慢するか。人生短いから、やりたいことをやれ。明日死んでいいように生きろとか言うけど、そんな簡単にできたら世の中マッドマックスみたいになってる。
読後、思うのは幸せって何かはわからない。いろんなことの複合だし、文脈というか、前後関係があるからわからない。けど、一つ確かなのは、やはり1人ではなく、誰かと感情をわかり合えたときに幸せだと感じるということ。
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Posted by ブクログ
人新世SFということで、当然、地球環境の危機的状況をテーマにした作が多い。けれども、ハード面よりもソフト面にスポットを当てた作がほとんどを占める。環境危機への対応策なんて分かりきってる、問題は社会がそれを実行しようとしないことなのだ、ということなのだろう。ただ、そのアイデアが案外とナイーブ。全体に理想化されたコミュニティの登場が目に付くのだが、その描写がまるでカウンターカルチャー全盛の頃のヒッピーコミューンなのだ。「菌の歌」なんかは、あの頃のSFそのまんまである。こんな感じの話、いっぱい読んだなあ。まあお話の中とは言え、この問題に簡単に答えなんかが出るわきゃないってことなんでしょう。
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Posted by ブクログ
イーガンさんお初。タイトルから、テッド・チャンみたいな優しげな感情が見え隠れする、難解SFかと思いきや、人間の情緒が抱える残酷さが見え隠れする難解SFだった。後半はあってた。すごく難しい言葉ばっかり。短編集だがだいぶ積んでたし読むのも時間かかった。好きな残酷さではあるんだけど、あまり好みの文体ではなかったのと、確実に性癖に刺さってはいるんだけどどこか冷静に読んでしまっている自分がいる。今のジャンプを読むときの感情に似ている。もっと前のめりになりたかった。10代のころに読んでいればよかった。
脳死した恋人の脳を妊娠する女性、ブラックホールに飲み込まれる人たちを助けるレスキュー隊、過激なカトリック信者が浮気者と同性愛者だけを殺すウイルスをばらまく話など設定や倫理観が色々興味深かったけど、「ボーダーガード」のとある台詞がすごく考えさせられたのと、やはり表題作の「しあわせの理由」が一番気合が入っていたように思えた。
「しあわせの理由」は私たちは何をもって「しあわせ、好き、気分がいい」と思っているのか?という話(ざっくり)。脳の幸せを感じる部分が腫瘍の摘出によって欠如してしまった主人公を通して一緒に考えていく。「みんな興味ないかもしれないけど、俺はこれが好きなんだ!」ってもの、大体の人が持っていると思うけど好みとかツボとか性癖とか傾向というものは実際は周囲の人間、環境、様々な文化によって影響を受け、また与えてきたものであり、それに惹かれる情緒の根っこの部分も先祖から脈々と受け継いできたものなんじゃないか。「『好き』って自分だけの、特別な感情のようにみんな思っているけど本当にそうですかね?」みたいな、そんなちょっとシニカルな視点が新鮮だった。
「ボーダーガード」はだれもが不老不死の時代、量子サッカーを通して出会った女性が実は「死」を知っていて…という話。この重要そうで実はそうでもない「量子サッカー」の描写が本当~~~~に意味わかんなすぎて若干挫折しかけたんだけど、女性が語る「死が生に意味を与えることは、決してない。生はやはり生の中でこそ見いだせる。」という話が心の大事な部分に突き刺さった。少し逸れてしまうけど、私は桜の花を美しいと思いたくない、と思っている(どんな感情?)。花や葉や幹の形が云々、などどのように美しいかよりも「一週間しか咲かない」という部分に日本人皆踊らされているのでは、と思ってしまうから -
Posted by ブクログ
2005-2017年のグレッグ・イーガンのSF短編を集めたもの。
以前テッド・チャンの『息吹』(2019)を読んだときなかなかに感銘を受け、このチャンさんがグレッグ・イーガンなる作家を推賞していたので、本書を手に取った。
ハードSFというものだろう。最新の科学やテクノロジーについての知識を基盤にし、そこから果てしなく想像を繰り広げていく作風は、確かにテッド・チャンに似ている。
SFといえば中学・高校の頃は幾らか読んでいたが、ややこしい科学の話が頻出するような高度なハードSFは苦手だった。私が一番好きなのは、H. G. ウェルズのような古典か、崩壊感覚が素敵なフィリップ・K・ディック辺りだ。
この種のSF小説を読む際、冒頭の1章に多大な集中力が要る。現在の我々が住む世界からは大きくかけ離れた天体や異次元、遙か彼方の未来のような環境の設定を呑み込んでいく必要があるからだ。特に本書中の「鰐乗り」「孤児惑星」などで舞台となる超遠未来では、人類は従来からの物質・肉体の世界とデジタルな仮想空間の世界とを行き来し、後者では肉体の無い意識が浮遊しているらしいのだが、他者と面接する際には何やらカラクリを使って自在に視覚イメージ?を身にまとったりしていて、もはやここまで来ると私には訳が分からない異質さで、戸惑いまくった。
様々な意匠は貪欲に渉猟された科学的知識に基づいているらしく、それを遥か先まで延長して未聞の異様な未来像を構築するという、この恐ろしく理知的な創作行為には感嘆するが、何となく理系ずくめな知性で、私にはあんまり向かないかも、と思ってしまった。
SF的な道具立ての中で、人間性を追究するような文学であれば感動するだろうが、そこまでは行ってないし、そもそも、人間の意識が肉体を置き去りにしてデジタルな世界を飛び回り、なおかつそんな領域と物質界が「融合」しているといったぶっとんだ世界では、我々が意味するような「人間性」それ自体がすっかり変容してしまっているのかもしれないが。