山岸真のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレどうやって人間をサイバー空間に送り込むか? という問題については、つまりこの順列都市の「スキャン」って方法で解決できちゃうのかも。身体構造をまるごと写しとって、仮想世界に用意した真っ白いインテリアの部屋にぶちこめばいい。魂というものがない限り、人間はそれで問題なく動くかも。
この小説で面白いのは、その「スキャン」の発想と、ダラムの展開する「塵理論」。なんだけど、その解釈が難しいのでこれが塵理論かな? と思うのを二つ書いておく。
塵理論その①
主人公の一人であるダラムは妻によって一度仮想世界を体験し、自身をコピーと思い込んだ。その結果、「ベッドで眠る自分」と「コピーとしての自分」という二つの自分を経験した。それはどちらも実在するダラムだった。ということは、ダラムにとって世界は二つあったことになる。ダラムは自分がパラレルワールドを体現したことを悟る。人間の意識を起点として世界が存在するのなら、時間は必ずしも連続していなくていいし、不連続な空間は人間の認識によって溶接出来る。つまり、塵理論は「永遠は無限に散らばった極小の空間の接続で実現できる」ということ。
塵理論その②
もうひとつは、塵理論は「プログラムのなかのプログラム」そのものという話。現実世界におけるサーバーのパワー不足が問題なら、仮想空間のサーバーを使えばいいじゃない。情報という実態のない「塵」から無限の空間が生まれる。だから塵理論。鈴木光司の「リング」三部作でも同じような話があった。
個人的にはその①かなあと思ってるけど、よくわかっていない。塵の存在であるプログラムの中のプログラム(TVC宇宙)に永遠の時間が分割されて存在し人間の意識によって溶接される、それ全体を指してというのが今の認識に一番近いかも。
また、コンピューター上で世界で起こりうるすべてのパラレルを無限に計算し、それを観測者の認識によってこよりのようにより合わせ永遠に実在化し続けるのが塵理論という考え方もあるけど、個人的にはしっくりこない。
下巻に入り、シャワー室でダラムが自殺してから、とたんにパワーダウンを感じる。TVC宇宙の人間のファッションとかどうでもいいし。ラストのオートヴァース世界がTVC宇宙に影響するというのは面白いなあと思ったけど、それってアリか? オートヴァースとTVC宇宙の基盤になるプログラムは違うんじゃないの? とも思う。 -
Posted by ブクログ
最近(一部で)超話題のウルトラハードSF『ディアスポラ』を読破!!「近年のSFでは最高」だとか、「イーガンの頂点の一つ」だとかの評価があったので、ずっと読みたかったんですよ。
グレッグ・イーガンって人はすごい作品を書くのはわかってました。『万物理論』は難解ながらもとんでもない方向に行っちゃうところが刺激的だし、『しあわせの理由』や『祈りの海』なんかは「技術とアイデンティテイ」という問題を考える上で重要な事柄を扱ってて興味深い。とにかく、いまホットな人なんですよ!(力説)
『ディアスポラ』の評判は聞いてたんですが、近くの本屋になかったので、いままで読んでなかったのです。この前、渋谷による用事があったのでついに購入しました。
で、読み始めたんですが。。。やばそうなニオイが。500ページあるのは最近のSFの風潮でいいんですが、20ページの用語解説・・・。しかも、用語解説よんでもわけわかんない・・・。
まぁ、こんなのは読み始めりゃ何とかなるもん!
・・・・僕が間違ってました。
のっけから「ソフトウェア生命体の誕生」というわけわかんないパートだし・・・。この世界にいる三種類の知的存在は肉体人、グレイズナー(ロボット)、ポリス市民(コンピュータ生命体、ソフトウェア)なんだけど、主要登場人物は一番感情移入しにくいポリス市民がほとんどだし。話はもっぱら電脳上ですすむし(物理法則無視のよくワカラン世界)。場合によっては5次元とかにいっちゃうし・・・。
すごかった!(わからなさが)
いや、SFは読みなれてるつもりでしたが、甘かった・・・。こんなふやけた自分はレンズマンから読み直します。ありがとうございました -
Posted by ブクログ
グレッグ・イーガンのソフトな人々が描かれたハードなSF作品です。
人類の多くが肉体を捨て、意識をシミュレートできるコンピュータ上に生活環境を移した世界で、問題に直面した人類の外宇宙への進出が描かれます。
そして、ハードなSFだけに、その辿り着く果てである結末も、ハードボイルド(煮詰り過ぎ)です。
<そんなに簡単に、ヒトが身体を捨ててコンピュータに移り住むの?>
”私”という意識は、身体ではなく、脳内の電気的、化学的な変化自体でもない。
脳内の電気的、化学的の変化が、連続的な意味のある変化の場合に、生み出される現象…雷とか風とかと変わらない…と思われる。
同様の変化が起こるなら、例え機械であっても、再現される意識は同じはずある。
元より、意識が不連続なヒトが、意識の同一性なんて問題を気にしても仕方ない。
<要は・・・慣れなんじゃない?> -
Posted by ブクログ
1997年発表、グレッグ・イーガン著。仮想現実都市ポリスに住む、ソフトウェア化した人類。ソフトウェア化を拒み、肉体を保ったまま地球で生きる肉体人。地球を襲う天文学的危機をきっかけに多次元空間へと逃れた人類は、遠くの星へクローンを飛ばす「ディアスポラ」を開始する。その果てに未知の生命体と接触する。
とんでもない小説だった。全力で理詰めだ。ストーリーの流れは何となく分かるのだが、冒頭の孤児ヤチマが生まれるシーンなどはまだしも(このシーンが個人的には一番面白かった)、幾何学やワームホール、多次元の話など、大学で物理科や数理科を専攻でもしていないと完全には書かれていることを理解できないに違いない。だから、理論のどこまでが本当でどこまでが虚構なのか、よく分からない。だが虚構をそれっぽく描くこと自体がSFなのだから、分からずとも圧倒されていればいいだろう。
肉他人、ドリームエイプ、ワンの絨毯、ヤドカリなど、とにかく怒涛のように溢れる発想。そして六次元など、全く想像のつかない巨視的・微視的なスケール。これらを楽しむだけでも読む価値はある。
読み終えて、数学や物理学への興味がわいてきた。ちゃんと勉強してから、もう一度読み直してみたい。そうすれば著者の仕組んだ嘘に気づくことができ、ニヤニヤしながら読めるのだろう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ上下巻あるうちの「下巻」。こちらに入ると俄然話が進んで一気に面白くなる・・・のだが、最後の半分は「順列都市」内の話になって、いきなり数千年ほど時間がたったりしてしまい、そこにいくともうSFと言うよりはファンタジーになってしまう。
最初読んだ時にはエリュシオンと塵理論の話がさっぱりわからず(というか最初からわかる人は皆無だろう・・・)解説しているサイトを色々読んで、二回目をようやく理解。わからなかったのは、エリュシオンを動かしているハードウェアを停止しているのに「なんで数千年もエリュシオンは動き続けるのか?」ということ。。
で、これを理解する・・というか解釈するためには塵理論が必要なんだけど、これって物理で言うところの素粒子論に近い処がある。たぶん大学で物理を学んだ人にはイメージがわくんだろうけど、塵理論というのはようするに「ある一瞬を切り出しても因果律を無視したあらゆる世界の可能性が含まれている」ということを言っていて、エリュシオンの中で数千年がたってていても、私たちが感じることのできる実時間では数秒もたっていないということなのだ(というかそもそも時間がたつ必要がない。因果律がないので)。
こういった可能性に考えが至ると、結局この話で書かれている不死性というのは時間の近くの仕方による・・という結論が導かれるのだけど、そこまで書くと話が長くなるし、自分でもなにを言ってるかわからなくなりそう。
とにかくほっぽり出した感がある最後と言い、難解さが半端ない作品ではあるが、まるで今のコンピューターの状況をかなり正確に予想していて、一読の価値ありである。 -
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルからは全く内容を想像することが出来ないSF。上下巻に分かれており、上巻だけでは全く話をつかむことが出来ないし、どこに着地するのかを想像することもできない・・・・。
あらすじはこんな感じ。
近未来、人類は神経系を全てスキャンすることで、肉体がなくなった後もコンピューター上に「データ」として生き続けることが出来るようになった。コンピューター上の人格は現実とコミュニケーションをとることもできるし、企業に干渉することもできる。ただし、コンピューターを動かし続けるには資産が必要であり、それを手もっていないものはゆっくりとしか時間を過ごすことが出来ずにいた。
主人公の女性プログラマーはそのような巨大リソースの中で趣味のオートマトン遊びを繰り返している時に信じられないような発見をし、そしてそれをきっかけに「順列都市」の計画に巻き込まれていくのだった・・・。
こうかくと一本道のような話に聞こえるが、実際には複数の主人公の話が複雑に絡んでいる群像劇で、上巻は人間関係を把握するだけで終わってしまうようなところがある。上巻でも後半に入ると少しずつ話が動き出しておもしろくなるが、その前に力尽きると全く何の話かわからないまま。★4つは上下巻あわせての評価。 -
Posted by ブクログ
特に携帯メールの予測変換の進化ときたら、あまりにもすばらしいものだから、面倒なメール返信のときにはついつい予測で表示される単語をそのまま繋げて送ってしまったりする。・・・でも、これって、本当に「ワタシ」が送ったメッセージなんだろうか。私の介在は最小限であり、携帯がメッセージを作ったと言っても良いのではないだろうか。
こんな風に日常を取り巻くさまざまな事象が進化していくと、これまで当たり前だった「境界」がものすごく曖昧になる。どこまでが「自分」で「自分の意思」なのか、「生命」とか「人」と認識されるにはどんな条件が必要なのかとか、「選択した現実」と「選択しなかった現実」の差異とか。
・・・なんてことを、倩倩と考えてしまう物語群。本当の自分の姿は自分の中にあるようで、実はほかの誰かとの関わりの中でしか現れ得ない?そもそも「本当の自分の姿」なんて意識自体が幻想かもね。 -
Posted by ブクログ
いやー、豪快な話でした。この作者の「宇宙消失」もSF的大ネタを、緻密かつサスペンスフルにまとめあげた名作でしたが、この「順列都市」も、サプライズの連続で堪能できました。
セル・オートマトンとチューリング・マシンのアイデアは知っていましたが、これをVRなどと組み合わせてここまでスケールの大きな話に仕上げるとは。
「宇宙消失」とは、ストーリーや世界観としてのつながりは全くないのですが、「人間の意識が宇宙に影響を与える」というテーマで結びついており、おもしろいと思いました。
読み終えるとがまんできなくなって、早速「万物理論」も読み始めました。これもとても楽しみです。