山岸真のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ読み終えて改めてタイトルを見返すと、また背筋がゾクゾク。
可愛らしい少女の表紙絵からは想像だにしなかった展開と結末にもう虜。久々に眠気に打ち勝って徹夜で読み耽ってしまった作品。
まず冒頭まえがきの〈作者より〉から既に面白いし、これが紹介するのに最適。
「これは恋愛小説であり、戦争小説であり、SF小説であり、さらにもっとほかの多くのものでもある。」
これがまた本当にその通りで、これだけたらふく盛り込んでいながら全てが完成されていて、青春小説としても身分違いの恋とか少年少女らの微妙な関係性とかが漂う夏の海の気配とも合わさって実にもどかしくも爽やかに描かれる。グルームワタリ鳥の光景だけで夏を感じられる程にのめり込んでしまった空気感にもう夢中さ。
対極的に、少年少女らに忍び寄る戦争の気配やら大人たちが隠している’秘密’についてとかを察知するに及び、物語は一種のヒーロー譚のような様相をも纏い出す。
が、終盤に差し掛かってからの転調が最高にキマっている。あれよという間に世界が一変し、それまでの空気がほぼ全て入れ換わり、からの、衝撃のラストで〆!本当にこの終盤の変わり身は凄い。「この夏のあと、ぼくたちはだれひとり、前と同じじゃなくなってる」(p283)ってさり気なさ過ぎる一文が今思えば恐ろしい。
いや、変わらなかったのは少なくとも二人いるのか。そうだったらいいな。
個人的にはオチについて物凄く語り合いたい!
「俺はこう思ったんだけど、どう?」みたいのをやりたい!
けど自分なりの解釈に満足してるしそれはそれでその方が良いのか。
…p368の10行目から13行目の3行がアレよね?
7刷
2022.8.14 -
Posted by ブクログ
前半は三回くらい呼んだ。
そこを超えると最後までやめられなくなる。
この世界の物理よく分からないので、色々な描写が理解できないのだけど、それでもその世界に馴染んで仕舞えば、気にならない。
イーガンの小説ではときどき性差別がとりあげられるけど、この世界と我々の世界がこれほど違うのに現れる差別を読むと、社会と生物の生理とには根本的に矛盾があるのかとも思う。が、これは作り話だ。
物理法則が違うことでそこに棲息する生物はことなり社会の形も異なる。そこらへんの力技が見事
物理法則については巻末に解説があったり、イーガン自身のサイトにも詳しい情報があるけど、わたしにはわかりませんー -
Posted by ブクログ
グレッグ・イーガンの〈直交〉三部作の第二巻『エターナル・フレイム』を読み終わった…。なんという余韻…。これはある宇宙の物理学史であるとともに、性別とは何であるか(何であると考えたらいいか)を問いかけてくるな。すごイーガンの極地だと思うんだけど、これでまだ完結してないのである!
この〈直交〉宇宙における主人公たちである人類は、女は出産時四つの子供に分裂して死ぬという世界なので、宇宙船〈孤絶〉の中においては四つ子になると人口の増加を招くので「飢餓状態にあれば二つ子出産になるかも」という通説に従い節食している。そんな極限ななかで、いろいろすすむ。
人類はまだ、空間と時間が交換可能な宇宙についてほとんど知らず、とはいえ近くを通る反物質「直交物質」の性質を知るために科学に邁進する…。一方で、政治的な事情や世論にものごとが阻まれたり、古臭い慣習によって一悶着おこったり、とエピソードには事欠かない。
果ては「女を飢餓状態に置かなくても二児出産させる方法」を模索していた生物学者の研究は、思わぬ方向へと発展しつづけて……???
とにかくヤバいのでみんな読もうな! -
Posted by ブクログ
グレッグ・イーガンの〈直交〉三部作第一巻『クロックワーク・ロケット』。時空に関する物理法則が異なる宇宙とはどんな姿なのかを、論理的にとことん導出して見せてくれる一大ハードSF。また一人の科学者の一生の物語でもあり、生物が自身の特性とどう向き合うのかを見せてくれるドラマでもある。
時間と空間が交換可能かついくつかの仮定をおき、そこから光の性質、物質のありかた、生態系の様相までを描き出す。「球面調和関数くらい知ってるよね?」みたいな顔して怒涛の推論議論を登場人物が繰り広げるところは圧巻である。
そしてまた、恒星系ひとつが滅びるスケールの世界の危機を、物語開始時点では未解明の物理法則を解明することで防ごうとする一代記でもある。なんというかもう脳汁がヤバい。専門家以外は一発でその物理学を理解はできないレベルなので、後でじっくり楽しみたい。
ストーリーもSF成分もとても重厚! なんか1/2過ぎたあたりでもはや読むのが止まらなくなってしまい、通勤時間が一瞬で終了するわ、気がつくとこんな時間(4:35 a.m.)だわ、読み切ってなお寝られる気が全然しないいい本だった。なお三部作なので物語はまだまだ終わらない。楽しみ。
それにしても、登場人物たちの抱える生物学的特徴とその諸問題に纏わる部分は、イーガンらしいなっておもった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレSF青春ラブストーリーの名作。架空の惑星を舞台にしているため、独特の固有名詞が多く、ガワはとっつきにくさがあるものの、その中身は極めて真っ当な少年少女のラブストーリーである。主人公ドローヴのやや大人びた語りを通して伝わってくる彼女、ブラウンアイズの愛らしさと二人の関係性は非常に甘酢っぱい。また口の悪い姉弟の、姉である美少女リボンとの三角関係や、役員の父を鼻にかけた高慢かつ小物であるウルフなど、他のキャラクターも生き生きと筆致で描かれている。特にヒロインであるブラウンアイズの身振りや仕草はどれも細やかで、一途な想いを見せたり、リボンに対する嫉妬の感情を垣間見せたりと、その愛らしい仕草を例に挙げると枚挙にいとまがない。その関係性の進展ぶりは読んでいるこちらが赤面するほどである。そんな子供時代の淡い恋物語の背後では、隣国アスタとの戦争の影響が徐々に忍び寄っており、粘流の訪れに従って不穏さが増していく。ドローヴとブラウンアイズ。役人の息子と酒場の娘という身分違いの恋が、そのまま議会の役人たちと町の人間との溝の深さに繋がっており、甘い恋に反して描かれている社会はハードの一語である。クライマックスはまさに怒涛の展開であり、明かされたこの惑星の真実と、緩やかな悲劇の始まり、変わっていく町の人々などを見るのは非常にキツく、ページを繰るのも心苦しかった。タイトルの意味も明らかになったため、てっきりそれが仕込んでいた大きなネタかと思いきや、この小説の真骨頂はラスト数ページに込められている。この壮大なオチはまさにSFならではの大どんでん返しであり、周到に張られた伏線と綿密に寝られた世界観設定の賜物である。人間によく似てはいるが、あくまで登場人物たちは人間型の異星人であり、ここは異星の文明である。それをあらためて再認識するとともに、オチが非常に理にかなったものであることには文字通り舌を巻いた。傑作である。
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Posted by ブクログ
宇宙や生物を取り扱いつつ、話の軸はあくまで電脳であり、その大風呂敷の上で命を説くような文句なしのSF超大作だった。
物語の終盤は夢中になって一気読みできた。
マリアが長い眠りから目覚めてからの没入感がすごかった。エシュリオン vs ランバートの構図はさながらアクションサスペンス映画のようだった。
人間である自分にとって、ランバート人の理解できないほどの合理性はかなりエイリアン感があって良かった。
でも、やっぱりすごく難解だった…。
塵理論って結局なんだったんだろう。ハードSFを読むと数学や物理学をきちんと勉強したくなるw
トマスやビーとケイトのパートはよく分からないままさらりと読んでしまったな。。。
それでも白熱して楽しめてしまうのがグレッグ・イーガンの凄いところと言えば凄いところなんだけど。
もし再読することがあるなら、解説サイト?等を参照しながら読みたい。 -
Posted by ブクログ
うーん、とても難解だった!w それでも総体として面白かったという印象を残すのだから、やっぱりグレッグ・イーガンはすごい。
オートヴァース内の化学的な描写は、正直なところ難しくて飛ばし読みしてしまった。あと、コピーのポールが真相?に至るまでの考察も。
だけど、そんな初心者をも楽しませてくれるのだから、イーガンはすごい。上級者向けの細部を披露しつつも、初心者を振り落とさない。しっかりとストーリーの道案内をしてくれる。
だから読んでいる方も必死になってしがみつくことができて、タフな読書体験を獲得できる。
話の核となるのは、人間のコピーを作成してコンピュータ上で走らせるというもの。
単なるSF的アイデアの披露に留まらないのは、話が多層的だからだ。コピーという存在について、経済・法律・哲学などの複数の視点から語られる。だから、のめり込んでしまう。
コピー以外にも、ささやかなSF的エッセンスが散りばめられている。手の込んだ迷惑メールとか、新しいライブ鑑賞のスタイルとか。それ単体で短編小説になり得るレベルのギミックが差し込まれる。SF小説として非常に贅沢。
また、上巻としての終わり方がすごくサスペンスドラマ的で下巻が気になってしまう感じ。