山岸真のレビュー一覧
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前半は三回くらい呼んだ。
そこを超えると最後までやめられなくなる。
この世界の物理よく分からないので、色々な描写が理解できないのだけど、それでもその世界に馴染んで仕舞えば、気にならない。
イーガンの小説ではときどき性差別がとりあげられるけど、この世界と我々の世界がこれほど違うのに現れる差別を読むと、社会と生物の生理とには根本的に矛盾があるのかとも思う。が、これは作り話だ。
物理法則が違うことでそこに棲息する生物はことなり社会の形も異なる。そこらへんの力技が見事
物理法則については巻末に解説があったり、イーガン自身のサイトにも詳しい情報があるけど、わたしにはわかりませんー -
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グレッグ・イーガンの〈直交〉三部作の第二巻『エターナル・フレイム』を読み終わった…。なんという余韻…。これはある宇宙の物理学史であるとともに、性別とは何であるか(何であると考えたらいいか)を問いかけてくるな。すごイーガンの極地だと思うんだけど、これでまだ完結してないのである!
この〈直交〉宇宙における主人公たちである人類は、女は出産時四つの子供に分裂して死ぬという世界なので、宇宙船〈孤絶〉の中においては四つ子になると人口の増加を招くので「飢餓状態にあれば二つ子出産になるかも」という通説に従い節食している。そんな極限ななかで、いろいろすすむ。
人類はまだ、空間と時間が交換可能な宇宙についてほとんど知らず、とはいえ近くを通る反物質「直交物質」の性質を知るために科学に邁進する…。一方で、政治的な事情や世論にものごとが阻まれたり、古臭い慣習によって一悶着おこったり、とエピソードには事欠かない。
果ては「女を飢餓状態に置かなくても二児出産させる方法」を模索していた生物学者の研究は、思わぬ方向へと発展しつづけて……???
とにかくヤバいのでみんな読もうな! -
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グレッグ・イーガンの〈直交〉三部作第一巻『クロックワーク・ロケット』。時空に関する物理法則が異なる宇宙とはどんな姿なのかを、論理的にとことん導出して見せてくれる一大ハードSF。また一人の科学者の一生の物語でもあり、生物が自身の特性とどう向き合うのかを見せてくれるドラマでもある。
時間と空間が交換可能かついくつかの仮定をおき、そこから光の性質、物質のありかた、生態系の様相までを描き出す。「球面調和関数くらい知ってるよね?」みたいな顔して怒涛の推論議論を登場人物が繰り広げるところは圧巻である。
そしてまた、恒星系ひとつが滅びるスケールの世界の危機を、物語開始時点では未解明の物理法則を解明することで防ごうとする一代記でもある。なんというかもう脳汁がヤバい。専門家以外は一発でその物理学を理解はできないレベルなので、後でじっくり楽しみたい。
ストーリーもSF成分もとても重厚! なんか1/2過ぎたあたりでもはや読むのが止まらなくなってしまい、通勤時間が一瞬で終了するわ、気がつくとこんな時間(4:35 a.m.)だわ、読み切ってなお寝られる気が全然しないいい本だった。なお三部作なので物語はまだまだ終わらない。楽しみ。
それにしても、登場人物たちの抱える生物学的特徴とその諸問題に纏わる部分は、イーガンらしいなっておもった。 -
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ネタバレSF青春ラブストーリーの名作。架空の惑星を舞台にしているため、独特の固有名詞が多く、ガワはとっつきにくさがあるものの、その中身は極めて真っ当な少年少女のラブストーリーである。主人公ドローヴのやや大人びた語りを通して伝わってくる彼女、ブラウンアイズの愛らしさと二人の関係性は非常に甘酢っぱい。また口の悪い姉弟の、姉である美少女リボンとの三角関係や、役員の父を鼻にかけた高慢かつ小物であるウルフなど、他のキャラクターも生き生きと筆致で描かれている。特にヒロインであるブラウンアイズの身振りや仕草はどれも細やかで、一途な想いを見せたり、リボンに対する嫉妬の感情を垣間見せたりと、その愛らしい仕草を例に挙げると枚挙にいとまがない。その関係性の進展ぶりは読んでいるこちらが赤面するほどである。そんな子供時代の淡い恋物語の背後では、隣国アスタとの戦争の影響が徐々に忍び寄っており、粘流の訪れに従って不穏さが増していく。ドローヴとブラウンアイズ。役人の息子と酒場の娘という身分違いの恋が、そのまま議会の役人たちと町の人間との溝の深さに繋がっており、甘い恋に反して描かれている社会はハードの一語である。クライマックスはまさに怒涛の展開であり、明かされたこの惑星の真実と、緩やかな悲劇の始まり、変わっていく町の人々などを見るのは非常にキツく、ページを繰るのも心苦しかった。タイトルの意味も明らかになったため、てっきりそれが仕込んでいた大きなネタかと思いきや、この小説の真骨頂はラスト数ページに込められている。この壮大なオチはまさにSFならではの大どんでん返しであり、周到に張られた伏線と綿密に寝られた世界観設定の賜物である。人間によく似てはいるが、あくまで登場人物たちは人間型の異星人であり、ここは異星の文明である。それをあらためて再認識するとともに、オチが非常に理にかなったものであることには文字通り舌を巻いた。傑作である。
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ネタバレ待遇のいい公務員の息子「ドローヴ」と、世間的には下層と扱われる家の娘「ブラウンアイズ」との愛を軸に展開する青春&恋愛&SF小説。
未熟な少年少女の物語を通じた成長、身分違いという障壁(=燃料)により燃え上がる愛、ライバル登場による三角関係、(良し悪しはともかく)世間体に縛られた大人との対立、そして彼らの行動が世界の危機と直接的に結び付くSFの仕掛けはセカイ系のように彼らの物語を盛り立ており、屈指の青春恋愛小説という裏表紙のうたい文句にも納得である。
以下、多分にネタバレを含む。
上述のとおり恋愛モノ、というか物語に付き物の三角関係についてが素晴らしい。主人公もヒロインも脇役もかなり人間臭く、敗北者に対する慈悲などは存在しない。所詮は敗北者だろうと言わんばかりに、ほろ苦くも仄かな甘味と退屈さを提供してくれる恋愛小説の常識を叩き潰してくれる。
恋愛小説のサブヒロインというのは、時としてヒロイン以上の魅力を放つが、それでいてサブとしての宿命を逃れられない。彼女にストレートな幸福を掴む権利はないのだ。だからこそ、ひとつの恋の終わりまでに至る万感の思いが読者の魂を壊れるほどに揺さぶるのだと思う。読者はサブヒロインの幸せを願ってやまない。漫画やアニメならファン投票で正ヒロインが破れるパターンである(ファンに好かれてもサブヒロインの救いにはならないのだが)。
恋愛小説の華とは、失恋である。
しかし、この物語において、サブヒロインに救いなど用意されてはいない。正ヒロインに「品がなくなった」「意固地で嫌な人」「あのことはつきあえそうにないわ」とまで言われるサブヒロインなど、武者小路実篤『友情』の野島以外、私は知らない(思い出せないだけかも)。彼女は幸せを掴むことも、幸せだった思い出を胸に生きることも許されず、惨めに死んでいく。
でも、青春なんてそんなもんである。どんなに脚色をしたところで、どんなに無粋だと糾弾したところで、勝ち組と負け組の存在は揺るぐことは無い。自分で動かなきゃ救済なんて存在しないのだ。
『ハローサマー、グッドバイ』という表題は、次に進む主人公たちの台詞ではなく、置いていかれる者たちへのお悔やみ、あるいは置いていかれる者たちの遺言なのかも知れない。屈指の青春恋愛小説である。 -
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グレッグ・イーガンの作品は、それを読む前と後で読者の考え方を大きく変える程の力を持っているが、この本も例外ではない。
ストーリーを支える設定としての科学的考察があまりにも専門的すぎる(しかもあらゆる科学ジャンルを横断する)ため、1ページめくる毎にWikipediaを開くなんてことがしょっちゅう起こる。
しかし、文章の向こう側で何が起こっているのか、用語を調べながら必死に内容を咀嚼するのは、それでとても楽しい作業だった。
どうしても理解できないと、ものすごく悔しいし、もっと理解したいと思う。それで関連する本を買って読み漁ったこともある。
もちろん詳しい考察は適当に読み飛ばして、想像力でストーリーを補うこともできる。そしてそれでも十分に内容を楽しむことが出来る。
表面的にストーリーを楽しんだり、反対にどこまでも科学的考察に深入りしたりすることも出来る。つまり複数のレベルで楽しむことが出来る。何度読み返しても新しい発見があるので飽きない。
「ディアスポラ」は、そのように複雑な魅力を備えた良書だと思った。 -
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映画『インターステラー』が好きならきっと好きになるSF小説。ただし難解と言われているインターステラーよりさらにはるかに難解な設定なので、読むのにはそれなりの気合が必要だと思います。
21世紀最重要SF作家と言われるグレッグ・イーガンの”直交3部作”の1作目。3作目の「アロウズ・オブ・タイム」まで発売されているので、引き続き読み続けたいシリーズです。
(ただ、ちょっと前に「これは!」と思ったヒュー・ハウイー著のサイロ三部作も2作目「シフト」の途中で飽きちゃったし、SFの傑作「星を継ぐもの」も続編の結構早い段階で飽きちゃったので、今回も完走できるか怪しいけど…。)
本作の最大の特徴は、地球(というか僕たちが住む宇宙)とは別の物理法則に支配された世界を構築し、その世界での出来事を描いているという点。
「時間」と「空間」の区別がなく等価、という世界で、ミンコフスキー時空ではなくてユークリッド時空にもとづいた世界になっています。
「”時間軸”が特別な軸ではないので、別の空間時間と交換することは可能」。
その特性を生かして、目前に迫る危機的な状況を救うべく、時間の進行に直交する方向へロケットを飛ばし、解決方法を見つけるまで何世代もかけて科学を進めるという一大プロジェクトをスタートさせる、というのが開幕編の本作の大まかなストーリーです。
本作の魅力はなんといってもこの”設定”で、物理法則のとある式の1つの符号を+から-に変えたことで生じる様々な変化を”そういう世界”として物理的に完全構築しています。
物語自体・設定自体がおもしろいというのもあるけれど、それ以上に、1つのアイデアからそこまで世界を広げられるイーガンという人間の「妄想力の強さ」がすごい!
“設定”が中心にある作品ってSFに限らずいろいろとあるけれど、ここまでの世界を作り上げるのは本当にすごいな、と。
そして、妄想力の強さ以上に、”ご都合主義”を挟み込まずに理論で矛盾なく構築していく「自分の妄想への”忠実さ”」そして「”誠実さ”」にときめいてしまう。
こういうものづくりの姿勢って、本当にかっこいいなぁ!
そして、この設定の伝え方もうまくて、作品内で不自然に”説明的”ではないんです。
というのも、主人公のヤルダは、最初は何も知らない田舎の女の子なんだけど、世界に様々な疑問を感じ、やがて物理学者になります。
そして、この宇宙におけるいわゆる”相対性理論”的な法則を発見するんですが、その過程が描かれることで、作品世界中の物理法則が読者にも自然に説明できるというわけです。
一方で、物理法則同様に、主人公たちの生態にも大きな特徴があって、主人公はおそらく”不定形 “のアメーバみたいな生物なんです。
この生態については特別に説明がなされることはなくて、例えば”後眼で様子を確認して、新しい腕を一本発芽させた “みたいな文章から想像していくことになります。
これも、例えば普通の小説で人間の身体的特徴の説明描写がないのが普通なので、あくまで作中の宇宙における”普通の描写”に徹しているということ。ここでも著者の誠実さが光りますね。
ほかにも、主人公たちの種の生態が、現実世界における男女の格差とか、社会における育児・出産の様々な問題を想起させていて。
SF作品ってやはり”寓意”があってこそ、みたいなところもあって。こういう設定のうまさもやはり素晴らしいSF小説でした。 -
Posted by ブクログ
ちょっと苦手なイーガン。比較的読みやすいということで懲りずに挑戦。
舞台はイラン。2012年の政権交代と第一部とし2027年以降の近未来を第2部とする構成。相変わらず、イーガンの言い回しとか表現とか理解しにくい感じがつきまとう。よっぽど僕には合わない作家なんだな。でも、テーマはまさにタイムリーなAIのななめ上を行っている。人格そのものもを仮装空間にアップロード(本文中ではサイドロードという表現)できるか、できたとしたらどんな問題が引きおこされるのか?
自分という人間の「プロキシ」と表現されているのが上手いなぁと思う。脳スキャンによって不完全なマッピングを前提にした部分的人格(?)は人間なのか?不死の存在となるのか?意識と呼べるのか?興味は尽きません。
読んでいる最中に母が入院という、状況的にも心に刻まれる一冊となりました。