山岸真のレビュー一覧

  • 白熱光

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     遙か未来。人間もその他の知的生命もソフトウェア知性も、すべてがオンラインのプログラム形態で暮らしたり、物理的肉体にダウンロードしたりして過ごしている、融合世界。おおむね銀河の隅々にまでこの世界が広がっている。光速は越えられないから、旅といえば、個体はデータの形で送られ、目的地でプログラム形態なり、物理的形態なりにダウンロードされる。『ディアスポラ』の設定の延長線上にある宇宙。地球人にオリジンを持つラケシュは退屈していた。もう銀河のどこにもフロンティアはないからだ。
     いや、ないことはない。銀河中心部は孤高世界といわれ、そこに住む知的生命は融合世界との一切の交渉を拒否していたのだ。ただ、融合世界の住人が孤高世界のネットワークをただ乗りして、銀河中心を横断して旅行するのを孤高世界は黙認していた。
     そんな旅行者の一人ラールは銀河中心を横断中、実体化させられ、孤高世界で発見されたメテオを見せられる。そのメテオは内部に多量のDNAを含んでいた。つまり未発見のDNA生命の世界があるかもしれないのだ。ラケシュはソフトウェア知性由来の友人パランザムとともに、未発見のDNA世界探検の旅に、孤高世界に向かう。
     これが奇数章。
     
     偶数章はロイという女性の物語。でも人間じゃない。六本足の昆虫のような知的生命である。しかも住んでいる世界がどうも普通に惑星ではない。〈スプリンター〉と呼ばれる、円筒状の岩。その中に洞室やトンネルが張り巡らされている。断面にしてみると、真ん中に無重力地帯があり、そこから離れると重力とその向きが変わっていくという不思議な性状を持つ。〈スプリンター〉はむかしもっと大きな大地から引きちぎられたらしい。それゆえ〈スプリンター〉=破片と呼ばれている。〈スプリンター〉の岩は半透明で、外には白熱光と呼ばれる光が満ちている。
     ここの技術水準は産業革命前という感じ。「人々」はそれぞれチームを作って農作業や流通業に従事している。チームは時に他のグループの「人」を「リクルート」してきて、自分のグループにいれたりするが、別のチームに引き抜かれることをとても恐れている。
     ロイはあるとき、ザックという老人に声をかけられる。リクルートされるのかと身構えると、ザックは〈スプリンター〉各地を異動した際にそこの重さとその向きを測ってきて欲しいと頼む。ロイはザックの仕事を手伝ううちに、はじめて自分のチームの仕事以外のこと、世界の成り立ちや歴史について関心を持つようになり、遂にはチームを抜けて、ザックの共同研究者となる。
     ザックは〈スプリンター〉があるハブの周りを回転しているという仮説を呈示し、その検証のためにさまざまな物理学実験を考案していく。世界の仕組みを探る活動は次第に人員を増やしていくが、〈スプリンター〉がハブへと落ち込むうちに再び引きちぎられるのではないかという懸念が生じてくる。

     さて、奇数章と偶数章はどう関わるのか。ラケシュたちが探し出そうとしている世界がロイの世界ではないかとはじめからおよそ推測がつくのだが、もう少しネタをばらす。
     ラケシュたちは、銀河中心部で文明の痕跡を発見する。銀河中心部は構成も密集しており、中性子星などの高密度星も多数ある。その文明の惑星は中性子星の接近により崩壊することがわかり、住人は「箱船」を中性子星の周回軌道に乗せて何とか子孫を残そうとしたらしいのだ。ラケシュたちの発見したのは失敗した「箱船」だが、そこから首尾よく中性子星の周回軌道に乗った「箱船」があるのではないかと探し始める。

     ザックとロイは〈スプリンター〉の内部から簡単な物理的実験と数学で世界像を解いていく。ただしそれは、著しい重力傾斜下に自由落下する建造物内の物理学であり、文章のみで記述される数学についていくのは私には困難であった。だが、すべてを理解できなくとも、科学的発見の興奮はじゅうぶんに伝わってくる。これはルネサンスの物語なのである。内部からしか観測できないロイたちの視点を補完するのがラケシュの物語ということになる。
     個体の生を生きるロイと、テクノロジーによって個体の生を超越してしまったラケシュとの接触がどうなるのかは伏せておくが、詩情に満ちた結末へといたる。開かれすぎた世界のラケシュと、閉じられた世界のロイが同じような探究心を抱くというのが、本書の味わいか。

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    2016年02月12日
  • クロックワーク・ロケット

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    回転物理学の中身はほとんど分からなかったが、物語としてとても面白かった。科学者同士の会話を読んでいるだけでワクワクできた。
    早く続きが読みたい。

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    2016年02月11日
  • ディアスポラ

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     この頃、星空を見上げると、ある感慨にうたれる。この宇宙にはいろんな世界がある。他の星の生命もいるかも知れない。宇宙人もいるかも知れない。
     もしかして自分もそこに到達できるかも知れない。と思ったのは子どもの頃。
     星々の世界があると思っても、もはや自分にはあの星々に到達することはあり得ないと今は思わざるを得ない。そのことにある感慨を覚える。ましてやこの宇宙の外など。しかしそんな小説を読もうという気はある。なぜだかよくわからない。

     すごいSFだけど、とても読みにくい。
     という評言はまあ正しい。私も最初の三分の一くらい読んだまま、数年うっちゃっておいた。
     まず最初のアイディアは、人間がその精神をソフトウェア化し、ヴァーチャル環境に移り住み、肉体人と二極化するという未来(ソフトウェア化しつつも、機械の身体にその精神を収めるグレイズナーの存在も)。そのヴァーチャル都市、《コニシ》ポリスで人工知性ヤチマが生まれるさま、ヤチマが《コニシ》ポリスを見聞きするさまが描かれる。
     次のアイディアが中性子連星の想定外の崩壊によるガンマ・バーストで地球上の生身の生命が死滅してしまうというもの。当然、ポリスに逃げ込むしか生き延びる方法はない。私はこの辺で挫折していたのだが、このあとあたりから、疑似科学理論はとても難しいものの、話は快調に進んでいく。作品世界での時間もどんどん流れていく。
     現実世界との接触を失うまいとするポリス《カーター・ツィンマーマン》に舞台が移る。ここで登場するのがコズチ理論という物理学。空間に時間を加えた4次元にさらに6つの次元を加えた10次元がこの宇宙であり、素粒子はそれらの次元を結ぶワームホールの口であるという理論。コズチ理論に基づき、ワームホールを抜ける超高速航法を生み出して,他の知的生命を探しに行こうとするがうまくいかない。そこでポリス住民の志願者すべてが千のコピーを作って、千の方向に宇宙船を飛ばす「ディアスポラ」計画が発動する。
     「ディアスポラ」計画により、知性体・トランスミューターの足跡が捉えられ、彼らがこの宇宙より上位の宇宙に移動していることがわかり、修正コズチ理論を駆使して、彼らもその宇宙、時間1次元と空間5次元の宇宙に移る。ここの描写がまたすごいのだが、トランスミューターはさらにその宇宙もすでに去っている。ここから先、『タウ・ゼロ』以上のスケールになって、唖然と口を開けている他ない方へ話は進んでいく。
     そして結末まで開いた口がふさがらないものと覚悟すべし。

     そして、今日もまた口を開けて夜空を見上げるのだ。スカイツリーを、じゃなくて。

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    2016年02月05日
  • パラークシの記憶

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     文句を言いたいわけじゃないが、5年待った。『ハローサマー、グッドバイ』のあとがきに触れられていた続編のようやくの登場である。

     続編というのはいささか語弊があって、直接的な続きというより、同じ舞台を使った作品である。しかも、『ハローサマー』の主人公、ドローヴとブラウンアイズは伝説の人物となっていて、その実在すら定かではなくなっている未来の話。スティルクと自らを呼ぶこの星の知的生命は人間とそっくりなのだが、『ハローサマー』では機械文明初期にあったのが、この未来の話では産業革命以前のような狩猟・農耕社会に退行している。
     しかもスティルクたちはこの何百年かのあいだに『ハローサマー』にはなかった能力を身につけている。それは同性の祖先の記憶をアーカイヴのように残しているということである。父が自分を受胎させるまでの記憶、祖父が父を受胎させるまでの記憶、というようにずっと遡っていけるのだ。ただそれを思い出すには、それ相応の努力がいる。そしてもっとも長く祖先の記憶をたどれる家系が、村の長となるのだ。記憶が女系と男系に分かれているせいか、コミュニティも男性集落と女性集落に分かれており、男の子は一定年齢になると母から離されて、男性集落の父のもとで過ごすようになる。
     「ぼく」ヤム・ハーディは、男が狩猟、女が農耕を営むヤムの村の男長の甥である。彼の父の弟が男長だ。年少の兄弟のほうが父の記憶をより多く持っているから長になるのである。折しも、年々寒さが強まり、獲物がとれにくくなり、作物も実りにくくなっている。だいたい『ハローサマー』と同じような状況になっていると読者にはわかるわけだ。このため、ヤムの村では漁を営む沿岸のノスの村に援助を求めることになる。そこでハーディはノスの女長の娘ノス・チャームと出会い、恋に落ちる。美しくて、利発で、意志の強い女の子が主人公と相思相愛になるのはマイクル・コーニイの常。

     『ハローサマー』の時代よりあと、この惑星には地球人がやってきていて、鉱物を採掘している、というのも、新たな設定。地球人ミスター・マクニールはハーディのよい助言者である。
     ハーディの父ブルーノはリーダーの才覚のある人だが、その資質を欠く弟のスタンスが男長を務めており、ブルーノはスタンスを保佐して村を運営している。しかし、ある日、父ブルーノは殺されて発見される。祖先の記憶を有するスティルクたちは、殺人のような不名誉な記憶を子孫に残すのを嫌って、恐ろしく犯罪は少ないはずなのに。

     基本的には『ハローサマー、グッドバイ』と同じ話といってもいい。この星の人たちが、40年続く凍期をどうやり過ごすのかという話だ。そして『ハローサマー』を読んでいる人はその答えもすでに知っている。そこで作者は上記のような新たな設定を投入して、似ているけどぜんぜん別の話、でも『ハローサマー』をもうひとつ読みたいという読者のわがままをかなえてくれる本を書き上げたのだ。登場人物たちが『ハローサマー』の舞台だったパラークシ(今では聖地とされている)での出来事の記憶にたどり着けるかどうか、殺人事件の真相はどうなのか、スティルクたちはどうしてこんなに人間に似ているのか、などなど。
     そして、あとがきには次のお楽しみが。傑作だったということしかもう記憶にない『ブロントメク!』が本文庫で復刊予定だというのだ。

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    2016年02月05日
  • ゼンデギ

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    子供が出てくるのはイーガン作品には珍しい?
    論理の骨と皮だけでできてるような今までの作品とは少し違った印象を受けた。
    そして結末は苦く鮮やか。
    前半の流れも素晴らしい。
    さすが。

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    2015年09月04日
  • ディアスポラ

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    色々な作品、映画をみても、これ以上の切なさを感じさせるラストは出会えないかもしれない。イメージの極致。

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    2015年07月28日
  • パラークシの記憶

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    ネタバレ

    前作が、夏の日差しから凍期を前に
    希望も恋も失われていき、徐々に灰色が濃くなって
    行くかのような雪の中、ラストを迎えるのに対して、
    続編は、前作になかった異星人の特徴や前作と異なる
    文化、文明状態など戸惑いもあるが、前作のことも
    全て(一応)説明を付けたうえで、日差しのなか
    終わるのが、皆が待った続編が届いた、
    という感じでよい。
    まわりの青二才がアホで、少しはそれより優れている
    といっても、二人を隔てる障害があっても、
    主人公が初めからビシッとしていて、
    美少女と惹かれあっては一般人には妬みの
    種なだけだし、徐々に古くからの世界を
    新しく築きなおすという所につながって、
    青二才が一人前の男になる過程を見ていけるのもよい。

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    2015年03月13日
  • ひとりっ子

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    SF短編集。量子力学、多層世界、人工知能などを題材にしている。理論的な部分は難しい話が多くて、数学的素養のないわたしにはついてゆけないところも多かったのだが、理屈のところはなんとなく流して読んでも人間ドラマが面白いのがイーガンなので無問題。先に邦訳された「しあわせの理由」とリンクしているところもあるので、読むならそちらが先がよいかも。

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    2014年12月07日
  • ハローサマー、グッドバイ

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    ネタバレ

    前半が少しタルいんです。もう少しシャープでもいいな・・・・後半はページが進む進む。こういう潔さは若い主人公ならでは。
    なかなか縁がなくなってしまったなあ;;

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    2018年09月28日
  • 祈りの海

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    ネタバレ

    長編に挫折して以来、手付かずだったのですが。
    これはこれは!
    しょっぱなの「貸金庫」、読んで終わったところであまりの切なさに鼻の奥がツーン。うそー。自分でびっくり。でもホント。えかったー。

    確かに物理弱いとツラいところもあるけどその辺乗り越えてでも読みたいと思わせるところがあり。そういうのナシのも割とあり。

    喰わず嫌いを反省した次第。これ読まずに過ごしていたら・・・と思うと勿体無いどころの話じゃなかったわ。理系さんだけには独占させておけませんよ!

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    2018年01月23日
  • パラークシの記憶

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    典型的なボーイ・ミーツ・ガールのストーリー、いけすかないムカつく敵役、繰り返される災厄等々、前作をそのままトレースしたかのように見えて、それでも一気に読ませられてしまうのがスゴイと感じました。
    前作から、もう一度、通して読み直したくなりました。

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    2014年08月22日
  • 白熱光

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    年明けからこれ一冊にかかりきり。荒っぽい速読派の自分にはまったくの例外だが、いやあ、それだけのことはあった。やっぱりイーガンはすごい!想像力というものの深さと広さを思い知らされる。いや、もちろん、作者のビジョンを共有できたわけでは(全然)ないけれど、その一端を垣間見ただけで、スケールが桁外れであることはわかる。

    奇数章と偶数章で別の話が語られていくが、奇数章はじまりの舞台は「ディアスポラ」と同様の遙かな未来社会。「ディアスポラ」ではその設定自体に度肝を抜かれたが、ここでは人類の末裔がとっている形は既定のものとして背景に退いている。数百万年後の人類は他の幾多の種族とともに「融合世界」という文明圏を築いていて、それは物質世界と電脳世界にまたがっており…といった設定はさらっと流されていて、うーん、これは「ディアスポラ」とはまた違った地平に連れて行かれるのだと予感する。

    一方、偶数章には「奇妙な世界の異星人」たちが登場し、この昆虫型の生命体が自分たちの運命を知り、破滅を回避するために、その世界を統べる法則を見つけ出していこうとする姿が描かれていく。ここがねえ、とてつもなく「ハード」なのだ。すっかりわかろうなどと思ってはいけないのが、イーガンのハード作のお約束、「ディアスポラ」を読んだ時みたいにわからないところは飛ばしちゃえ!と思ってバシバシ斜め読みしてたんだけど、半ば過ぎまで来てふと気づいた。あら?もしかして偶数章の方がメインじゃないの?ここを読まなかったらあんまり意味ないんじゃないの?

    (以下、どれだけ正しいかにまったく自信はないものの、わかったつもりの「内容」に触れているので、これから読む方はパスしてください)

    うーん、仕方がない、腰を据えて読むか、と覚悟して再度読み直す。むむ…、やっぱり難しすぎ。でも何となく、これは特異な世界の物理法則を一から探っていく過程を、現代の用語を使わないで説明していくという力業を見せられているのだということはわかってくる。そしてこの「スプリンター」という岩石状の世界が、大ブラックホールの近くにあるんじゃないかという見当もついてくる。ここら辺、物理学に詳しい人にはすごく刺激的だろうと、文系人間としては推測するしかない。(読後ネットを見たら、イーガン本人によるものやらいろいろ解説があるらしい)

    奇数章では、こちらのパートの主人公であるラケシュが、未知の生命体探索の果てに「スプリンター」と同じような世界にアバターを送り込んで、そこの個体と接触することになる。ここが意外や「人間ドラマ」的面白さがあるのだ。「祈りの海」「しあわせの理由」で追求されていたアイデンティティをめぐる考察を思い出す。

    最初に読んだイーガンは「祈りの海」、これ一冊で自分にとって最高の作家の一人になった。何に一番心打たれたかというと、合理的思考を突き詰めていって行き着くところが、きわめてヒューマンであることだ。これはイーガンの大きな美点だと思う。ラケシュたち人類の末裔は、不死で(バックアップデータがあるから)、ほぼ全知全能で(ヒョイヒョイとなんでもできちゃう描写が面白い)、そのせいで退屈しきってたりするんだけど、残酷な皮肉屋ではないところがいい。

    また、知的であることと幸福の関係というのも、かつての短篇で登場していたモチーフだが、本作ではそれが一つのテーマとなっている。イーガンが、たとえそれが苦しみの元となろうと、人は真実を追い求めることをやめられないと考えているのは明らかだ。ラケシュと接触することで、ただ一人「覚醒」してしまうゼイの絶対的な孤独が切ない。(だから、ラケシュの行動と仲間のパランザムへの信頼感にぐっときた)

    正直に告白すると、初読では、「孤高世界」の正体がわからなかった。ということはつまり、奇数章の世界と偶数章の世界のつながりも見えなかった。解説を読んで、ああ!そうだったのか!と、そのつもりで再読。いろいろ腑に落ちるところもあったけれど、わからないこともまだまだある。しばらく楽しめそうだ。

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    2014年01月07日
  • パラークシの記憶

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    『ハローサマー、グッドバイ』の続編。
    続編、とは言っても前作から数百年単位であとの世代の話。だけれど、その数百年の“記憶”が上手く話に生かされているので、前作を読んでから読んだ方が絶対に楽しめる。
    記憶遺伝子をもつ人間型の種族で、世代間に記憶が継承されていく(制限はあるし、自主的に制限をかけることもできる)という設定がとても面白かった。
    それにしても、前作のドローヴとブラウンアイズのいちゃつき具合も大概だったけど、今作のハーディとチャームもなかなかのものでした…(笑)まあ、どちらも愛は世界を救うというところなので。良い青春恋愛SFでした。

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    2013年10月09日
  • 順列都市〔下〕

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    面白かったが内容が難解すぎておそらく3分の1ほどしか理解できていなかったと思う。しかしなかなか丁寧に説明してくれているため曖昧で大雑把だがストーリーの本質や流れは把握できた。またあとで2、3回ほど読み直したい。

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    2013年09月22日
  • 順列都市〔上〕

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    普通に面白い。難しいというよりも、専門用語が多いだけでそれを知らなくても内容は理解できるくらい作中で丁寧というかしつこく説明きてくれている。下巻を読まないと内容に関する感想はかけないけれども、これは期待できる。

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    2013年09月15日
  • ひとりっ子

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    久しぶり再読。数学SF「ルミナス」。衝撃。まだSFにはこんなセンス・オブ・ワンダーの未開の分野が残っていると、強く感じさせてくれる傑作。初読の時ピンとこなかったのは、その難解さで、まだ自分の頭が、その独創性に気付けなかったからかな。

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    2013年07月25日
  • ディアスポラ

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    圧倒的スケールにして緻密。読者を選ぶ物語ではあるけれど、量子力学と認知科学のある程度の知識があれば、何とかついていける。ただし、これは宇宙オタクを満足させるためだけの衒学的な語りなのではなく、こういった舞台の中でしか語り得なかった物語なのではないか。知性とは何かということを読みながらたくさん考えた。
    非知性ソフトウェア創出が作り出したヤチマという個体が〈私〉を獲得するまでの18-54pのくだりで心を鷲掴みにされ、そこからは理論的な部分が少々わからなくても一気に読み進められた。一気に読む、ということが褒め言葉ではないと思うけれど、読まずにはおられない、この物語と少しでも多くの時間結合していたい、そう思わせる素晴らしい読書体験。

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    2013年04月26日
  • 祈りの海

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    もうイーガンの短編集はぜんぶ★5でいい気がする。
    アイディアといい、そこから展開される物語といい、圧倒される。

    本作でとりわけ好みなのは、「ぼくになることを」、「繭」、「祈りの海」

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    2012年10月05日
  • ディアスポラ

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    すごく難解で世界観が理解できるのかあやふやなまま読み進めましたが、ハマリました。
    とてもスケールが大き目の前に広がる宇宙が頭の中に浮かんできます。さすがに多次元の空間は想像しがたいですが・・・
    人が肉体を捨てて生きていく世界、孤児として創出されたヤチマが宇宙の果てまでも追求する真理。
    何度読んでもあきません。
    読めば読むほどもっと理解したくなる作品。

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    2012年08月19日
  • 祈りの海

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    ハードSFの大家グレッグ・イーガンの11の短編を収録した本書は、文中の言葉を借りるならば、「きみがきみであること」「自分が何者であるか」、すなわちアイデンティティを共通したテーマに据えている。

    SFの手法でアイデンティティを語る作品としては、個人的にはロボットを題材にした作品が多い印象を受けるのだけど、本書においてはそれに依存することなく、多彩な視点からアイデンティティを捉えている。

    ヒューゴー賞/ローカス賞を受賞した表題作もさることながら、次の2作品が特に素晴らしかった。

    ・『ぼくになることを』
     衰退する脳を排出し、その代わりに衰えることを知らない"宝石”を移植することが一般化した未来社会。"宝石”を移植しても、その人物の思考は従前までと何も変わらない(移植するまでの間、脳と"宝石”は常にシンクロナイズされているからだ)。だけど、脳のない人間は、果たして"人間"と呼べるのだろうか…
     "宝石”の移植を頑なに拒む主人公の顛末。それが、とにかく割りきれなくて、心に刻まれるほど気色悪い。

    ・『百光年ダイアリー』
     未来には行けないが、知ることはできる社会。主人公をはじめとした一般市民は、"未来の自分が記した日記"により、将来を理解していた。"自分という存在"は、過去と未来の自分によって形作られる。そんな社会を甘受していた主人公だが、ある日、歯車が狂い始め…
     アイデアとなにより展開が秀逸!これは面白かったなぁ。

    全作品を通じて、とにかく後味は良くない。
    心を覆い尽くすのは、不安。だけど一抹の希望が潜んでいることを否定できない。
    そんな不透明な心境に陥るのだけど、でもアイデンティティを認識した時って確かにそんな気持ちかもね。決して爽快な気分じゃないと思うんだ。
    そう考えると、微妙なセンチメントを表現してくるグレッグ・イーガンは、流石と言わざるを得ない。

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    2013年01月13日