山岸真のレビュー一覧
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この頃、星空を見上げると、ある感慨にうたれる。この宇宙にはいろんな世界がある。他の星の生命もいるかも知れない。宇宙人もいるかも知れない。
もしかして自分もそこに到達できるかも知れない。と思ったのは子どもの頃。
星々の世界があると思っても、もはや自分にはあの星々に到達することはあり得ないと今は思わざるを得ない。そのことにある感慨を覚える。ましてやこの宇宙の外など。しかしそんな小説を読もうという気はある。なぜだかよくわからない。
すごいSFだけど、とても読みにくい。
という評言はまあ正しい。私も最初の三分の一くらい読んだまま、数年うっちゃっておいた。
まず最初のアイディアは、人間がそ -
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文句を言いたいわけじゃないが、5年待った。『ハローサマー、グッドバイ』のあとがきに触れられていた続編のようやくの登場である。
続編というのはいささか語弊があって、直接的な続きというより、同じ舞台を使った作品である。しかも、『ハローサマー』の主人公、ドローヴとブラウンアイズは伝説の人物となっていて、その実在すら定かではなくなっている未来の話。スティルクと自らを呼ぶこの星の知的生命は人間とそっくりなのだが、『ハローサマー』では機械文明初期にあったのが、この未来の話では産業革命以前のような狩猟・農耕社会に退行している。
しかもスティルクたちはこの何百年かのあいだに『ハローサマー』にはなかった -
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ネタバレ前作が、夏の日差しから凍期を前に
希望も恋も失われていき、徐々に灰色が濃くなって
行くかのような雪の中、ラストを迎えるのに対して、
続編は、前作になかった異星人の特徴や前作と異なる
文化、文明状態など戸惑いもあるが、前作のことも
全て(一応)説明を付けたうえで、日差しのなか
終わるのが、皆が待った続編が届いた、
という感じでよい。
まわりの青二才がアホで、少しはそれより優れている
といっても、二人を隔てる障害があっても、
主人公が初めからビシッとしていて、
美少女と惹かれあっては一般人には妬みの
種なだけだし、徐々に古くからの世界を
新しく築きなおすという所につながって、
青二才が一人前の男に -
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年明けからこれ一冊にかかりきり。荒っぽい速読派の自分にはまったくの例外だが、いやあ、それだけのことはあった。やっぱりイーガンはすごい!想像力というものの深さと広さを思い知らされる。いや、もちろん、作者のビジョンを共有できたわけでは(全然)ないけれど、その一端を垣間見ただけで、スケールが桁外れであることはわかる。
奇数章と偶数章で別の話が語られていくが、奇数章はじまりの舞台は「ディアスポラ」と同様の遙かな未来社会。「ディアスポラ」ではその設定自体に度肝を抜かれたが、ここでは人類の末裔がとっている形は既定のものとして背景に退いている。数百万年後の人類は他の幾多の種族とともに「融合世界」という文明 -
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『ハローサマー、グッドバイ』の続編。
続編、とは言っても前作から数百年単位であとの世代の話。だけれど、その数百年の“記憶”が上手く話に生かされているので、前作を読んでから読んだ方が絶対に楽しめる。
記憶遺伝子をもつ人間型の種族で、世代間に記憶が継承されていく(制限はあるし、自主的に制限をかけることもできる)という設定がとても面白かった。
それにしても、前作のドローヴとブラウンアイズのいちゃつき具合も大概だったけど、今作のハーディとチャームもなかなかのものでした…(笑)まあ、どちらも愛は世界を救うというところなので。良い青春恋愛SFでした。 -
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圧倒的スケールにして緻密。読者を選ぶ物語ではあるけれど、量子力学と認知科学のある程度の知識があれば、何とかついていける。ただし、これは宇宙オタクを満足させるためだけの衒学的な語りなのではなく、こういった舞台の中でしか語り得なかった物語なのではないか。知性とは何かということを読みながらたくさん考えた。
非知性ソフトウェア創出が作り出したヤチマという個体が〈私〉を獲得するまでの18-54pのくだりで心を鷲掴みにされ、そこからは理論的な部分が少々わからなくても一気に読み進められた。一気に読む、ということが褒め言葉ではないと思うけれど、読まずにはおられない、この物語と少しでも多くの時間結合していたい、 -
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ハードSFの大家グレッグ・イーガンの11の短編を収録した本書は、文中の言葉を借りるならば、「きみがきみであること」「自分が何者であるか」、すなわちアイデンティティを共通したテーマに据えている。
SFの手法でアイデンティティを語る作品としては、個人的にはロボットを題材にした作品が多い印象を受けるのだけど、本書においてはそれに依存することなく、多彩な視点からアイデンティティを捉えている。
ヒューゴー賞/ローカス賞を受賞した表題作もさることながら、次の2作品が特に素晴らしかった。
・『ぼくになることを』
衰退する脳を排出し、その代わりに衰えることを知らない"宝石”を移植することが一