山岸真のレビュー一覧
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グレッグ・イーガンの作品は、それを読む前と後で読者の考え方を大きく変える程の力を持っているが、この本も例外ではない。
ストーリーを支える設定としての科学的考察があまりにも専門的すぎる(しかもあらゆる科学ジャンルを横断する)ため、1ページめくる毎にWikipediaを開くなんてことがしょっちゅう起こる。
しかし、文章の向こう側で何が起こっているのか、用語を調べながら必死に内容を咀嚼するのは、それでとても楽しい作業だった。
どうしても理解できないと、ものすごく悔しいし、もっと理解したいと思う。それで関連する本を買って読み漁ったこともある。
もちろん詳しい考察は適当に読み飛ばして、想像力でスト -
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映画『インターステラー』が好きならきっと好きになるSF小説。ただし難解と言われているインターステラーよりさらにはるかに難解な設定なので、読むのにはそれなりの気合が必要だと思います。
21世紀最重要SF作家と言われるグレッグ・イーガンの”直交3部作”の1作目。3作目の「アロウズ・オブ・タイム」まで発売されているので、引き続き読み続けたいシリーズです。
(ただ、ちょっと前に「これは!」と思ったヒュー・ハウイー著のサイロ三部作も2作目「シフト」の途中で飽きちゃったし、SFの傑作「星を継ぐもの」も続編の結構早い段階で飽きちゃったので、今回も完走できるか怪しいけど…。)
本作の最大の特徴は、地球(と -
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ちょっと苦手なイーガン。比較的読みやすいということで懲りずに挑戦。
舞台はイラン。2012年の政権交代と第一部とし2027年以降の近未来を第2部とする構成。相変わらず、イーガンの言い回しとか表現とか理解しにくい感じがつきまとう。よっぽど僕には合わない作家なんだな。でも、テーマはまさにタイムリーなAIのななめ上を行っている。人格そのものもを仮装空間にアップロード(本文中ではサイドロードという表現)できるか、できたとしたらどんな問題が引きおこされるのか?
自分という人間の「プロキシ」と表現されているのが上手いなぁと思う。脳スキャンによって不完全なマッピングを前提にした部分的人格(?)は人間なの -
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ネタバレバーナード嬢曰く。に影響されて買った本。
訳はちょっと読みにくい(直訳調)ところもあったが、丁寧に訳してくれているという印象。あとがきを見て訳者さんの苦労を知って、素直に尊敬した。
途中までは☆3.5くらいの評価だったのだが、終盤で一気に☆5に。
最初はこれジャンルSF? 異星設定以外、ファンタジーと言われた方がしっくりくるなあと首を捻って読んでいたのだが、うん、まぎれもなくSFでした。
……どうでもいいが、表紙の女の子ってブラウンアイズ? 彼女は海辺の町に育った健康的に日焼けした女の子ってイメージなのだが。本文中にも褐色の肌、みたいな表現があったような。
この星に住む人間が寒さに発狂するほ -
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30世紀を舞台に、ソフトウェアによって生み出された
主人公ヤチマの冒険譚。
ヤチマの誕生を描いた第1章では、
ソフトウェア上での知性・人格・自我の生成プロセスが丁寧に記述されており、
難解ながらも読み応えあり。
その後、章ごとに、情報科学、数学、遺伝子工学、天文学、と、
多岐にわたる科学分野を横断しながら、
人格をアップロードしなかった肉体人とのコンタクト、
宇宙へのディアスポラ、ワープ航法の技術開発、といった旅が展開。
物語が進むにつれ、身体的、時間的、空間的な制約が次々と外され、
人類はどこまで行きつけるのか?、想像力をかきたてられた。
本作にテーマや世界観が近い作品を、関連順に。 -
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まさに、ハード・SF。圧倒的な時間とスケールの世界が描かれる。章立てが変わるたびに次元が変わってその世界観にクラクラした。
原子やワームホールの理論的に難しい話はさておき(しかも話の核ではなかったし、よく出てくるコヅチ理論の位置付けも謎だった)、肉体を離れた後の人類が、ソフトとして「生み出され」、人の「意識」や「思考」を持ち「交流する」。肉体を持つ人々は肉体、遺伝子、神経に手を加え進化を遂げている。
そんな世界の話だけでも充分夢中になれるのに、次々に高次の宇宙が現れて、その宇宙の真理を知っているのは、真理は何なのか…私たちの想像を超えた思考と宇宙の話。ひたすら圧倒される。
でも物理空間をせ -
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短編集。イーガンはハードSF作家として有名でなかなか手に取り難い。
本書は表題作「しあわせの理由」の設定(感情が脳の化学物質によって左右されてしまう)に興味を抱いて読んだ。
期待に違わず表題作はとてもおもしろかった。廃人のような時期と多幸感に溢れた時期が躁鬱病患者のようであるが、冷静な分析がそれに骨格を与えていて、ただの情緒不安定な人ではなく、ちゃんと希望が0の人と4千人の幸福を持った人として説得力がある。ただし、ストーリー最後はあまりにも「まとめ」的な形で、安っぽく思えてしまう。それほど直接的に語る必要はあっただろうか。
しかしこの直接的な、ある種の説教臭さは他の短編にもかなりある。とくに血 -
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「直交」三部作完結篇。もっとひねった終わり方かと思っていたが、意外と素直に大団円を迎えた感じだ。今回は、私にはチンプンカンプンのサイエンス部分が少なく、三部作随一の読みやすさだった。これまで辛抱して読んできて良かったー。
ま、理屈がわからないのは前作と同じなんだけど、今度は「未来からのメッセージ」というワクワクする要素が中心なので、難解さが気にならなかった。もし現実にそういうことが可能な技術が開発されたとしたら、一体どうなるんだろう。ここの「孤絶」社会は、きわめて規模が小さく、外界とほぼ隔絶した特殊な状況にあるわけだが、その中で繰り広げられる議論や策動、各人の葛藤が身に迫って考えさせられる。 -
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『直交』三部作の第2。われわれの宇宙とは物理法則が符号がちょっとばかり違う宇宙。そのような宇宙を設定すると、われわれの相対論的宇宙と違って、時空をかなり簡単に図示できるのがメリットなのだが、この数学と物理学、私は十分わからないまま読んでいる。それでも物語は面白いと思えるからまあいい。それで挫けてしまう人にはお勧めできない。そして登場「人物」もまた人間ではない知的生物なのだが、彼らの惑星の未来への進行方向と直交方向から星団が飛んでくることがわかり、いずれ衝突して彼らの惑星は滅びてしまう。そこで山ひとつを世代間宇宙船〈孤絶〉にして、直交座標の横方向に高速で飛んでいくことにする。この宇宙の物理法則
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読んだぞ、とにかく。おもしろかったよ、そう言っていいのかどうかわからないけど。だって、サイエンス部分が前作「クロックワークロケット」をしのぐ難しさで、ほとんどチンプンカンプン。科学的な議論が始まると、そのくだりは無念無想の境地で字面だけ追い、人間ドラマ的部分(「人間」じゃないけど)にさしかかると我に返って熟読、ということの繰り返しだった。こういう読み方でも「おもしろかった」って言っていいですか?
いやまったく、出だしからガツンと「物語」にひきこまれて、「わからないにもほどがある(byバーナード嬢)」ところがどんなに多かろうが、読むのをやめようとはちっとも思わなかった。この第二作は、特異な出産 -
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『白熱光』に似て非人類の女性科学者の物語である。『直交』三部作の第1。
舞台は、ある惑星だが、こことは違う宇宙。われわれの宇宙とは物理法則がちょっとばかり違うのだ。数式にするとプラスとマイナスの違い。しかしそれが大きな差異を生む。われわれの宇宙では光速は一定である。どこで観測しても一定である。これはとても奇妙なことで、地球上で静止して観測しても、亜光速で飛ぶ宇宙船から観測しても同じ速度である。日常生活では目の前を走り去っていく自動車は速いが、その自動車に伴走する車に乗っていたら止まって見えるのに、光速だけは一定。神の眼のような視点は存在し得ず、観測する系によって宇宙の見え方が違うのがわれわ -
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遙か未来。人間もその他の知的生命もソフトウェア知性も、すべてがオンラインのプログラム形態で暮らしたり、物理的肉体にダウンロードしたりして過ごしている、融合世界。おおむね銀河の隅々にまでこの世界が広がっている。光速は越えられないから、旅といえば、個体はデータの形で送られ、目的地でプログラム形態なり、物理的形態なりにダウンロードされる。『ディアスポラ』の設定の延長線上にある宇宙。地球人にオリジンを持つラケシュは退屈していた。もう銀河のどこにもフロンティアはないからだ。
いや、ないことはない。銀河中心部は孤高世界といわれ、そこに住む知的生命は融合世界との一切の交渉を拒否していたのだ。ただ、融合世