鴻上尚史のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ演劇の演出家は、人間とつきあうのが仕事です。つまりはずっと「人間ってなんだ」と考え続けているのです。
全く理解できない行動を取る俳優やスタッフに対して、「どうしてあんなことをするんだろう」「何を考えているんだろう」と相手の立場に立って考える訓練をずっとしてきました。
それは「道徳」とか「優しさ」の話ではなく、そうしないと仕事ができないからです。なんとか演劇という共同作業をするためには、相手を愛するとか好きになるとかではなく、相手の立場を理解することが必要だからです。
僕は演出家として、ずっと「どんな人にも事情がある」と思って仕事をしています。同情するかどうかは別にして、その「事情」を知ることが、共に仕事をするためには必要不可欠なのです。
それがようやく言葉になったのが「シンパシー(sympathy)」と「エンパシー(empathy)」の違いでした。
シンパシーは「同情心」です。「シンデレラはずっと奴隷のように働かされて可哀そうだなあ」という同情する心です。思いやりとか慈しみの心ですね。
エンパシーは「相手の立場に立てる能力」です。エンパシーは今、「共感力」なんて訳されたりしていますが、これだと誤解される可能性があると僕は思っています。
「シンデレラの継母は、どうしてあんなにひどいことをシンデレラにしたんだろう?」と考え「ひょっとしたら〜という理由だろうか」と考えられる能力が「エンパシー」です。つまり、シンデレラの継母に、一切、感情移入する必要はないのです。
「シンデレラの継母は、まったく好きになれない」という前提で、つまり共感はしないけれど、その理由を考えるのです。
僕は、昔から「世間体」とか「世間様」などという壊れてしまって実体のないものに、判断の根拠を置こうとする一部日本人の思考停止状態に、激しい反発を覚えてきました。
根拠を論理的に説明できない人ほど、「世間様がなんと言うか」とか「みんな言ってるよ」とか「ご近所に恥ずかし」などと言う回数が増えます。
実際、このフレーズは、ものすごく便利で、自分のすべてを隠してくれます。
「構図(シェーマ)」とは、その人の持っている世界観、考え方、感じ方、のようなものです。
つまりまあ、世の中とはこんなもんで、人間てのはこんなもんよと、その人が意図的にも無意識的にも思っているルールみたいなものですね。
そこからズレたものを見たり経験した時、人は笑うと考えられるのです。
この考え方で、ほとんどの笑いは説明がつくのです。なおかつ、だからこそ、「笑い」は、その人の世界観自体を揺さぶり、変容させる力を持つのです。
最近は、いじめに苦しむ教師の方に、ワークショップに呼ばれるんですよ、と竹内さんは語られました。
そこで、何を話されるんですかと伺えば、「教師のみなさんは、一生懸命なんですね。でも、一生懸命だと、何も見えないんですよ。よく見るためには、集中しないとだめなんです。一生懸命と集中は、違うんですよ」
と、答えられました。
シンポジウムでは、話題はそこから別な所に移ってしまったのですが、たぶん、集中するとは、リラックスすることなのでしょう。
その当時、成功した社長の人生訓とか座右の銘とかを読むと、じつに平凡nなことが書かれていることに気づきました。「時間を絶対に守る」とか「嘘をつかない」とか「他人の噂話は、直接、本人に確認しない限り信じない」とか「感謝の言葉を忘れない」とか「積極的にあいさつをする」とか「感情に振り回されず、穏やかに微笑む」とかです。
最初は、「なんだよ、成功した人間でも、こんなことしか言えないのかよ」と思っていたのですが、、ある日、「待てよ、こういう一番平凡で基本的なことさえできないのが人間で、こういうことができた人間はそれだけで成功するんじゃないか」と気づいたのです。
結局は、経営手腕だの経営戦略だの言う前に、体力と人柄の勝負なんだと納得したのです。
この年まで生きてきて、本当の才能勝負の時も、もちろんありますが、それは100回の勝負のうちのほんの数回で、それ以外は、体力と人柄なんだとようやくわかります。 -
Posted by ブクログ
社会人になりたての頃の手帳を開いたら、この本から抜き出したフレーズがいっぱい書いてあったので、懐かしくなり再読した。
中途半端に壊れた世間、本物の孤独と前向きな不安を共にして、死なないように。
運悪く配属先の先輩に頭のおかしい人がいて、毎日職場イジメを受けていた頃だった。難癖をつけては怒鳴り散らしたり、周りがみんなお前の悪口を言っているぞ、俺は専務と通じてるんだぞ、とか言っていた。地獄の日々は1年弱続いたのち、先輩が異動、休職して終わった。今思えば専務と通じているわけがなかった。
この本のおかげで死なずに済んだ、自分を責めずに周りに助けを求めることが出来た。鴻上さんは私の命の恩人なのだ。
あらためて読み返すと私の心の深いところに拠り所になっていることを感じた。今進行中の悩みと向き合う勇気が持てた。
でも私も歳を取ったので、「喧嘩はとことんやりあうべきです」という指南には「ほどほどにしとこうよ」って思うようになってしまいました^_^過ぎた言葉で失った友情、信頼、心地いい居場所を思い出しつつ、、、 -
Posted by ブクログ
人生相談を読むのが大好き。全然参考にならなかったり、面白くもない回答がしばしばあるなかで、ここのところのお気に入りが、上野千鶴子さんと鴻上尚史さん。回答の傾向はかなり違うけど、なるほどねえと思うことが多い。
今回一番心に残ったのは、鴻上さんがツイッターをはじめWeb上で発言するときに決めている「自分なりのルール」について書いていたところだ。ネットで情報を探り、つながりを求めていると、誹謗中傷の言葉は避けようがない。だからといってネットをやめてしまうのはあまりにもったいない。自分にはどうしても言いたいことがあるから発信は続けるが、なるべく炎上は避けたいので三つのルールを考えたという。
一つ目は「目の前にいる人に言えないことは言わない」。ほんと、他では言えない汚い言葉を言い捨てる場みたいに使うのは、百害あって一利なしだと思う。
二つ目「『世間』ではなく『社会』の人に向かって話す」。これは鴻上さんが一貫して述べている概念で、「世間」は身内の人、「社会」は自分と関係のない人。「SNSが希望になるのは『社会』の人と対話し、新たな関係性や情報を、自分の『世間』を越えて手に入れられた時だ」というのは、実にその通りだと思う。思うが、きわめて難しいことでもあって、自分がSNSに対して腰がひけてしまうのは、それは無理だよね~と思っているからだろう。
三つ目「人に話しかける時は『です・ます体』を使う」。多くの人がそうしたなら、ネット上の殺伐とした雰囲気もずいぶん変わると思うけど、これまた難しいなあ。 -
購入済み
上官とは
部下には特攻を指示しながら本人は敗戦時日本に逃げ帰った悪名高き富永中将の話も出てくる。空気に支配されやすいのは保身を第一に考える上官側の方が多いと感じた。
絵柄は第一巻よりも丁寧で、原作の雰囲気や主張をよく伝えていると感じた。 -
購入済み
日本社会の空気
数多く出版されている特攻隊ものの一つ。
言い尽くされたことではあるが、本音と建前の違い、周辺の空気に逆らうことを恐れ流されてゆくみんな、その理不尽さをこの作品も十分に表現している。
絵柄は とてもうまい というわけではないが、原作の持っている雰囲気 原作の主張をよく表現している。 -
Posted by ブクログ
僕は昔から疲れやすいという自覚がある。特に多くの人たちとあったりすると疲れる傾向がある。もしかしたらそれは常に緊張していたのかもしれない。
演劇的な観点から具体的なメソッドが紹介されている。
第一部は身体の力を抜くこと。緊張している部分を見極めてその力を抜くこと。要素に分解すれば対策が立てられる。ディバイドアンドコンカー。僕は肩に力が入っていたのだ。気づけば対処法がある。
二部以降は考え方。
演劇論から採られた今ある状況にフォーカスするという手法。アドラーの言う今に強力なスポットライトを当てる、というのに似ている。まずは状況を把握する。
過去に捉われず、未来に怯えずにいるというのはなかなか難しいとはおもうけれども。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「さみしくてたまらなくなったら」「生きるパワーが欲しくなったら」などテーマ別に鴻上尚史さんが選んだ谷川俊太郎の詩との鴻上尚史さんのエッセーが綴られています。
「戦争なんて起こってほしくないと思ったら」で選ばれた詩の中に『泣声』があります。
この詩は出産したばかりのお母さん向けの詩ですが、
あなたの耳まではとどかないのだが
父も母も失ったあかんぼの
裸の尻が触れているその大地は
いまあなたが立っている大地である
という一節があります。
世の中に不条理なことが起きると詩はさらに心に深く刺さり、自分自身の在り方を考えさせてくれます。
911.5