中野京子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
文字どおりに、西洋絵画において働く人々を紹介・解説しています。
現存する職業(たとえば警官)から現存しない職業(たとえば異端尋問官)まで、そして存在しない職業(たとえば天使)などもカテゴリー化して、多様性を意識して書かれています。
手法としては、ひとつの職業を紹介するのに複数枚(2~3枚)の絵画に言及して、それらでどのように労働が描かれているかを歴史的背景などを考慮しながら読み説いています。類例としては、一つの主題や傾向を述べるのに複数の文学作品に言及しながらエッセイを展開する、柴田元幸さんの手法に近いでしょうか。
読みながら絵画を楽しむことができ、その画家や背景についても知ることができます。タイトルにもあるように――そしておそらく中野さんの多くの著作にも言えるように――「学ぶ」ことが主眼とされています。
したがって、たとえばYouTubeチャンネル「山田五郎 オトナの教養講座」で紹介・解説される感じ――「学ぶ」というより「遊ぶ」という感じ――ではないです。とはいっても、どちらの感じも楽しむことが真の正解でしょう(じじつ上記のチャンネルに中野さんは何度かゲスト出演したことがあります)。
最後に、世界史に詳しくない者からすると、言及された絵画や画家について文脈的に理解できる年表などを巻末に付してもらえると助かります。 -
Posted by ブクログ
名画に潜む「怖さ」を扱った一冊で、22枚の絵にそれぞれ短い物語のような解説が添えられています。絵の背景にある歴史や人物の事情が丁寧に示されていて、ただ眺めるだけでは気づけない視点が自然と開けていく感覚がありました。
スペイン王家の血統を守るための近親婚の話など、静かに読んでいても思わず身が引き締まるような内容もあり、絵の印象が一気に変わるのが興味深かったです。
特に印象に残ったのは、表紙にも使われている「レディー・ジェーン・グレイの処刑」。白い衣装の明るさと、これから起こる出来事との落差が強く、しばらく目が離せませんでした。
以前は時々美術館に足を運んでいたのに、最近はすっかり間が空いてしまっていました。この本を読んで、また実物の絵を見に行きたいという気持ちが静かに戻ってきた気がします。絵を見る時間を久しぶりに作りたくなる読後感でした。 -
Posted by ブクログ
音楽の秘密というほどでもないけどね。楽器や歌手が出てくる絵画をたくさん取り上げていて、それぞれの逸話がなかなか面白い。音楽に限らないが、絵画というのは様々なことが描かれ、さまざまなことを想像させる。
人の暮らしには音楽は欠かせなかったということだろうな。
若いメンデルスゾーンを招いたゲーテが、奏者がくたくたになろうが、次の曲次の曲と、メンデルスゾーンにピアノを弾かせまくったという逸話は知らなかった。音楽ソフトなどない時代では、生演奏は得難いものだったのだ。ましてや名手のものは。
そうそう、カラヴァッジョはその生々しさが好きじゃないのだが、この表紙の「エジプトへの逃避途中の休息」の抒情味は素晴らしいな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ印象派とフランスの時代背景についての説明的な本だった。絵がたくさんあってたのしかった。
ドガの「カフェにて」という絵を初めて見たのだけど、女の人すごくつまんなそうな顔しておもしろ〜〜!って思って解説読んだら全然違う意図の表情だった。
絵って全部物語が盛り込まれてると思ってたから、印象派は見たままに描かれててメッセージ性はないから教養を必要とせず楽しめる、みたいなことが書かれててびっくりした。
洪水で水びたしになった村があって舟で移動するしかなかったところを絵に描いてる画家がいて、その人は水面のきらめきが好きだったのらしい。きれいだから描いたそうで、村人の苦労を伝える意図はないのらしい。映えてるから絵に描いたってこと……??
でも人がなに考えてるかは本人以外わからないから、こう解説されてても「こんなに村は大変なことになってるけどこんなに美しいです。こんなに美しいのに。」って思いながら描いたかもしれないよな。この画家に限らず、やや勝手なこと言ってそうだな、って思っちゃったところがあるので心情の部分はあまり信じないでおきます。 -
Posted by ブクログ
ネタバレいつもの中野先生の御本の感覚に慣れていると、各項目見開き約1ページ半という文章量ではどうにも物足りなさを感じてしまった。
もう少し、もう少し読ませてくれよ!という。
人物でも歴史でもなく、絵画に出てくる「もの」に着目した話としては珍しいし、その点は凄く面白かった。
前述通りの文章量なので、その分紹介されている「もの」は実に多数。
また数が多いからか、先生の解説がキレッキレなときとそうでないときも入り乱れていて、その差がちょっと気になりもした。
あの文章量ならさもありなん。
あとタイトルにある『怖い絵』にもクエスチョンが。
文庫化にあたってタイトルに足されたようだが、怖い絵を目当てで読むと少し肩透かし感があるかと。
怖い絵でもお馴染みの絵も出てくるが、怖いエピソードや背景がある絵ばかりではないので、どうにも違和感があった。
初手の絵から怖さはないので。
原題の方が断然よかった。
先生の著作には何が何でもタイトルに『怖い(絵)』を入れなきゃいけないのだろうか角川よ……