氷室冴子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ジブリのアニメで有名な作品だが、じつは原作もいい。いや、原作の方が好きかもしれない。まだ読んでいない方は、読まないと損だ。
高知の高校を出て東京の大学に進学した杜崎拓は、地元の同級生からの電話で、武藤里伽子も東京にいることを知らされる。てっきり彼女は地元組だと思っていたのに。そこから拓は、里伽子と過ごした高校時代を回想する。
里伽子は東京から高知にやってきた転校生で、ツンとしてわがままだが、とびきりの美人だった。父親の浮気が原因で両親が離婚し、母親の実家がある高知に連れられてきたのだ。たが、里伽子は本当は父親と暮らしたかった。それでバイトに精を出していた拓から金を借り、こっそり東京の父親のもとへ行く計画を立てた。拓も成り行きでそれに同行することになる。
ところが、父親のマンションを訪れると、父にはすでに新しい家族がいた。裏切られた里伽子は腹いせに元カレを呼び出すが、彼も親友とデキていた。高知にも東京にも、どこにも居場所がない里伽子。そんな痛々しい里伽子を、拓はどうすることもできない。
拓には松野という親友がいた。松野はもともと里伽子に惚れていたが、二人が隠れて東京にお泊まりしたことが学校にバレ、噂になったあとも、拓との友情は変わらなかった。だが、里伽子をなぐさめる流れで告白した松野は玉砕し、そのことを拓に打ち明ける。心ない言葉で松野を傷つけた里伽子に、拓は平手打ちする。
一方、松野は松野で、じつは拓も里伽子のことが好きなのだと、あるとき気づいてしまう。親友なのに、あるいは親友であるがゆえに、自分が気を遣われているとわかった彼は、拓を殴って絶交する。そんな気まずい三角関係のまま、彼らは卒業を迎える。
そして舞台は現在に戻り、拓と里伽子は東京で偶然に再会する。物語が再び動き始める。里伽子で始まった物語は、もう一度里伽子に帰っていく──。
この小説を一言で表すなら、「ほろ苦い青春」だ。もちろん、こんなドラマチックな展開は、自分の人生にはない。しかし、そうとわかっていても、あり得たかもしれない青春のひとコマをみんな想像してしまうのだ。そしてその味は、なぜか甘酸っぱく心地よいものではなくて、舌の奥でじんわりと苦味が広がるような、なんとも言えない特有の味なのだ。
われわれは大人になってから「そうか、これが青春の味なのか」と気づく。いや、気づいてはいたけれど、気に入らなかったのだ。あんなもの、もうごめんだ。でも大人になると、だんだんそれが変わってくる。はじめて覚えたビールの味みたいに、そのほろ苦さを味わえるようになったとき、われわれは青春と和解する。この小説はそんな青春ソーダの味だ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレスピンオフの中でも夏姫の話が特に印象に残っている。
瑠璃姫のように活発な少女だった夏姫。乳姉妹である融や、彼の親友の高彬たちと一緒に遊ばなくなったのは高彬を「なんとなく好き」から異性としてハッキリと意識し始めたのと、彼女の姉が公達と身分違いの恋をしているのを知ってしまったからなのかな。賢くて勘の良い夏姫は「姉の恋は上手くいかないだろう」と予感し、ならば自分の片思いも見込みがないに違いないと幼いながらに考え、身を引いたと察する。のちに姉の恋愛関係は破綻。
月日は流れ、いつまでも中将を諦めきれない姉のことをなじる夏姫。それは高彬への叶わぬ想いや、自分にないものを持ち合わせている瑠璃姫への嫉妬心を断ち切るためでもあったのだと思う。女心の機微まで10代の私には読み込めなかったわ。大人になって読み返してみるのも良いものだ。
コミックスの夏姫は美人過ぎず、すました感じが高級女房の雰囲気に表れていて、なかなか良い。