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天才YA作家 氷室冴子 デビュー45周年
激しくも切ない「90’s青春グラフィティ」
「あたし、高知に行くまでは世間とうまくやってるいい子だったのよ。あれからずっと世間とずれっぱなしの感じがする」
大学進学で上京した杜崎拓は「ある事件」で疎遠になった高校時代の転校生・武藤里伽子が、地元大学への進学を蹴り東京に舞い戻った事を知る。
気まぐれな美少女に翻弄されながら、その孤独に耳を澄ました短い日々を回想する拓に、思いもかけない再会の機会が訪れる。
スタジオジブリの長編アニメーション「海がきこえる」の原作。
キャラクターデザイン近藤勝也氏のカラーイラストを34点収録。
トクマの特選!
イラスト 近藤勝也
〈目次〉
第一章 フェアウェルがいっぱい
第二章 マン
第三章 里伽子
第四章 里伽子ふたたび
第五章 やさしい夜
第六章 海がきこえる
あとがき
解説 酒井若菜
「海がきこえる」
2025年7月4日公開
出演:飛田展男、坂本洋子、関俊彦
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
※期間限定無料版、予約作品はカートに入りません
Posted by ブクログ
ジブリのアニメで有名な作品だが、じつは原作もいい。いや、原作の方が好きかもしれない。まだ読んでいない方は、読まないと損だ。
高知の高校を出て東京の大学に進学した杜崎拓は、地元の同級生からの電話で、武藤里伽子も東京にいることを知らされる。てっきり彼女は地元組だと思っていたのに。そこから拓は、里伽子と過ごした高校時代を回想する。
里伽子は東京から高知にやってきた転校生で、ツンとしてわがままだが、とびきりの美人だった。父親の浮気が原因で両親が離婚し、母親の実家がある高知に連れられてきたのだ。たが、里伽子は本当は父親と暮らしたかった。それでバイトに精を出していた拓から金を借り、こっそり東京の父親のもとへ行く計画を立てた。拓も成り行きでそれに同行することになる。
ところが、父親のマンションを訪れると、父にはすでに新しい家族がいた。裏切られた里伽子は腹いせに元カレを呼び出すが、彼も親友とデキていた。高知にも東京にも、どこにも居場所がない里伽子。そんな痛々しい里伽子を、拓はどうすることもできない。
拓には松野という親友がいた。松野はもともと里伽子に惚れていたが、二人が隠れて東京にお泊まりしたことが学校にバレ、噂になったあとも、拓との友情は変わらなかった。だが、里伽子をなぐさめる流れで告白した松野は玉砕し、そのことを拓に打ち明ける。心ない言葉で松野を傷つけた里伽子に、拓は平手打ちする。
一方、松野は松野で、じつは拓も里伽子のことが好きなのだと、あるとき気づいてしまう。親友なのに、あるいは親友であるがゆえに、自分が気を遣われているとわかった彼は、拓を殴って絶交する。そんな気まずい三角関係のまま、彼らは卒業を迎える。
そして舞台は現在に戻り、拓と里伽子は東京で偶然に再会する。物語が再び動き始める。里伽子で始まった物語は、もう一度里伽子に帰っていく──。
この小説を一言で表すなら、「ほろ苦い青春」だ。もちろん、こんなドラマチックな展開は、自分の人生にはない。しかし、そうとわかっていても、あり得たかもしれない青春のひとコマをみんな想像してしまうのだ。そしてその味は、なぜか甘酸っぱく心地よいものではなくて、舌の奥でじんわりと苦味が広がるような、なんとも言えない特有の味なのだ。
われわれは大人になってから「そうか、これが青春の味なのか」と気づく。いや、気づいてはいたけれど、気に入らなかったのだ。あんなもの、もうごめんだ。でも大人になると、だんだんそれが変わってくる。はじめて覚えたビールの味みたいに、そのほろ苦さを味わえるようになったとき、われわれは青春と和解する。この小説はそんな青春ソーダの味だ。
Posted by ブクログ
あの時の青春を思い出して感傷に浸ると同時に、青春の儚さのようなものを味わえる作品。
等身大の青春物語であるからこそ、自分のものとは違う青春として読むことができる。青春はこれだ、というような王道な話ではなく誰もが経験しそうな内容であり、大きすぎるイベントも発生しないところが本当に良かった。
地元を離れて都会の喧騒に揉まれながら、大学生的な生活を続けて変にカッコつけず、それでいてどこかカッコつけているような主人公の姿が良かった。
武藤里佳子の脆さも物語の良さを引き立てていた。高校時代、文武両道をこなし弱みを握られないような振る舞いをしていた彼女の、ふと見せる幼さに惹きつけられる。尖っていて常に牙を剥いているのにも関わらず、その幼さと脆さがそれを否定してくれる。
回想と現在が交差するような構成でいて一見複雑なように見えるが、全くそう感じさせない書き方で一度も飽きずに読み進めることができた
Posted by ブクログ
故、氷室冴子さんのジブリの原作となった作品。懐かしくて、読みながら、Stay with meがずっと流れ続けていた。昭和の田舎の街、高知、そして東京。誰しも感じる懐かしさ、男女の関係を意識しながら、距離感を掴んで、少しずつ詰めていく。女、男、青春、高校の時の感覚、付き合っていた相手、別れた相手、親友、受験、そういう色々を、切ない思い、甘酸っぱい思い出とともに、ここまで生きてきたんだと思わせてくれる。海がきこえるという最終章まで、希望や可能性を感じられないまま、進んでいく。初めてのサークル、馴染めなかった飲み会、あるよね、きっと。大人がちょっとかっこいい飲み屋に大学生を誘い、それについていって大人の階段を登っていく女子にちょっと嫉妬しつつ、自分も早く、向こう側に辿り着きたいと焦ったものだ。過去と今を繋いでくれる、心が少し苦しくなるけれど、ハーッと息を吐き出して読むような小説。見事です。
Posted by ブクログ
この作品を知ったのは一年前、ル・シネマ渋谷宮下でのリバイバル上映だった。アニメの質感や音楽、携帯電話がない時代が新鮮で、いたく感動した。
そこからビジュアルブックを購入し、気に入ったので友人と高知に旅行しに行こうと話が出たときに、旅のお供に原作小説も読みたいと思い購入した。
アニメが比較的短い時間でまとめられていた分、原作でより里伽子と拓の心情を読み取ることができて嬉しかった。自分が生まれる前の時代を描いた作品なので、昔はこんな風にデートの約束や友達との連絡をとっていたのかと思い、中々自分から動くことができないため、年下の拓や松野に感心してしまった。。
また、アニメを既に観ていても、ここまでヒロインが自分本位で身勝手に周りを振り回していく作品にであったことがなく面食らったが、高校生かつ家庭環境が複雑になった里伽子の心情におけるリアリティはあると思う。男がかわいくて我が儘(節度はあるが)且つ、甘え上手な女の子に惹かれてしまうのは時代関係ないものであることも面白いポイント。色々書きたいことはあるが、本作品は高校生らしく言いたいことをうまく言えないがゆえにすれ違っていく三人の関係性が青春を描くと共に、自分の経験と結び付いて甘くない記憶が想起されることが、個人的には最もよかった。
~つづきは続編の感想で~
「海がきこえる」
2025年7月4日公開
出演:飛田展男、坂本洋子、関俊彦
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