村山早紀のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
シリーズ読破できていないけれど、この作品はむしろ今読んだほうがいいと伺って読みました。
作品の根底には、はっきりと明記はされてはいないけれど、今の世の中と同じように、流行病が広がっていて、辛さや気持ちが塞ぎ込んでしまうのが、手にとるようにわかる。
物語の中でも、流行病は終息せずに終わる(だと思う)。
けれど、コンビニ堂や風早神社の存在や主人公の風早神社の娘である沙也加ちゃんの頑張りや人柄が読んでいて、疲れた心をじんわりと解きほぐしてくれるようでした。
異聞とあるように、番外編のような存在だけど、むしろこのシリーズの基盤となる物語のような気がした。 -
Posted by ブクログ
タイトルに「異聞」とある通り、今作はコンビニたそがれ堂の店主である風早三郎神社の娘・沙也加の目線から描かれる三作からなる。
表紙をめくると、扉にアマビエのしおり。
「切り取って、しおりとしてお使い下さい」とあるが、もちろん本好きな人間にそんなことは出来ない。
この原稿を書いていたのが、ちょうど去年の春先だそうで、未知のウイルスに何も出来ないことをもどかしく思う気持ちが、作品の端々に感じられる。
いつもならば、たそがれ堂に行けば、心から欲しいと願うものは手に入るはずなのに、今回の未知の病気に対する薬は手に入らず…
それから1年。
今もまだ日本国民はコロナ禍に苦しめられている。
なのに、世界中からオリンピックの為に人々がやってくる。
7月上旬、当たり前のように各地で豪雨災害が起こり、普通の生活が奪われる。
そんな中で、スポーツの祭典をする意味があるのだろうか?
風早三郎でさえお手上げで、最近はアマビエさえ聞かなくなった。不自由な生活を受け入れてしまっている自分たちがいる。でも、まだまだ苦しんでいる人たちがたくさんいる。
作者さんもあとがきで書いていたが、一個人で何か出来る訳ではない。苦しんでいる人の心に寄り添い、祈ることしか出来ない。
そんな人たちに、本当にコンビニたそがれ堂があればいいのに…
ライトなタッチで描かれているけど、心が痛く、涙が止まらない一冊。 -
Posted by ブクログ
さて、下巻。
悩みながらも店主不在の桜風堂を引き受けることになった一整だが、理想の書店を自分の手で作り上げることに取りかかる。
再び万引きに遭遇したらとかあまり葛藤がなかったところは気になりつつも、店とお客様のために一整がとった書店員としての行動や知識を興味深く読む。
とんとんと運んでいく話は少し上手く行き過ぎで、人里離れた桜野町の佇まいのせいもあって、ちょっとしたユートピア小説の趣だが、登場人物それぞれの胸の内がしっかり書き込まれていることで、ただのファンタジーに終わらなかった。
一整、苑絵、渚砂はもとより、銀河堂の店長からパートに至る店員さん、桜風堂の店主とその孫の心の内の思いやそこから発露する行動は、短い描写でも具体的でその人となりを身近に感じさせる。
加えて、書店の周りで役どころを担っていた若手のベストセラー作家、かつての売れっ子脚本家、本好きの有名女優がぐっと物語に入ってきて、彼らの、かつての護るべきものを護れなかったりや伝えるべき言葉を口に出せなかったことに対する悔恨とそれを糧にした生き方や人への思いやりの気持ちが、書店の人たちの思いと重なり連なってとても佳い話になった。 -
Posted by ブクログ
『トロイメライ』、『桜の木の下で』、『秋の祭り』の三作品を収録した文章とイラストが綺麗な短編集です。
『トロイメライ』は夏は死ぬほど暑くなりロボットが普及し、そして戦争が続く未来を描いています。
兄を亡くした愛美を主人公に、兄の代替ロボットのシロウや隣に住む弘志などの個性的な登場人物が物語を彩ります。
環境や戦争に対する人間の姿勢を問題提起しているように思えます。
『桜の木の下で』は飼い猫目線で家族との思い出が描かれています。
実家に帰ってきた15歳のゆりを15歳の猫さくらが迎えます。
同じ15歳でもさくらは高齢です。
人間だけでなく猫にも思い出と未来があり、命の儚さと尊さを感じました。
『秋の祭り』は不法投棄された雛人形が魂を持つお話です。
心優しい人形なので、復讐などの展開にはなりません。
彼らは捨てられたのだからと元いた場所には戻らず、しかし人間が好きなため落ち着ける場所を探します。
過疎地の村で一人のおばあさんを見つけますが、どうやら病気で寝込んでいて…。
さっと読み終わってしまいますが、心が温まる一冊でした。