村山早紀のレビュー一覧
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病院で眠り続ける友、沙綾のために、物語を朗読する南波。
朗読される本は、子供のころ、二人のお気に入りだった『風の丘のルルー』。
人間に嫌われる魔女として生まれたルルーの冒険と遍歴の物語だ。
魔女で、少女と聞くと、ほうきに乗って、配達するのか? いや、それは魔女の宅急便だろう、と自分の貧困なイメージが嫌になる。
ルルーが巡る町の描写は美しく、ホルトさん一家や、医者志望のカーリンなど、個性豊かな人物もたくさん登場する。
何より、移動の幅が大きい。
時空名で移動してしまうのだから。
この想像力に、感心してしまう。
村山さんの作品だから、きっとハッピーエンドなのだろう。
そうでなくても、どこかに救 -
Posted by ブクログ
シリーズ読破できていないけれど、この作品はむしろ今読んだほうがいいと伺って読みました。
作品の根底には、はっきりと明記はされてはいないけれど、今の世の中と同じように、流行病が広がっていて、辛さや気持ちが塞ぎ込んでしまうのが、手にとるようにわかる。
物語の中でも、流行病は終息せずに終わる(だと思う)。
けれど、コンビニ堂や風早神社の存在や主人公の風早神社の娘である沙也加ちゃんの頑張りや人柄が読んでいて、疲れた心をじんわりと解きほぐしてくれるようでした。
異聞とあるように、番外編のような存在だけど、むしろこのシリーズの基盤となる物語のような気がした。 -
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タイトルに「異聞」とある通り、今作はコンビニたそがれ堂の店主である風早三郎神社の娘・沙也加の目線から描かれる三作からなる。
表紙をめくると、扉にアマビエのしおり。
「切り取って、しおりとしてお使い下さい」とあるが、もちろん本好きな人間にそんなことは出来ない。
この原稿を書いていたのが、ちょうど去年の春先だそうで、未知のウイルスに何も出来ないことをもどかしく思う気持ちが、作品の端々に感じられる。
いつもならば、たそがれ堂に行けば、心から欲しいと願うものは手に入るはずなのに、今回の未知の病気に対する薬は手に入らず…
それから1年。
今もまだ日本国民はコロナ禍に苦しめられている。
なのに、世界中から -
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『きっと人間たちは…魔法なんてない、全部科学で説明できることだって思ってる』
科学技術が進んだ現代社会。『人間の世界には魔法はないんだよ』と言い切れるくらいに、この世のことは次々と科学の力で説明されるようになってきました。もしタイムマシンがあって、例えば江戸時代の人が現代社会に現れたとしたら、鉄の塊が空を飛ぶのを見上げ、天守よりも高く聳え立つビル群を目にし、そして江戸の屋敷にいる人が京の都にいる人と画面を通じて気軽に会話できる、そんな光景を目にしたとしたら、それは妖術の為せる技だと思うかもしれません。もちろん、現代社会にだって解明されていない事ごとは沢山存在します。しかし、それは単に私たちが -
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ネタバレタイトルに「異聞」とつく通り、いつものコンビニたそがれ堂シリーズとは、ほんの少し違い、今作では、3話とも、風早三郎を祀る神社の娘さんが語り手です。
一番心に残ったのは、冬のエピソードです。
主人公の沙也加は、病弱だった母を早くに亡くしたり、年の離れた幼い弟の面倒を見たりで、年齢よりも大人っぽく思えるけれど、でも、本当は、まだまだ成長中の高校生で。
彼女が、幼いときに欲しいと言えなかったクリスマスプレゼントをやっと望んで手に入れられたのが、本当に少し大人に近づいた時なのかもしれないです。
2020年、コロナ禍のもとでの春・夏・冬の出来事なので、読んでいて、去年の不安感や閉塞感を思い出しました -
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あなたは、夜空の星に何か”願い事”をしたことがあるでしょうか?
“流れ星に願い事をすると願いが叶う”、そんな言い伝えをよく聞きます。しかし見つけようとして見つけられるものでもない、偶然目にする流れ星に”願い事”をするということ自体、なかなかに高度な行為だとも言えます。そもそも流れ星を見つけた時点で即座に願う何かしらの”願い事”をその人が常に持っている必要もあります。あなたは、常日頃からそんな強い想いのこもった”願い事”を持っているでしょうか?確かに漠然と”○○したい”、”○○になりたい”、そういった思いというものは誰にでもあるように思います。しかし、そんな想いを流れ星が流れ切るまでに反射的に