納富信留のレビュー一覧

  • パイドン~魂について~

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    哲学史の教科書でプラトンの教説とされているイデア論。
    それをもっともまとまった形で示している著作。


    ソクラテス最期の日、肉体と魂とが切り離される死の直前という舞台設定にふさわしく、
    魂が対話の主題として扱われる。

    「魂と肉体」という対比を軸として、思考と感覚、不変と変転、絶対と相対、イデアと事物、真の原因と自然学的な原因など、さまざまな対比が重ねられて語られる。
    この対比によって、いわゆるイデア論が図式的に提示されている。

    魂についての論証は、当時の自然学の知見を意識して行われているので、今日の我々にとっては説得的ではない。
    また、対話相手の提示する話も、それを承けたソクラテスとのやり

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    2022年06月01日
  • プラトン哲学への旅 エロースとは何者か

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    筆者と読者が、「旅人」としてプラトン『饗宴』の世界へトリップするという体で書かれた、非常に挑戦的な作品。

    語り口調の文体で読みやすく、『饗宴』のあらすじや各話者ごとの大まかな主張を掴むには持ってこいの本。
    中盤まではサクサク読めたものの、ディオティマの章あたりからは、内容の抽象度が高まったことと、どこまでが著者の創作なのかがわかりづらくなり、あまり理解できなかった。
    しかしそこを乗り越えた後のイデア論・洞窟の比喩の箇所は白眉。映画を観ているようで、パロディの強みがいかんなく発揮されていた。未読ゆえ比較はできないが、おそらくは『饗宴』それ自体よりもスペクタクルを感じられる語り口だったのではない

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    2022年04月24日
  • 世界哲学史7 ──近代II 自由と歴史的発展

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    啓蒙の時代を経て発展した「理性と自由」の対立構造が、19世紀に向けてどのように展開されていったかを論じている。
    「自由」の種類、新世界で生まれたプラグマティズム、スピリチュアリスムに焦点。
    功利主義も。

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    2022年03月19日
  • 世界哲学史6 ──近代I 啓蒙と人間感情論

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    17〜18世紀を主な舞台に、「啓蒙」にまつわる思想を展開している。「理性」と「感情」の問題は通奏低音で、現代にも続く議論の背景が丁寧にまとめられている。

    カントの批判哲学を扱った章は特にわかりやすかった。

    終盤、中国、日本に目を向け、「儒学」「朱子学」を起点に感情論を展開した点は、読者の思想につながるいい構成だった。

    ところどころで垣間見えた現代における「理性・感情」にまつわる議論を追ってみたい。

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    2022年02月11日
  • パイドン~魂について~

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    これまでプラトンの著作を有名どころから色々読んできた上で、これがあのイデア論か!と思った後に、ついにソクラテスの死の場面が描かれて、なんだかショックを受けてしまった…。
    論理展開は?と思うところや時代背景の違い、おそらく今よりもっと神話が思考と切り離せないくらい身近であったころということで、違和感があって、ついていけなかった。
    小説的に読んでしまった。
    残りの作品と国家論、解説書を読んでいきたい。

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    2022年01月27日
  • 世界哲学史1 ──古代I 知恵から愛知へ

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    哲学=西欧哲学という常識を塗り替え、アジアやアフリカなどを含めた世界哲学の体系化を試みるという壮大な理念を掲げたシリーズである。
    一巻ではメソポタミア文明からヘレニズム時代を扱う。メソポタミア文明を哲学史に組み入れること自体がすでに世界哲学への第一歩であり、その内容も大変興味深かった。
    一点気になったのが、9章と10章の内容の矛盾である。9章ではヘレニズム時代にギリシャ人とインド人が出会ったエピソードを世界哲学の導入にはならないと切り捨てているが、10章ではそのエピソードを丸々取り扱っている。章ごとに作者が異なることに起因した矛盾であろう。
    世界哲学を体系化しようという試みの中でこのような齟齬

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    2021年10月28日
  • ことばの危機 大学入試改革・教育政策を問う

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    だいぶ前から気になっていた、読解力と注意力の関係。自分が教えながら感じていたことが、やっぱりそうだったんだと再認識できた。

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    2021年07月23日
  • 世界哲学史2 ──古代II 世界哲学の成立と展開

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    キリスト教や仏教、マニ教やゾロアスター教などの宗教も取り上げられる。各地様々な思想が入り乱れる様子を見て取ることができる。

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    2021年07月04日
  • 世界哲学史1 ──古代I 知恵から愛知へ

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    ヨーロッパ中心の哲学史を、全世界の多面的な視点から捉えなおすことを試みた8巻シリーズの第1巻。それぞれの章末には関連する参考資料の紹介もあり、興味を深められそう。特に、ソクラテスの「不知の自覚」にまつわる記述には深く頷ける。

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    2021年05月09日
  • ことばの危機 大学入試改革・教育政策を問う

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    大学入試改革で「論理国語」と「文学国語」を分けていることから、文学は論理的ではないと国や経済界は思っているのではないかと感じる。
    しかし、文学(小説)を解するためには徹底的に論理的に読む必要があり、文学に論理性がないとは到底いえない。また論理国語とされる試験問題からは、文章の意味は一義的に定まるという考えが読み取れるが、そもそも人間の用いる「ことば」というものは複雑で、文脈や時代の情勢を織り込まないことには意味が正確に取れず、また受け手側のスタンスによっても意味の取り方が変化しうる。
    そのため、文学を取り出して囲い込むことは幾重にも間違った政策判断であるように思える。
    以上が本書を読んだ感想で

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    2021年02月09日
  • 世界哲学史1 ──古代I 知恵から愛知へ

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    哲学初心者には少し難しいが西洋哲学一辺倒ではなくアジアや他地域にも目をむけているのが興味深いので続けて読んでみたい。

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    2020年11月28日
  • 世界哲学史2 ──古代II 世界哲学の成立と展開

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    ちくま新書の世界哲学史シリーズ第2巻。古代哲学の後半を扱う本書では、キリスト教、仏教、儒教等、後に世界宗教へと発展していく各宗教の展開が扱われる。新書だからと侮るなかれ。いずれの論考も高度な内容で、読みこなすのはなかなかに骨が折れる。でもそれだけに知的刺激をビリビリと受けることができる。

    本書を読みつつ、先日読み終えた『天才・富永仲基』(釈徹宗・著)を何度か思い出した。思想や言説は、先行する思想を足がかりに、それを超克しようとする。その際には新たな要素が加えられるとする加上説を仲基は説いた。さらに、時代や言語が異なれば、説かれる考えも変わるということも指摘している。本書を読むと、プラトン然り

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    2020年12月03日
  • 世界哲学史1 ──古代I 知恵から愛知へ

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    志は素晴らしいが、その割に章ごとの方向性が違ってしまっている。勉強にはなるが、編集もうちょっと頑張ってほしかった。

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    2020年11月04日
  • 世界哲学史4 ──中世II 個人の覚醒

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    世界各地の思想や宗教で、同じような対立や弁証法的な関係が散発して存在している。この一点だけでも、「世界哲学史」を学ぶ価値がある。ちくま新書という専門レベルが大事だ。

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    2020年10月08日
  • 世界哲学史3 ──中世I 超越と普遍に向けて

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    初めて知ることが多い。しかし、それらの知識が私の既存の知識に的確に布置されていっていることも感じながらの読書であった。博識は力である。井の中の蛙となって、自らの世界だけが一番と思ってはいけない。特に思想・哲学では。

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    2020年09月29日
  • プラトン哲学への旅 エロースとは何者か

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    『饗宴』の解説に留まらず、時間旅行を通じてその世界に飛び込む体験ができる。納富先生がソクラテスやディオティマと話していたりと、舞台設定が面白かった。

    中でも、『饗宴』の世界を現代視点からそれ以後の文学作品や映画を取り上げながら議論していくのは斬新。

    喜劇と悲劇に対する納富先生の持論は新たな気づきで、今後戯曲をより一層楽しめそうだ。

    ただ、『饗宴』を読んだことがあればわざわざ読むこともないかもなー

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    2020年08月12日
  • 世界哲学史8 ──現代 グローバル時代の知

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    今年1月からスタートした「世界哲学史」、8巻でついに完結!!!!!

    近代に入ってからは、概ね、1冊で1世紀というスピードで進んできていて、この最終巻も20世紀〜現在という概ね100年間の話し。

    この世界にとっても、哲学にとっても激動の100年をどう1冊にまとめるのだろう?と思っていたんだけど、なんと最初の3章100ページ足らずで、欧米系の哲学の100年が語られている!!!!!扱われている視点は、分析哲学(いわゆる英米系哲学)、ヨーロッパ系の哲学(大衆社会とか、現象学とか、ハイデガーとか)、ポストモダン哲学。

    これは予想を遥かにこえた圧縮度、スピードなのだけど、なんだか、とてもスッキリした

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    2020年08月11日
  • ことばの危機 大学入試改革・教育政策を問う

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    経済優先の世の中では数値化できないものが切り捨てられていく。そんな恐ろしさを新・大学入試共通テストのプレテストから感じてしまう。
    恐ろしさを感じると同時に、ここで語っている東大の5名の教授の言葉には胸を打たれるものがあり一筋の希望が見えてくるようだった。
    ことばの危機はことばだけの問題ではないことを改めて気付かされる一冊。

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    2020年07月28日
  • 世界哲学史7 ──近代II 自由と歴史的発展

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    全8巻の世界哲学史シリーズも第7巻となり、大詰めを迎えつつある。本書は「近代Ⅱ 自由と歴史的発展」という副題で、まず伊藤邦武先生のいつもながら見事な要約(「第1章理性と自由」)に続き、ドイツ観念論哲学の発展過程(「第2章 ドイツの国家意識」)、ショーペンハウアー、ニーチェによる西洋哲学の転回を扱った「第3章 西洋批判の哲学」、そして「第4章 マルクスの資本主義批判」「第5章 進化論と功利主義の道徳論」と続く。

    本書で一番難解なのは、「第6章 数学と論理学の革命」。私はまったく歯が立たず、撃沈。

    ここで1回本書を閉じようとしたが、アメリカのプラグマティズムを扱った「第7章 「新世界」という自

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    2020年07月17日
  • 世界哲学史6 ──近代I 啓蒙と人間感情論

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    『世界哲学史6』は近代Ⅰで啓蒙と人間感情論について概説されている。理性と感情という人間精神の2つの柱の間の揺れ動きを世界哲学史というパースペクティブにおいて捉え直すというのが、本巻の目的である。スコットランド啓蒙の話、社会契約論のロジック、啓蒙と革命、啓蒙と宗教、植民地独立思想、そしてカントの批判哲学の企てまでで一区切り。第8章〜10章でイスラーム世界での啓蒙主義、9章では中国の感情の哲学、最終章では江戸時代の「情」の思想が取り上げられている。

    それぞれに興味深いが、個人的には徹底的に理性主義と普遍主義を追求したカントの批判哲学に惹かれる。「スミスの道徳感情論にも、知的能力による自己批判とい

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    2020年06月18日