あらすじ
古代から現代まで世界哲学史を一望に収める八巻シリーズ。第一巻では、哲学が成立した古代の最初期を扱い「知恵から愛知へ」という副題のもと、人類が文明の始まりにおいて世界と魂をどう考えたのかを探究する。文明が発生した古代オリエントに始まり、旧約聖書とユダヤ教の世界、ヤスパースが「枢軸の時代」と呼んだ古代の中国とインドとギリシアで思想が展開された紀元前二世紀までに見ていき、最後にギリシアとインドの接点を探る。新しい哲学の可能性を広げる旅へと読者を誘う。
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Posted by ブクログ
古代Ⅰ
世界哲学とは、西洋哲学を包含し、世界の知的営為を俯瞰する、試みであり、日本が打ち出した理念である。
ナチスの台頭により、分断された世界に絶望したヤスバースは、哲学的自伝において、世界哲学へと進んでいく。それを継承したのが、日本の世界哲学である。
気になった言葉は次の通りです。
・枢軸の時代、中国、インド、メソポタミアにおける文明のうねりを、枢軸の時代として捉える。
・メソポタミアとは、2つの河の間という意味、チグリス、ユーフラテスの間の土地である。
・メソポタミア下流で誕生した、楔形文字は、紀元前3000年から、紀元100年もの間、メソポタミアの言葉であり続け、やがて、その知恵はギリシャへ引き継がれていく
・ユダヤのアッシリアへの捕囚によって、メソポタミア文化、および、ギリシャ文化が旧約聖書に反映されていく
・ヘブライ語で記された39の書物が、旧約聖書としてまとまっていく、その文学形式は、教訓、対話、そして、格言である。
・フィロソフィア:哲学が意味するもの。フォレオ(愛する)+ソフィア(知恵)=知を愛すること、が哲学の意味である。
・ギリシャ哲学は、ピタゴラスに始まる。
・ギリシャ哲学は、ソクラテス以前、ソクラテス以後、そして、ヘレニズム時代の3つに分かれている。
・無知の知:ソクラテス。プラトンとアリストテレスは、プラトンの言葉を後世に伝えたのみ、ただ学校を作って、哲学を後世に引き継いだ功績は大きい
・ヘレニズム:アリキサンダー大王がギリシアとペルシャ、インドをつなぐ重要な文化の交流路を作り上げた。
・ヘレニズム哲学 ストア派、エピクロス派、懐疑派、3つの学派が、やがて、ギリシャ哲学をローマへの引き継いでいく
目次は以下です。
序章 世界哲学史に向けて
第1章 哲学の誕生をめぐって
1 枢軸の時代
2 始まりへの問い
3 哲学への問い
第2章 古代西アジアにおける世界と魂
1 古代メソポタミア文明
2 世界
3 魂
4 学知の伝統と学識者
5 古代メソポタミアにおける世界と魂
第3章 旧約聖書とユダヤ教における世界と魂
1 旧約聖書と「哲学」
2 世界の創造と秩序
3 人間の魂
第4章 中国の諸子百家における世界と魂
1 世界と魂の変容
2 スコラ哲学、修験道、そして仏教との連絡
3 儒家の世界論と魂論
第5章 古代インドにおける世界と魂
1 世界哲学史の中のインド哲学
2 世界の魂について
3 叙事詩における「魂について」
第6章 古代ギリシャの詩から哲学へ
1 哲学発祥の地としての古代ギリシア
2 誰が哲学者なのか
3 詩から哲学へ
第7章 ソクラテスとギリシア文化
1 世界から魂へ
2 民主政ポリスの哲学者ソクラテス
3 魂への配慮
第8章 プラトンとアリストテレス
1 古代期ギリシアの遺産
2 プラトン
3 アリストテレス
第9章 ヘレニズムの哲学
1 ヘレニズム哲学のイメージ
2 ストア派
3 エピクロス派
4 懐疑派
第10章 ギリシアとインドの出会いと交流
1 異文化交流が実現した歴史的背景
2 ピュロンにおけるインド思想との接触
3 アショカ王碑文における両思想の融合
4 対話篇としての「ミリンダ王の問い」
Posted by ブクログ
序章 世界哲学史に向けて
第1章 哲学の誕生をめぐって
第2章 古代西アジアにおける世界と魂
第3章 旧約聖書とユダヤ教における世界と魂
第4章 中国の諸子百家における世界と魂
第5章 古代インドにおける世界と魂
第6章 古代ギリシアの詩から哲学へ
第7章 ソクラテスとギリシア文化
第8章 プラトンとアリストテレス
第9章 ヘレニズムの哲学
第10章 ギリシアとインドの出会いと交流
Posted by ブクログ
「こんな時だからこそ先人の知恵に学ぼう!」というわけではないけれどもちくま新書から「初の」世界哲学史シリーズが刊行中ということで、シリーズの第1巻。第1巻は「古代1 知恵から愛知へ」。
世界哲学という概念は、大学生時代にカール・ヤスパースの『歴史の起源と目標』やヘーゲルの『歴史哲学』などを読んでいる身にとっては意外とハードルが低かったが、本シリーズの目標は当然これらの西洋哲学者の「限界」を超えていこうとするところにある。
第1巻は「哲学の誕生をめぐって」「古代西アジアにおける世界と魂」「旧約聖書とユダヤ教における世界と魂」「中国の諸子百家における世界と魂」「古代インドにおける世界と魂」とまずは古代人たちが世界をどう認識したのか、その中で人間の魂とはという問から入っていく。
第6章以下は、古代ギリシャの哲学誕生の場面からソクラテス、プラトン、アリストテレスとオーソドックスな西洋哲学史からの問い掛けがなされ、最後の第9章、10章で再びそれらがローマ世界、インド世界へと接続していく場面に立ち会う。
またティーブレークのように挟まれているコラムも読み応えがある。このシリーズは面白く、結構、はまりそう。
Posted by ブクログ
哲学=西欧哲学という常識を塗り替え、アジアやアフリカなどを含めた世界哲学の体系化を試みるという壮大な理念を掲げたシリーズである。
一巻ではメソポタミア文明からヘレニズム時代を扱う。メソポタミア文明を哲学史に組み入れること自体がすでに世界哲学への第一歩であり、その内容も大変興味深かった。
一点気になったのが、9章と10章の内容の矛盾である。9章ではヘレニズム時代にギリシャ人とインド人が出会ったエピソードを世界哲学の導入にはならないと切り捨てているが、10章ではそのエピソードを丸々取り扱っている。章ごとに作者が異なることに起因した矛盾であろう。
世界哲学を体系化しようという試みの中でこのような齟齬が生じるのは本末転倒に思える。
Posted by ブクログ
ヨーロッパ中心の哲学史を、全世界の多面的な視点から捉えなおすことを試みた8巻シリーズの第1巻。それぞれの章末には関連する参考資料の紹介もあり、興味を深められそう。特に、ソクラテスの「不知の自覚」にまつわる記述には深く頷ける。
Posted by ブクログ
哲学から、西洋哲学、東洋哲学といった枠を取っ払い、あらためて世界的、普遍的な視座から構成し直そうという壮大な試み。同様の動きは歴史学にもあるが、グローバル化の進展する世界にあって、当然の流れかもしれない。新書ではあるが、内容はなかなかに高度で読みこなすのは相当にしんどい。個人的には西アジアの章が刺激的だった。学生時代に学んでいたエジプトの論考がほとんど無かったのは残念だったが、メソポタミアの時代から不可知論が議論されていたことに驚かされた。その一事だけでも文明の進化論には懐疑的にならざるを得ない。あとがきによると、世界哲学の構想は日本発とのこと。以後の続刊にも要注目。
Posted by ブクログ
哲学史というと、普通、ギリシア哲学から始まり、西欧の「大陸系」と英米の「分析哲学」という西洋哲学の流れの説明というのが一般的で、日本、アジア、イスラム圏というのがでてきても、それは「思想」、というか、西洋哲学との比較で論じられてきたのだと思う。
それを「世界哲学」として、時代ごとに論じていこうというチャレンジ。そして、これがその1巻目。
といっても、こうした「古代」においては、文明圏間の交流、影響関係はあまりなさそうなのだが、不思議なことに同じような時期に、同じようなことが当時の先端の文明の各地で問題として浮上してくるということが不思議。
もちろん、問題に対する答えは違うのだけど、、、、なんだか、「人間」とか、「人間」と「人間」の関係性といったことが問題になってきているんだね。
「世界はどのように始まり、どのように動いているのか」といった問いは古代哲学にもあるし、今だに哲学の重要な問いなんだけど、フォーカスはより「人間」「人間の内面」「人間関係」に移っていく。
「汝自身を知れ」ということか。
世界哲学といっても、やはりこの1巻目の中心は、ギリシア時代。そして、それがヘレニズムとなり、最後は、ヘレニズム哲学とインド哲学との対話というところでこの巻は終わる。
このシリーズは8巻なんだけど、プラトンやアリストテレスといった西洋哲学の始祖、そして東洋哲学の始祖というのは変だが、ある種の徹底した認識の転換を行なったブッダがさらっとしか言及されずに、どんどん次に議論が進んでいくところがすごいと思った。ちょっと新鮮というか、爽快。
次の展開が楽しみ。