納富信留のレビュー一覧
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大学生の時、留学も視野に入れて、というより日本語の哲学研究書があまりにも難しくて、よくPodcastを聞いていた。それはナイジェル・ウォーバートンのPhilosophy Bites(哲学の齧り)であった。ひとつ15分ほどの番組で、ある主題についてウォーバートンのインタビューで第一人者が最前線の研究を語りながら聞き手を案内する充実した内容で、いまも続いている。本書は編者あとがきで言及されているように、その日本語版といった趣のある哲学史入門である。
本書のインタビュー形式であるからこその臨場感は、全ての読者を哲学史のいわば「急所」へと招くものである。従来の哲学入門や哲学史入門で、わかるようなわ -
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プラトンの『ソクラテスの弁明』にはいくつもの翻訳がある。評者が最初に読んだのは中公クラシックス版の田中美知太郎訳であったが、クリトンとゴルギアスとともに強烈な印象を残したのを覚えている。ただ、いま読み返してみると手放しに誰にでも勧めることができるわけではないなと思う部分が多少ある。すでに他の著作で哲学に対する関心が呼び起こされた読者にとってはどうしても読みたくなる本であろうから、その心配は杞憂であるかもしれない。しかし、光文社古典新訳文庫の納富信留訳の『ソクラテスの弁明』は哲学入門として誰にでも勧めたくなる一冊である。
哲学の始まりは『ソクラテスの弁明』にあるといわれる。哲学という営みを決 -
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本書は数あるプラトン入門の中でも異色の本である。まず特筆すべきはその文体にあろう。著者は私たち読者とプラトンとの間に立って、私たちに、あるいはプラトンに語りかける。この本を手に取ってその語り口にある種の抵抗を感じる人もいるかもしれない。しかしこの語り口こそが本書を異色のプラトン入門にしているのである。
本書はプラトンの主要な対話篇の場面と取り組まれる問いを読者に提示することを通して、プラトン対話篇の世界へと読者を招く。語り口の柔らかさとは裏腹に学術的なプラトン入門にふさわしい内容が詳しく紹介され、本書を通読することでプラトン対話篇の全体像をつかめるようになっている。このことはR.S.ブラッ -
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ネタバレカントに始まるドイツ観念論は、神=絶対者=無限という概念を介して、人間の外部から認識され内部に構成された現象の世界と、認識されない物自体の他性と、その双方に通底する真実在をそれぞれを把握しようとする試みなのだと理解した。世界は、認識可能な自我~〈世界〉と、認識の及ばない非我~物自体と、双方に根底する絶対的自我~〈大地〉に大別される。
フィヒテは自我と非我を対置する先験哲学を重視し自然は自我による構成物とした。自我の根底には絶対的自我があり、絶対的自我の〈他〉を許さず全体性を突き詰め無限さえ〈同〉に内包して神と合一しようとする作用が、自我の根源的作用である。しかし神と異なる有限者は同化作用に対 -
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ソクラテスが「不敬神」の罪で裁判にかけられ、弁明をしていく。非常に読みやすく解説も丁寧なので古典という感覚を感じることなくスラスラ読めた。
「アテナイの皆さん、今まで述べてきたことが真実であり、皆さんにすこしも隠し立てせず、ためらうことなくお話ししています。しかしながら私は、まさにこのこと、つまり、真実を話すということで憎まれているのだということを、よく知っています。そして私が憎まれているのというまさにそのことが、私が真実を語っていることの証拠でもあり、そして、私への中傷とはまはにこういうもので、これが告発の原因であるという証拠でもあるのです。」p24
この一文が私は特に印象深い。
真実を -
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本書は、世界哲学史シリーズのふりかえりと、シリーズで語られなかった漏れを補完することが目的である。
見た目、各章の流れや、並べ方については、どうして、そうなっているのは、理解できませんでした。読むの長い時間がかかってしまいました。
<ふりかえり>
古代Ⅰ 世界と魂がテーマであった。世界哲学の始点をどこにおくか、それはギリシアである。哲学とは、ギリシアから始まる大系であることを始点におく。
古代Ⅱ ギリシアからローマへの流れとキリスト教の成立が軸となる。この時期に世界宗教が成立したことを捉えて、その成立には、聖なるテクストの整備が必要であったことを論じる。
中世Ⅰ 中世のはじまりと、古代が -
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本書は、第一次世界大戦後から、現代までの世界を描いています。
万能であった科学が破綻をし、幸福をもたらすだろうことか、災難をもたらしたのが、第二次世界大戦であった。
全体主義の台頭を許し、世界を分断に至らしめた状況に対して、深い反省のもと、その問いに答えるのが本書であることが冒頭に述べられている。
過去から現代へ、世界をめぐる哲学の旅はまだ終わっていない。
別巻があるので、シリーズの総括と、現代のさらなる論点はそこで語られる。これは、現代Ⅰと考えていただいたほうがいいかもしれない。
本書は、主義、論と、哲学者の名前、著者と、その概説でほぼ埋められていて、難解極まりない。所詮、数行で、哲学者 -
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近代Ⅱ 自由と歴史的発展
本書は、19世紀の哲学を扱っています。
難解、つらかった。各哲学者の考えが断片的に紹介され、教科書的に並べられているのは、やむをえないか。
時代を下るにつれて、その登場人物も概念や事象も膨大に多くなっていく。連綿と続く思想の系譜と変遷は驚くほど複雑であり緻密である。
国や、キーワードが分散されているので、行ったり来たりしないといけない。
哲学者の考えを正確に理解するためには、オリジナル・テキストにちゃんと向き合わないとわからない。各巻末にある文献もそれらをつなぐキーとなっています。
気になったことは次です。
・ロマン主義というのは、ナポレオンに対抗したドイツの -
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近代Ⅰ 啓蒙と人間感情論
本書は、18世紀の哲学を扱っています。
近代における西洋世界の文明上の優位は、17世紀の科学革命から始まり、18世紀の政治的な大革命、19世紀の産業革命と帝国主義的植民地化への加速して、地球全体の規模へ拡大した。
気になったことは次です。
・啓蒙とは、ものごとに通じていないこと、その無知をなくすこと、正しい知識を与えることである。
・西洋近代の啓蒙思想は、イギリスの名誉革命、アメリカの独立戦争、フランス革命らの変革のうねりに、バックボーンとしての役割を果たした。
・産業革命と帝国主義的植民地政策を通じて、啓蒙主義もまた、世界のすみずみまで伝播していく。
・17 -
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中世Ⅲ バロックの哲学
本書は、14世紀から17世紀の哲学の展開を扱っています
この時代は、人類史上から見て1つの激動の時代であった。
大航海時代、活版印刷の発明普及、宗教改革、ルネサンス。宗教改革以降は、大学教育の大衆化とも相まって、哲学の世俗化、宗教からの隷属からの脱却が進んだ。
14世紀は、ペストの時代、ローマ教皇庁の凋落、15世紀は、ルネサンス、16世紀は、宗教改革と、大航海時代、17世紀は、バロックと、合理主義、哲学から科学が分離して発展していく。
デカルトはスコラ哲学の膨大な遺産を大量に保有し、その概念群を継承し、ライプニッツに引き継いだ。ライプニッツは、微分積分学を含めて、哲 -
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中世Ⅱ 個人の覚醒
本書は、12,13世紀の中世に光を当てる
「12世紀ルネサンス」という言葉があるこの時代は英雄譚や騎士道精神が誕生し、ヨーロッパのアイデンティティがしていく時代。
都市の発展、商業の成長、教育と大学の発達なヨーロッパは様々な面から大規模な発展を遂げていく。
自らが聖書をよみ、人々が個人に目覚めていく時代、哲学は、個人の救済という問題に向き合うようになっていく。
気になったことは次です。
・16世紀のルターらの宗教改革は、実は第2ステップであった。その原点は、15世紀にチェコがおきたフスの宗教改革だ。個人が聖書に向き合うための準備をしたのがこの時代だった。
・トマス