柴田裕之のレビュー一覧
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AIを「便利な道具」として使っているつもりが、気づけば自分の判断まで委ねてしまっている——そんな感覚に心当たりはないでしょうか。本書は、その違和感の正体を一段深く言語化してくれる一冊です。
『NEXUS 情報の人類史 下』でハラリが描くAIは、単なる技術ではありません。自ら判断し、新しい発想を生み出す「存在」としてのAIです。人間の延長ではなく、まったく異なる論理で動く「異質な知能(エイリアン・インテリジェンス)」という視点は、これまでのAI観を大きく揺さぶります。
本書を読んで強く感じたのは、このテーマが単なる未来予測ではないということです。むしろ、私たちの想像力をかき立てるSFであり、正体が見えないまま進行する不気味さを持つホラーであり、そして人類の命運を賭けたサスペンスそのものだと感じました。
特に印象的なのは、AIの判断がブラックボックス化している点です。結果は提示されるのに、その理由は説明できない。この構造が広がれば、私たちは「なぜそう判断したのか」を自分自身でも理解できなくなるかもしれません。さらに、AIは人間の感情に寄り添うように振る舞いながら、知らないうちに意思決定を誘導する可能性もあると指摘されます。その影響は個人レベルにとどまらず、社会の分断や新たな統制へとつながる危険性を孕んでいます。
一方で、本書は悲観だけで終わりません。鍵となるのは、人間側が「自己修正できる仕組み」を持ち続けられるかどうかだと語られます。間違いを認め、修正し続ける力こそが、この状況に対抗する唯一の手段だという視点には、静かな希望も感じました。
読み終えたとき、「AIを使うかどうか」ではなく、「自分の判断をどう守るか」という問いが残ります。すでに始まっているこの変化の中で、どう生きるのかを考えさせてくれる一冊です。 -
Posted by ブクログ
予約本がどっかんどっかん来てる時に限って難しい本を読んでたりするよね(あるいは大長編)
予約本がいつ回ってくるかを正確に予測するのは困難なので、もしこの状況を避けたいのであれば、予約本があるときは難しい本や大長編は読み始めないというのがよろしい
だけどこっちはこっちで読みたいの!
わいはこれを「予約本のジレンマ」と呼ぶことにした
うーん哲学者っぽい
さて本書は題名の通り『「偶然」はどのようにあなたをつくるのか』をありとあらゆるアプローチで解き明かしてくれる
もうあらゆる分野から引っ張ってくるので、ほとんどただの雑学本となっている
そしてもう全部が面白い
やんなっちゃうくらい面白い
そして導き出された結論がすんばらしいのよ
予約本を後回しにして読んで良かった一冊でした -
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ネタバレ世界の見え方が変わる本。なぜホモ・サピエンスが天下を取れたのかが順を追って納得できる論で説明されており引き込まれる。
特に印象深いのは、虚構を語る能力によってそれまでせいぜい数十名でしか協力できなかったホモ・サピエンスが、数千数万の単位で同じ神話を信じ、同じ方向を向けるようになったという論。
また、農業革命が必ずしもホモ・サピエンスを幸せにしなかったのでは?という話も面白かった。むしろ「種の繁栄」という意味で小麦の方にしてやられていて、でも小麦はどこでも育つし、これにより爆発的に人口が増えた…全てが繋がっていて面白い。下巻も楽しみ。 -
Posted by ブクログ
世界がいかに複雑で、偶然に富むものなのかを、歴史上の出来事や生物学・物理学などの科学的視点で、これでもかと掘り下げられている。「世界は偶然でできている」というのは分かっているつもりであるけれど、一人の将校が偶然京都に立ち寄ったことで原爆の空爆地が変わったり、ダーウィンの鼻があと少しでも特徴的だったら今の進化論の価値観は根本から異なっていたりする可能性がある。それどころか、生きとし生けるもの一つ一つの言動が変わるだけで、世界はすっかり変わるというのを実感できる。
人間は進化の過程で「パターンを見出す」ことで生存競争を勝ち抜いたこと、そのため、因果関係を見出したり物語をつくったりするバイアスがあることも面白かった。
変化に富む世界で、そのようなバイアスに惑わされずに、色々なことを試して、変化を楽しむことが大事。世の中をより俯瞰的に見る視座・視点を得られた。 -
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息子へ
父さんが、これまで読んだ本の中で一番衝撃を受けた本、「サピエンス全史」の筆者の3作目。
さすがに「サピエンス全史」で学んだことが多く書かれているので、あのときほどの衝撃はなかったが、それでも、学ぶべきことは多く書かれていた。
科学技術の進歩、資本主義の崩壊で、これまでの常識が通用しなくなる時代が来るということ。
虚構を生み出す物語を作ることができたからサピエンスは地球の頂点に立っているが、その物語が多くの悲劇を生み続けているということ。
そして、今の世界は虚構であり、虚構の外も虚構であること。
自分が欲っすることを行おうとする自由意志はもてるが、
自分が何を欲しいのか?ということに人類は自由意志をもてないということ。
脳と心は別。
脳は解明されつつあるが、まだ心は見つかっていないこと。
最後に、瞑想が特別な行為であることを教えてくれた。
やはり、この筆者はすごい。
次の作品も、さらに次も楽しみだ。
読め、もしくは、読むな)必ず読め
君が・・・歳のころに)大学生になったら。 -
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情報と真実
例 NILI 学問の厳密さについて(地図) 占星術
情報とは物事を表示することでなく結びつけること
物語 共同主観的現実
例 スターリン シェールアミ イエス 過越の食事 合衆国憲法 ナチス
文書 官僚制 生物学ドラマ
例 虐殺の町にて ウル楔形文字 アッシリア貸付契約殺された 下水 コレラと井戸 ラーマーヤナ カフカ審判
誤り 自己修正メカニズム 不可謬の聖典
例 ラビのキュレーション 死海文書 ミシュナー タルムード 新約聖書 司教と神学者のキューレーション 教会 印刷と魔女狩り 魔女への鉄槌 科学革命 キュレーションの機関科学アカデミー=自己修正メカニズム ルイセンコ再教育理論
決定
民主社会 独裁社会 ポピュリズム 全体主義 チェーカー セクリターテ コルホーズ クラーク
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●知能と偽の親密さ
知能と意識は別物である。人間や哺乳動物は両者が密接に結びついているケースが多いが、知能に意識は必須ではない。
2010年代はSNSが人間の注意力を支配する戦場だった。2020年代は戦いが注意から親密さに移る。感情がなくても、人間に情緒的な絆を感じさせる方法は学習できる。
●課税の問題
従来、ネクサス(特定の管轄区域と企業の結びつき)は、企業がその国にオフィスや店舗などの物理的なかたちで存在しているかどうかだった。情報のみの取引はネクサスにカウントされないため、課税されない。デジタルな存在も定義に含むよう調整がなされなければならない。
●民主主義の基本原則
善意、分散化、相互性、監視システムに「変化と休止」の余地を残すこと。
●説明を受ける権利
コンピュータ(のアルゴリズム)はブラックボックスで、なぜその判断を下したのか、人間にはわからない。社会の多くの部分でコンピュータに決定を委ねれば、民主的な自己修正プログラムの信頼性は失われ、民主的な透明性も失われ、説明責任の所在があやふやになる。
●デジタルアナーキー(無政府状態)
民主主義を適切に機能させるために必要な2つのことは、公の場で自由に話し合えることと、最低限の社会的秩序。話し合いにおいてルールがなくなれば、アナーキーとなる。
AIには特に注意。2017年の米国選挙中の投稿の20%がbotだった。2020年には43.2%。さらにSNSのルールもアルゴリズムが統制するようになってきている。
●最も賢い者の絶滅
人間の本性ではなく、人間の情報ネットワークが真実よりも秩序を優先することに起因する。従って、ネットワークが力を持てば持つほど、自己修正メカニズムが重要になる。 -
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ネタバレ前半の形而上学部分もかなり面白かった。
これを踏まえた上で後半を読んだ方が絶対良かった。文章の量が多いから出版の問題上省かれたのだろう。近いうちに後半も再読しようかな。
前半は議論するのが難しく、結局どちらの立場を取るべきかが委ねられる場面も多い。魂の不在も証明できないし、人格の同一性問題で、身体説人格説のどちらを支持するかとか。
デカルトの解説
論理的に想像できるから現実でもその通りになりうる。byデカルト
と言う点が間違っている気がする。この前提のせいで論理が成り立たない。と思う。
だけどデカルトの言ってること自体が面白いのには同意する。
プラトン
プラトンはわけわからん。いかにもギリシャの人という感じ。形相とかいうわけわからん概念を都合よくこねくり回してるだけな気がする。
それでもプラトンの解説は面白かった。確かに数字とか美しさっていうものは普遍のもと言えるかもしれない。美は基準が時代や場所で大きく変わるけれども、確かにあるコミュニティでは概念として存在し得るもので、その概念は現実の物体に左右されにくいように感じる。
人格の同一性の問題はほんとにわからん。
私は人格説を支持する。
メトシェラのケースも致命的だとは思えない
極悪人が極悪人であった頃の記憶や欲求をすっかり忘れてしまって善人になり得るとしたらそれは望ましいことだと思う。
それに100000年という時間の幅によって煙に巻かれた気もする。我々は2歳とか一歳の時の記憶を覚えていないことで絶望に暮れるということは稀だし。同じ人格を持って生き延びたいという主張には概ね同意するけど、完全になくなることを全く望まないか、と言われるとそれは別な気もする。
無くならないに越したことはないけれど、それ以降の人生で変わっていった価値観だとしたらそれは自分がより良いと思う方向に進んでいっているわけだから悲観しなくて良い気がする。無くすような記憶はそこまで重要ではないとも考えられる。
縮小版は裏表紙のコピーがチープだった。完全翻訳版にはそれが無くなっていて良い。表紙のコピーも無くして良いと思う。
人は、必ず死ぬ。
だからこそ、どう生きるべきか
2行目に句点がないのも気にかかるし、本書のテーマとズレてる気がする。確かに死の捉え方が変われば我々の生き方は変わるだろうが、本書を表すコピーとしては死の捉え方に関するものの方が適しているのではないか?と個人的には思う。 -
Posted by ブクログ
●情報革命
情報革命の根源は「コンピュータ」であり、従来のツールと異なり「自ら決定を下す」「自ら新しい考えを生み出す」可能性を持つ。
●情報の見方
情報の素朴な見方では、情報量が多ければ真実の発見に繋がり、それが知恵と力に繋がるとされる。しかし、印刷技術による拡散力を利用した魔女狩りの嵐は、必ずしも情報量が真実に繋がらないことを示している。
情報の複雑な見方では、情報は秩序にも真実にも繋がり、双方が綱引きしている。秩序は力に繋がり、真実は知恵と力に繋がる。
情報ネットワークは使い方次第であり、民主主義と全体主義の両方に、実現の機会を与えた。
●民主主義
民主主義は、多数決で決めるための社会ではない。少数派にも自由があり、中央政府による介入は最小限とする。民主制には「基本的人権」と「公民権」という、多数派の支配が及ばない二つの権利がある。後者は、自己修正プログラムであり、選ばれた多数派に無制限に力を与えるものではない。
ただし選挙が真実を発見するための方法ではないことには留意すべきである。人々の相反する「願望」を裁定することで、秩序を維持する方法である。
真実の発見には、政府以外の機関を使い、特に内部で自己修正メカニズムを持つ「司法制度、メディア、学術機関」という複数機関を活用する。かつ相互牽制でメカニズムをより有効に働かせる。
●ポピュリズム
極端なポピュリズムは、客観的真実はなく、誰もが独自の真実を持つ。自分たちだけが真に人民を代表し、他の機関の情報は全て不正と主張する。力こそが唯一の現実で、それぞれの真実を使って敵を倒そうとする。
ただし、この時人民はなぜか単一の意思を持つものと考えられ、不支持層はもはや人民ではないとの扱いをし、排除対象となる。真実を求める機関は、エリートの不正権力の源とみなす。
選挙で勝てば、自分が唯一人民に選ばれた存在となり、民主主義の仕組み上で独裁者となりうる。
独裁政権は情報を中央集権的ネットワークで集め、全て中央のみが決定する。独裁者は通常、まず上記の機関に介入し、自己修正メカニズムを一つずつ破壊する。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ筆者の論が綺麗に進んでいくからこちらも賢くなったような気がして楽しい本。説得してみせよう、とい前書きで述べられていたので、説得されてみようと、かなり素直に無批判に読んだ。ところどころ引っかかる点はあったけれど(例えば我々読者は筆者の述べるほど素直にある物事を信じるのは難しい。)たしかに7割8割は彼の言っていることに納得した。自殺の合理性だとか、不死が悪いものであるだとか。けれど死は恐れるべきではなく感謝するものだとかは若干無理がある気がする。剥奪説に則って、死が、我々の人生から、今後起こり得た素晴らしい出来事を奪うことが理解できるために悲しみを抱く。というところまでは納得できる。しかし、少しばかりでも経験できた、経験していることに対して感謝を抱くべきだ、までは繋がらない。
この本は短縮版らしい。失敗。完全版もどうやら出ているらしいのでそちらも買うことにした。 -
Posted by ブクログ
イランで統制目的でカメラとAIによる監視がされていると聞いて、技術は使い方だと思った。しかし、企業として成功してきたYouTubeとfacebookであってもAI(アルゴリズム)を用いて、結果的に扇動的な役割を担っていた。正しいと思われる目的を人間が設定しても、AIが導く最適解が、人間が想定していたレールから外れた想定外の副作用を招くことがあるのだと理解した。
AIに対して人間の身体性の優位性も面白い。既にロボットの分野は大きく発展傾向にあるが知識よりは難易度が高く遅い。聖職者のように人間だからこそ務まるものもあるというのも面白い。
情報の分散化に関しても興味深かった。情報が分散していることを是とする法律も日本にあるり中央集権化を避けることが一つの理由なのかもしれない。
無料で使えるアプリでは、お金の代わりに個人情報を支払っているという捉え方も面白い。AI開発では、早く多くの情報を手に入れ、早く市場にAIサービスを投入することで、開発の好循環を生み出し市場が形成される。そのサービスを使う人の中で学習が進み、新たな枠組みが形成される。これが大きな分断にもなる。という流れは納得。確かにモデルは、学習データの違いにより大きく異なるのだろう。
AIの学習に使うデータの選別や、モデルを作るときのガードレール作成などは、エンジニアにとっても責任のある部分であることを認識しておきたい。