柴田裕之のレビュー一覧

  • サピエンス全史 上 文明の構造と人類の幸福

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    面白い話多いけど抽象的なので読むの時間かかる
    神話の話は目からウロコだった、あと社会的な属性って人間が全部作り出したものなんだって思ったらだいぶ生きるの楽になってきた

    男らしさ女らしさ、消費主義ロマン主義とかめちゃくちゃ現代の我々はそれに振り回されてるけど、実際は時代や文化によって変わるからそこまで気にしなくていいんだな。生きたいように生きよう

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    2026年07月28日
  • 「偶然」はどのようにあなたをつくるのか―すべてが影響し合う複雑なこの世界を生きることの意味

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    ネタバレ

    社会に出てから、XだからYであると行った一次関数的な要因と結果の関係性が過度に強調されすぎていることに違和感を感じていた。
    単純明快で理解しやすい構図が好きではない。そこまで世の中は単純化できないのに人間が理解しやすいように整理されすぎている自己啓発本に対する嫌悪感もこの違和感に起因していたと思う

    だからといってあまりにも決定論すぎる考えもいかがなものかと思い自分が抱いているこのモヤモヤの解決に一歩近づけたらと思って手に取った。

    冒頭はあらゆる事象から「ランダム性」をとき、私たちがコントロールできると信じている事柄が本来はどれだけコントロールができないことであるかということを論じていた。
    ここまで読んで決定論的な考えに着地さられるのかと思いきや、そうではない着地で驚いた。私自身冒頭を読んでやはり決定論的な考えの方が正しいのではないかという気持ちになりかけた。しかし決定論的な考えが行き着く先には人種差別や性差別などもともと持っている能力やポテンシャルを過度に評価する思考に近づくという点で危険な思考だというリスクが述べられていたし、決定論的な面は少なくともあるがここで自分のランダム性というものへの過小評価について気付かされた

    そもそもの決定論的なものの中にあるランダム性、そして未来に起こりうる外部のランダム性によりいくらでも世界は変化する。この点において世界は決定論的ではないのだ

    この着地が本著のよかった点であると思っている
    ネガティブな運への捉え方ではなくポジティブ無方への捉え方で着地した
    世の中はコントロールできないという点ではネガティブに思えるが、ランダムだから面白い、ランダム性に対して価値が高いのが探索であり、探索をすることこそ人生の面白みであるという着地

    意外な結論ではあったものの納得もしたし、読後感はすごくよかった

    長かったけど是非読んでみてほしい

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    2026年07月25日
  • NEXUS 情報の人類史 上 人間のネットワーク

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    ネタバレ

    「情報」を取り扱った本。

    物語
    ・「物語」がホモ・サピエンスを霊長類たらしめた
    ・「宗教」は代表的な「物語」

    ・物語⇔官僚制(トップダウン、索引)
    ・クラーマーの『魔女への鉄槌』

    ツール革命
    ・文書→活版印刷→電信・ラジオ・電話→インターネット→AI

    誤り
    ・民主主義⇔社会(全体)主義→不過謬

    ・知能≠意識

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    2026年07月26日
  • サピエンス全史 上 文明の構造と人類の幸福

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    私たち、ホモサピエンスの歴史を客観的にみていて面白い。
    人類は虚構(法律や紙幣、宗教、国)を信じることで発展してきた。
    私が生きているこの環境も虚構で成り立っている。この虚構を信じることで生活ができている。
    でも生物学的に見ると、存在することのないもの。

    自分が正しいと信じていた価値観でさえも、覆りそうな考え方にさせられる一冊。

    あと、この本を読んでから、
    周りの人たち全員同じホモサピエンスだよね、みたいな考え方になれるので、ちょっと生きやすくなった。

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    2026年07月23日
  • サピエンス全史 下 文明の構造と人類の幸福

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    人間としての価値基準が変わるぞ。

    世の中を見る目が変わる。
    人生について考え直す機会をくれる。

    本当に難しい本だった。

    けど、今はAIがある。

    わからない話や背景、表現はAIに投げて答えをもらいしっかりと自分に落とし込む。

    長い時間をかけてじっくり味わってモノにしてほしい。

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    2026年07月15日
  • サピエンス全史 下 文明の構造と人類の幸福

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    上下巻を通読。こんないかにも難しそうな本を読む人はどんな人なのだろうね、と思っていたけど...これは面白い。
    まさに人類のハイライトですね。

    長い本だけど、泣く泣く削った部分とかあったんだろうなぁ...もっと色々書きたかったんだろうなぁ...と勝手に想像できる。全然違うかもしれないけど。

    世界中の見方は正直変わらないのだろうけど、本質のようなモノを抽出して言語化できる著者は見えてる世界が違うのはよく分かった。
    難易度みたいなものは特に高くない、普段使いしない漢字をめっちゃ繋げて使用してくるくらい。

    ある程度、本を読む人には文句無しに勧められる。
    翻訳本は読むの疲れる。

    ホモデウスは読むか分からない。

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    2026年07月06日
  • 「死」とは何か イェール大学で23年連続の人気講義

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    本書は、死についての答えを与えてくれる本というより、「死」を入り口に哲学の面白さを体験させてくれる本だった。

    特に印象的だったのは、「私とは何か」「死はなぜ悪いのか」といった、一見当たり前に思える問いを徹底的に掘り下げていく姿勢だ。

    私は、死そのものが怖いというより、恋人との時間や、まだ出会っていない本や映画など、未来の可能性を失うことを惜しいと感じていることに気づいた。

    また、本書を通じて、私の直感と論理は必ずしも一致しないことにも気づかされた。死後には私が存在しないのだから死を恐れるのはおかしいのかもしれない。それでも、別れは悲しく、死を惜しいと思う。

    そうした答えの出ない問いを考え続けることこそ、哲学の醍醐味なのだと感じた。

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    2026年07月01日
  • サピエンス全史 下 文明の構造と人類の幸福

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    すごく面白かった。
    一見するととても難しそうなテーマだけれど、読み進めるのにそこまで苦にならないのは、内容を論理的に噛み砕いて説明してあるからかなと。
    変に強い思想が入りすぎることなく、自然科学も宗教も全てフラットに評価し解説している点がとても好きでした。
    これまでの歴史で判明している事柄や予測される事象、これからの人類に考えられる可能性まで、本当に一貫してひたすらフラットに話しているような印象でした。私が理解しきれていないだけかもしれませんが。
    特に宗教や神話について、一般的にそれに対して求められる事を踏まえつつも、ひとつの文化やあくまで物事を捉えるひとつのアプローチとして説明してあるのが個人的には好きでした。私は特定の宗教に傾倒はしませんが、文化として宗教を学ぶことに非常に興味があるので、人類という大きな共同体において宗教の位置づけがとても俯瞰的に解説されていて面白かったです。

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    2026年06月26日
  • NEXUS 情報の人類史 下 AI革命

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    歴史学者ハラリの描くAI脅威論に関する本書、下巻だけ読みましたが大変面白いです。技術者の感覚的な議論と異なり、歴史に基づく地に足ついた議論とロジックが構築されているので、説得力が全く違いますね。
    ハラリはAIを「artificial intelligence(人工知能)」ではなく、「alien intelligence(異質の知能)」と名付けた方が良いと論じていますが、人類が理解できる範疇ではない無機的なアルゴリズムが現れた事によって起こるリスクを諸々論じています。
    ただ、タイトルのNexusは「繋がり」という意味。情報によって人類が繋がり、良くも悪くも変化してきた歴史を踏まえつつも、新たなアルゴリズムの台頭に備えて人類が分断を超えて対話するべきというメッセージも包含されています。
    めちゃくちゃ名著です。

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    2026年06月22日
  • サピエンス全史 上 文明の構造と人類の幸福

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    おもしろい。自分がよく考えている幸せについての答えまでとはいかなくとも最適解を得られた気がした。
    歴史を学んでいけるのも面白いが、そこから今の人類は、人が作り上げた物の中から幸せを感じるもの、成功というものを作り上げているのではないかと思う。
    社会的真実と自然的真実の違いは自分からしたらとても驚きでこの二つは混ざり合い、人生の幸せとはなにか?という問いの時にこれが混ざってしまうことが多い。そして社会的真実だけを考え人の考えが正しいと思ってしまうことをあると思う。
    この本を読むことでそのような考えは人が作り出したものなんだと分かることができる。

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    2026年06月14日
  • ホモ・デウス 下 テクノロジーとサピエンスの未来

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    現代分析から、近い将来の予測まで。

    「人間至上主義」によって、一人ひとりの内面の重要性や平等性が成り立っていること。

    知能と意識が切り離され、知能についてはAIが人間を上回ることにより、社会にとって人間が本質的に不要になっていくという流れ。

    人間至上主義から「データ至上主義」が台頭してきている。
    世界のありとあらゆる情報をインターネットに繋ぐことで、人間には処理しきれない情報をAIが深く解析して何かしらの出力に繋げる。それに誤りが含まれていたとしても、人間より確からしさが上回るのであれば重用される。
    自然の各種情報、各人の健康情報や心象をデータとしてAIに渡すことにより、自分自身について、自分より良い出力や意思決定に繋げることができる。これは実際に現在進行形で行われていること。
    一昔前はどこでも写真を撮る日本人が馬鹿にされていたが、今や世界標準になっている。

    ただ、これまではデータ処理系としての人体(経験や感情、行動)があったから人類が力を持っていたが、それがAIに取って変わられつつある今、人類が尊重される必要はなくなりつつある。
    まず富裕層が独占して無用者階級が生まれるだろうが、早晩富裕層すら不要になってしまうのではないか。そこの先に何があるのだろうか。

    独裁や民主主義、社会主義を超えて(現在の諸問題に対応しきれていないのはそれはそう)、AIが社会統治する方が合理的になってくるはず。

    (以下感想)
    内容としては「それはそう」と頷ける部分が多く、だからこそ近い将来の予想の妥当性も深かった。
    これが書かれたのが2015年ということに驚いた(もっと最近かと思っていた)。少なくともこの10年において、より妥当性は増してきている。
    自分自身もその大きな流れに与して助長するような考え方になってきていることを改めて自覚した。

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    2026年06月10日
  • サピエンス全史 上 文明の構造と人類の幸福

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    人類史というと専門的で固く聞こえるが、実際読んでみると人類の誕生から今までの歴史をわかりやすく記している。
    自分たちが当たり前に理解していると思っていたものがどう生まれたか、人間の特徴であるイマジネーションを軸に、身の回りの現象の本質を見つめさせる本。
    哲学的でもあり、世界の見方を変えさせる素敵な一冊!

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    2026年06月07日
  • NEXUS 情報の人類史 下 AI革命

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    今までの情報ツールとAIは根本的に違う。それは行動主体になり得る。ともあれ、人間が扱うという点については変わらんから、慎重にいこうぜって話。

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    2026年06月02日
  • サピエンス全史 下 文明の構造と人類の幸福

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    ネタバレ

    幸福について「期待とそれに対する満足」「快感という生理的な反応」「内外の感情を追求しないこと」など様々書かれていましたが、私は物事に対する前向きな解釈が幸福であると思っていますし、その解釈を固めるために外部を変える必要もあると思っています。仏教はちょっと実用的ではないかな…特に快感を知った今となっては

    絶対的な共同体がなく、個人主義の加速する今、自由を手にした私たちはどう幸福を考えるべきか…日々考えることの整理に良い作品でした。

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    2026年05月31日
  • NEXUS 情報の人類史 下 AI革命

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    上巻での歴史的考察を終え、今後の情報ネットワークの高度化や生成AIと人類がかかわる中で、どのようなことが起きうるか、といった未来予測が中心となっています。

    読み進めて、預言書を読んでいるような錯覚を覚えました。情報ネットワークと生成AIの発展が進むにつれ、デストピア的な将来になる可能性もぬぐえず、それを防ぐためには、強力な情報ネットワークを導入するにつれ、強力な自己修正メカニズムも必要となる、との話で締めくくられています。

    緻密な考察や論拠をもとに書かれており、強いリアリティがあります。考え方や情報との向き合い方についても、良い刺激を受けました。

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    2026年05月31日
  • NEXUS 情報の人類史 上 人間のネットワーク

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    翻訳本なのでどうしても特有の読みにくさや引っ掛かりがあることに加え、西洋の宗教、特にユダヤ教やキリスト教が話の中で自然に出てくるのですんなりとは進まないのですが、内容については刺激されるところも多く、時間をかけて読んでいます。

    上巻は、AIなどこれからのテクノロジーに目を向けた話というよりも、過去の歴史から洞察を得ることを目的としています。

    中身について少しお話しますと、情報というものを有機的な物語と無機質な文書に分け、両方が必要だと説かれていますね。加えて、情報の伝達手段として、昔は活版印刷、今はインターネットのようなテクノロジーが発達し、それが人類に対してどういった影響を与えたのかというところも、魔女狩りやスターリンの政治の例を通じ、非常に丁寧に考察されています。

    また、情報そのものにも誤りがあることはあり得るため、それを基にした決定や知恵、様々な行動にも誤りが発生します。それを正すためには、自分で誤りを認め修正する機能、すなわち自己修正メカニズムが必要であるという考えは確かにその通りかと思いました。

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    2026年05月17日
  • サピエンス全史 上 文明の構造と人類の幸福

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    人類とホモサピエンスの違いは虚構を扱えるかどうか
    私たちは虚構の上に社会が成り立っているけれど、宗教や神話が薄れた個人主義の現代に私たちが目指すべき道はどこにあるのか、どこを向いているのか

    正解はないけれど社会、未来、自分をまた違った視点で考える機会になる良い作品です。

    ホモ・デウス含めた全てを読んで、ディストピア作品やユートピア作品との違いを考えたい……!

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    2026年05月16日
  • ホモ・デウス 下 テクノロジーとサピエンスの未来

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    最後の三つのは問いが頭にずっと残る。特に、生き物は本当にアルゴリズムに過ぎないのか?
    後半はディストピア的な記述であるが,そうならないためにという警告だと捉えたい。
    人の在り方について様々な選択肢があることを気が付かせてくれる稀有な一冊。

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    2026年05月08日
  • ホモ・デウス 上 テクノロジーとサピエンスの未来

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    21 Lessonsを先に読んでしまったのであれだが、同書に内容が少し似ている。意識とは何なのか、そう言われるとよく分からない。
    人は、共同主観的意味のウェブ、虚構を作れるという説明にはとても納得させられた。下巻が楽しみ。

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    2026年05月03日
  • サピエンス全史 上 文明の構造と人類の幸福

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    1. 認知革命と「虚構」が作った世界
     本書の根幹にあるのは、「人類がなぜこれほどまでに世界を支配できたのか」という問いへの答えだ。著者のハラリ氏は、その要因を「認知革命」による「虚構(フィクション)を信じる力」だと断じている。

     サピエンスは、国家、法律、人権、そして貨幣といった、物理的には存在しない「概念」を共有することで、見知らぬ人同士が何万人、何億人と協力することを可能にした。
     特に貨幣についての「最も効率的な相互信頼の制度」という定義は面白い。誰もがその紙切れに価値があると信じ込むことで、大規模な経済活動が成立している。裏を返せば、私たちが日々一喜一憂している社会の仕組みの多くは、共通の「思い込み」の上に成り立っているということだ。

    2. 農業革命は「史上最大の詐欺」か
     1万2000年前に起きた農業革命を、著者は「史上最大の詐欺」と呼ぶ。
     狩猟採集時代、人間は多様な食物を摂取し、自由な時間を謳歌していた。しかし農業を始めたことで、特定の作物(小麦や米など)の奴隷となり、不作のリスクや重労働、そして階級格差に縛られるようになったという。

     生物学的な「種の繁栄(人口増)」には成功したが、個人の「幸福」という観点で見れば、むしろ生活の質は低下したのではないか、という指摘は鋭い。現代の私たちが感じているストレスや生きづらさの根源が、急激すぎる生活様式の変化に遺伝子が追いついていない「タイムラグ」にあると考えると、妙に腑に落ちるものがある。

    3. 歴史の非情な側面
     サピエンスが勢力を広げる過程で、多くの大型動物や、ネアンデルタール人のような「兄弟種」が絶滅に追い込まれた事実についても、淡々と、しかしドラスティックに描かれている。
     著者は倫理的な批判をするのではなく、生物学や歴史の視点から、サピエンスがいかに「危険な存在」であったかを警鐘として鳴らしている。環境破壊や核の脅威を抱える現代において、この性質は変わっていないのだと思い知らされる。

    4. 冗長な具体例がもたらす説得力
     本書は決して薄い本ではないが、その厚さは「具体例の豊富さ」に由来している。この具体例が非常にユーモラスで、かつ思考を揺さぶってくる。
     例えば、イタリア料理に欠かせないトマトがメキシコ原産で、ヨーロッパに伝わったのはわずか400年前だという話。カエサルはトマトスパゲティを食べたことがなかったし、ブッダは唐辛子を知らなかった。
     私たちが「伝統」や「当たり前」だと思っている文化も、実はごく最近のグローバル化によって作られた「共同主観」に過ぎない。こうしたエピソードの積み重ねが、難解な概念を血肉化させてくれる。

    5. 総評:歴史を「美化しない」視点
     読み終えて感じるのは、ある種の解放感だ。 社会にある格差やルール、絶対的だと思っていた正義も、歴史の文脈で見れば移ろいゆく「虚構」の一つ。そう認識することで、今のシステムに過剰に適応しようとする肩の力が少し抜ける気がする。「人権」も「平等」も、生物学的な事実ではなく、協力のために発明された強力な「虚構」なのだ。
     ドラスティックに歴史を切り取る筆致は、塩野七生さんの著作を読んだ時の感覚に近い。人間の物語を美化せず、本質をありのままに提示する姿勢には、強い説得力がある。

    ⇓好きな一節(第2章 虚構が協力を可能にした P40)⇓
     虚構のおかげで、私たちは単に物事を想像するだけでなく、「集団」でそうできるようになった。聖書の天地創造の物語やオーストラリア先住民の夢の物語、近代国家の国民主義の神話のような共通の神話を私たちは紡ぎ出すことができる。そのような神話は、大勢で柔軟に協力するという空前の能力をサピエンスに与える。アリやミツバチも大勢で一緒に働けるか、彼らのやり方は融通が効かず近親者としかうまくいかない。オオカミやチンパンジーはアリよりもはるかに柔軟な形で力を合わせるが、少数のごく親密な個体とでなければダメだ。ところがサピエンスは、無数の赤の他人と著しく柔軟な形で協力ができる。だからこそ、サスペンスが世界を支配し、アリは私たちの残り物を食べ、チンパンジーは動物園や研究室に閉じ込められているのだ。



    ⇓好きな一節(第9部 統一へ向かう世界 P210)⇓
     私たちは相変わらず「純正」の文化ということをしきりに口にするが、独自に発展し、外部の影響を免れた古代の地元の伝統から成るものを指して、「純正」というのなら、地上には純粋な文化は1つとして残っていない。過去数世紀の間に、すべての文化は、グローバルな影響の洪水で、ほとんど原型を留めていないほどまで変化してしまったからだ。
     このグローバル化のうちでも、特に興味深いのが「エスニック」料理だ。私たちにはこんな思い込みがある。イタリアのレストランではトマトソーススパゲティーが食べられて当然だ。ポーランド料理とアイルランド料理の店ではジャガイモがたっぷり出てくる。アルゼンチン料理の店では何種類もビフテキ、インド料理店では、ほとんどの料理に辛い唐辛子が入ってる。スイス風のカフェのハイライトは、ホイップクリームの載った濃厚なココアだろう。
     だが、これらの飲食物は皆、もともとこれらの国のものではない。トマトと唐辛子とココアはどれもメキシコ原産で、ヨーロッパとアジアに伝わったのは、スペイン人がメキシコを征服した後に過ぎない。ユリウス・カエサルとダンテ・アレギエーリは、トマトにまみれたスパゲティーをフォークに絡めたことが1度もなかった。(実のところフォークさえ、まだ発明されていなかった)ウィリアム・テルはチョコレートを味わったことがなく、ブッダは唐辛子で食べ物に辛みを加えたりしなかった。じゃがいもがポーランドとアイランドに伝わったのはわずか400年前だ。1492年にアルゼンチンに入ったのはラバのステーキだけだった。

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    2026年04月29日