柴田裕之のレビュー一覧
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歴史的な大惨事(カタストロフィ)は予測不能である。これが本書の要点だろう。ほとんどの惨事は正規分布しておらず、ランダムもしくは冪乗分布している。
もちろん、ある程度予測できる出来事(灰色のサイ)もある。また、予想を超えた惨事(ブラックスワン)がある。そして、手のつけられない大惨事(ドラゴンキング)・・。これらを予測することは不可能だ。そしてこれらの災害は、「天災」とも「人災」とも区別がつかず、重層的に絡み合っていることが多い。所謂複雑系であり、完全に防ぐことはもとよりできない。
人類の歴史は、まさにカタストロフィの歴史であったわけだが、我々の未来はどのような展望を描くのか。当然の帰結として、予 -
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あまりにもおもしろく、そしてあまりにもおそろしい——。
本書は「情報」についての人類史を、上下巻にわたって深く考察している。
上巻では主にこれまでの歴史を、下巻ではこれからのAIについての考察が述べられている。
読み進めるうちに、手塚治虫の『火の鳥 未来編』が強く脳裏をよぎった。
AIがこれから加速度的に進歩していくことで、人類が制御できないおそろしい未来を想像せずにはいられなかった。
現在、国家の分断や陰謀論など、情報の氾濫により、私たちはAIのアルゴリズムによって何が正しく、何が間違っているのかの判断すら難しくなってきている。
この状況がさらに進むことで、個人のあらゆるデータを掌握 -
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ネタバレ下巻は宗教、資本主義、科学革命、そして未来の話。
拡大するパイという資本主義のマジック。資本主義の出現まではパイの大きさは変わらず、誰かが富んだ分、誰かが貧しくなる。キリスト教の教えとしても、金持ちが神の国に入ることは難しいとしていて、余った富は慈善事業に回すような文化だった。信用とは今日と明日のパイの大きさの差。パイが拡大することで信用が生まれ、経済が回りだす。貨幣や資本主義経済というサピエンスが造り出したシステムのすごさを感じる。
そしてコロンブスの話も印象的。歴史の教科書ではコロンブスがスペイン女王の援助を得て西回り航路を開拓したと記載されているが、その時代のことを考えると、援助を得るの -
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ネタバレホモサピエンスの歴史を様々な観点から振り返って紐解いていく大ベストセラー。
比較的読みやすい文体ながら、文字数は多く専門的なワードも多い。
でも引き込まれる…自分の認識を破壊されたり、新しい視点に出会えたり。本を読むことの良さの一つとして、他の人の人生や考え方を取り入れられることがあると思うけど、この本はそれを体現しているように思う。この本を読めて良かった。
上巻では認知革命、農業革命、グローバル化がテーマ。
勉強になったポイントがたくさんありすぎるけど、なんとか付箋を貼っていたところを振り返ると、まず農業革命によってサピエンスは豊かになったのかという点。狩猟採集から作物を育てるという技術を手 -
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ネタバレ◆感謝祭の場面
険悪の仲である長男・ドナルドが次男・ジムと取っ組み合いになり、ついにドナルドはテーブルを持ち上げてジムに投げつける。母親の耳が手作りのお菓子の家を粉々に壊すシーンがせつない。
◆メアリー(小学5年生)
「自分の部屋で何時間も、クローゼットや机の引き出しを整理しては、やり直すことに没頭し、自分には多少なりとも物事を意のままにする力があると思おうとした」(P.220)
「まず、十二人も子供を儲けておいて、全員を理想的なアメリカ国民に育て上げられると考えること自体、自覚が欠けていると思います」(マーガレット P.404 )
「彼のことは、安全な港と呼びたいです」(ワイリーと結婚した -
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なぜヒトはこんなにも高い知力を有しているのか。なぜヒトの生態的地位は独立しているのか。なぜヒトが地球を支配しているのか。私は人間であることに疑問と罪悪感を覚えてきた。この本を読んで、サピエンスがどのように現生人類の地位を獲得したかを理解し、世界の見方が変わる感覚を味わった。ヒトという存在の歴史を知るのはとても興味深く、快感だった。もっと早くに読むべきだったとも思う。
サピエンスの脳の言語野にどのような突然変異が生じたのかよくわかっていないが、虚構を語るというのがこんなにも画期的であることに驚いた。また、サピエンスが史上最も危険な種としてたくさんの種を絶滅に追い込んだことに胸が苦しくなった。農業 -
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ネタバレサピエンス前史
第一部
安静時、脳は25%のエネルギーを消費する
250万年前 東アフリカにてホモ属が出現
200万年前 アフリカを出る
30万年前 火の利用。調理。チンパンジーが一日五時間の咀嚼。人間は一時間。長を短くしてそのコストで脳を大きく。
7万年前 中東に到達。
五万年前 デニソワ人、ネアンデルタール人との交雑の証拠となるDNA
3万年前 ネアンデルタール人絶滅。
7-3万年前 認知革命→言語の柔軟性、噂話説。150人の親密な集団の壁を虚構によって突破。想像を語り、虚構を共有する力。
4.5万年前 オーストラリアへ。大量絶滅。
1.8万年前 最終氷期が終わる。気温上昇、降雨増加。 -
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ネタバレ自由意志など存在せず、人間は単なる有機アルゴリズムであり解明可能というスタンスで科学は突き進む。
そうなのかもしれないけど、意識や心や思考(と呼ばれるもの)がどのように生じるか、完璧なメカニズムはまだまだ解明に時間がかかりそうだし、最後の1ピースが見つからずにやっぱり解明できないのかもしれない。
なんだか、ぜひそうあって欲しい。
でもその反面、データ至上主義の観点で世の中を解説されると妙に腑に落ちるところもある。
データは人間に理解しきれないアルゴリズムの境地にいよいよ到達しているが、このまま我々を押しのけて地球の中心になるのか?
本書では「すべてのモノのインターネット」に接続することで -
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前作に引き続き、ホモサピエンス特有の強みである「集団で見えないなにかを信じる力」の解説から始まったので、ああそうだったと思い出しながら楽しくすんなり読めた。
アニミズムから神の存在、ルネサンスと人権主義までどんどん人間の歴史の歩みが解き明かされていく。そして、現代のすべての秩序を宗教と言い切ってしまう。これは自分にとって新しい視座だった。
たしかに資本主義ですら、信者が圧倒的に多いから現状上手く回っているだけの宗教なのかも。
科学と宗教のライバル関係?奇妙な均衡?は、これからの時代どうなるのか。とんでもなく力を増していく科学に対して、新たな宗教が対抗してくるのか。
下巻が楽しみ。
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