大沢在昌のレビュー一覧
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ネタバレ目次より
・区立花園公園
・夜風
・似た者どうし
・亡霊
・雷鳴
・幼な馴染み
・再会
・水仙
・五十階で待つ
・霊園の男
長編と違って短編は、切り取られた一場面から浮かび上がってくる素材勝負のところがある。
詳細な描写や分析に費やす言葉に限りがあるから。
そしてこの短編集で際立っていたのが、鮫島の優しさだった。
長編で暴力団や外国人犯罪者グループと対峙する鮫島は、下っ端の犯罪者ならばビビってしまうくらいの厳しさを常に見せている。
そして、足下をすくわれないためにも、自分に一番厳しく清廉であることを律している。
しかしこの作品集で鮫島は、組に見捨てられた組員、犯罪者予備軍の少年、犯罪を犯 -
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このミスベスト10、2012年版4位。本読むの最初のとっかかりで作品のルールを理解するまでがしんどいけど、しリーズものはそのあたりが楽に入れる。逆にまんねり化するおそれもあるけど、このシリーズは毎回、事件をめぐる人間や組織の関係がしっかり設計されており、新しいキャラもしっかり書き込まれていて良くできてる。特に本作はストーリーが秀逸で、単独の作品としても十分通用する、シリーズで1、2を争う傑作と思う。晶の扱いも最近は難しくなってきて、登場すると話が薄っぺらくなってしまうような感じがしてたけど本作ではうまく処理したなって感じ。ただし、本当にこの作品で初めてめてこのシリーズを読む人に晶と鮫島の決断の
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ネタバレ鮫島と同期でありながら、決して同じ道を歩むことのない香田。
しかし互いに嫌いあっているとはいえ、それぞれの正義と警察官としての矜持は認め合っていた。
警察官と犯罪者という、立場は違うがよき好敵手としていくつかの事件に関わってきた仙田。
人を見る目、先を読む力、躊躇しない行動力など、実に魅力的な人物であった。
このふたりがこのような形で鮫島のまえから去っていくことになるとは…。
シリーズも終盤になり、今作は別れの気配が濃厚だった。
外国人の犯罪者を日本から締め出すことによって、安全な都市づくりを強行しようとする香田。
法律の自在解釈を許せば、一時は平和になっても、いずれ矛盾が噴出するとい -
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いつのまにか出ていた完結編。
これだよこれこれ、と言いたくなるような大沢小説。
「マッカーサープロトコル」などという、いかにもありそうなネタ、荒唐無稽に見えていた敵(藤堂)の信憑性の持たせ方、ヤクザやはてはCIAまで出してくる展開のスムーズさ。
絶対の存在として描かれるカスミの設定も大沢さんらしい。
正直、1から3まではイマイチだと感じていたけど、この完結編で全部チャラ。面白かったです。
でもやはり、大沢作品全体とすると、真ん中くらいの出来なのでは。若い子とそれをサポートするオッサン連中、という構造で、作品をどうも当事者風に感じられなかったのが原因か。
情報機関とかこのあたりを使った小説 -
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ネタバレ直属の課長桃井と鑑識の藪しか警察内部に味方がいない鮫島。
だから台湾の警察だったり、消防庁だったりなど、外部の人間とだけ協力者がいなかったのだが、今回の相手は警察内部。
鮫島が元々所属していた公安の過去の事件が、現在の事件の捜査を妨害する。
第一作の時に鮫島と対立する公安のエリート香田が、今回は鮫島と同じように自分の思う理想の警察官像と対峙することになる。
エリート意識の塊で鼻持ちならないやつだった香田が、今回鮫島とカラオケで待ち合わせ。
「俺はカラオケに行ったことなんかない!」と言っていた香田が、鮫島を待つ間演歌を歌うなんて。(笑)
最終的にはゲイバーにまで行っちゃったし。
物語の中で、 -
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ネタバレ構成がだんだん巧みになっていく。
今回はラブホテル連続放火事件と、コロンビア人娼婦連続殺人事件と、稲を壊滅させるほどの繁殖力を持つ害虫の蛹の確保という3つの事件が同時に進行していく。
鮫島は基本的にひとりで行動するのだけど、放火事件は消防庁と、殺人事件は機捜と、そして蛹捜索は植物防疫官と連携しながら捜査をする。
消防庁予防部調査課の吾妻もいいキャラクターなんだけど、植物防疫官の甲屋が本当に面白いキャラクターで、鮫島よりも押しが強いのには笑ってしまう。
研究者肌で公務員としてはかなり異質、けれど子どものような好奇心で鮫島の仕事に興味津々で付いてくる厄介なおじさん。
3つの事件はそれぞれに全 -
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同性愛の男性が。
ノン気、というのでしょうか、全く同性愛の趣味の無い男性に、惚れちゃうわけです。
惚れらてしまった男は、相手が同性愛者だと知っていて、でも自分は全くその気がないよ、という前提でしか、接しません。
まあでも、それでも良い訳です。
別に隙を見てキスしたいとか触りたいとか、そういう次元じゃないんです。
純愛。
だからまあ、「私は実は同性愛者です」と言わなければ、傍目には、「熱い友情」とでも見えるような。
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2011年の、大沢在昌さん「新宿鮫Ⅹ 絆回廊」。
前作の「狼花」が2006年だったので、足掛け5年。
ちなみに、2016年現在、長編としては未だ新作が出ていませんので、かれこ -
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ネタバレ若者たちの間で流行っている薬「アイスキャンディ」。
錠剤を口にすると、すっと頭が冷静になり、感覚が鋭敏になる。そして何よりも安い。
今までになく手軽でお洒落な覚せい剤の出どころを追う鮫島。
そして鮫島とぶつかる麻薬取締官事務所。
取引の主導権を巡って争う「アイスキャンディ」の卸元と、東京の暴力団。
地方の財閥一族の愛憎。
そして鮫島の恋人・晶の運命。
いくつもの物語が平行して動き出す。
徐々に終焉に向かって収束していく後半は、とにかく続きが気になって、本を置くことができない。
妨害されようと、時間が足りなかろうと、とにかく一歩一歩確実に犯人たちを追いつめていく鮫島。
しかし事態は一歩一歩 -
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ネタバレ前作の「毒猿」では、台湾やくざと台湾の刑事が、プロとして自分の仕事を全うしながらも互いを信頼していたけれども、この「屍蘭」は犯罪の素人の女たちが、鮫島を追いつめていく話。
彼女たち・綾香とふみ枝は、決して誰にも知られてはならない秘密で繋がっていて、しかし必ずしも互いを信頼しているわけではない。
全く対照的な「毒猿」と「屍蘭」ではあるけれど、途中で読むのをやめられないのはどちらも同じ。
ただ、最後まで読んでみてもふみ枝という女がよくわからない。
なぜ綾香のためにそこまで献身的になれるのか。
自分は見捨てられるのではないかという不安を感じながら、綾香を守るために自分の手を汚し続けるふみ枝。
彼女 -
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「ルパン三世」という、テレビアニメがありますね。ありましたね。
僕は子供のころから、大人になっても、基本的に大好きです。楽しめます。
(と、言っても考えたら10年近く、見ていないかもですが)
あの面白さっていうのは、物語、シリーズ、ヒーローもの、という楽しみ方を考える上で、実に判りやすい例だなあ、と思うのは。
大まか25分の1話完結。
中には、名作、と呼ばれるものもあります。
「雨の午後はヤバイぜ」「脱獄のチャンスは一度」「七番目の橋が落ちるとき」「死の翼アルバトロス」「荒野に散ったコンバットマグナム」...
(狡いようですが、大隅正秋さんのルパンと、宮崎/高畑さんのルパン、僕はどちらも好 -
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いきなり私事ですが。
過去2~4週間くらいか、ちょっと仕事がばたばたして、落ち着かない時期がありまして。
合間の時間でも落ち着かないし、どこか脳みそが仕事を離れきれない。
誰にでもそんな時期は、濃淡ともあれ、あると思うんです。
そうなると、なんていうか...むつかしい本、読み応えのある本、を読み辛くなってしまうんですね。
でも、一方で、そんな時期だからこそ、いつでもどこでも短時間でも、スマホさえあれば電子書籍で楽しめる「読書」というのは、大切な息抜きで、気分転換。
「アタマ空っぽに、わくわく楽しめるような、男の子的な、娯楽小説を読みたいな」と。
それで、
「新宿鮫シリーズでも読むか!」。
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新宿鮫シリーズの、第4作。1994年。
直木賞を受賞した作品で、シリーズ最高傑作、という人も多い1冊。
今回の敵は、
「東北の巨大財閥の兄弟が、覚せい剤の販売をしている。
それを卸して貰って捌いている暴力団」
という設定。
ただ、主人公にも読者にも、「覚せい剤を作って卸している大元」はなかなか分からない仕掛け。
だいたい、新宿鮫シリーズの特徴なのですが、読者、次いで、主人公に、仕掛けが全て分かるまで、つまり前半の方が面白い。
後半は、もうちょっと具体的に、つまり個人個人のアクションとか死の危険といった、
「まあまあ、そりゃさ、ゆっくりあわてなければいずれは悪者は捕まるよね」
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新宿鮫シリーズの第3作。1994年。
今回は、
「不法に赤ちゃんを堕胎させ、その赤ちゃんの死体を臓器売買などで海外に不法に輸出して暴利を得ている一味」
が、敵役です。
その一味と言うのは、ボスが美容クリニック経営者の美女。そして、その手先である元刑事、無免許医師、そして看護師のおばちゃんです。
魅力は、なんといっても看護師のおばちゃん。
このおばちゃんが、地味なおばちゃんなんだけど、非情で凄腕の殺し屋、という設定。
そしてこのおばちゃんは、私利私欲が無い。美容クリニック経営者の美女のことを、「娘」のように愛していて、そのためならなんでもする、というキャラクター。
第1作ではヤクザや -
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やっぱり読み返すと、ぶっちゃけ左より。リベラル。
現今で言うと、読み手次第かもしれませんが、アンチ自民党。
まあ、犯罪ミステリーの作者っていうのは、ちゃんとしてれば大抵社会派なんですけどね。
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「毒猿」大沢在昌さん。再読。
新宿を舞台に、一匹狼の刑事「鮫島さん」が活躍する「新宿鮫シリーズ」、第2作。
鉄板保障な、男子のエンターテイメント。
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第1作では、
●改造拳銃作りの名人・木津の工房を抑える戦い。
●木津の銃を使った警官殺しの犯人を検挙するための戦い。
●主人公鮫島さんと、インディーズロック歌手・あきらさんとの恋愛関係。
●主人公の初期設定説明、レギュラー陣の初期設定説明。